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クロノワールド -再創-(Re:Creation)  作者: ゼロザム=ルーゴ
第肆章 暗黒の創造主篇
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第参拾参話 「獅鬼創々(シキソウソウ)」

この物語はフィクションです。

実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

時は遡り、レオはブロブの突進を受けてグリン達から離されていた。

「久しぶりだなぁ…!」

黒い液体が形を象り、レオにとって見覚えのあるものへと変わった。

レオ「なっ!?お前!!」

見開いた目が映した姿はガザール、かつて交えた男であった。

ガザール (ブロブ)「レオォ!!」

深々と被ったフード、そこから笑みを浮かべた素顔が現れた。

レオ「クッソ!」

グリン達から離れてたまるかと力強く踏ん張って、押される状況をなんとか食い止めた。掴んだ手を離さず、力任せに振り回す。

レオ「なんで蘇ったんだよ!!」

勢いよく投げ飛ばして、離させた。だが、ガザールは体勢を立て直して、砂の上に着地した。

レオ「お前は、俺が確かに倒したはずだ!!」

目の前にいるガザールから決して目を離さず、握り締めた拳を構えた。

死んだガザールが生きていた事に対する困惑、強さを知っているが故の警戒心が胸の中で渦巻いていた。訊ねたのは気持ちの整理と事実の確認の為だ

ガザール (ブロブ)「んなの、わかってんだろ?」

それを聞いてか口角が吊り上がった。

ガザール (ブロブ)「地獄から戻ってきたんだよ!テメェを殺す為になァ!!」

荒い口調で訳を答える。

好機と言わんばかりの喜びと復讐による怒り、二つの感情が顔に表れ、レオはそれを感じ取った。

レオ (ガザールじゃねぇ…!こんなの、ガザールなんかじゃねぇ!!)

自身の知るガザールでは無いと心で理解する。当の本人から乖離している点から違和感を覚えた。苛立ち故か拳を強く握り締めた。

ガザール「さぁ!覚悟しやがれ!レオ!!」

そんなレオの事など知らず、彼に向かって走りながら顔を捕らえようと手を突き出した。

レオ「違う!!」

すかさず躱した直後、拳に炎が纏う。

次の刹那、突き出したそれはガザールの胸部に打ち込まれた事で派手なまでに吹き飛ばした。

十分なまでに距離を取った事を視認したレオはその炎を全身に纏い、あの獅子の形を模していた。

レオ「お前はガザールじゃねぇ!俺の事、赤獅子って呼ぶお前が!ガザールだなんて思わねぇ!!」

力強く声を張り上げ、ガザールを拒むように断言した。当の本人は地に伏した身体を起き上がらせた。

ガザール (ブロブ)「黙れよ…!俺は、ガザール…!誰がなんて言おうと、ガザールなんだ…!!」

レオの言葉を拒み、自身の存在を確立させようとした。直後、頭の中から声が聞こえた。

『流石だな!赤獅子ィ!!』

堂々と声を張り上げ、荒々しい口調でレオを賞賛していた。

ガザール (ブロブ)「な、なんで…!?」

知っている…いや、擬態した存在に気付き、愕然・戸惑った。その様子にレオは疑問に思い、困惑する。

『て事で、悪いな。お前は俺にはなれねぇ…』

徐々に意識が薄れていく…いや、乗っ取られているのだ。本当の魂に、本物の存在に

ブロブ「や、やめろ…!!」

身体の主導権が移ってか、立ち上がった状態で両手を広げた。

ガザール『俺は俺だ!!』

直後、肉体から断末魔が鳴り響いた。大気を揺らし、砂が舞う程の声量…それはまさに猛獣或いは鬼の雄叫びであった。

レオ「う、うるせぇー!」

あまりの煩(うるさ)さに両耳を塞ぐ程であった。

彼の言葉が届いてか、偶然のタイミングで声が止んだ。

静寂に包まれた中でガザールの両腕は力が抜けたかのようにぶら下がる。

不審に思うレオは警戒を解かずに、炎纏う拳を構えたままでいた。

ガザール「…よぉ……」

仰向けていた顔をゆっくりと下ろし、正面を見据えた。その変化はレオでさえも感じ取っていた。

カザール「久しぶりだな、赤獅子…」

正真正銘、彼は本物であった。ブロブとしての肉体を自分のものにし、魂さえも塗り替えたのだ。

唯一、以前と違うのは顔の半分が眼帯のような黒い布で覆われていた点であった。

レオ「ガザール…!!」

だが、敵である事に変わりないと思ってか警戒心を高めた。その意志に応じてか纏う炎が激しく燃え盛った。

ガザール「待てよ、俺はもうお前と闘う気はねぇ…」

レオに待てと手で意思表示し、制止させた。

レオ「えぇぇ!?どういう事だよ!?」

当然疑問に思い、困惑する。戦闘狂のガザールからは想像もできない、珍しい事なのだから

ガザール「あん時、最大を出し尽くしたおかげで心スッキリしてな。満足したって訳だ…よし、肉体は維持できるし、ヤツの支配からも抜け出せたようだな」

レオの問いに答えながら身体と精神の確認を行っていた。「何故、それをしているのか?」レオにとっては理解できなかった。

レオ「満足したって…それ、お前の中の闇が消えたって事か?」

だが、少なくともこちらに敵意が無くなったのは確かだと思い、能力と警戒心を解いた。

ガザール「まぁな…」

レオ「じゃあ!なんで生きてるんだ!?どうやって元に戻れたんだよ!?」

端的に答えると、レオの横を通り過ぎて何処かへと歩き出した。まだ謎は残っており、続けてガザールに訊ねた。

ガザール「理屈だけじゃまかり通れないんだよ」

投げかけられた問いを淡々と返しながらも歩みは止めなかった。

ガザール「理屈ごと捻じ曲げれる、そもそも俺達が暗黒世界なのかも怪しいしな…」

ふと、そう呟いた。囁く程度の独り言をレオは確かに聞き取り、更に疑問が増えた。だが、何かあるという事は確かであった。

レオ「んだよそれ!?」

詳しく訊こうとよりガザールに近付く。その表情は真剣なものであり、真っ直ぐ見つめていた。

キリがないと思ってか足を止めた。突然の事にガザールの背中にレオはぶつかり、少し後退った。

ガザール「そうだな、まず…」

全部話す事にしてか、振り向き、レオの顔を見た。

その時だった。

マスターダーク「オヤオヤ…まさかワタシの支配から抜け出せるとは……」

ガザールの背後に現れ、不気味に吊り上がった赤い口から声を発した。

ガザールは耳にした事で愕然とし、すかさず距離を取った。レオも聞いており、それに加えて逆さになっているマスターダークを目にしていた。

マスターダーク「面白いですねェ…」

赤く染った目がレオとガザールを捉え、特に後者に興味を示していた。

レオ「な、なんだ…!お前…!!」

思わず声が震える。握り締める拳が解けなかった。

身の毛がよだった、彼の声と存在…そして、醸し出す殺気によって

ガザール「まさか、来るとはな…!マスターダーク…!!」

決して目前のマスターダークから目を離さなかった。警戒心を高め、既に戦闘態勢に入っていた。

マスターダーク「うん!全ての世界を知りたいからね!」

雰囲気が無邪気な子供へと一変した。両手を広げて、逆さになっていた身体を元に戻した。

だが、不気味である事に変わりはなく、レオとガザールは恐怖を抱き続けていた。

レオ「お前がマスターダークか!暗黒の創造主って呼ばれてる!!」

二人のやり取りを聞いて、シルクハットの男がマスターダークである事を理解した。少し前にランスが教えてくれた事がヒントにもなっていた。

マスターダーク「おや、そこまで知っているとは実に光栄…私も有名人になったとでも言うべきでしょうか」

また雰囲気が変わる。落ち着きのある紳士のような話し方で微笑ましく思い、レオにお辞儀した。

すぐに解くとガザールに顔を向けた。

マスターダーク「でさでさ、どーやってあーしの支配から抜け出せた訳?」

今度はギャルのような喋り方でガザールに訊いた。

ガザール「さぁな、根性的なもんだろ」

冗談交じりに答えた。余裕を崩さないながらも気を抜かなかった。

マスターダーク「随分と非科学的ですね…まぁ、我々が言えた話ではないですが…」

真面目な学者のものへと変わり、ガザールの返答にくだらないと呆れ果てていた。だが、それは自分達も例外では無いと言い切った。

ガザール「そうかよ」

逆に呆れ返す。正直、彼自身も何故こうして戻れたのか?その仕組みや原理などは一切わからなかった。

ただ自分が暗黒世界では無いという不明瞭な憶測が漂うだけだった。

レオ「お前!なんでこんな事すんだよ!」

すると、声を張り上げてマスターダークに訴え・問いかけた。顔には激しい怒りと警戒心が表れており、本能的に嫌悪したまま睨みつけていた。

マスターダーク「と、言いますと?」

落ち着いたまま敬語で訊き返した。静かに首を傾げる。

レオ「惚けんな!お前のせいでみんな迷惑してる!苦しい思いをしてるヤツがいるんだ!!」

マスターダークの言葉がレオの逆鱗に触れ、吠えるように声を張り上げた。

脳裏にはこれまで出会ってきた他世界の者達、その中でも特にルナを思っていた。暗黒世界が襲わなければ彼女はサイボーグとして孤独に生きるなんて事は無かったのだから

マスターダーク「苦しい…サイボーグに心なんてあるのでしょうか?」

素であろう話し方で挑発した。だが、これは意図したものではなく、純粋な疑問であった。

レオ「お前…!ふざけんな!!!」

見事、その発言は逆鱗に触れた。

大地を蹴り上げ、急接近した。間合いに入った直後に燃え盛る拳を突き出した。

だが、それはすかさず繰り出されたサーベルにより防がれた。

マスターダーク「それに、俺も苦しいのは同じだ…」

シルクハットの鍔で隠れた目がレオを見つめる。そこには何の感情も無かった。

レオ「うるさい!!」

もう片方の拳を握り締め、炎を纏ったそれが振り上げられた。獅子を象った火の玉が空に昇る。

しかし、それも当たらず仰け反りながら後退するようにして避けられた。

レオ「うおおおおおおお!!」

雄叫びを上げながら怒りに身を任せて出来た間合いを再び詰めた。

獅子を模した全身に纏う炎が後ろに揺れ、マスターダークに殴り掛かる。

レオ「だからって!それをみんなに押し付けたらダメだろ!!」

その中でマスターダークの言葉を、想いを否定した。至極真っ当な意見を大声で、一切の迷いなく豪語した。

突き出される拳は確かにマスターダークの身体に打ち込まれ、燃え盛る炎が火傷の痕を生み出していた。

ガザール「赤獅子、お前…」

レオの勇姿に目を見開き、心の中で賞賛していた。もしかしたらレオ…彼含めた戦士ならマスターダークの野望を阻止できるのではないか?と僅かな可能性に気付いた。

マスターダーク「随分と不条理ですねェ…」

重い一撃と焼ける熱さをその身で受けているのにも関わらずに平然と溜息混じりに呟いた。

レオ「なんだと!?」

まさかの事実に二人は愕然とする。何か嫌な予感がしてかレオは瞬時に後ろへと下がった。

刹那、マスターダークのサーベルがレオの前を横切る。事前に避けたおかげで頸動脈を斬られずに済み、なんとか距離を取る事ができた。

レオの身体はガザールの隣に並び、纏う炎は未だに燃え続けていた。

レオ「効いてねぇのか!?」

信じられないと思いながらもこれが現実だと受け止めざるを得なかった。

ガザール (どういう事だ?あんだけ喰らえばもたないだろ…?)

そう上手くはいかないと理解させられ、苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる。だが、赤い瞳は静かに達観しており、思考を張り巡らせていた。

マスターダーク「虐げてきた周りは許され、やり返した自分はダメ…そういう事があるのはなんででしょうかねぇ?」

独り言のように呟きながらレオとガザールに問いかけた。赤く染った目は二人の姿を映していた。

マスターダーク「同族なのに、対等の関係なのに、命の価値も容姿の善し悪しも大差無いはずなのに…」

脚を閉じたまま両手を広げていく。まさに創造主の通り烏滸がましい姿勢に入っていた。

マスターダーク「実に人は身勝手だ、傲慢だ。浅はかな思考で、狭い視野で世界を語る…不愉快極まりない…」

両手に力を込めた直後、掌に闇が発現した。

握り締めていたサーベルとは他にピストルが生成され、握り締めた。

マスターダーク「ですので、そんな旧人類に代わって創造主である私(ワタクシ)めが…」

傾けていた刀身と銃身を回し、持ち替えてレオとガザールに向けた。それは戦闘…そして、殺害の合図であった。

マスターダーク「築いて差し上げましょう!思うがままの理想郷を!!」

高らかに叫んだ直後、迷いなくレオに接近した。翳す銃口から銃声が鳴り響き、閃光が瞬いた。

レオ「あぶねっ!!」

咄嗟の判断で躱し、弾丸が僅かに頬を掠めてそのまま通り過ぎた。あまりにも速かった…それに焦り、圧迫されるような感覚が襲いかかった。

マスターダーク「まだですよ!!」

想定していたのか逆からサーベルの刃が迫ってきた。不気味に吊り上がった赤い口にレオは恐怖で意識が引き寄せられそうになった。

だが、横から蹴りが飛んできた事で手にしていたサーベルを離し、遠くに飛ばされた。

ガザール「させねぇよ!!」

張り上げる声を耳にしてか目を遣るマスターダーク。赤い目には獄炎纏う拳がこちらに迫ってくる事象が映し出された。

マスターダーク「おっと!」

後ろに反って躱す。レオに銃口を突きつけながら後ろに下がっていく。ガザールは容赦無く追撃として殴り掛かる。

マスターダーク「そう易々と受けませんよォ!!」

獄炎纏った拳は全て難無く躱されていく。あまりの余裕を見せつけられ、当たらずにいる事にガザールの苛立ちが募った。

ガザール「この野郎!!」

衝動的に拳を突き出し、獄炎を火の玉として放った。だが、再生成したサーベルを振り上げた事でそれは真っ二つに両断され、マスターダークの横を通り過ぎた。燃え盛るそれは砂に覆われた地面に落ちた事で爆発を起こした。

レオ「ハァァァァ!!!」

意識がガザールに向けられていると咄嗟の判断で身体が動き、炎纏う拳をマスターダークの顔面に目掛けて突き出した。

それは顔面に直撃し、見事に削り取った。

ガザール「ナイス!赤獅子!!」

勝利を確信してか笑みを浮かべてガッツポーズを取った。敵であるにも関わらず、褒められてかレオも笑みを見せた。

だが、そんな期待・希望は打ち砕かれてしまった。

マスターダーク「おやァ…これは効きますねェ…!」

削り取った頭部…その口元から発せられた声により

目前のマスターダークにレオとガザールは驚愕する。

マスターダーク「肉が焼かれ、脳を揺らす程の衝撃…!まさに苦痛(ペイン)!!」

歓喜で声を震わせながら損傷した顔が数秒もせずに再生した。肉や血管が触手のように蠢き、修復していく。

マスターダーク「恐怖と絶望…全ての闇が私の生きる糧となるのです!!」

見せるは恍惚とした表情、愉悦に浸るそれは頬を赤く染め、目が蕩けていた。

レオ「マジかよ…!!」

恐怖が防衛本能を呼び起こし、急いで拳を引き抜こうとした。

マスターダーク「貴方も死んで、私の…!」

それより速くサーベルがレオの腕に目掛けて、振り上げられた。

ガザール「させねぇよ!!」

瞬時に間合いに入り、サーベルを持つ手…その腕を踏みつけてへし折った。

マスターダーク「なんと…!」

まさかの行動に目を見開く。ガザールの手がマスターダークの顔面を捕えた直後、獄炎を発して爆破を起こした。

逃れられなかった結果、首無しの状態となり、力が抜けたかのように砂の上で倒れた。

レオ「わりぃ!ガザール!」

ガザール「気にすんな」

感謝混じりに告げたレオ、ガザールは返事をしながら転がる亡骸に目を向けていた。黒い肉体は塵と化し、空へと還っていった。

ガザール (随分と呆気ない、創造主にして大した事…)

違和感を覚えながらも倒したと安堵したのも束の間、再び背後から声が聞こえた。

マスターダーク「いやー…二度目を受けるとは、とんだ失態をかましましたねぇ…」

想定外だったのかガザールは目を見開き、瞬時に振り返った。当然、レオも同じ反応だった。

そこで宙に浮いて横で寝そべっているマスターダークはいつも通り笑みを浮かべながら自嘲した。

レオ「し、死んでねぇ!?なんで!?」

大声でどういう事かと問いかけた。同じ暗黒世界の者ならば知っていると思ってだ。

ガザール「悪いが、俺も知らん…」

だが、答えはこうであった。

すると、代わりに教えてやろうと言わんばかりにマスターダークが口を開いた。

マスターダーク「こんな事出来たら良いのに…そう考えた事はありません?」

指で空間をなぞり、ご機嫌そうな様子を見せた。

レオ「あ?」

抽象的過ぎる語りに理解を拒み、疑問を表情に浮かべた。ガザールも同じであり、警戒していた。

マスターダーク「空が飛べたら、瞬間移動ができたら…そんな、非現実的なものを」

描いていた手は突然と言わんばかりに二人に向けられ、人差し指で指した。

ガザールが勘づいた。

ガザール「危ねぇ!!」

レオを突き飛ばした。直後、ガザールの胴体を弾丸が貫き、心の臓にサーベルの刃が突き刺さった。

レオ「ガザール!!」

突然の事に目を見開き、心配のあまり名を叫んだ。

ガザールは吐血した。全身に何とも言い難い苦痛が走る。

ガザール「ぐっ…!」

だが、何とか堪えて拳で突き刺さった刃を叩き割った。振り向きながら背後にいた人物の頭部を掴んだ。

ガザール「…はぁ!?」

そこで目にした者に驚く。背後から撃ち抜き、突き刺したのはもう一人のマスターダークであった。

レオ「なっ…!?分身か!?」

彼自身も困惑した。マスターダークはあそこから動いていないのだから

レオが出した答えに横になっているマスターダークが笑った。

直後、掴んだ方のガザールの手が銃声と共に削り取られた。

ガザール「またかよ!」

叫びながら痛みをかき消す。そのまま蹴り上げて、マスターダークの肋を折りながら遠くへと吹き飛ばした。

勢いよく弾丸が来た方角へと顔を向けた。そこにもマスターダークはおり、照準を合わせたピストルの銃口から煙が上がっていた。

マスターダーク「私は分身できるのです…いや、正確には暗黒世界を意のままに操れる、と言うべきでしょうかねぇ?」

横たわっていた身体を起き上がらせ、片手を掲げた。すると、上空に浮かぶ暗雲が捩れ始めた。

渦を巻く闇から黒い塊が隕石の如く降り注ぎ、レオとガザールの周りに落下した。

ガザール「ぐっ…!なんだ…!?」

砂塵が舞い、視界を塞がれる。

二人は目に入らぬよう両腕で防いだ。やがて止んでかそれを下ろし、目の前の光景を捉えた事で衝撃を覚えた。

なんと数多の分身がレオとガザールを包囲していた。手にはサーベルとピストルが握り締められており、全て構えていた。

ガザール「マズイな…」

多勢に無勢…命の保証は無いと思い、気を引き締めた。

レオ「なんで…!」

拳を強く握り締めながら怒気の籠った声で呟いた。

レオ「なんで世界を闇に覆って、滅茶苦茶にするんだ!!なんで!!!?」

これまで抑えていた想い、そしてルナの事を思い出しながら声を張り上げてマスターダークに問いかけた。

マスターダーク「単純な話です…」

浮遊したまま腰掛け、腕と足を組んだ。

マスターダーク「全ての世界を私のモノにする…世界征服とでも言うべきですかね」

シルクハットの鍔から覗く目がレオを見下ろした。吊り上がっていた口は無く、凍てついた雰囲気が本気である事を直接伝えた。

答えを聞いてか歯を強く食いしばり、瞳がマスターダークを睨みつける。

レオ「だったら!力ずくで止めてやる!!」

互いの拳を打ち付けて、高らかに宣言した。

屈してない、恐れてもいないレオの勇姿と言葉に鼓舞されてかガザールは笑みを浮かべて、拳を構えた。

マスターダーク「随分と威勢が良いですねぇ…」

面白いと思ってか、シルクハットを下ろして目を闇の中へと隠す。代わりに口角が不気味に吊り上がった。

こちらを向いた。

マスターダーク「さて、ここからが私のハイライトです」

そして、読み手である貴方に語りかけた。

マスターダーク「チャンネルは、そのままで…」

次回 第参拾肆話 「真相と絶望」

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