総司令官の拝命と三軍集結
戦地に冷たい風が吹く。
西の最前線、第三軍の本営。
広大な野営地に、数千の兵が整列していた。向かいの丘に立つ二つの軍旗は、それぞれ南方第二軍と中央第五軍の印。
それを率いる重厚な騎馬隊の先頭には、整えられた白髭と威容を持つリシュモン伯爵と、黒衣の姿が映えるイェルネス将軍の姿があった。
彼らが率いる援軍の到着と共に、セレンの元に王命が届けられた。
やや開けた丘の上、即席の壇上に立つセレンの前で、リシュモンが王印の押された命令書を広げる。
「王命を奉じ、援軍参上せり」
第二軍の号令とともに、堂々と騎を進めたリシュモンが、セレンの前で静かに膝を折った。
「セレン・カリス・レオント殿――」
その声に、第三軍――セレンの兵たちは姿勢を正す。
同様に、到着した第二軍、第五軍の兵たちも静まり返った。
リュシモンが一歩前に出て、巻かれた命令書を広げる。
「王国軍、最終決戦に臨むにあたり、王命をもって汝を全軍の総司令官に任ず。
全軍は貴殿の指揮下に入り、最後の勝利をもって戦を終結させることを命ず」
宣言が終わると同時に、場の空気が変わる。
地に立つすべての兵が、目の前の細身の将を見つめた。
銀の髪に風が絡み、白い外套がはためく。
セレンはゆっくりと片膝をつき、右手を胸にあてる。
「……謹んで、拝命する。
この命、戦の終結と王国の勝利のために」
その声に、重々しくも清冽な響きがあった。
そして、儀式の形式に則り、リシュモンとイェルネスがそれぞれ一歩前に進み、跪いた。
「我が第二軍、汝の指揮下に入る。
長きにわたり国を守ってきた兵たちを、貴殿に託す」
「第五軍も同じく。命令を、そして勝利を期待しております。――“氷の死神”殿」
とイェルネスが軽く目を細め、優雅に頭を下げた。
セレンは静かに彼らの手を取って立ち上がった。
三つの軍が、今ここにひとつに結集した。




