第肆拾玖話 「死因の真実」
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
メビウス「暗黒世界…!?やられたの…!?」
握り締める拳に力が入る。緑の目は決してサタンから逸らさなかった。
サタン「待て…」
敵意と警戒を抱くメビウスを前にしてか、ため息をつく。すると、片手で待てと合図を出した。
サタン「俺はお前の思う暗黒世界じゃねぇ」
何か知っている…直感で読み取ったメビウスが拳を下ろす。
『真の親玉がサタンで、剣達戦士は敗北した』という解釈を改めるが、未だ話が掴めないままだ。
サタン「俺達が本物なら、テメェらが戦ってたのは擬い物って訳だ…」
要点をまとめながら言葉を紡いでいく。
サタン「その激闘の果てにお前は死んだ…と、思い込んでいる」
本題へ移る。
メビウス「どういう…事?」
自分にとって知らない事実を聞いて、訝しむ。
サタン「お前としては死んでねぇが、人としては死んでいる…難しいな、これ」
説明するが、あまりの難しさに嫌気がさす。ため息をつきながら玉座から起き上がった直後、既にメビウスの前に立っていた。
メビウス「なっ…!?」
動けなかった、動ける隙すら無かった。あまりの速さに驚愕する。
サタン「実際に見た方がわかるだろ」
そう確信してか、もう片方の手が持つ金砕棒が突き出されて、メビウスの胴体を貫く。しかし、肉を破る音どころか血の一滴すら出ていない。
俯いた時、衝撃のあまり目を見開いた。
メビウス「なっ…!?」
青い電子…飛び散る粒子が昇る。
メビウス「これは…!?」
人から出ないものが出ている…そんな事実に戸惑う。理解を拒む。
サタン「気付け、お前が何者かを…」
金砕棒から闇が溢れ出し、メビウスへと流れ込む。
それは本来の暗黒世界が司る力であり、失われていた記憶を呼び起こした。
悍ましい感覚に呑まれていく…
目が覚めた時、メビウスは車の後部座席に座っていた。悪夢のようだった、魘されていたのか呼吸が荒い。だが、それは正面を向いた事で自然と落ち着く。
目の前にはムゲンが運転しており、その隣には母親が座っている。
メビウス「父さんと…母さん…?」
何故、そこにいるのか?理解できなかった。
不意に隣へと顔を向けると、赤子だった頃の自分がいた。
車の走行音が静かながら聞こえ、窓に映る景色は流れていく。
その時、唐突にクラクションが鳴る。驚いたメビウスが正面を向き、目にしたのはトラックでこちらに突っ込んできていた。
メビウス「なっ!?」
瞼を閉じる間もなく、何も出来ずにトラックと衝突した。
瞬間、メビウスの目の前が白に包まれる…だが、すぐに晴れる。
気が付けば、車道の上で立ち尽くしていた。
メビウス「あれ?生きて…?」
唐突で非現実的な現象を間に戸惑う。
アラームかホーンが木霊する中、事故現場に目を遣る。乗用車のフロントはひしゃげており、両親は瀕死だ…赤子も例外では無い。
メビウス「父さ…!」
助けようと前に踏み出した…その時だった。
「父さん!!」
懐かしい声を聞いて、すぐさま振り向く。
そこには声の主であるエメラが全速力でこちらに向かってきていた。また、彼の後ろにはミノカがついてきている。
メビウス「兄さん?姉さん?」
声をかけようとするが、二人が横を通り過ぎた。
戸惑いながらも正面を向く。エメラとミノカは壊れた車の助手席で止まり、必死そうに声をかけている。だが、なんと言っているのかは聞こえない。
すると、エメラが後部座席のドアを開けて、赤子を助け出す。抱えたまま急いだ様子で走り出した。
メビウス「は?」
彼の行動に何一つ理解できない。ムゲンとカスミを置いていった事に…
ミノカ「お兄ちゃん!?」
驚くは彼女も同じだ。エメラの背中を見届けながら彼の後を追う。
再び、メビウスの横を通り過ぎる。
メビウス「なんで…!!」
両親を放っておけず、車の元へと駆け寄った。
助手席で立ち止まり、膝をつく。
メビウス「父さん!母さん!」
窓から両親を呼ぶが、二人の耳に届く事は無い。ドアを開けようとするも、すり抜けてしまう。
カスミが息を引き取った。それに気付いたメビウスが悔しさを噛み締めて、焦る。
そんな中、ムゲンが呟いた。
ムゲン「悪い事、したな…」
彼の言葉をメビウスは聞き、顔を向ける。
ムゲン「最低な父親だよ、本当……」
申し訳ない気持ちでいっぱいだった。だが、後悔は無い…紡ごうと声を絞り出す。
ムゲン「後は…頼んだ、ぞ……」
彼も息を引き取り、掴んでいたハンドルから手を離す。
両親を助けれなかった…その後悔が怒りと悔しさに変わり、拳を強く握り締めた。
メビウス「…ごめんなさい」
不甲斐なく謝った後、ゆっくりと立ち上がる。エメラを追いかけようとこの場所から走り出した。
能力のおかげか、遠くにいるはずの二人との距離が確かに縮まっていく。肉眼でも捉えれる程に
そうして、辿り着いたのはクロノスの街外れにある病院…無人なのか静寂に包まれていた。
メビウス「なんでだろう?初めて見た感じがしない…」
見知らぬ病院に眉を顰め、扉の前に立つ。エメラとミノカがこの中に入っていたのは目にしており、ドアノブに手を伸ばす。
だが、すり抜けた。疑念を抱くが、すぐさま確信へと変わる。そのまま突き進むと、メビウスは扉をすり抜けるようにして院内に入った。
メビウス「すり抜けれるのか…」
驚きが隠せないが、今は二人の後を追う。
しばらく廊下に沿って進んでいると、話し声が聞こえてきた。
「…何やってるんだ、俺は……」
エメラのものだ…自責の念に駆られているようだ。
ミノカ「自分を責めないで、お兄ちゃん…」
続けてミノカの声が聞こえた。エメラを慰めていた。
近付く度に欠けた記憶が蘇ってくる…
「そうだ、全て仕方が無い事だ…」
二人のとは違う年老いた男の声…知らないはずなのに、何処か聞いた覚えがある。
迷わずメビウスは彼らがいる診察室に足を踏み入れた。
重苦しい空気の中、三人とも深刻そうな様子だ。
エメラ「仕方が無いって…!助け出せれたはずなのに…!!」
丸椅子に腰掛けたままズボンを強く握り締める。この中で一番落ち込んでいたエメラが声を絞り出す。
ミノカは俯いたまま、何も言えずにいた。どう声をかければいいのかがわからないでいる。
「エメラ…」
白衣の老爺が頭を悩ませた。
そんな彼らを見据えていたメビウスがふと閉じられたカーテンに顔を向ける。そこに何かある気がしたからだ。
そんな直感でカーテンに近付き、すり抜けた。目に映るは机の上に置かれた大きなカプセルで、青い光が微かに照らす。
メビウス「は…?」
信じられなかった…カプセルの中にあるものを目にしてか、大きく見開いた。
中にあったもの、それは赤子のメビウスだ。青い電子がまとわりついており、傷口を塞いでいく…直しているのだと理解する。
メビウス「なんだよ、これ…」
未だに心が拒み、思わず後退る。驚きを通り越して唖然としていた。
エメラ「なんで…!んな事っ、言ったんだよ……!」
悲痛な訴えが室内に響く、それがメビウスを振り向かせた。
メビウス (兄さんの意志じゃない…?)
苛まれたエメラの様子を見て、違和感を覚える。否、彼の意志でやったものじゃない事を理解したのだ。
白衣の老爺「それがムゲンの意志だ、誰も彼には逆らえんよ…」
彼の問いに答えるように口を開く。どうやらムゲンと認識がある言い振り、そう感じてかメビウスは老爺の話を聞いた。
エメラ「意志って…!間違っているでしょ…!?なんで俺達に、こんな…!」
納得がいかない様子だ。子を思う親の気持ちを理解するにせよ、異常だと唱える。
当然ながらエメラの言葉にミノカと老爺は同情した。理解もできる。
まだ話の全貌が掴めないメビウスだが、彼の苦しみは確かに感じ取れた。
だが…いや、だからこそ、白衣の老爺は敢えて言った。
白衣の老爺「エメラ…完全な正義などありはしない。だが、自らの意志で正義を決める事はできる。」
椅子から起き上がると、カプセルに近付いた。ガラス越しに赤子のメビウスに触れる。
白衣の老爺「今こうして、メビウスを…電子生命体として生き延びさせているのも…ムゲンの意志だからな」
エメラとミノカを気の毒に思う。辛く、やるせないが、ムゲンの意志を尊重するしかない。亡き者が残した最期の想いを無下にできないのだから
これが、メビウスの欠けた記憶だった…
ふと、メビウスが我に返る。まだ暗黒世界にいた事を認識する。
腸を貫いた金砕棒は無い。正面を向くと、サタンが石の玉座に腰掛けていた。
サタン「思い出したか?」
メビウスの機嫌を訊ねる。長く待ち侘びていたのだろう、退屈そうだ。
メビウス「うん、全部ね…」
自分が人間では無い事実を受け止めるしかなかった。嘘など無いのだから
サタン「テメェらに勝ち目は無い…そう、言わしめるまでにユダの計画に抜け目は無かった。あの野郎がいなくなった事で、明白世界の権限はヤツが握ってしまったからな」
ここまでの事を気の毒と思う。
サタン「とはいえ、正義の名のもとに数多の命を奪い尽くした事、結果として明白世界・暗黒世界に多大なる迷惑をかけた事に変わりはない。更に人の道から外れているのも事実だ…」
だが、それはそうと言わんばかりにメビウスの罪状を述べていく。
サタンは暗黒世界…つまりは地獄の閻魔として判決を下さなければならないのだ。
サタン「ヒカリノ メビウス、貴様を無限の闇に沈める。」
金砕棒で地面を突いた直後、黒い地面から数多の骸が現れた。
サタン「許せ、小僧…課せられた運命だ」
奴らがメビウスにしがみつき、地中へと引きずり下ろそうとする。そんな彼を前にして謝罪を告げる。
だが、仕方が無いとも思っていた。
サタン「後の事は俺に任せろ…」
だから、代わって自分が終わらせる…と決断を抱く。
メビウス「まだ…」
力を込めて、一体の骸を振り払う。
自分が人では無いとしても、まだ挫けていない。そんなメビウスを前にサタンが目を遣る。
他の骸も払い除けようと拳を振い、蹴りを繰り出す。確かに攻撃を受けるが、骸はしつこくメビウスに迫る。
メビウス「まだここで…!立ち止まる訳にはいかない…!」
だが、メビウスは一体一体…確実にぶちのめす。
サタン「何の為にだ?死んだテメェが何を成せる?赤子の頃だろうが、命を賭した頃だろうが、戦士としての責任も!人としての矜恃も!何もねぇだろうが!!」
抗うメビウスに訊ねる。声を張り上げる様はまるで閻魔のよう…他の何よりも恐ろしかった。
サタン「まして言えば、完全な正義なんぞねぇ…」
メビウス「ねぇからこそだ!!」
サタンの言葉をメビウスが遮るように言い返す。
彼の意気込みを聞こうとサタンは骸を制止させ、静かに話を聞く。
メビウス「だからこそ!自分の意志で、決めていかなきゃならないんだ…!!」
拳を握り締めて、緑の目がサタンを見据える。
振り向いたメビウスが空を見上げた。上に行く度に黒は白となり、僅かに亀裂が暗黒世界へと伸びていく。
メビウス「偽物の神を、ぶっ倒さなきゃ…!!」
時空ノ華の影響がここまで来ている…恐らくブラットが食い止めているのだと読み取れる。
急いで駆けつけなければと焦るも、思考を張り巡らせていた。
その読みは当たっており、ブラットは血で創った二丁拳銃を時空ノ華へと向けながら連射していた。
ユダ「ヘモグロビン風情が!ちょこまかと逃げ惑うんじゃない!!」
植物の根で薙ぎ払って、血塊の弾丸を打ち消す。同時に突風を起こした。
ブラッド「ぐっ…!マズイな…!」
地面を蹴り上げて、飛び移る。
迫る突風が先程までいた足場を粉々に破壊した。
浮かぶ数多の瓦礫、その一つを足場として着地する。
ブラット (一人で為せるものじゃない…!)
空間の至る所にある裂け目には数多の歴史・各世界の情景が映されていた。
ブラット (あれがヤツが言っていた、種の力か…)
穴の中に目を遣る。見知らぬ事象だが、警戒すべきなのは確かだ。
ユダ「時空の狭間へと追い払ってくれる!!」
再び植物の根が突き出される。だが、ブラットは間髪入れずに跳んで躱した。
先程までいた瓦礫が砕け、飛び散る残骸は穴の中へと吸い込まれていく。
ブラット (鬼畜過ぎるな…!)
両手の拳銃を融合させて、血塊の大砲へと大きく変化した。その照準をユダに合わせる。
時空ノ華の攻撃は全て致命傷になり得る…短期戦で決着をつけなければならないと判断した。
引き金を引いた刹那、砲口からミサイルが発射する。火が吹くようにして血飛沫が爆ぜながら急加速で時空ノ華に近付く。
ユダ「無意味な事を!!」
伸びる根の先端が空間を突いて、亀裂広がる穴を創り出す。
ブラット (穴の向こうへと飛ばす気か…)
先を読んでミサイルが軌道を変えた。穴を避けて、頭上から時空ノ華を襲う。
ユダ「そんな小さなモノで私を殺せるか…!!」
花弁の先から出た白いエネルギー玉から光線が放たれ、ミサイルを消し去ろうと一直線に迫る。
ブラット (そんなつもりは無い!!)
瓦礫に飛び移りながらユダに近付く。手にする大砲は捻れて、大鎌へと形を変えた。
光線がミサイルを貫く前に爆発し、血の雨が降る。
ユダ「何っ!?」
それらが時空ノ華を濡らす。
ユダ「おのれ!見えん!!思うように動けん…!!」
視界を塞がれた。乗る水滴が重く、動きが鈍くなる。
構えた大鎌を強く握り締め、弧状の刃が巨大化…それは時空ノ華を斬り裂くには充分だ。
飛び移る瓦礫の一つを蹴り上げ、高く跳ぶ。
ブラット (死ね…!!)
ユダが怯んでいる隙に大鎌を振るう。確実に届く、仕留めると確信を抱く。
その時、ブラットの肩に鋭利なものが突き刺さった。
ブラット「ぐっ…!!」
全身に走る衝撃と苦痛で顔が歪む。刃も已の所で止まる。
ブラット (痛いっ…!なんだ…!?)
横に目を遣る。突き刺さっていたのは矢だ。
このままではマズいと思ったブラットが後ろへ跳んで、時空ノ華から距離を取る。
すると、四方八方から白い光弾が挟み込むように挟み込んで、衝突した事で爆発を起こした。
ブラット (何処から…!?)
想定外の事態に戸惑うも、辺りを見渡す。
「あれ?何処行った?」
不意に空から声が聞こえた。上を向いた先には穴が浮かんでいる。
ブラット「まさか、繋げたのか…!?」
理解した途端、思わず目を見開く。
どの時代で、何処の世界だろうと繋げてしまう…時空ノ華の真髄に戦慄する。想像を絶する力がある事を
ユダ「如何にも…!!」
そんなブラットを他所に根の先端が空間を突いて、別の穴を幾つも開けた。直後、銃声が鳴り響く。
ブラット「くっ…!!」
大鎌を盾に変えて、自分の身を護る。飛んでくる鉛玉は全て弾かれていく。
ブラット「全ての時空を一つにする気か…!?そうして、世界をも…!!」
ユダが果たす野望も見抜いた。時空ノ華を使って、数多の世界と時空を繋げる。そうして混沌を引き起こさせる気だ。
ユダ「それが私の使命…!!」
周囲に向けて勢いよく根が伸びる。一定の距離までいくと、また空間が割れた。
ユダ「へイラ様の望みなのだ!!」
全ての根を一回転して穴を広げると、それらを振り上げる。更に裂け目が大きくなっていく。
空間が硝子のように砕け、奈落の底へと落ちていった。
ブラット「なっ…!?」
目の前の事象に唖然とする。
穴…その向こうに映るものを目にした瞬時、嫌な予感が過ぎった。
それは見事に的中する…巨大な空間の裂け目から数多の万物が降ってきたのだ。
有機物・無機物問わずして、それぞれの時代・世界から飛来したものが容赦無く明白世界内に降り注ぐ。
ブラット「クソッ…!!」
地面を蹴り上げて高く跳んで、ここから離れた。最適な選択だ、足場にしていた瓦礫はビルに巻き込まれながら落下していく。
降り注ぐ万物の一つ、ビルの壁面に着地する。面を上げると、電波塔や電車、木製の家…そして、人々が降下する様を目にした。
ブラット (俺一人で…!!)
やるしかない…そう決断して、ビルの壁面を駆け抜けた。
ブラットの周りを先述した数多の万物が通り過ぎ、正面から無人の自動車や瓦礫などが無慈悲に襲う。
ブラット「このっ…!!」(どうしろと言うんだ…!!)
大鎌を握り締めて、刃が分裂する。
ブラット「切り裂け…!!」
勢いよく振り上げた。数多の刃は旋回して飛んでいく。
斬撃は見事に障害物を両断し、ブラットに当たらずして通過した。だが、まだ終わらない。
続けて来るのは電車だ。
ブラット「また来るか…!」
血の大鎌が甲冑として変形し、両手足に纏う。
ブラットは電車の中に大勢の乗客がいた事を視認していた。戦士として見殺しにはできない。
乗客A「な、なんだここは!?」
乗客B「お、お父さん…!」
老若男女問わずして戸惑い、怯えている。
ブラット「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
両手を前に突き出して、電車を食い止める。だが、かなりの重量…一人では為せない。
電車から悲鳴が聞こえ、死にたくない想いが確かに伝わってくる。
ブラット「命の限りを、尽くす…!!」
それが届いてか、手足の甲冑から血が噴射した。まるでスラスターのように噴く…それは電車をも押し上げていく。
なんとかしてビルの頂上へと辿り着くと、ブラットは周囲を飛び回る。
突き出した掌から血の糸を放ち、浮かぶ瓦礫などにも巻き付けながら張り巡らせていく。そうする事でビルの落下を阻止したのだ。
ブラットがビルに着地すると、手足に纏う血が溶け出した。
ブラット「なんとか、なったか…」
一先ず、乗客の方は解決したので安堵する。
次の瞬間、上空から矢の雨が降り注いできた。
だが、ブラットは素早くバク転しながら躱す。矢は全て地面に突き刺さる。
ユダ「油断も隙もないな、クロノスの戦士!」
ブラットが正面を向くと、聳える時空ノ華を目にした。根は蠢き、周囲には白い光弾が煌めく。
ブラット「安心しろ、そんなものはやらん…」
メビウスを心配するが、切り替えて、ユダに集中した。
刻一刻を争う現状、対処すべきは時空ノ華を滅する事だから
そんな状況すら知らずに、メビウスは未だ見上げている。どうやってユダの元へと向かうか思考を張り巡らせていた。
「それがお前の意志か」
その時、メビウスの懐が黄色く光り出す。
メビウス「これは?」
突然の声と、あまりの眩しさに気付く。
無論、サタンはそれを目にする。
サタン「いたのか、あの中に…」
光の正体…全てを瞬時に理解した。
「なんとも一途…!そう真っ直ぐな意志、実に気に入った…!」
メビウスに感心を抱いているのが声色でわかる。
メビウス「アンタは?」
見知らぬ存在に名を訊ねる。
「時空竜…!人々に呼ばれた、オレの字名だ!」
答えた刹那、光はメビウスを包んだ。
次回 第伍拾話 「∞、時空を超えて」




