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外伝 バーニング 「煮えたぎる炎熱」

この物語はフィクションです。

実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

マスターダークを断ち斬ってから数日後、早歩きで廊下を突き進む者がいた。それは剣本人であり、見るからにして大きな責任を抱えているようだ。

牙禅「また依頼か…いつもの数倍はこなしているぞ」

ライトと共に彼を見届けており、心配していた。

たった一日だけで、尋常ではない程の激務を全うしようとしており、過重労働であった。一度止めようとしたが、何かに縋り付くよう必死で、真剣だった…そんな気迫に押されてしまった。

二人の前を剣は通り過ぎていく。

ライト「牙禅さん、あのままだと…」

このままでは倒れてしまうのではないかと不安が過ぎる。誰もが抱えていた。だが、今は誰も彼を止められない。

そのまま剣は幾度と出入りしたであろうエントランスの扉を出て、現場へと駆けつけていった。


時を進めて、剣はビル屋上の駐車場で激闘を繰り広げていた。敵は茶褐色の短髪に牙を剥き出す仮面で口元を覆い隠すジャケットの男であり、両手には二つの斧が握り締められている。

互いに刃を幾度となく振るい続け、ぶつかって金属音を鳴らす。その中で剣の太刀が瞬時に振り下ろされる。

イーグル「まさか、戦士No.1様と出会(でくわ)すとはな!!」

男…犯罪者のイーグルはこの現状を悔いていた。

逃げ回っていた中、物凄い剣幕で走り抜ける剣と接触してしまったのだ。

逃走を続けていたが、埒が明かないと考えてか自身が愛用する斧での殺害を決断した。

迫る刃を躱して、流れるように斧を振り回す。だが、剣もすんなり避ける。多くの戦いを潜り抜け、尚且つ本気状態の相手を前に勝てる見込みは無い。

イーグル「野郎!ぶっ殺してやる!!」

瞳が赤く光り出し、もう一つの斧も振るう。

立て続けに来る攻撃には躱せまいと思い上がる。だが、剣が後ろへと下がった事で空を切ってしたった。

剣「焔技…!」

居合のように構え、刀身に焔が纏われた。刹那、それは勢いよく振り上げられ、斬撃波として飛ばす。

剣「火斬翔!!」

猛禽類の如く飛翔するそれは瞬く間もなくイーグルの間合いに入り、肉体を縦二つに斬り裂く。

イーグル「畜生…」

赤い光が消滅し、斧を手放す。両断された肉体は溢れんばかりの赤い体液を零しながら地に転がった。

死んだと判断した剣がすぐさま腕時計を顔に近付ける。

剣「こちら邪光 剣、犯罪者 イーグルを断ち斬った。処理を頼む」

口を開き、本社に向けて指示を出す。端的に伝えた後、通信を切って引き受けた依頼を果たそうと高所から飛び降りた。


賑やかな街…その道中へと無事着地し、片膝で支える身体を起こした。

「おい、邪光 剣だ!」

「本当だ!!」

あまりにも目立っており、周囲にいた市民の注目の的となる。だが、当の本人は気にもせずに走り出す。

「なんか、最近になってかよく見かけるようになったな」

「斬希の倅か…英雄にでもなるつもりか」

周囲の噂する声が耳に入ってくる。関心するのがあれば、逆に批難するものもあった。これらを剣は平等に聞き流しており、今の任務に集中する。

一人、その横を通り過ぎた時だった。剣の肩に手が置かれた。誰かと思い、足を止めて振り返る。

「…お前、姓は邪光なのか?」

異様だと剣は感じる。赤い瞳に映るのは無精髭を生やし、額を隠す前髪を持った赤い長髪の男性…レザージャケットを羽織っていた。

剣「…貴方は?」

疑問に思い、名を訊ねようとする。その素顔に何処か既視感があったからだ。

すると、男は焦った様子で片手で剣の口を塞いだ。

剣 (なんだ?何か…)

自身の素性が明るみになりたくないと彼の心境を察して、一切の抵抗をしなかった。

男「俺から言い始めて悪いけど、バレる訳にはいかないんだ」

剣の読みは当たっており、抵抗が無かった事を込みで行動の理由を伝える。

男「ついてこい、行きつけのところへ寄る」

指示であり、要求でもある発言に剣は応じ、同行していった。


辿り着いたのはバーであり、テーブル席にて対面するようにして腰掛けていた。机の上にはお酒とソフトドリンクが置かれている。

男はウィスキーロックのようなものを取り、口につけて飲む。

剣「まだ未成年ですよ、俺」

この現状を許容し難いと思いながら静かに睨みつける。未成年をバーに連れ込むのは法的・倫理的に問題で、どういう要件なのかを訊ねた。

飲みかけのグラスを置き戻し、一息つく。

男「悪いな、ここなら気楽に話せるんだ」

茶を濁す。しかし、何処か含みがあるのを剣は感じ取り、黙って聞く事にした。

バーニング「俺はバーニング、訳あって一人で調べものをしている」

見据える朱色の瞳が剣を映しながら自身の素性を明かす。

剣 (バーニング?確か…)

男 バーニングという名前に聞き覚えがあった。色々気になる事はあるが、何か訳があると考えたので問い詰めなかった。

剣「…何を?」

その代わりとして目的について訊ねる。バーニングはその事を覚悟していたはずだが、後ろめたいのかなかなか言い出せなかった。

また一呼吸する。意を決して、答えるつもりだ。

バーニング「彼女の…つまりは敵討ちってところだ」

告げられた内容に剣は静かに目を見開く。仮面の男を探し出し、必ず断ち斬るという目的を持つ彼にとっても親近感が湧いた。そのまま話の詳細を聞く。

バーニング「スイ…彼女はしっかり者だった。叱る時は叱り、優しくお淑やかで、俺の支えになっていた。けど、狂ってしまった。なんの前触れもなく…まるで魂を売られた悪魔の兵士のように…」

掌を見つめながら、強く握り締める。まるでバーニング自身の心境を表しているようにも見えた。

バーニング「妙だと思い、俺は独りで調査したんだ。子供二人を置いて…んで、邪光という姓を持つお前に出会った」

剣「二人の子供って…まさか」

バーニングから経緯を聞いた事である確信を得て、続けて訊こうとする。

その時、カウンター席の方から何かが転がる音が聞こえた。剣とバーニング…バーの中にいた人々の意識がそこへ向けられる。

バーニング「なっ!?」

目にした瞬間、大きく見開いた。

そこにあったのはスモークグレネードであり、すぐさま爆ぜて煙を撒き散らす。

バーニング「マジかっ!!」

急いで剣を連れて、ここから離れようと走り抜ける。その身体は扉へと近付き、ドアノブに手を伸ばした。だが、鍵がかかっている為、バーから出れなかった。

バーニング「なんてこった!こんな…」

想定外の事態に判断を誤ったと自責の念に駆られる。煙を吸ってか力が抜けるように倒れ、眠りにつく。それは剣も、バーの中にいた人々も例外ではない。


剣「…ここは?」

ふと、目を覚ます。今の剣は床に座っており、身体は縄で巻き付くようにして拘束されていた。

視界に映る光景は仄暗い地下室で、壁や床は石で覆われている。そして、剣の他にはバーニングと…二人っきりであった。

バーニング「悪い!邪光の倅…!」

周囲を見渡しながら状況を理解しようとする剣に謝り出す。かけられた言葉に剣は顔を向ける。赤い瞳に映るバーニングは不甲斐ない様子であり、微かに焦りを感じ取れた。

異様に思う剣だが、それを他所に壁に取り付けられていたモニターの電源が点く。

バーニング「お前を、巻き込んだ…!!」

液晶画面には紫色の道化師が映っており、素顔は仮面で隠されていた。

道化師「おやおや、目を覚ましたみたいですねぇ…」

伸びた声には加工が入っており、大袈裟な動きで演じるように二人の様子を伺う。

剣「誰だ?お前は」

こちらの様子が見えているという事は録画などの類いでは無いのは確かであり、落ち着いた様子で訊ねた。そんな勇姿にバーニングは意外に思う。高校生くらいの若さなのに見合わない程の威厳さ…それ故か無意識ながら斬希と重ねていた。

道化師「私はウィンデア!ゲームマスターです!さて、今からお二人には殺し合いをしてもらいます!」

ウィンデアと名乗る道化師は待っていたと言わんばかりに嬉々とながら高らかに答える。ついでとして告げられた本題もとい目的はなんとも理解し難いものだった。

バーニング「アイツ…!!」

正気じゃないと思い、耳を疑う。冗談では済まされない事だから

剣「そうか」

バーニングとは真逆に冷静さを欠いていなかった。声色は落ち着いており、その言葉は何処か納得しているように聞こえる。

バーニング「お前…!まさか殺すつもりじゃないよな!?」

剣「する訳がないだろ」

誤解したバーニングが訴えるも、剣が彼の思惑を否定した。向けられていた冷たい眼差しはモニターにいるウィンデアへと遣り、確かに捉える。

剣「ウィンデアゲーム、正義組織の者を巻き込んで、殺し合わせてきた。悪いが、お前の要求に応じるつもりは無い…」

引き受けた依頼、その概要を淡々と語る。巻き付かれた縄は焔で焼き切られ、炭となって散っていく。

すると、立ち上がった剣はウィンデアから目を逸らさずに、静かに抜刀した。

剣「俺は、お前を断ち斬りに来た」

手にする太刀を研ぎ澄ますようにして、腰を低くして構える。そう、剣にとってこの状況は好機であった。

ウィンデア「馬鹿ですねぇ…!私が何処にいるかもわからないというのに!」

剣の意志を嘲笑う。すると、作動音が部屋全体に木霊する。明らかに何かが動き出しているのがわかった。

直後、壁から黒い銃身が現れ、剣に照準を合わせる。

剣 (レーザー銃か…)

それが何なのか?どうするつもりなのか?など全てを瞬時に理解し、どう動くかを予測した。

猶予などは無く、思考を張り巡らせる剣に赤い光線を放つ。しかし、剣は難無く躱して接近する。次の刹那、刃は振り下ろされ、黒鉄の兵器を斬り裂いた。鉄屑は崩れ、地に転がる。

剣「これで終わりではないだろ?」

モニターにいるウィンデアを睨みつけ、凍てつくような低音で訊く。そんな剣をバーニングは見開く目で瞳に映していた。

バーニング (スゲェ…!斬希の引けを取らないレベルだ…!)

目の当たりにした戦闘力と判断力…剣が斬希の息子、それもかなりの実力だと度肝を抜かれる。

ウィンデア「勿論!!」

バーニングの事など知りもせずに話が進み、剣の予想通りの答えが返ってきた。その時、扉が開く。

脱出させるなどでは無く、二人を殺そうと刺客を送り込んできた。彼らの外見はバーにいた人達と同じだ。

バーニング「グルだったのか、どうりで俺達二人しかいなかった訳だ」

状況を察し、ここの部屋に二人しかいなかった理由も納得した。彼らの手には武器が握り締められており、どれも剣とバーニングに向けられたものだと心で理解する。

剣「バーニングさん、俺の後ろに…」

バーニングを拘束していた縄を太刀で切り、解いてみせた。すぐさま彼は立ち上がり、剣と背中を合わせる。

剣 (かなりの数だ。マスターダークの時と比べれば大した事は無いが、面倒だな…)

蓄積していた疲労、多くの仲間が死んでしまった事…肉体的にも精神的にも限界だった。思う通りに力が出ないものの、このまま諦める訳にはいかない。

その時だった。

バーニング「なーんも、大丈夫よ」

剣の出した指示に応じずに、なんと前へと出たのだ。

剣「は?」

まさかの行動に目を見開き、止めようと声をかけようとする。だが、懐から青い宝石を取り出した事で何故かやめてしまった。

前髪で隠れていたバンドのような冠…そこ中心にある窪みに宝石をはめ込んだ。真っ赤な髪は青く染まり、瞳の色も変わった。

剣 (やはり、そういう事か…)

目の当たりにした変化が宝石に込められた能力によるものと理解し、任せても問題無いと心のどこかで思っていた。

刺客A「こいつ!!!」

二人の余裕そうな態度が逆鱗に触れてか一人の刺客が突っ走りながら握り締めたナイフを突き出す。

しかし、単純な攻撃故かバーニングは顔を逸らして躱した。そのまま間合いに入ると、片手で首を掴む。

バーニング「こんなヤツらに殺られる程、衰えてはないさ…」

勢いよく上空へと投げ飛ばす。その軌道に沿って水を模した龍が現れ、強い水圧で刺客を天井に叩きつける。

刺客A「ごはぁッ…!!」

圧倒的な威力に気絶した。上から石の残骸と雫が降ってくるが、バーニングに当たる事は無かった。

バーニング「シリウスの戦士、その真髄を見せてやるよ!」

顔に笑みを浮かべ、歯を見せる。

刺客B「シリウスの戦士だと!?」

刺客C「あれ、バーニングか!?」

張り上げる声で名乗りを上げた事で敵が恐れ慄く。

そう、バーニングはシリウスの戦士であり、アクアとフレアの父親でもあったのだ。

ウィンデア「おい!シリウス如きに怯むな!俺達は戦士を恨んでいるんだ!!」

あんな人を弄ぶ程に呑気だった者も焦りを見せており、モニター越しからも伝わっていた。そんなウィンデアは目的を忘れるなと刺客全員に訴え、正気を取り戻そうとする。

剣 (戦士を、恨んでいる?)

取り乱した発言に疑問を持つ。ふと、ムラサメの事が脳裏に過ぎり、戦士を怨むのは彼個人のものではないのがわかる。

だが、バーニングはウィンデアの目論見を聞いてか納得した。

バーニング「成程な…」

証拠として彼の口が開く。溜息混じりに出た言葉は何処か面倒にも聞こえるが、どうしようも無い事実に直面したものにも聞こえた。

バーニング「いや、別に恨むのは勝手だけどさ…」

身体から泡沫が現れ、一つの塊として巨大な龍と成る。アクアと酷似しているが、明らかに次元が違った。

真剣な眼差しが正面を見据え、瞳に刺客が映る。

バーニング「殺しの正当化に使うなよ」

先程までの雰囲気とはかけ離れており、静かに怒りが湧いていた。それに応じてか水の龍が雄叫びを上げながら大暴れするようにして飛び回る。

刺客B「なっ!?」

刺客C「マズい…!!」

急いで武器を構えるも間に合わず、龍に呑まれていく。

剣「これは…!!」

感銘を受ける。避けようにも避けきれず、剣も巻き込まれていった。

やがてそれは津波のような勢いで部屋を覆い、やがて扉を突き破って通路へと出ていく。

ウィンデア「なっ!?マズい!!」

部屋の様子を見てかこちらに来るのは理解しており、なんとかしなければと動き出す。だが、天と地ほどの差があり、為す術が無いと心のどこかで悟っていた。

間もなく、ウィンデアのいる部屋…その扉を突き破るようにして津波が入ってきた。

ウィンデア「こんな…!まさか…!!」

圧倒的な次元を目の当たりにする。愕然とし、何も出来ずに立ち尽くす。襲いかかる水はウィンデアをも巻き込み、沈んでいった。


少しして、バーの中にはCSFの隊員達がおり、ウィンデア含めた刺客達を連行しつつも、捜査していた。

その中で一人…フレアが濡れた床を凝視する。読者諸兄に伝えると、津波が地上に出た際のもの…つまりは、剣とバーニングは既にバーから出ていたのだ。

CSF隊員A「フレアさん!どうしました?」

別の隊員が駆け寄り、様子を訊ねる。

フレア「いや、少し…」(兄貴はもういない…まさかな)

何処か含みのある返しをした。死人が蘇るはずも無いと思い、別の可能性が過ぎる。父の事だが、ありえないと切り捨てた。彼は勝手に行方をくらませたのだから


同時刻、剣とバーニングは人気の無い路地裏にいた。バーニング自身が公に出る訳にはいかないという意志に応じて、CSFが来るより前に離れたのだ。

バーニング「色々と迷惑かけたな、邪光 剣」

振り返りながら剣に謝罪の言葉をかける。彼の全身は濡れており、吹く風が衣服と肌に当たっていた。

長居は出来ないと思ってかバーニングが去ろうと前へと足を踏み込んだ。その時だった。

剣「バーニングさん」

声をかけて呼び止める。何かと思いながら立ち止まるも、振り返りはしない。次に来る言葉…その問いを既に予見していたのだ。

剣「どうして、フレアには会わないんだ?」

訊ねなければならないと思った。理由もなく行方をくらませていた事は当の本人であるフレアとアクアから話を聞いてから抱いていた疑問…それをバーニングに投げかけた。

バーニング「…会えないんだよ」

一言、そう返す。絞り出した言葉を聞いた剣は予想だにしなかったので静かに驚く。拳を握り締めながら再びバーニングの口から理由が述べられる。

バーニング「おかしくなったから止めたけど、傍から見りゃ母親を殴った父親…どんなに正当化しても、悪い事には変わらないんだよ」

言い訳と思うかもしれないが、紛れもない事実だ。

例えバーニング自身の錯覚だとしても、フレア達に合わせる顔が無いと自責の念に駆られていた。

微かに間が空かれる…静寂が二人を包み込む。告げられた言葉は剣にとって現実で、バーニングにとっては本心であった。無論、剣はそれを感じ取っていた。理屈では無く、直感…込められた心境と感情から

剣「気持ちはお察しします。しかし…」

なんと声をかければいいのか考えていた。無闇に無責任な発言は出来ないからだ。そんな時、フレアとアクアの事が脳裏に過ぎる。無意識か二人の立場に立つ。

剣「後悔すると、思います」

不思議とそう出た。まさかの発言にバーニングは目を見開き、振り向く。想定外だった…斬希の倅から言われると思わなかったからだ。

剣「既に、アクアは…」

はっきり伝えようとする。アクアが死んでしまった事実を…しかし、なかなか言い出せなかった。情によるものか、ハッキリしない自身を情けないと剣は責める。

バーニング「…死んだのか?」

信じられないながらも剣に問いかける。だが、止まってしまった言葉かは知るには充分に足りており、剣が伝えようとする事実・そして、彼の心情を察した。

バーニングに読まれてか、剣は黙ったまま…

バーニング「そうか…アクアが……」

一息つきながら事実を受け止めた。肯定と解釈し、気を引き締める。

バーニング「ダメな父親だな、俺は…全くもって…」

表情が寂しくなる。俯く目、声は少し暗く・低かった。両手をポケットに突っ込みながら再び剣に背を向ける。

剣「だが、フレアはまだ生きている。母親の方も」

また自分自身を責めるバーニングに希望を与えようと言葉を紡ぐ。帰るべき場所に帰れるように、生きる意味を得させる為に

また知らない事実を知ったバーニングの目が再び見開く。振り向いて、剣を見る。

バーニング「スイレンもか…!?」

駆け寄り、肩に手を置く。最大の力で殴ったので死んでしまったと思い込んでいたが、覆りそうになっていた。

その腕を剣が掴む。力が込められており、もう何処へと行くなという祈りや願いが宿っていた。

剣「手にかけた後悔より、二度と会えなくなる事が一生の後悔になる。だから、もう一度、フレアの元へ…」

後押しとして言葉をかける。メビウスと会えなくなった事を思い出しながら、バーニングに同じ目にあって欲しく無いと考えていた。まだフレアとその母親が生きているなら会わせなければと思っていた。

剣の手をバーニングは振りほどくと、離れる為に後退る。そこからは何一つ喋らなかった。

だが、浮かべる表情は何処か迷っているようにも見え、少なくとも剣はそう感じていた。

すると、バーニングは振り返りながら走ってこの場から去る。剣の視界からは既にいなくなっていた。

剣「バーニングさん…」

考えていた。バーニングの今後の行方を…これからの行動を…

一見すれば逃げていたのかもしれない、誰もバーニング以外に彼の心境を知る者はいない。だが…

直後、思考を遮るようにして腕時計から通信音が鳴り響く。無論ながら剣はそれに気付いた。

剣「こちら邪光 剣…」

切り替えて、腕時計を顔に近付けながらすぐに応答する。

告げられたのは未来隊長の指示であり、全戦士が隊長室へ招集するようとの趣旨だ。

剣「…了解」

突然の事に疑問に思うが、既に行動に移していた。前へと踏み出し、迅速にクロノス社へと向かう。


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