第参拾肆話 「真相と絶望」
この物語はフィクションです。
実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
マスターダーク「さぁ!始めましょう!!」
サーベルを振り回した後、天に掲げた。そして高らかに宣言すると、レオとガザールを包囲していた分身が一斉に走り出した。
レオ「うおおおおおお!!」
雄叫びを上げながら拳を突き出した。近付いてくる一体目をぶちのめした。だが、二体目、三体目と続々と迫ってくる。
だが、レオは臆さずに攻撃を続ける。拳を打ち込む度に分身は消滅し、諦めず殴っていく。
ガザール「クッソ!!」
彼も例外なく拳を突き出したり、蹴りを入れたり、獄炎を放ったりして分身を討滅していた。
ガザール「キリがねぇな!!」
右手を握り締め、振り回す。そこから発現した獄炎が軌道を描き、背後より迫っていた数体の分身を焼き払った。
遠くから銃声が聞こえた。瞬時に反応したレオとガザールは咄嗟に動き、無数の弾丸を躱した。
音がした方角には分身が並んでおり、ピストルを向けていた。
レオ「なぁ!ガザール!!」
ガザール「なんだ!?」
離れていく二人、大声で呼ばれたガザールが耳を傾けた。
レオはマスターダークに目を向け、合図をした。
レオ「アイツぶっ倒すぞ!!」
ガザール「あいよ!!」
本気で戦ったからかレオの考えを読み取り、砂に覆われた地面を蹴り上げ、軌道を変えて飛んで行った。
マスターダークA「射殺しましょう!」
マスターダークB「銃殺です!!」
マスターダークC「蜂の巣にしましょう!」
分身が並び、銃口を向ける。一斉に引き金が引かれ、銃声と共に弾丸がレオとガザールにそれぞれ迫る。
弾雨の中を二人は掻い潜り、本体であろうマスターダークに近付いていく。だが、サーベルとピストルを持った分身が立ち塞がってきた。
レオとガザールが目で捉えてか拳を握り締め、そこ一点に炎が溜まる。
レオ「邪魔だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ガザール「そこ退きなァッ!!!!」
後ろに引き、狙いを定める。
勢いよく突き出した次の刹那、纏う炎は巨大な火の玉として放たれた。超加速で飛行するそれは分身に直撃し、大爆発を起こした。
吹き荒れる爆炎が分身を塵一つ残さず焼き尽くす。止むと同時に大地を蹴り上げ、空高く跳んだ。
レオ「うおおお!火炎撃!!」
拳に力を込め、浮遊するマスターダークを睨みつけた。直後、燃え盛る拳は目にも止まらぬ速さで突き出された。
レオ「強弾打!!」
頭部に目掛けて打ち込むつもりだった。だが、それはサーベルの刃で防がれた。衝撃を受けてか、重力の影響か共に地面に向かって降下していく。
マスターダーク「諦めが悪いようですねぇ!」
不気味な笑みを浮かべる。
残った分身が振り向き、ピストルの照準をレオに合わせた。
ガザール「させねぇって!!」
だが、真横から獄炎が迫り、残った分身も焼き払った。
ガザール「言ってんだろ!!」
まだ生き延びた分身も接近して殴り飛ばした事で難無く倒されていく。一体目、二体目と倒して三体目を倒そうと回し蹴りを繰り出した。
同時刻、攻撃を防いだサーベルをレオは拳で叩きのめして、手放させた。
レオ「獅子炎撃!!」
瞬時に拳に炎が渦巻きながらそれを勢いよくマスターダークに突き出した。
マスターダーク「ピストルを…!」
すかさずもう片方の手を上げようとしたが、動けなかった。急いで目を遣ると、手首にレオが炎で象った尻尾が巻き付いていた。
マスターダーク「なんと!!」
侮っていた。そして、レオの炎纏う拳はマスターダークの顔面に確かな一撃を与えた。
レオ「ぐっ…!!」
だが、激痛が走った。
マスターダーク「などと、思いますか?」
不気味な笑みでレオを嘲笑う。拳の入った箇所はめり込んでいるものの、そこに敷き詰められていた鋭利な刃が傷を負わせていた。
マスターダーク「所詮貴方は牙も爪も無い獣、創造主である私の敵ではありません」
直後、レオの背後に数体の分身がサーベルとピストルを手にしながら飛びかかってきた。
刃先と銃口が命を奪おうと無慈悲に向けられる。
レオ「そうかよ!!」
だが、諦める気は一切無かった。
次の刹那、レオは尻尾を引っ張ってマスターダークを振り回した。後ろに並ぶ分身達は巻き込まれ、薙ぎ払われるかのように派手に吹き飛ばされた。
尻尾に掴まれたマスターダークはサーベルで片手を切断した。振り回された影響もあってか肉体な自然とレオから距離を取った。切断面から血飛沫の代わりに黒い塵が噴き出ている。
マスターダーク「諦めが悪いですねぇ…」
砂の上で倒れる分身を踏みつけ、その個体を自身に取り込む。分身が消える代わりに損傷した手は完全に再生した。
マスターダーク「躾がなっていません…」
指を鳴らし、音が暗雲に覆われた虚空に鳴り響く。呼応してか分身は操られるかのように浮き始め、融合し、新たな形へと変化した。それは巨大な手であった。
マスターダーク「ねぇ!!」
手を振るい、前に突き出す。
すると、巨大な手はレオに向かって突っ込んできた。容赦なく胴体を捕え、強く握り締めた。
レオ「ぐっ…!!」
圧迫される感覚を受けてか骨が軋みそうになる。皮膚の下から激痛が走る。だが、レオは堪えながら全身に力が入った。
レオ「発火炎蒸!!」
両手足を広げて、全身に纏った炎を放った。それを受けてか巨大な手は粉々に散り、灰燼と化した。
レオ「うおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
すぐさまマスターダークに再接近し、拳を強く握り締めた。煌めく炎は激しく燃え盛り、見事に纏う。
レオ「獅子炎!!」
勢いよく拳を突き出し、獅子の頭部を象った火の玉を放った。瞬時に間合いに入り、直撃して爆発を起こした。
確かに倒した。だが、レオの背中に激痛が走った。
レオ「がぁっ!!」
肉体は左肩や右脇腹、片脚を射抜かれた。更には肩にかけて袈裟に落とされた切り傷が深く刻まれていた。
堪えきれなかったのか膝をついてしまった。背後に立つマスターダークがレオを見下ろしていた。
マスターダーク「痛みで教えてあげましょう!」
トドメを刺そうと手にしたサーベルを掲げた。だが、それは通過した獄炎の火の玉により跡形も無くなった。
マスターダーク「何…?」
苦痛に悶える様子は無かった。だが、突然の事で理解が遅れていた。次の刹那、駆け出すガザールが拳を振るい、マスターダークの顔面にめり込んだ。
勢いよく突き出し、ヤツを吹き飛ばした。
ガザール「おい…!大丈夫か…?!」
身体から黒い塵が浮かんでいた。大勢を相手して、負傷していたのだ。すぐさま再生しようにも体力の消耗が激しかった。
だが、そんな事よりも先にレオに駆け寄る。
レオ「わ、悪りぃ…!」
荒い呼吸を繰り返しながらもなんとか声を絞り出して、安否に応答した。
諦めず立ち上がろうとするも、激痛が走るせいで再び跪くしかなかった。
ガザール「そうか…」
厳しいとわかってかそう呟く。完治してかゆっくりと立ち上がり、周囲を見渡す。
数多の分身がレオとガザールを包囲し、余裕そうな様子でサーベルとピストルを構えていた。
ガザール「…こりゃ、骨が折れるな」
レオが動けない今、自分一人で抵抗するしか無いと判断した。
苦痛から支配を抜け出してか腕時計に触れて、回復薬を取り出そうとする。だが、銃声と共に放たれた鉛玉が装着していたそれを破壊、手首から離れてしまった。
レオ「なっ…!?」
最悪な事態に目を見開き、音のする方へと遣る。そこにはピストルを向けた分身がおり、銃口から煙が立ち上っていた。
マスターダーク「やらせませんよ」
暗雲から降り注いだ闇から新たな個体が姿を現した。それは高みの見物と言わんばかりに砂に沈んだ建物の上に立ち、指を鳴らして分身に合図を飛ばした。
次の刹那、包囲していた分身は容赦無くレオとガザールに迫り、殺しにかかってきた。
ガザール「野郎!!」
雄叫びを上げながら手足に獄炎を纏いながら腰を低くして構える。再びレオとガザールの間合いに入る分身を捉えて、殴って倒していく。
だが、圧倒的な数…自身が不利なのは当の本人が何よりも理解していた。
大勢の分身が空を覆うようにして飛びかかる。サーベルを振り下ろし、ピストルの引き金を引こうとしていた。
ガザール「皇帝の(エンペラー)獄炎!!」
声を張り上げ、全身から激しく放たれる獄炎は分身を焼き払った。瞳は反転しており、紅い瞳は敵を映していた。
だが、分身は減らず、それどころか更に増していき、レオとガザールに迫る。
ガザール「キリがねぇな…!!」
当然ながら諦める気は無かった。両手を後ろに引いて、掌に獄炎が渦巻く。瞬時に跪いて地面に触れる。
すると、下から獄炎が火柱として無数に突き上げ、迫る分身をまた焼き払った。しかし、中にはそれらを掻い潜って間合いに入った。
無情にも刃はガザールの身体を深く斬り刻んだ。
ガザール「クッソ…!!」
黒い塵が血飛沫のように舞う。致命傷となってか獄炎は風と共に消え、身体から力が抜けてきた。
次の刹那、刃が肉を突き刺す音が鳴った。
レオ「あ”ぁ”っ!!」
苦悶な声を耳にして、ガザールが振り向く。瞳には数体の分身に囲われ、サーベルを突き刺されたレオの姿が映っていた。肩部、腹部、胸部、頭部など全身にかけて冷たい刃が骨まで断ち、そこから血が溢れ出る。
続けて容赦なく抜いては刺し、抜いては刺すの繰り返し…
レオ「あ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”!!!」
激痛が走りながら断末魔を上げる。徐々に意識が薄れていく、脳裏にグリンや戦士のみんなの事を思い浮かべていた。
血に染まる身体はやがて力尽きて、息も叫びも途絶えてしまった。
ガザール「…レ…オ……」
限界と悟ってか、レオに続いて彼も塵となって消滅した。
頃合いと思ってかマスターダークが両手を叩く。すると、分身の動きは止み、レオの亡骸が転がる場所を通そうと道を開けた。
マスターダーク「愚かですねぇ…」
建物から飛び降りて、無事に着地する。
マスターダーク「創造主には敵わないというのに…」
清々しい気分で歩み寄り、レオの前に立つ。
見下ろしながら口角が吊り上がる。シルクハットの鍔が目元を隠し、ある考えが脳裏に過ぎった。
マスターダーク「…そうですね、少し遊んでみますか」
その閃きに従い、実行に移した。レオに化けて、他の戦士を仕留めるという凶行を…
そうして現在に至る。
グリン「じゃあ、なんだよ…」
レオの身に起こった出来事、それをマスターダークの口から語られた。それを耳にしてかグリンは喪失と絶望から膝から崩れ落ちた。
グリン「レオは死んで…!アンタの良いとおりにされてるっていうの…!?」
地面に手がつき、下向きながら涙を零す。心に大きな穴が空く、苦しいと言わんばかりにレオが死んだ真実という刃が深く突き刺してくる。
「そうだぜ!」
レオの声が聞こえ、面を上げる。そこには一切の光を持たない目のレオがいた。マスターダークの操り人形として良いように利用されていた。
マスターダーク「貴方の友達 レオは死んだのです!これに何一つの間違いは無い!!」
グリンから溢れ出る闇…苦しみと悲しみを非道にも歓喜していた。
グリン「…何、して……」
マスターダークの行動に理解が出来なかった。思考が止まっていた。
だが、容赦無くそれは展開される。
レオ (死体)「なぁ、グリン…俺一人で死んで悲しいんだ…だからさ……」
マスターダークが渡すサーベルを受け取り、しかと握り締められた。
レオ (死体)「俺の為に死んで…」
満面の笑みを浮かべながらグリンに懇願しようとした。だが、牙禅が鳩尾に目掛けて繰り出した掌底がレオの言葉を遮らせ、操られた死体を勢いよく吹き飛ばした。
マスターダーク「おや?」
あまりの速さに認識が遅れた。すると、牙禅がグリンの前に立った。
牙禅「グリンは殺らせん、これ以上レオに業を背負わせん」
赤い瞳が力強く見据え、確固たる意志で片手に波動を纏う。
マスターダーク「ンフフフ…面白いですねぇ」
不気味な笑い声を上げる。片手で口元を抑え、シルクハットの鍔から目が覗く。亡骸に向けて手を伸ばした。
レオ (死体)「おーい…ひでぇなァ…」
それに応じてか倒れていた身体を起こした。マスターダークの声がレオ本人のものとして聞こえてくる。
牙禅は静かに睨みつける。
レオ (死体)「グリンを殺せねぇだろ…」
また言い切る前に牙禅が間合いに入り、頭部を掴んで地面に叩きつけた。あまりの衝撃に後頭部に亀裂が走り、砂が高く舞う。
マスターダーク「おっと…」
恐ろしいと笑いながら身の危険を感じて牙禅から距離を取ろうと下がる。
膝をついていた身体を起き上がらせ、マスターダークの方へと振り向く。
牙禅「その汚い口を閉じろ…!外道が…!!!」
レオがグリンに向けて言わせてはいけない事を言わせた…その行動に類を見ない憤りを浮かべた。怒りに応じてか波動が青い炎として激しく燃え盛った。
マスターダーク「閉じる?いやいや、喋ったのはレオ…」
何を言っているんだと惚けた様子で、反省の態度など無く牙禅の後ろに横たわるレオを指した。
牙禅「戯言を…!!」
地を蹴り上げた事で砂が舞う。
瞬きする間もなく間合いに入った牙禅は片手で波動の槍を生成、顔面に目掛けて振り上げた。見事に入ってか顔は強制的に逸らされ、そこから塵が舞う。
マスターダーク「弱小な…けど、マズいですね」
激龍に近い性質を持つ波動…暗黒の創造主にとっては大したものでは無いが、あまり受けるべきでも無いと察した。
打破しようと片腕が蛇と変化し、がら空きとなった牙禅の腹部に伸びた。
牙禅「無駄だ!!」
だが、それよりも速く波動の槍を振り下ろして反撃を阻止した。容赦無く繰り出す槍術はマスターダークの肉体を打ち付け、骨を砕いていく。
マスターダーク「これは、マズい!ですねぇ…!!」
手も足も出せずにやられていく中、暗雲から三体の分身が降ってきて、サーベルの切先を牙禅に定める。
牙禅は槍を振り回して後方に波動弾を飛ばした。火の玉のようなそれは正確に分身を撃ち抜き、消滅させた。
打たれまくるマスターダークは好機と思ってか隙をつこうとサーベルを突き出す。
牙禅「見えているぞ」
だが、片足で踏まれた事で砂の中に埋まった。
マスターダーク「なんと!」
あまりの技量に驚く。次の刹那、牙禅の槍が振り払われた。それは頸を裂き、頭部を吹き飛ばした。
波動の力か、黒い肉体は塵となって空に還った。
マスターダーク「流石ですねぇ…隻腕の貴方が創造主である私と対等で戦えるとは」
牙禅の背後に現れる。開いた口からは彼の実力を高く評価する言葉が出てきた。
牙禅「…分身か」
マスターダークに背を向けていた。新たに現れたのが先程屠ったものでは無いと瞬時に察しており、故に見事当ててみせたのだ。
マスターダーク「えぇ、その通りです」
牙禅の考えを正解だと肯定した。これはレオも当ててみせたので大して驚きはしなかった。
だが、次に出た言葉はふんぞり返る創造主にとって意外なものであった。
牙禅「どれもこれも虚ろだ…本体は何処だ?」
振り向きながら赤い瞳が静かに睨みつけた。
そこから波動が燃え盛る…心眼で見抜いたのだ。
牙禅の言葉を聞いてか目を見開きながら息を呑んだ。面白くなってきてか笑いながら片手でシルクハットを深く被らせた。
マスターダーク「凄いですねぇ、貴方…」
不気味な笑みを浮かべる。
だが、同時に気を引き締めなければならないと思ってか数多の分身を生成し、牙禅を囲った。このままでは命が危ういと思って
マスターダーク「始末、する必要があるな」
シルクハットの鍔から目が覗く。黒い瞳には殺意と警戒が渦巻いていた。
牙禅「くだらん、こちらは元より…」
波動の槍を解き、再び手に纏った。静かに前に突き出し、腰を低くして構えた。
牙禅「本気だ!」
マスターダークに対する憤りと殺意…だが、どうやってこの状況を切り抜けるかと思考を張り巡らせていた。
レオの死によりグリンが戦意喪失している今、戦えるのは牙禅一人…なら、やるしかなかったと意を決していた。
次回 第参拾伍話 「抵抗と奮起」




