第肆拾漆話 「ドラキュラの戦士」
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
「俺はブラッド、お前を止めに来た」
その言葉にメビウスは静かに目を見開く。
メビウス「止めるって?…おいおい、死んだままでいろって事?」
冗談じゃないと返して、青く光る拳を握り締める。それらを前に持っていき、確かに構えた。
ブラット「そうなるな…」
応じる気は無いと判断したのか溜息をつく。両掌に血が渦巻き、それを掴んだ刹那、二丁の拳銃へと形を成した。
メビウス「どういう意図で?意志?それとも使命?」
耐え難いと思いながらも敢えて訊ねる。
ブラット「後者だ…」
返ってきたが、これ以上述べる事は無かった。
メビウス「ちなみにだけど、拒否ったら?」
ブラットを見て只者では無いと見抜くと、メビウスはゆっくりと横へ歩き出すように周り出す。決して彼から目を逸らさない。
ブラットも間合いを取って、周る。
ブラット「実力行使だ、無理にでも止める」
両手の拳銃を構え、筒先を向けた。
声色などから本気であると伺うメビウスを映すように赤い瞳が先を見据えていた。
張り詰める空気…その中で二人の足音は止み、互いに睨み合う。静寂が広まり、誰も微動だにしない。
メビウスの両足が青く光り出した刹那、前へと踏み出した…かと思いきや、姿が消えた。
一方のブラットは正面を見据えたまま、右手を横に伸ばす。引き金を引くと、弾丸を象る血塊が目にも止まらぬ速さで飛翔し、何も無いところで何かを仕留めた。
メビウス「あだっ!?」
それは駆け抜ける青い足だ。
だが、血は出ていない。よく見ると当てた箇所に弾痕はないが、軽い痛みが走る。
メビウス (何が…!?)
正確な射撃により体勢を崩す中、状況を把握しようと思考を張り巡らせていく。
すぐに立て直そうと床に手をつけて、起き上がろうとするが、メビウスの喉元に赤い刃が突きつけられた。
ブラッド「大人しくしろ、命が欲しくばな…」
見下しながら冷徹に告げる。影が覆う目元から赤い瞳が覗き、そこには確かな殺意が込められていた。
メビウス「おっかしいなぁ…光速なんだけど、どうやって捉えたのさ?」
信じられないと苦笑いを浮かべる。だが、まだ諦めていない。
ブラット「能力は強さでなく、使い方次第で全て決まる…戦士であるお前なら、わかるだろ?」
正論が返ってきた。その表情は何処か気怠げで、冷たい。
メビウス「あぁ、そうだな…!!」
反論の余地すら無いが、挫けてなどいなかった。
ブラットの背後から顕現したソニック・スターが息を潜めて、近付いてくる。赤い瞳は未だメビウスを捉えたまま
ブラット「背後か…!」
刃を突きつけたまま振り返って、ソニック・スターに手を翳す。
次の刹那、掌から血が弾け飛ぶ。衝撃波のように繰り出された攻撃をその身に受けたソニック・スターが勢いよく吹き飛んでしまう。
だが、その隙にメビウスはブラットから距離を取り、体勢を立て直す。
メビウス「助かったよ!」
緑の瞳が睨みつけている。かなりの実力を誇るブラットを前にして油断などできない…戦いの中でわからされた。
ブラット「…頼むからわかれ、こんな事しても無駄だ」
血塊の太刀を突き出して、静かに睨みつける。溜息混じりに出た言葉はメビウスを訴えていた。
メビウス「こっちも、やらなきゃならない事があるんだよね」
ブラットの言葉に応じる気はない。それは自分の意志であり、拳を握り締めているのが何よりの証拠だ。
ブラット「面倒事を…」
メビウスの意志を聞いて、溜息をつく。
一歩前に出た次の刹那、ブラットが接近してきた。
血の刃がメビウスの頸に目掛けて振るうが、届かない。ビヨンドソニックとなって、神速で後ろに跳んだからだ。
避けられ、距離も取られたブラットは血の太刀を円盤型の手裏剣へと変形させて、投げ飛ばす。
メビウス「速いな…!」
着地したと同時に間合いに入った事を視認した直後、真横に向かって駆け出すした。見事、旋回する血の刃を躱した。
その隙にブラットがメビウスとの間合いを詰めて、再び落雷の如く刃を振り下ろす。
メビウス「手馴れすぎでしょ!アンタ!」
瞬時に動き、斬撃の軌道から外れた。次々と繰り出される剣戟をも全て躱していく。
ブラット「当然だ」
次に振るう刃…だが、それは形状を変えて鞭として伸びてくる。無論、メビウスは身体を逸らして躱す。
だが、遠くへと伸びていく鞭が手裏剣と結合し、こちらへと引っ張られる。
後ろから迫る脅威にメビウスは察知し、已の所で姿を消す。否、目にも止まらぬ速さで駆け抜けて、回避したのだ。
ブラッド「消えた…」
静かに呟く。だが、動揺する様子は無く、正面を見据えたまま戻ってくる手裏剣を手にした。
ブラッド「…なんてな」
手裏剣と鞭が合わさって、拳銃へと変える。
振り向きながら真っ直ぐに照準を合わせた刹那、予見していたと言わんばかりにメビウスが再び姿を現す。
メビウス「ちょっ…!?マジ…!?」
想定外の事態に目を見開いた。刹那、銃声が鳴る。
メビウス「なーんてな…!」
だが、メビウスは更に加速させて弾丸を躱す。そのままブラットの懐に入る。
拳銃はナイフとなり、振り下ろす。だが、刃が届くより先に黒い拳が素早くブラットの鳩尾に入った。
メビウス (ん?なんだ?)
水風船を殴ったような感触に違和感を覚える。
メビウス (中に、何が…?)
確実に仕留めれなかった。
手に握る血の刃がメビウスの背中へと振り下ろされる。しかし、神速で後ろへと下がった事で刃が空を切った。
体勢を立て直して、ブラットを睨みつける。
メビウス「…ねぇ?アンタの中に何があんの?」
緑の目が凝らす。黒い拳を握り締め、青い稲妻が迸る。
ブラット「教えるヤツがいると思うか?」
ナイフを回して、逆手に持つ。
メビウス「…それもそうだな」
無表情で冷たく答えた事と交えたる中で得たブラットの人物像から察する。
仕方が無いと、諦めようとしたが、ブラットが言葉を紡ぐ。
ブラット「…いい加減、諦めたらどうだ?」
さりげなくコートを開いて、内側を見せる。ふいにメビウスの目がそちらに向く。
メビウス「え?」
大きく見開いた目に映るは大量に並んでいる輸血パックだ。
見せる気が無かったのに、見せてきた…そんな矛盾に違和感を覚えるが、同時に何かあると読み取った。
ブラット「お前のスピードは既に読める、動きが単調だからな」
血液がコートの中で文字を形成する。まるで誰かに見せないようにして
メビウスが目にするは『あの機械を通して見られている、怪しまれないよう話を合わせろ』という内容で、殺す気は無い事を確信した。
メビウス「そうだね…」
ビヨンドソニックを解いて、元の姿に戻る。
思えば、ブラットはいつでも仕留めれたはずなのに一度もしなかった…それも理由として話を合わせる事にした。ブラットの目的と、この試練の裏に隠された目論見を知る為…
静寂がしばらく続く。ふと、メビウスの目がウェルギリウスに遣った。
『機械』を示しているのだと察し、再びブラットへと視線を戻す。
メビウス「…なぁ、アンタも試練受けに来たんだろ?」
それを裂くようにして、ある提案を持ちかけた。
メビウスの言葉を聞いたブラットが彼に意識を向ける。
メビウス「だったらさ、手組まない?」
協力…微笑みを浮かべるが、その眼差しは真剣だ。
ブラッド「なんだと…?」
意外な発言に驚くが、悟られないよう話を続ける。
メビウス「ここで退いたら、地獄に行っちゃうからさ」
拳を下ろして、理由を述べた。試練に関する注意事項なら話しても問題無いと考えた上でだ。
ブラット「…わかった」
ゼウスの能力がわからない以上、無闇に動けないと察してかメビウスの協力に応じた。
そんな彼らの様子をゼウスは椅子に腰掛けながら見ている。
ゼウス「手を組んだようですね」
机の上に置かれたティーカップを手に取り、注がれた液体を飲む。目前にはホログラムで構築した映像が浮かび、流れる。
ゼウス (まぁ、いずれにせよ願いの書は手に入る…何一つとて、嘘はついていませんからね)
微かに飲んで口から離すと、ソーサーの上に置いた。
すると、前方から足音が木霊した。
ゼウス「…おや、これはこれは」
まだ目にしていないものの、誰なのかを察知する。否、彼にとってはわかって当然のものであった。
迅速に席から起き上がり、机の前に立つと、その場で跪く。
足音の正体は白く長い髪を持つ少女であり、ゼウスと瓜二つだった。しかし、スカートにガーターベルト、シスターの修道服のような白装束と彼より背が低い事が異なっている。
「計画は順調かしら?ゼウス」
落ち着いた雰囲気に神聖なオーラを放っていた。只者では無いのは明らかだ。
ゼウス「勿論です、ヘイラ様…」
少女 ヘイラに対する忠誠心はかなりのもので、一目見ればわかるだろう。
ヘイラ「そう」
報告を聞いて、事の内容を把握する。それ以上の言及は無かった。
黄色い輪郭を持つ瞳がゼウスを見下ろす。無表情も相まって恐怖すら感じる。
そのまま口を開き、言葉を紡ぐ。
ヘイラ「引き続き監視を頼むわ。この計画に失敗は許されない、もしそうなったら…」
指示と忠告を抑揚のない声で淡々と告げた。
ゼウス「問題ありません、私にお任せを…」
自分の身しか案じていない発言に応じる。そこに嫌という感情は無い。
ゼウス「私を想って下さる事、有り難き幸せ…」
ヘイラの下ろす手を取り、手の甲を自身に向けた。まるで姫に忠誠を誓う騎士の如く
ゼウス「美しく・愛おしい貴方様の為ならこの身を捧げても構いません…!一生、貴方に尽くします…!」
恍惚とした表情を浮かべる。ヘイラが気遣っていると思い、愛おしいとすら感じていた。
そんなゼウスを前に、ヘイラは素っ気なく手を振り払う。微かに嫌悪感すら抱いている。
ゼウス「あぁ…!なんと素晴らしい…!!」
恋は盲目…今の彼を表すならそれが相応しい程にヘイラの事など何もわかっていない。
ヘイラ「そう…」
気味悪く思うゼウスに背を向けて、この場を去ろうと歩き出す。
ヘイラ「全ては、神皇様の為に…」
小声でヘリオスの名を呟く。
メビウスとブラットはウェルギリウスを先頭にして、一直線に続く白い道を突き進んでいた。
ブラット (手を組んだのはいいものの…)
隣にいるメビウスへと目を遣る。
ブラット (確かに俺達はゼウスを知らない。無闇に動くべきでは無いが、大丈夫なのだろうか?奴の思い通りになったら…)
無表情のまま、不安を抱く。
どうやってもゼウスに怪しまれ、且つ全て掌の上ならば、現状が最適なのは確か…だが、もっと良い方法は無いのかと思考を張り巡らせる。
ウェルギリウス「メビウス様、ブラット様、間もなく第参ノ試練に到着します」
それを遮るようにして告げる。二人が正面を向くと、第参ノ試練であろう門が聳え立っているのが見えた。
辿り着いたウェルギリウスとメビウス、ブラットが足を止める。
メビウス「んじゃ、次も俺が…」
前に出ようとしたが、ブラットの片手がメビウスの前に出て抑えた。それに気付いたので緑の目は見開きながら顔を向ける。
ブラット「俺が行く」
仏頂面を浮かべながら代わりに出る事をウェルギリウスに伝え、メビウスより前に出た。
メビウス「え?それってあり?」
戸惑いながらブラットに訴えるが、当の本人は気にもせずに門の前に立つ。
ブラット「問題無いだろう?ウェルギリウス」
横にいるウェルギリウスに訊ねる。
ウェルギリウス「はい、只今ゼウス様が承諾しましたので問題ありません」
返答が来た。あまりにも出来すぎている…と、ブラットは疑念を抱く。
だが、丁度いいとも考える。メビウスの前で自身の実力を見せれる…結果次第ではゼウスに対抗できるかどうか、今後の行動が左右されるからだ。
直後、門が開く。金属の重い音・絡繰が起動する音…全てが白い空間に木霊する。
その先にいるのは深緑色の立方体で、上下に揺れながら浮遊していた。未だ、無反応のまま…
ブラット「…さっさとしろ」
片方の掌に血が渦巻きながら無機質なオブジェへと歩み寄る。
ブラット「時間の無駄だ」
血は太刀へと形を成し、切っ先を前に突き出す。
揺れが止まった直後、オブジェから音声が流れる。
「了解、第参ノ試練を開始…力司る破壊天使、起動します。」
装甲に黒い線が走り、赤く発光した。それはルービックキューブのように動き出し、変形していく。
やがてオブジェ…ストレングスは剛拳を兼ね備えた巨腕と牛を模した頭部が特徴のロボットとなる。
ブラット「…あの世に機械とか、どうなっているんだ」
想像する天国とは乖離した事実を前に愚痴を零す。刃と目は正面を向き、確かに捉えていた。
次の刹那、ストレングスが先手を打とうと巨大な拳を飛ばす。攻撃の軌道を見切ったブラットが横へ跳んだ。高速で真横を通り過ぎる拳…同時にストレングスの間合いに入ろうと走り出した。
すかさず刃を振り上げるが、頑丈な装甲のせいで無傷で済んだ。
ブラット (刃は通らない、か…)
赤い瞳は平然と見据えている。
直後、ストレングスの口が開く。そこから黒く丸い砲弾が放たれるブラットに襲いかかるが、敵の背後に回った事で躱された。
もう片方の手も柄を握り締める。すると、太刀は二丁拳銃に変形し、至近距離で突きつける。
容赦なく連射を繰り出すが、それでも無傷だ。
直後、上から剛拳が降ってきた。
中々の頑丈さに舌打ちをすると、一度攻撃を中断して、後ろへ跳んで、距離を取る。
ブラット (銃もダメか…ならば!)
輸血パックに溜まる血が袖を通して、二丁拳銃へと流れてくる。それにより二つの大砲として変形した血塊を軽々と持ち上げ、ストレングスに照準を合わせた。
ブラット (狙い撃つ…!!)
引き金を引いた直後、轟音と共に放たれた二つの赤いレーザーが空間を裂く。それは圧縮した血液だ。
急いでストレングスは腕を前に交差して、身を守る。血のレーザーは装甲では弾かれてしまった。
ブラット「馬鹿げた硬さだ…!」
両手に持つ二つの大砲が溶け出す。
ストレングスの前腕部が展開して、小型のミサイルが一斉に放たれる。全てがブラットに近付いてきた。
ブラット「怠いっ…!!」
急いで地を駆け抜ける。ミサイルは地面に落ちて、爆炎と爆風が起こる、充分な距離があったので巻き込まれずに済んだ。
ブラット (やはり、一筋縄ではいかないな…!)
ストレングスから目を離さず、血を握る片手を振るう。投擲したそれは数多の苦無となり、確実にミサイルの発射口へと入った。
次の刹那、苦無が爆ぜて血液が張り付く。瞬時に固まった事で前腕部を塞いだ。これによりミサイルは発射されない。
ブラット (ならば、拘束するまでだ…!)
読み通りに事が運ぶ。
ミサイルの爆煙がブラットを覆い、その身を隠す。
視界が塞がれる中、ブラットの両手が前に伸ばした。赤い瞳は正面を見据え、ストレングスの位置を正確に読み取る。
ブラット「命の限りを尽くす…!!」
決意を声にして張り上げる。勝利を確信か、それにハッタリは無い。
ストレングスの巨腕がミサイルの代わりとして飛行して、ブラットに迫る。爆煙を払うが、当たらなかった。否、彼がいない。
刹那、頭上にいたブラットがストレングスの背後に降り立ちながら巨大な血の刃を振り下ろした。
突き立てた一撃がストレングスの頭部と背中に深い傷を刻む。瞬時に感知してか、飛んで行った拳が軌道を変えて、再びブラットに接近した。
だが、ブラットは高く跳んだ。拳は咄嗟の対応を取れずに通過していく。
ブラット (厄介だな、あれは…)
巨腕を瞳に映しながら愚痴を零す。手にする血の大太刀は渦巻きながら変形し、両手に纏う。
紅血のガントレットを力強く握り締め、足裏から血がスラスターの如く噴く。
ブラット「はぁっ…!!!」
勢いよく降下し、ストレングスに突撃した。
刹那、血が大洪水のように溢れ出し、地面を紅く染める。
ストレングス「コレハ、血…!?一体……!?」
周囲を見渡すが、ブラットの姿は見当たらない。
漂う鉄の匂い、視界が赤で覆われる。装甲に血痕が付着していたのに遅れて気が付く。
そんなストレングスを他所に視覚外からブラットが血の海から浮上して、姿を現す。
握り締める手には身の丈程の斧槍が握り締められていた。
ブラット「あまり喋るなよ…」
ストレングスが振り向くより早く、メイスを勢いよく振るった。
刹那、血が噴射して、加速した圧倒的な一撃はストレングスの胴体を深く切り刻んだ。
ブラット「敵にバレるぞ」
絶大な一撃をその身に受けるストレングスだが、二つの巨腕がブラットを挟んで押し潰そうとする。
しかし、血の海から無数の槍が突き上げるよう現れ、串刺しにした。
貫かれた装甲が四方八方に広げられた事で破裂する。残骸は降下して、血に浸りながら沈む。
瞬時に振り向いたストレングスが再び口から砲弾を放とうとした。だが、それよりも先にブラットが間合いに入る。両手を握り締め、そこから血の大鎌を創り出す。
刹那、赤い閃光が鋼鉄の胴体をすり抜けた。
三秒後、真っ二つに両断されたストレングスが血の海に沈んだ。雫が舞い上がり、再び海に潜った時、ヤツは跡形もなく消えた。
メビウス「スゲェ……」
血の海が足首にまで浸る。
嫌悪感を覚えるよりもブラットの強さに驚いていた。
ブラット「…任務、完了」
手にしていた大鎌も溶け出し、足元に広がる血の海へと沈む。それらは全てローブの中へと入っていき、輸血パックの中へ戻る。
全てを終えたブラットは疲れた様子で襟元を掴んで、整えながら首を回す。一息ついた直後、向こうの扉が開いた。
メビウスとウェルギリウスの方へと振り向き、口を開く。
ブラット「おい、次へ行くぞ…」
そして、指示を飛ばす。
メビウス「…了解」
我に返ったので前へと歩き出した。だが、ウェルギリウスは動かない。
メビウス「ん?ウェルギリウス?」
気付いて、振り向く。ウェルギリウスを見ながら首を傾げた。
ウェルギリウス「…お二方は先程まで命のやり取りをしていたのに、どうして手を組んだのですか?」
彼にとって疑問だった。いや、傍から見れば理解できない…当然の事だ。
ブラット「…お前に話す必要があるのか?」
溜息混じりに答える。“その必要が無いと思っていた、部外者であるウェルギリウスには”、と…
ウェルギリウス「あります。例え戦士では無いにしても、メビウス様とブラット様を導く案内人として…」
だが、臆せずキッパリと言い返した。紡ぐが、何かを思い出せずにいるせいで、言葉を詰まらせた。
ブラット「案内人、か…」(人間みたいな事を)
だが、ウェルギリウスの意見は拒む彼を揺るがせた。面倒に思うも、ブラットはウェルギリウスの意志を高く評価していた。
ブラット「だが、守秘義務だ。話す訳には…」
それはそうとウェルギリウスに真実を話す訳にはいかなかった。戦士として守るべきもの…まして言えば、ゼウスにバレる訳にはいかない、と…
だが、メビウスは違う。
メビウス「わかった、全部話そう」
ブラットが二度拒む前にウェルギリウスの意志を尊重したのだ。
ブラット「おい」
まさかの行動に内心驚き、止めようとする。
メビウス「このまま黙ってるのは可哀想だろうし、あっちも勘づいてると思うよ」
だが、理由を述べながらウェルギリウスに歩み寄る。
ウェルギリウス「メビウスさん…我儘な要求で、申し訳ございません」
感謝と共に、己の身勝手さに対して謝罪する。
少し屈んで、ウェルギリウスのレンズを見据える。ゼウスが見ていると読んで
だが、臆さずに事の経緯を話した。今自身達がやるべき事と、こちらが考えるゼウスの目論見を…
次回 第肆拾捌話 「時空ノ華」




