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クロノワールド -再創-(Re:Creation)  作者: ゼロザム=ルーゴ
第壱章 戦士ノ活動録篇
6/23

第陸話 「水と熱」

この物語はフィクションです。

実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

真夜中、クロノスの街には雨が降っていた。その中で仕事帰りの会社員男性がブリーフケースを傘代わりにして歩道の上を走っていた。

会社員A「だぁぁぁぁ…!最悪!快晴じゃなかったのかよ!!」

時間帯も相まって人は一人もいなかったおかげか大声で文句を言えるが、更に激しくなる雨で掻き消された。

会社員A「つか!降り過ぎだ!ここまで間違えるか!?」

あまりのタイミングに異常だと思い、ツッコミを入れていた。若さも相まってか元気は有り余っていた。だが、雨は確実に体力を奪い、視界が塞がれてるのも相まってかなかなか動けなかった。

「あーめあーめふーれふーれかあさんがー…」

直後、男の耳に童謡の歌詞を口ずさむ渋い低音が聞こえてきた。

会社員A(なんだアイツ?気味が悪い…)

とてつもない嫌悪感と不快感に襲われ、声の主らしき人物を目にした。

紫の着物の上に着込んだ黒の羽織、黒の長髪を生やした頭に被った大きな笠帽子の大男がいた。そして、何よりも目に入るのは異常なまでに長い大太刀であり、片手に握り締められていた。

会社員A(いいや、無視しよ…関わんない方が一番だ)

気にしないようにしようと正面を向き直し、不気味な男の横を通り過ぎた。

笠帽子の大男「じゃのめで おむかえ うーれしいーな…」

次の瞬間、大太刀を引き抜いた。あまりにも長いそれは素早く、会社員の身体を上下に両断した。

会社員A(え…)

一言も発せず、瞳から光が消えていく。降りしきる雨の中で男は倒れ、血が洗い流されていく。

笠帽子の男は血振りをした後、大太刀を鞘に納めた。

笠帽子の大男「…ピッチピッチ チャップチャップ ラン ラン ラン…」

再び歌を口ずさむと、歩を進めた。そうして男の姿は闇夜に消えていった。


ヒヤクとクドー、エドバルドの騒動から翌日

晴れ渡る青空が広がるクロノス社の中庭にて、一人の青年が寝ていた。朱色の髪と腰に巻いた赤い帯が特徴の赤い衣装を着ていた。

「ここにいたか、フレア」

眠る青年 フレアに声をかけながら歩み寄る男がいた。声の主は水色の髪と瞳を持ち、水色の装飾が特徴の青い衣装を着ていた。身に纏う雰囲気は何処か生真面目で堅かったが、その容姿は瓜二つだ。

声に反応してか瞼が開き、朱色の瞳が顕になる。

フレア「んだよ、兄貴か…」

まだ眠いのか機嫌悪そうにして起き上がる。それも兄貴であるアクアだった事も相まって安堵故か一息ついた。

アクア「なんだとはなんだ、かなり探し回ったんだぞ」

態度の悪さに呆れながらもフレアの隣に立った。

フレア「そうかよ…」

身体を伸ばして、骨を鳴らした。

アクア「…隊長がお呼びだ」

すぐさま要件を話す。話し方や様子は落ち着いており、眼差しは鋭かった。

フレア「て事は、依頼か…それもかなりの急用」

たった一言で大体ながら察した。すぐさま応じて、アクアと共に隊長室へと向かっていった。

移動の最中、アクアが口を開いた。

アクア「既に隊長から聞いた。昨夜、C市街地区にて大雨の中で人斬りが発生した」

語られる内容は依頼についてであった。

フレア「人斬り?つか、昨日ずっと晴れだったじゃねぇのかよ?」

だが、疑問が過ぎってか顔を訝しんだ。報道では晴れと述べており、気象予報士も天候を予測する能力者が多いので外れる事は無い。

アクア「そうだ。だから、人斬りは能力者だとわかった。」

次の一歩を踏み出す。

アクア「早く、奥さんと子供の為にも敵を討たないとな…」

殺された会社員には家族がいた。理不尽に家庭を奪われた被害者側を双子である自身達と無意識に重ねていたのだ。

決意を吐露した言葉が原因かフレアの足が止まる。

フレア「兄貴、今さっき嫌な夢見てたんだ…」

暗そうな表情を浮かべながらアクアに伝えた。それで彼の足も止まった。だが、振り向きはしなかった。

フレア「過去の事…記憶喪失になった母さんにどっかに消えたクソ親父、そんな二人を馬鹿にするヤツらに腹立って…」

夢の内容を語る。だが、それは過去の出来事であり、紛うことなき現実…話す度に苛立ちが募り、拳を強く握り締めた。

アクア「わかった、もう何度も聞いた…」

言い切る前に制止の声をかけ、無理にでもやめさせた。辛い気持ちなのはアクアも同じであり、彼も地獄のような光景を目の当たりにしていた。

険悪な空気が包む中、互いに沈黙が続いた。

アクア「兎にも角にも、行くぞ」

切り替えてかフレアに催促すると、止めていた足を再び動き出した。応じてかフレア本人も急いで進んだ。


しばらくして、二人は現場に到着した。

アスファルトに会社員男性の真っ二つに斬られた遺体は無く、チョークで輪郭をなぞった跡があった。

また周囲にはバリケードテープが張り巡らされており、野次馬などの部外者が入ってこないよう外側にはCSF隊員が警備していた。

アクア「佐中(サナカ) (トオル)…彼の衣服はまだ濡れていたようだ」

テープの内側にいる二人がチョークに近付いた。手にする資料に目を通し、状況を整理していた。

フレア「土砂降りん中でか…許せねぇな」

理不尽に命を奪われた事に怒りを感じ、拳を握り締めた。

アクア「何故、土砂降りだとわかった?」

その言葉に違和感を覚えてか、フレアに顔を向けた。雨なのは確かだが、降水量はわからないはずだ。

理由は当の本人の口から語られた。

フレア「今日の気温は温かくねぇからなかなか乾かねぇだろうし、アスファルトに血痕が無い…」

朱色の瞳が下に遣ると、確かに歩道に汚れは無かった。すると、その場でしゃがんでチョーク・アウトラインを凝視した。

フレア「仮にだけど、俺様が犯人なら逃がさない為に凄い雨降らせてやるからな…」

想像の範囲内ではあるが、理にかなっていた。

アクア「仮か…何とも言えんな」

納得はしているものの、まだ事実がわからないのなら肯定も否定のどちらも断言すべきではない。頑固な性格からか将又慎重になっているのか、そんな返しになった。

気に入らなかったのかフレアがアクアを睨みつけるように目を遣った、その時だった。

フレアの顔に冷たい何かが当たった。

フレア「雨か?」

アクア「…まさか」

雨粒である事を見抜くフレア、今日も快晴で雨など降らないはず…その事実を知るアクアの脳裏に嫌な予感がした。

すると、静かに雨が降り出した。それは互いの身体を瞬時に濡らし、体温を冷やそうとしていた。

フレア「合ってただろ?」

だが、激しくは無い。しゃがんでいた身体が立ち上がった。信じれなかったアクアにキツイ言葉で投げかけた。

アクア「…悪かった」

今のは自分の落ち度だったと謝罪の言葉で返した。だが、憶測の域を出なかったのも事実だったのか引っかかっており、素直にはなっていなかった。

瞬時に切り替えようとアクアの全身から水が発現、それを身に纏った。フレアも異常なまでの高熱を発し、全身に帯びた。

当然ながら周囲のCSF隊員も銃火器や引き抜いた刀を構えた。

アクア「警戒しろ、雨降らしの人斬りが来るぞ…」

フレア「わーってるの」

互いに背中を合わせて、周囲に警戒を張り巡らせる。人斬りが現れるとそう思っていた。

予感が外れてか雨が唐突に止んだ。

フレア「あ?なんだ?」

気のせいなのかと思っていた。だが、アクアは警戒心を解いていなかった。

直後、遠くから悲鳴が街中に木霊した。

アクア「急ぐぞ!フレア!!」

フレア「あぁ!」

聞きつけた二人が瞬時に走り出し、路地裏を通り抜けた。数人のCSF隊員も後を追った。


辿り着いたのは別の道路で、そこにあったのは胴体が両断された一般市民であった。

スーツ姿の中年男性である事からサラリーマンであるのは確かであった。

アクア「くっ…!」

助けられなかった不甲斐なさに歯を食いしばり、拳を強く握り締める。

フレア「アイツ!遠くでも雨降らせれるのかよ!?」

人斬りの能力がどれほどのものかをわからされ、愕然とする。

アクア「いや、流石に限度がある!そう遠くにいないはずだ!」

これまでのケースを総合してフレアの考えを否定し、まだ近くにいるという可能性を信じた。

逃がしてはならないと思い、CSF隊員に指示を飛ばした後に自分も両脚に水を纏い、噴射する水圧で飛行した。

考えを改めたフレアも道路の上を走り出し、路地裏なども探し始めた。

アクア(逃げるなよ…!必ず見つけ出してやる!!)

必死に周囲を見渡す。人斬りに対して圧倒的な怒りを抱いていた。

走り続けるフレアも必死な気持ちであった。

フレア(けど、足取りも手がかりも何も無いのにどうやって…)

冷静に考えると砂の中から針を探すようなものであった。だが、それでも諦める気にはならなかった。

「かけましょ 鞄を 母さんの…」

直後、不気味な声を耳にした。

フレア「あめふり…?」

疑念に思ってか声がする路地裏を凝視する。声の主は笠帽子の大男であった。

フレア「テメェかァァァァァ!!」

一目見て笠帽子の大男が佐中と先程のサラリーマンを殺した人斬りだと理解し、確信した。

フレアは瞬時に接近し、間合いに入ったと同時に高熱纏う拳を突き出した。

笠帽子の大男「後かーら ゆーこゆこ 鐘が鳴るー…」

平然としながら振り返りながら鞘に納めた大太刀で攻撃を防ぐ。

笠帽子の大男「…何するんですか?酷いじゃないですか」

怒りの表情を浮かべ、こちらを睨みつけるフレアに対して落ち着いた様子で白々しく言った。

フレア「惚けんじゃねぇ!血腥(なまぐさ)いんだよ!!」

言い訳するなと豪語し、笠帽子の大男に蹴りを入れる。彼は敢えてそれを受けて、フレアから距離を取った。

笠帽子の大男「…なんだ、鼻が利くのか」

誤魔化しでも無駄だとわかってか、仕方ないと思いながら大太刀を引き抜いた。

フレア「嘘だけど、まんま引っかかってくれて助かったわ」

思い通りになってか微笑む。再度、笠帽子の大男に対して戦闘態勢に入った。

笠帽子の大男「…嘘つきか、嫌いだ……」

笠帽子から覗く…睨みつける目に嫌悪が宿る。

フレア「好きに言いな!!」

すぐにケリをつけようと一直線に走り出す。全身から高熱を発しながら拳は強く握りしめていた。

笠帽子の大男「あーめあーめふーれふーれかあーさんがー………」

童謡のあめふりを口ずさむ。次の瞬間、勢いよく雨が降り出した。

フレア「ぐっ…!!」

圧倒的な降水量により身動きが取れなかった。

だが、諦めずに何とか突き進んだ。拳を一点に集中させ、異常なまでに体温が上がっていく。

それを笠帽子の大男に振るうが、難無く避けられた。異常な降水量の雨で鈍くなっているせいだ。

流れるように笠帽子の大男が大太刀を振り下ろし、フレアの胴体を斬り落とそうとした。

フレア「あっぶねぇっ!!」

背を低くするように伏せて、足払いを繰り出す。それにより笠帽子の大男が体勢を崩した。

フレア「これもらうぜ!」

手放した大太刀を奪い、そのまま構えようとした。

フレア「ぐっ!重いっ…!!」

だが、尋常ではない長さに見合った重さが振るうどころか動く事すら許されなかった。持つだけで精一杯であった。

笠帽子の大男「返せェッ!!常闇眼(トコヤミノマナコ)をォォォォォッッッ!!!」

怨念のように豹変し、大太刀の名を言いながらフレアに迫り、彼の手と肩を掴んだ。

フレア「んだよ!テメェ!!」

不気味に思いながらも笠帽子の大男を振り払おうと蹴りを入れる。だが、体格差のせいかビクともしなかった。

笠帽子の大男「返せェ!!」

怒りのままにフレアを投げ飛ばし、路地裏から出てしまった。

なんとか着地し、笠帽子の大男に顔を向けた。

フレア「クッソ!待ちやがれ!!」

逃がしてたまるかと思い、すぐに距離を詰めようと走り出した。

笠帽子の大男「あーめあーめふーれふーれかあさんがー…」

童謡を口ずさみ、土砂降りの雨がフレアの身動きを封じた。

フレア「逃がしてたまるか…!!」

動こうにも異常な降水量で思う通りはならず、目の前が見えなかった。

笠帽子の大男「かーけましょ 鞄を 母さんの…」

雨の能力で位置がバレていて、他の者が来ては面倒だと思ってか童謡を歌いながらこの場を去ろうと歩を進めた。

フレア「野郎!!」

遠くなっていく声で逃げようとしている事がわかり、追いかけようとするが、その先に笠帽子の大男はいなかった。


フレアから少し離れた、その時だった。

「逃がすか…!!」

笠帽子の大男に制止の声がかけられた事で進めていた足が止まった。

大太刀が動く音が鳴り、何処からか来ると警戒してか周囲を見渡した。

直後、横から水圧が噴射し、笠帽子の大男を路地裏から追い出した。

公に出された笠帽子の大男は転がりながら体勢を立て直し、引き抜いた大太刀 常闇眼を路地裏に向けた。

アクア「大人しくしろ、天闇笠(アマクラガサ)…」

路地裏から声の主であるアクアが出てきた。

笠帽子の大男 天闇笠が降らす雨のせいか髪や衣服は全て濡れていた。

天闇笠「貴様、あの(あか)いヤツと瓜二つだな…」

大太刀を構えたままアクアを見据えた。

アクア「アクア・バーニング・ロット…」

水纏う右手を振るい、刃を生成した。

アクア「フレアの兄だ」

引き延ばしたその切先は地面に触れそうであった。

天闇笠「バーニング・ロット…シリウスの戦士でいたな……」

アクアとフレアの名を聞いて、確信を得た。

脚に水を纏う。直後、脹脛(フクラハギ)からジェット機の如く噴射し、物凄い水圧で加速した。

間合いに入ったアクアが右手の刃を突き出した。それを目の当たりにした天闇笠は瞬時に常闇眼で防ぐ。刃同士は衝突したが、水がすり抜けて、天闇笠の胴体を貫こうと迫る。

天闇笠「確か、スイレンを殴ったか…」

已の所で躱され、笠帽子を掠めるだけに留まった。

思い当たる節があってか言おうとしたが、アクアに遮られた。

アクア「生憎だが、話す気は無い」

意表を突く形で水纏う脚が噴射した。その勢いで天闇笠の顔面に蹴りを入れた。

天闇笠は敢えて受けたが、ビクともしなかった。

天闇笠「そして、父 バーニングは行方をくらませた…己の罪悪感に駆られてな」

ゆっくりと顔を動かし、瞳をアクアに向ける。

アクア「…何のつもりだ」

影に覆われた目元から水色の瞳が睨みつける。声には怒気が籠っており、天闇笠に対する嫌悪感が強かった。

天闇笠「事実を述べているだけだ、どんな大義名分を語ろうとも正義組織はまやかしでしかない…」

アクアの問いに口を開き、そう答える。正義組織に対する呆れと静かな怒りが込められており、くだらないと一蹴した。

直後、常闇眼を振るって脚を切断しようとする。

アクア「黙れ…!!」

だが、顔面に入れた脚から再び水が噴射し、勢いよく天闇笠を地面に叩きつけた。

すぐさま距離を取った。立ち上がる天闇笠を見据えている。

アクア「少なくとも、貴様を野放しにして良い訳が無い!!」

頑固な性格故か、天闇笠の言葉を拒んだ。

天闇笠「論点をズラしたか…やはり、この世界には……」

アクアの言葉に呆れながら歩を進めて接近する。そのまま常闇眼を振り上げた。

胴体に入った。だが、刃はすり抜けてしまった。アクアの身体が水と化したのだ。

天闇笠「なんだと…」

アクア「ハァッ!!」

まさかの事態に呆然とする天闇笠、長い刃がアクアの身体から離れると彼は右手に纏う水の刃を振るった。

それは見事に天闇笠の胴体を斬り付けた。

天闇笠「チィッ…!!」

このままではマズいと後退してアクアから距離を取った。

アクア「逃がさん!」

もう片方の腕を伸ばし、掌を天闇笠に翳す。そこから泡沫が現れ、勢いよく放たれる。

それは顔面に直撃し、衝撃で脱げた笠帽子が宙に舞うも、雨に打たれて地面に落ちた。

激闘が一度止まってか、雨の音がただ辺りに聞こえてきた。

アクア「…なら、敢えて言わせてもらう」

天闇笠の言動に腹立ってか、睨みつけながら口を開く。泡沫を放った手を強く握り締めた。

アクア「赤の他人が俺の親を語るな!!!」

怒髪衝天を衝く勢いで声を張り上げた。これまで落ち着いていた硬い表情は鬼の形相へと変貌を遂げていた。

天闇笠「親を語るな、か……」

彼の言葉を耳にしながらゆっくりと自身の顔に当てる。降りしきる雨の音を耳にしながら深く呼吸をする。

アクアは沈黙を浮かべながら、ただ天闇笠を睨んでいた。何も知らずに平然と土足で踏み躙った憎悪と怒りが瞳に宿っていた。

天闇笠「…雨よ、私の為に哭いてくれるのか」

常闇眼を持つ手に力が入る。顔に触れていた手が雨雲へと伸ばす。

天闇笠「母の代わりに、寄り添ってくれるか……」

伸ばした手を握り締めた。濁った瞳は悲しそうな目付きをしていた。

アクア「何を言っている」

詩人のような戯言を一蹴する。何を言っているのかが一切わからなかった。

天闇笠が常闇眼を構えた。刃先はアクアに向けられていた。

天闇笠「アクア…貴様も、私と同じ被害者だ。理不尽という厄災に巻き込まれた哀れな子らだ」

長い白銀の刀身にアクアが映る。余程、彼の言葉が響いたのか様子が一変していた。

アクア (何を、言っている)

呆れていた。恐らく仲間に誘うつもりだろうが、ここまで煽ってなる気は毛頭無かった。だが、警戒は解かず、身構えていた。

天闇笠「私と共に世界を滅ぼそう…理不尽な地獄に変化を……」

アクアの読みは当たっていた。当然ながら答えは決まっていた。

アクア「無理だな、俺には…」

否定した後、路地裏の方へと顔を向けた。

そこから出てきたのはフレアであり、ずぶ濡れながらも異常なまでの高熱を発していた。

アクア「大切な人がいる。護るべきものがある。」

拒んだ理由を述べた。

アクアの言葉を耳にしながら天闇笠の目がフレアへと向けられた。

天闇笠(雨か低気圧…しかし、異常だ)

冷静に分析しながらフレアを忌み嫌っていた。同時にアクアに対する警戒も怠らなかった。

フレア「随分と恐れてんだな、テメェ…」

猫背のまま両腕をぶら下げながら天闇笠を見据えていた。その姿はまさに獰猛な獣、殺しにかかる気満々であった。

天闇笠「…だとしたら、なんだ?」

フレアの問いかけに対して質問で返す。すると、当の本人が鼻で笑い、拳を強く握り締めた。

フレア「訊いただけだ…んじゃ、叩きのめす!!」

次の瞬間、大地を蹴り上げて天闇笠に接近した。間合いに入ると同時に握り締めた拳が振るわれた。

高熱を帯びたそれは顔面にめり込み、勢いよく吹き飛ばした。

その箇所…頬は火傷しており、片手で抑えていた。少しふらつきながらも後ろへと下がりながらフレアとアクアを睨んだ。

天闇笠「この小僧ッ…!!」

常闇眼を握り締めながらフレアに接近する。だが、拳を象った水の玉が天闇笠に迫り、直撃した。

アクア「させるか!」

両手を拳銃の形にして、水の弾丸を連射しまくる。

天闇笠は雨を勢いよく降らしながら常闇眼で全てを打ち消した。

その隙にフレアが背後に回り、瞬時に回し蹴りを繰り出した。

アクアの攻撃を防ぐので手一杯で、意識の外だった。急いで常闇眼で防ぐが、棟だった事で斬れる事は無く、刀身が砕け散った。

続けて連射する水の弾丸が全身に撃ち込まれた。

フレア「これで終わりだァッ!」

攻撃で怯んだところを高熱を帯びた拳を天闇笠の下顎に目掛けて突き上げた。

為す術は無く、巨体は天高く吹き飛ばされ、激しく地面に叩きつけられた。あまりの重さでアスファルトにはクレーターが発生した。

天闇笠「僕…なら、良いんだ…母…さん…の……大きな…蛇の、眼…に………」

雨降る曇天に手を伸ばしながら童謡を歌う。だが、歌い切る前に力尽きた事で腕は地面へと落ちていった。

天闇笠を倒した影響か空が晴れ、夕日が街並みを照らしていた。雨で濡れていたアクアとフレアは呼吸を整えながら見つめていた。


少しして天闇笠は数人のCSF隊員により連行され、護送車へと乗せられた。このままいけば死刑として処されるであろう。

そんな様子を二人は見届けていた。

フレア「これで、敵は討てたか…」

身体が重く感じ、疲れてかその場で座り込んだ。

アクア「御苦労だ、大丈夫か?」

雨で濡れている事に気付いてか風邪をひかないか心配した。アクア自身は水の能力者である限りは問題無かった。

フレア「問題ねぇよ…まだ、動ける……」

少し具合悪そうにしながらも無理して立ち上がる。

フレア「母さん、寄り添ってやらねぇと…覚えてねぇからな…」

言葉には含みがあった。フレアには果たさなければならない約束…確固たる意志があった。

アクア「そうか…」

それは彼も例外ではなかった。フレアの気持ちに同情し、クロノスの街を護らなければと再度気を引き締めた。

瞬間、大きな爆音が鳴り響いた。

アクア「なんだ!?」

突然の事態に目を見開く。フレアも同じであった。

再び護送車を見ると、酷く破壊されており、爆炎と煙が昇っていた。

「なんだかんだと聞かれたら答えなきゃなァ…」

燃え盛る護送車の横を通り過ぎるようにして一人の男が二人の前に姿を現した。

異様な雰囲気に異常なまでの殺気を目の当たりにしてかアクアとフレアは警戒心を高めた。

ラグナ「俺はラグナ!テメェら戦士を始末しに来たってところだ!」

自己紹介をした直後、二人に手を伸ばしてフィンガースナップをした。すると、フレア達の前に赤いエネルギー弾が現れた。

アクア「なっ…!マズい…!!」

急いで後退する。

赤い光が閃き、圧縮した。次の瞬間、エネルギー弾は爆発した。

二人は爆風で吹き飛び、アスファルトの地面に叩きつけられる。致命傷は避けたものの、微かな火傷を負い、黒い墨が塗られただけで済んだ。

アクア「だ、大丈夫か?フレア…」

フレア「あぁ…問題ねぇよ……」

フレアに安否確認するアクア。当の本人はすぐに応答した。

ラグナ「おいおい、人の心配している場合かよ!!」

二人に手を伸ばし、翳した掌から赤いエネルギー弾が現れた。直後、それは撃たれて、目にも止まらぬ早さで空間を駆け抜けた。

間合いに入った。動こうにも動けず、もうダメだと思った。その時だった。

剣「ハァッ!!」

エネルギー弾が縦二つに両断された。それはフレアにもアクアにも当たらず、地面に直撃して見事に爆ぜた。

ラグナ「ほぅ…?お前が来るとは驚いたな…」

仮面越しにエネルギー弾を斬った者の姿を目にした。流石と賞賛し、これから彼を殺せる事に嬉々としていた。

フレア「き、来たのか…」

アクア「た、助かった…」

アクアとフレアの前にいたのは、その者の正体は邪光 剣であった。

剣「後は任せろ」

目前のラグナを見据えながら太刀を静かに構えていた。研ぎ澄ます刃の切先は向けられ、断ち斬ると言わんばかりに意志を顕にしていた。

次回 第漆話 「爆撃斬り裂く刃」

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