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クロノワールド -再創-(Re:Creation)  作者: ゼロザム=ルーゴ
第肆章 暗黒の創造主篇
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第参拾漆話 「交錯する意志の在処」

この物語はフィクションです。

実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

チームで分けて、各世界に飛び立った戦士は現在、クロノス社の隊長室に集っていた。

既に互いに起こった事、全ての情報を共有していた。

メビウス「マジ、か…レオが……」

勿論、レオの訃報も例外ではなかった。それを耳にしたメビウスは信じられない様子でいた。レオとは仲が良く、好きなアニメや特撮で盛り上がっていた。グリン程では無いが、確かにショックを受けていた。

他の戦士も例外ではなかった。その中でウルフが静かに見渡し、違和感に気付いた。

ウルフ「…グリンは、今何処に?」

精神的に参っていたグリンを気にかけていた。

牙禅「自室だ、独りにして欲しい…との事」

答えようと口を開く。彼の言葉にウルフは目を遣り、牙禅も彼の青い瞳を見ていた。

ウルフが何をするのかは察しており、彼の判断に委ねる事にした。自分より二つ年が上で、経験も豊富だ。それに、先に見つけたのはウルフ達 ベータチームであり、実力も確か…故にそう判断した。

ウルフ「わかった」

落ち着いた様子で返事をした。

未来隊長「…申し訳ないけど、今は話を聞いて欲しい」

隊長というクロノス社のトップ…ガロンやアクアを含めた彼らの死は誰よりも悔い、責任を感じていた。だが、今も放っておけなかった。切り替えて、戦士に促した。応じてか全員が未来隊長の方へと身体を向ける。

未来隊長「ありがとう」

彼らの心遣い、想いに心の底から感謝が湧いた。そして、真剣な眼差しを戦士に向ける。

瞬時に机の上にあるキーボードを操作して、青いディスプレイを映し出した。そこには黒いモヤで覆われた球体…つまり、暗黒世界の実物が流れていた。

未来隊長「シロノスの艦体がマスターダークの拠点を特定してくれた。創造主であるヤツを倒せば暗黒世界を滅する事が出来る」

淡々と説明を述べる。やけに落ち着いており、言葉には揺るぎない意志が宿っている事がわかった。

メビウス「断言するんだ、珍しい…」

いつもと変わらない表情だが、意外そうに思っていた。メビウスの反応を気にしてか未来隊長が静かに顔を向けた。

メビウス「いや、ごめん…続けてください」

鋭い視線から意志の迫力を肌を通して心に伝わってか、焦った様子で発言を撤回した。

メビウス (前々から思ったけど、青い亀裂とか全部妙なんだよな…なんて言うんだろ、全部知ってるみたいな感じ)

だが、疑問は抱いたままだった。得も言えぬ違和感が衝動に駆られそうになる。

改めてと言わんばかりに一息つき、気持ちを立て直した。

未来隊長「兎に角、アクセスするのに時間がかかる。各自、準備に入って」

そして、戦士に今すべき事を要約して伝えた。彼らは「了解」と一言で返し、すぐさま隊長室を去っていった。メビウスを除いて

剣「メビウス?」

開いた扉の前で気付き、振り返って後ろ姿を見た。

メビウス「あー、ごめん。先行ってて」

剣「…わかった」

いつもの気楽な声で答えるメビウスの心境を察してか、剣は部屋を出て扉を閉めた。

メビウス「…訊いても良いのかな?隊長についてさ」

真剣な眼差しで未来隊長を見つめながら開口に問いかけた。

微かに間を置き、耐えきれなくなってか可笑しそうに…されど、寂しさを含みながら笑った。

未来隊長「君にだけなら、話してもいいね」

演じても無駄と諦め、メビウスに事実を打ち明ける事にした。二人っきりの空間で耳にしたのは衝撃的なもの…あまりにも非現実的な事ににわかには信じ難かった。

メビウス「なーるほどね…」

しかし、メビウスは自然と納得していた。点と点が線となり、謎が解けたと言わんばかりの声色が流れる。そのまま二人は話し続けた。


その頃、ウルフは廊下を歩いていた。横に並ぶ扉のうちの一つにたどり着いてか正面を向いた。

ウルフ「グリン、いるか?」

迷い無く扉を開けた。足を踏み入れたのはグリンの部屋であり、優しさを含んだ落ち着いた声で呼びかける。

当の本人は椅子に腰掛け、向き合う机の上に肘を置いて頭を抱えていた。いつも着用している帽子は隣に置かれていた。

目の前にいるが、返事は無かった。明らかに落ち込んでいるのがわかる。だからだろう、放っておく訳にはいかなかった。

ウルフ「無理に返さなくて良い、私も同じだ」

思考を回して言葉を選びながらベッドの上に腰掛けた。何処と無く親身になって、グリンに寄り添っていた。

グリン「…独りにしてくださいって、言ったじゃないですか」

暗い声で静かに抗議する。今出せる声はこれで精一杯であり、自責の念が心を押し潰していたのだ。

ウルフ「生憎だが、俺も戦士だ。そして、隊長に代わって引っ張っていかなければならない」

懇願を断り、見合った理由と意志を提示した。メンタルケアもそうだが、今の未来隊長よ気持ちも考えた上での発言でもあった。

グリン「そう、ですか…」

彼の意図を読み取ってか、無理に納得する。

ウルフ「グリン、君はレオを護れなかった…助ける事すら出来ず、己の無力さを思い知った。間違いは無いか?」

事前に牙禅から話を聞いており、読み取った本能も合わせてグリンの心境を言い当てた。その証拠に彼は異議を唱えず、僅かながらも静かに俯いた。

ウルフ「わかった」

グリンの反応を目にした事で心から理解し、共感した。

ウルフ「君が、そこまでして責任を負う必要は無い」

平然とした様子で断固として出た言葉にグリンは振り向く。

ウルフ「弱さや無力さは罪では無い。そうならないのは確かだ…」

話を続けて自論を告げる。これは押し付けなどでは無く、ただ個人の思想であった。

ウルフ「この先、苦難が君に襲いかかるだろう。道を外さない限りは私は止めない。冷たいだろうが、人生を決めるのはいつだって自分自身だ」

無責任かもしれないと心のどこかで思う。だが、言った事に後悔は無い。グリンも答えようのない言葉に内心、戸惑いを覚えていた。

ウルフ「…だが、敢えて言おう」

違う気持ちを抱えながらもベッドから立ち上がり、数歩進めて扉の前に立った。すると、グリンの方へと振り向き、決意を宿した青い瞳で見つめた。

ウルフ「立て。そして、亡き友の分まで生きろ」

彼の意志は重みのあるものであった。言語化したそれはグリンの耳に届き、気付かせてくれた。

ウルフ「暗黒の創造主がいる拠点を特定したので、支度をするように、と隊長からの指示だ。要件は伝えたからな」

伝言を残した後、扉を開けてグリンの研究室にして自室から出た。閉まる音がゴングとなってか、グリンの意志を更に強固なものにした。一呼吸した後、グリンは作業に取り掛かりながら備え始めた。


場面は変わって、暗黒世界に置かれた孤城…暗黒城

その玉座の間にて、マスターダークは玉座に腰掛けていた。

マスターダーク「激龍の使徒、実に手強かったですねぇ…」

確かにポラリスと交戦し、勝利したものの世界をも巻き込む自爆で葬られたはずだった。しかし、暗黒の創造主はまだ生きていた。

巨大な鼓動が鳴り響いた。

マスターダーク「盛り上がったから良かったものの、茶番が長くつまらなければ退屈してしまいます…二度とやりたくないですねぇ」

先の激戦を不服に思いながら玉座の肘掛にそれぞれ頭と足を乗せて、横になった。

自身のプライドか、単にポラリス含めた激龍の使徒に嫌気が差していたのか…どちらにせよ、マスターダークは快く思っていなかった。

そんな彼の元に一つの人影が近付いてきた。一歩踏み出したとまた鳴り出した鼓動が同時に起こった直後、マスターダークに衝撃が走った。

恐怖のあまり大きく開けた目で、ゆっくりと顔を向けた。

「随分と自由気ままにやっているようだな、暗黒の創造主…」

段差のある祭壇の下には仮面を被った男がおり、黒い画面から出る赤い光である目がマスターダークを見据えていた。また身体から発せられる赤く光る黒いオーラも相まってかその身に恐怖を刻んでいた。

マスターダーク「これはこれは、珍しいですねぇ…」

想定外な事態に戸惑いながらもなんとか状況を飲み込んで、寝転んでいた身体を起き上がらせた。

だが、まだ受け入れられていないのか強がろうとする気持ちと入り交じり、苦笑いを浮かべていた。

マスターダーク「神皇様、如何なさいましたか?ここに訪れるとは…」

玉座から離れると、一歩一歩確実に、されど軽々と降り始めた。口調は敬語であり、仮面の男 神皇ヘリオスに対して畏まっていた。

ヘリオス「計画はどうだ?」

赤く光る目が冷徹に見据える。それはマスターダークから逸らす事なく、無機質に映っていた。

マスターダーク「ご安心くださいな!問題ございません!何一つとて余計な事などしておりませんよぉ!」

底無しの未知が心の奥底から昇る恐怖を掻き立てていた。しかし、平然を装ってなんとか隠し切ろうとする。

光の形に変化は無いはずなのにマスターダークは鋭く睨まれていると錯覚を起こし、静寂も相まって心が押し潰されそうになっていた。

だが、そんな気持ちを断ち切ったのはヘリオス本人の言葉であった。

ヘリオス「わかった」

仮面で籠っているが、鮮明にも聞こえた。素顔は見えないものの、話し方からして笑っているのは伝わってきた。

何を思ってかヘリオスは見上げて、玉座の奥にあるカーテンを見つめた。少しすると、無言のまま踵を返してマスターダークから離れていく。身に纏うオーラがヘリオスの全身を覆い、消えるようにして暗黒城から立ち去る。

安堵のあまり息を吐き、段差の上に腰掛けた。

マスターダーク「やはり、恐ろしい方ですねぇ…」

片手でシルクハットを抑えた事で目元が鍔で隠れる。口元は不気味に吊り上がっていたが、心の底から笑えていないのは見て確かであった。

マスターダーク「英雄を殺したのならその資格があるでしょう…いや、それ以上かもしれませんね」

賞賛の言葉を吐く。どれだけ暗黒世界を連れて本気で挑んでもヘリオスには勝てないと断言できた。平然を装っているものの、明らかに畏怖していた…あの男から放たれるオーラと向けられる目に


場面は戻り、準備を終えたブラックは隊長室へと向かう為に黙々と廊下を歩いていた。

そんな彼に何の前触れも無く頭痛が走る。

ブラック「ぐっ…!」

あまりにも重く、鋭かった。片手で抑えて、鎮まれと念ずる。こんな事に意味はあるのか?と心の何処かで思いながらもそうするしかなかった。

ブラック「…カオス、か……」

痛みが引いてきた。だが、嫌悪感が心の中で渦巻いていた。元より何が原因なのかはわかっており、やむを得ないものだった。

ブラック (契りを交わした代償か…やはり、デカイな……)

目にある黒い亀裂が僅かに増す。

カオスを宿らせたブラックは圧倒的な破壊力と不死身と言える程の耐久力を兼ね備え、当然ながら規格外であった。しかし、それは彼自身の寿命を縮ませて、徐々に肉体を壊していくというものであった。

ブラック (だが、退く訳にも止まる訳にもいかないがな…)

それでも意志を貫き、諦める事は無かった。瞼を開けて、赤い瞳を持つ黒白目が顕となる。ふいにそれを横に向けると、捉えたものに違和感を覚えた。

ガラス張りの体育館に一人突っ立っていた。それは糸鉄 結衣であり、太陽差し込む窓をただ見つめていた。それは高い位置にあるので、見上げているというのが正確だが…

ブラック (ウィングドホースの…何をして?)

光に当たる彼女の後ろ姿を見つめながら不審に思う。

明らかにただ独りで突っ立っているとは思えなかったのだ。しかし、結衣が何を喋り、誰と話しているのかはブラック自身は知る由もなかった。

ヘリアデスの件で稽古をつけてもらったブラックにとって、彼女の様子は不自然だと思っていた。

すると、ブラックの存在に気付いてか、結衣が急に振り返った。

結衣「なーんだ、ブラックくんかぁ…」

安堵しながら笑みを浮かべ、ブラックに近付こうと歩き出した。

ブラック「…」(焦っている?)

結衣の反応に得も言えぬ違和感を覚えた。そんなブラックを他所に彼女は体育館から出てくる。

結衣「悍ましい感じがするって思ったら敵かと思っちゃったよ〜、ごめんね」

いつも通りのお淑やかな振る舞いと声色で誤解していた事を謝る。しかし、少し疲れているようにも聞こえ、ブラックには気付いていた。

ブラック「…何をしていたんですか?」

迷わず結衣本人に訊ねた。赤い瞳は彼女を映しており、決して離さなかった。

結衣「え?あー!瞑想!瞑想よ!最近ハマっててね〜!」

質問の意図を遅れて理解し、しかと元気良く答えた。

ブラック「そう、ですか…」

訝しむも、何も無いかと現状を判断した。

結衣「というか、大丈夫?」

すると、逆に彼女が問いかけてきた。

ブラック「何がですか?」

当然、何についてかわからず訊き返した。結衣がブラックの目に指をさす。

結衣「それ…」

顔の亀裂、カオスとの代償について触れていると瞬時に理解した。悟られて心配をかける訳にはいかないと思ってか結衣に背を向けた。

ブラック「失礼します、急がなければならない事があるので…」

そして、駆け足で隊長室へと再び向かおうと結衣の横を通り過ぎた。色々と疑問は残ったままだったが、憶測の域を出ない今は放置していいと考えた。

去るブラックとは逆に結衣は立ち止まったまま後ろ姿を見届けていた。

結衣「…」

何をしているのか、何を思っているのか、今のブラックには知る由もなかった。


各自、準備を終えた戦士は隊長室に再集結していた。そこには先程までいなかったグリンも並んで立っていた。

未来隊長「みんな、準備はいい?」

目で人数を把握し、彼らの意志に問いかけた。無論、ここにいる者全員が覚悟しており、言葉にせずとも一目瞭然であった。

読み取った未来隊長が把握して静かに頷き、正面へと顔を向けて勢いよく立ち上がった。

未来隊長「ではこれより依頼を伝える!暗黒の創造主 マスターダーク率いる暗黒世界を断ち!!全員生きて帰ってくるんだ!!」

これまでの穏やかだった彼からは想像もつかない程に声を張り上げ、戦士に命令した。それはこれ以上、仲間を失わせない且つ全ての世界を護るという意志によるものであった。

剣含めた戦士「了解!!」

それは確かに、彼らに伝わっていた。感銘を受けてか微笑みを浮かべる。迷い無く操縦して青い亀裂を空間に生成した。

未来隊長「健闘を祈ります!」

無事を祈る意味を込めて言葉を発すると、戦士全員がワームホールの中へと入って、行き先であるマスターダークの暗黒世界へと飛び立った。

亀裂が閉ざされた今、部屋に残るは未来隊長だけであった。

一人になったおかげか力が抜けて椅子に腰掛けた。瞳を閉じて、一息つく。無事を祈りながらも心には微かな不安に残っていた。


剣達は暗黒城が聳える暗黒世界に辿り着いた。

剣「着いたか…」

地に足をつけ、正面を見据える。鋭く睨む赤い瞳に孤城が映り、他の戦士も同様であった。

ふと、グリンの脳裏にレオの事が過ぎった。

グリン (レオ…)

亡き友を想いながら青い瞳に決意を宿す。それにより僅かに残っていた恐怖がかき消された。俯いていた目は正面を向き直した。

そんなグリンの様子を察してかウルフが前に出た。

ウルフ「急ごう、我々の侵入に気付かないなど生ぬるい訳が無い」

迷い無く双剣を引き抜いた刹那、振るって斬撃波を飛ばした。

地面を削り、大気を振動させながら突き進むそれは上から降ってきた黒炎の斬撃により打ち消された。

あまりの衝撃に突風が巻き起こり、周囲に粉塵が舞う。

剣「ムラサメ…!!」

突然の事態に目を見開くも、ウルフの後に続くようにして戦闘態勢に入った。他の戦士も例外ではなかった。

確信し、断言する剣の瞳が粉塵の中にいる人影を捉えていた。

手にした刃で振り払い、突風を巻き起こして姿がハッキリと映し出された。剣の言葉通り、そこにいたのはムラサメであった。

ムラサメ「また会えたな、邪光家の末裔…!」

剣だけを睨みつけながら手を前に突き出し、切っ先を翳した。そんなムラサメの怨嗟に答えようと剣が前に出る。

剣「先に行ってください」

仲間に促そうと告げ、抜刀した刃を静かに力強く構えた。

メビウス「剣…」

ウルフ「…わかった、気を付けろよ」

身に覚えの無い恨みを引き受ける気だとこの場にいる誰もが理解し、親友であるメビウスが気にかける。だが、それをウルフが制止し、剣の意志を尊重した。

そのまま剣を除いた戦士は先を急いで進んだ。ムラサメは彼らを止める事なく、横切る事を許した。今目の前にいる剣にしか眼中に無かったからだ。

剣「…ムラサメ、俺の親父がお前に何をしたのかはわからない。だが…」

赤い瞳がムラサメを見据えながら全身に焔が発現する。素直な気持ちを吐露しながらも向き合おうとしていた。

ムラサメ「理解者になるつもりか?」

張り詰めた空気に凍てつく殺気…口を開いて剣の言葉を遮った。

ムラサメ「御主がどれだけ正義を語ろうと、どれだけ平和を説こうとも…」

対峙する剣と戦い、確かに殺そうと太刀を構えた。

ムラサメ「御主は敵…此処で死ね!!」

直後、発現する黒炎が静かに激しく燃え盛る。

日のように橙赤に染まった剣の焔と日影のようなムラサメの黒い炎…意志による守護と憎悪による殺意、相対する意志を抱いたまま気を引き締めた。

ムラサメ「邪光 剣!!」

剣「ハァッ!!」

刹那、交差し、反発する意志がぶつかろうと二人が突っ走る。

瞬きする間もなく間合いに入ると同時に振るわれた刃がぶつかり合った。金属音を鳴らし、周囲に熱風が巻き起こった。

次回 第参拾捌話 「贖罪の在り方」

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