総軍軍議
幕舎に広げられた地図の上に、三つの軍旗が並ぶ。
その周囲に集うのは――総司令官セレン、第二軍団長リシュモン、第五軍団長イェルネス、
そして第三軍を支える二人の師団長、ゼイルとガロット。
セレンが冷静に切り出した。
「敵軍は王子が再編を主導し、北西部の陣を再構築中。
前線の崩壊を支えきれず、兵の士気も落ちている」
地図上に光点がいくつか浮かぶ。敵の補給線、陣構築の進行度、配置図。
「現時点が、最も脆い。その隙を突く。
我が第三軍は、正面からの主攻撃部隊を務める。
続いて、リシュモンが腕を組んだまま言葉を継ぐ。
「第二軍は、主戦線には加わらず、補給線の遮断と側面支援に回る。
あの王子、戦の矜持に囚われて戦線を離れまい。ならば兵站を絶つ。……戦場にあって最も静かに効く手だ」
「第五軍は、すでに敵の魔導障壁を調査済み。奇襲部隊が通れる経路を一本、明朝までに開通させる。
我が方の魔導隊は、前衛に雷封結界を張って進行支援する」
イェルネスの声は淡々としていたが、その中に熱意は確かにあった。
「では、各軍、準備に入れ。
明朝、夜明けとともに、王国軍は進軍を開始する」
三つの軍が静かに頷き、散っていく。
セレンは最後にゼイルとガロットを呼び止めた。
「……お前たちは、私の矛と盾だ。無理はするな。
だが、確実に勝ちに行く」
「――無理しないように、確実に死なないように、全力で戦えってやつだな」
とガロットが苦笑し、
「任務了解。死んでも生き返る勢いで行ってくる」
とゼイルが飄々と笑う。
そんな二人に、セレンの瞳がわずかに細められた。
「……帰ってこなかったら、追いかけてでも叱る」
その言葉に、二人とも一瞬だけ、肩をゆるめて笑った。
戦の火蓋は、いよいよ落ちようとしていた。




