↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロノワールド -再創-(Re:Creation)  作者: ゼロザム=ルーゴ
第肆章 暗黒の創造主篇
PR
34/55

第参拾弐話 「紅蓮の獣」

この物語はフィクションです。

実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

グリン「何…ここ…?」

レオ「人一人も見当たらねぇ…」

四人は見開いた目で砂漠と化した世界を見ていた。普段賑やかなレオも静める程の衝撃で、ただ単に呆然としたまま立ち尽くしていた。

伏せる牙禅が瞳を閉じて、五感を研ぎ澄ます。

牙禅「…マズいな、攻められたみたいだ」

心眼で人含めた生き物を探知するも、何も感じ取れなかった。この事から暗黒世界が侵攻を終えたのだと確信を得た。仮に憶測だとしても、事実と言っても過言ではなかろう。

ライト「そんな…」

牙禅の発言にショックを受ける。もしその場合、激龍の欠片はどうなっているのか?最悪な想定として破壊されてるかもしれない。

これまでの傾向からして暗黒世界の者に宿っている事が多く、可能性としては低いものの有り得ないとは言い難い。

直後、ゲイツが空間を嗅ぎ始めた。

ゲイツ「…いるね、敵と欠片が」

迷いなく出た言葉が焦り、悩む四人を抑えた。

ライト「ゲイツさん…?」

何故わかったのか?不審に思うライトを他所にレオも嗅いだ。

レオ「…だな」

彼も感じ取ってか警戒し、腰を低くして握り締めた拳を構えた。

グリン「鼻が利くのか…!」

瞬時に理解し、レオとゲイツの見据える先に顔を向けた。それはライトも牙禅も同じであった。

刹那、暗雲から黒い物体が落ちてきた。

重い音を鳴り響いたそれは液体のように蠢き、人の姿を象った。

ゲイツ「あれ、強いかも…!」

警戒心を高めながら獣のように伏せて、爪を立てた。呼応してか黒い瞳に赤い輪郭が現れて白は黒へと変色した。更に帽子含めた衣服が赤く染まり、全身から赤い稲妻が迸った。

レオ・ライト「「赤くなった!?」」

グリン「紅蓮獣(グレンジュウ)!?」

猛獣のような殺気を放つゲイツを目にして二人が驚く。グリンはその姿について心当たりがあった。

牙禅「そうか…」(悪魔に弄られたのか…)

予感していたのか大して驚きはせずとも、静かに見つめる瞳は寂しそうに、そして何かに悔いていた。

ライト(牙禅さん?)

共にする仲間だからか、将又ライト自身の感性が豊かだからかは本人にもわからないが、辛そうな眼差しの牙禅に気付いた。

ゲイツ「ウガァァァァァァ!!」

そんな彼らを他所に雄叫びを上げ、赤い稲妻を迸らせながら黒い液体に接近した。

レオ「速ぇっ!?」

目にも止まらぬ速さに驚愕する。

グリン「一切の理性を失い、驚異的な身体能力を得ると言われてたけど、想像以上だ!」

紅蓮獣について説明しながら懐から薬品を取り出した。

迫るゲイツの殺気に反応してか沸騰するように蠢き、瞬時に触手が伸びてきた。だが、赤い稲妻を迸らせる身体を反らした事で難無く躱された。

ライト「猛獣みたい…!」

獰猛で俊敏に動き回るゲイツをそう表した。あまりの迫力に息を呑んでいた。

そんな彼らの背後にも黒い液体が砂の中から現れ、ゆっくりと迫ってきた。

直後、牙禅の手に波動が纏われ、槍として生成したそれをヤツに向けた。

牙禅「随分と卑怯な手を取るのだな、貴様…」

赤い瞳は刃物の如く鋭く、睨みつけた。

だが、その時だった。立て続けに新たに現れた黒い液体がレオと衝突し、そのまま連れて突進した。

レオ「うおっ!?なんだぁっ!?」

突然の事に目を見開くが、グリン達から離されてしまった。

グリン「レオ!!」

助けなければと手にする薬品を投げ飛ばそうとするも、目の前に別の黒い液体が立ちはだかってきた。

グリン「次々と…!!」

液体からただならぬ気配を感じてか無闇に動けなかった。レオの方は当の本人がなんとかするのを信じるしかなかった。

交戦していたゲイツが戻り、目前の敵を警戒し続けていた。

ライト「牙禅さん!グリンさん!」

彼もこの場に残った牙禅とグリン、ゲイツに駆け寄り、生成した光の直剣を構えた。

そんな四人を包囲するように黒い液体 ブロブがこちらを見ていた。直後、黒い液体から口が現れた。

ブロブA「あーあ、奇襲、失敗しちゃったね♪」

聞き覚えのある調子の良さそうな声を聞いてか、衝撃を覚えた牙禅とライトが目を見開いた。

ライト「貴方は…!」

もし彼らなら…と尚更、警戒した。

ブロブB「そうだな、大人しく殺されないとは随分と茨の道を辿りたいそうだ…」

続けて別の個体にも口が現れ、哀れと嘆く。

牙禅「シャドー…という事は」

声の主を見破る。調子の良い声はコピーのものであった。

ブロブC「如何にも、ご想像通りです…」

牙禅の確信に応じようとブロブは姿を顕にした。かつて倒した暗黒四天王の面々に…

更にグリンの前に立ちはだかったブロブはゼノへと変形した。


レオ「なっ!?お前!!」

尚、彼も愕然としていた。

「久しぶりだなァ…」

ニヤケながらタックルして突っ走るブロブは溶け出し、靡く深緑のフード付きコート…それが持つ黒い角が顕となった。


グリン「…いや、違うね」

だが、彼らが暗黒四天王本人では無いと異論を唱えた。その声は確信が宿っていた。

ライト「え?違うって?」

どういう事なのか理解ができなかった。対峙する相手は確かに本物だと視認しているのだから

牙禅「あぁ、まるで蛻(もぬけ)の殻だ…」

グリンに続いて心眼で偽物だと見抜いていた。

コピー (ブロブ)「変だって?何も変じゃないよ♪」

シャドー (ブロブ)「我らは暗黒世界、もう一つのあの世だ…」

そんな牙禅の言葉を嗤い、否定する。賛同するシャドーが喋り出す。まるで二つの肉体を一つの精神が共有しているかのようだった。

ゼノ (ブロブ)「つまり、死ぬ事は無いのです」

彼も例外ではなかった。確かにそこにいるはずだが、心や中身が無かった。

牙禅「戯言(たわごと)だな…」

次の刹那、振るわれた波動の槍が突きつけていたシャドーの首を刎(は)ねた。切り離された頭は維持出来ずに元の黒い液体となり、砂の上に落ちて溶けていった。

牙禅「ライトもわかるはずだ、ヤツはここまで弱くは無い!」

これが揺るぎない事実だと声を張り上げた。牙禅の言葉でライトは我に返り、理解が追いついた。

シャドー (ブロブ)「…面倒だな」

首無しの肉体が溜息混じりに愚痴を零す。

まだ生きている事実に三人は愕然とした。

シャドー (ブロブ)「こうもわからず屋とは…」

手を前に翳し、太刀を生成した。

コピー (ブロブ)「本当それ♪わかって欲しいよねぇ〜♪」

シャドーに同情しながら嗤う。声や様子からしてコピーらしく気楽ながらも、別人という事実がより一層不気味に映る。

グリン「不死身…なの!?」

その可能性が絶望として襲いかかる。苦戦を強いられると理解し、顔を顰めた。

ゲイツが暗黒四天王に化けたブロブ達を睨みつけたまま獣のような唸り声をあげる。得体の知れない嫌悪感に本能が反応していたのだ。

シャドー (ブロブ)「恐怖か?憎悪か?」

切っ先をゲイツに向けて、紫色の瞳が静かに見据えた。

シャドー (ブロブ)「その目から伝わってくるぞ、猛獣!」

口角を吊り上げながら淡々と述べた直後、突っ走ってゲイツに急接近した。間合いに入るや否や刃は振るわれた。

攻撃を捉えていたのですぐさま躱し、隙をついて鋭い爪を振り上げた。手に赤い稲妻が迸り、更に加速する。

だが、シャドーの肉体は黒い液体となりて変形し、容易く避けた。

ゲイツ「なっ…!?」

想定外にして非現実的過ぎる事象を前に目を見開く。

シャドー (ブロブ)「そう易々と奪えると思うなァ…!」

再び照準を定めた太刀が突き出される。だが、皮一枚で躱して致命傷は免れた。


ライト「ゲイツさん!!」

すぐに助けに行かなければと焦り、前に出て駆けつけようとする。だが、目前に赤紫色の光弾が当たり、砂が舞った。

ライト「…っ!」

阻害され、苦虫を噛み潰したような顔を浮かべた。横に目を遣ると、コピーがおり、突き出した手に武装した兵器が持つ砲口から煙が昇っていた。

コピー (ブロブ)「敵はひとりじゃないよ?」

ご機嫌そうに笑う。その手を振るい、装置から同色の光刃…ではなく、身の丈より大きい巨剣が現れた。金属の塊は腕と完全に同化していた。

ライト「わかっています…!」

あれ程大きいならば小回りが利くものを、と考えてか光の直剣は拳銃へと変形し、照準を合わせた。


牙禅「グリン!レオの元へと往け!!」

戦況を見抜き、瞬時に判断を下した。

グリン「…牙禅さん?」

突然何を言い出すのか理解できず、問いかけようとする。

牙禅「早く往け!!この場は私達に任せろ!!」

だが、問答は無用と声を張り上げた。

嫌な予感が頭と胸の中で渦巻き、レオに必要なのはグリンと考えてのものであった。

気圧されるが、牙禅の意図を読み取って頷いた後、すぐに動いた。

ゼノ (ブロブ)「おや、逃がしませんよ…」

グリンの背中に手を伸ばし、捕食者を差し向けた。

飛行する黒い怪物の大群は人より速く、瞬きする間もなく目と鼻の先まで迫ってきていた。だが、それらは真横から現れた無数の波動弾に直撃して、消滅した。

牙禅「俺が相手だ」

自ら下した指示で仲間を殺させるかと言わんばかりにゼノを睨みつける。片手には波動で生成した槍が握り締められ、欠損した腕は青い振袖と長い丈が風で靡いていた。

ゼノ (ブロブ)「片腕の無い貴方が?」

真顔で見据えながら煽る。平然としている声だが、確かに嗤っていた。

だが、牙禅は揺るがない。平然とした表情と態度、まさに彼の意志のようだ。

それを見て気に入らず、舌打ちをする。

ゼノ (ブロブ)「不愉快な…!」

手を指揮者のように振り、捕食者を操る。黒い奴らは開いた口から白く濁った光線を放った。

見切った牙禅は無駄な動きなくして躱し、走ってゼノとの間合いを詰めた。光の如く波動の槍を振るうが、ゼノは瞬時に一匹の捕食者をレイピアに変えて防いだ。

ゼノ (ブロブ) (馬鹿な…!?片腕でも尚この速さ…!?)

欠損して治癒した後も鍛錬を怠らなかったが故の賜物、その成果に愕然と関心を覚える。

牙禅「散ッ!」

静かに且つ力強く声を張った直後、槍を構成していた波動は火の粉となりて散った。

ゼノ (ブロブ) (馬鹿な真似を!!)

まさかの戦法に驚くが、好機と捉えてすかさず振るったが、皮一枚でまた躱された。そのまま牙禅は流れるように蹴り上げ、波動も喰らわせた。

深く顎下に入り、突き上げられたが、バク転で距離を取りながら攻撃を受け流した。

ゼノ (ブロブ)「…五体不満足でも未(ま)だ劣らないとは、流石ですね」

溶けている顎下に触れてなんとか復元する。黒に染まった赤い瞳が牙禅を捉えたまま深呼吸をし、興奮する気持ちを抑えた。

牙禅「いつまで吠えるつもりだ?」

彼はただ構えていた。片手と両足に波動が纏い、炎のように燃え盛る。

ゼノ (ブロブ)「そうですね、立ち話も無駄ですし…」

牙禅の言葉に応じようと、顔の横で手を叩く。空に鳴る音が周囲にいる捕食者を呼び、全てがゼノの元へと集っていく。

液体のように揺れ、姿を象っていく。巨大な捕食者と巨大な両手が生成され、本体の頭部からゼノの顔が現れる。

ゼノ (ブロブ)「すぐにケリをつけましょう!」

突き出された両手が牙禅に襲いかかる。大きさも相まってまさに壁のようであり、当たれば一溜りもないだろう

だが、牙禅は恐れず腰を低くして片手を後ろへと引く。捕食者の両手を見据えたまま静かに構える。

牙禅「ハァッ!!」

目と鼻の先まで迫った直後、掌底を繰り出した。直撃した黒い障壁に青い衝撃波が広がり、見事に爆散してみせた。

ゼノ (ブロブ)「まだまだ!!」

塵と化した肉塊を再び集わせて、金属の塊へと変形する。それは後ろについたバーニアから炎が噴射した事で再び接近する。

牙禅は難無く跳んで躱し、逆にゼノに近付く。だが、これだけで終わる事は無かった。通り過ぎた鉄塊が分裂し、数多の破片が軌道を変えて再び牙禅へと飛んでくる。

牙禅「なんでもありだな…!」

心眼で殺気を読み取り、残像を起こして左右に動いて相手を翻弄する。

ゼノ (ブロブ)「ちょこまかと!」

飛ばす鉄の残骸を操り、確実に牙禅へと迫る。だが、一つも当たる事無く、全て地面にめり込んだ。

牙禅「波動!!」

片手に蒼い炎が纏い、静かに燃え盛るそれを力強く握り締めた。直後、大地を蹴り上げた牙禅が目にも止まらぬ速さで突っ込んだ。狙うは捕食者本体の頭部にいるゼノであった。

だが、捕食者は口を大きく開けて牙禅を丸呑みにした。続けて鉄の残骸も入っていき、口の中以外にも入るそれらも例外なく捕食者の中へと沈んでいった。

ゼノ (ブロブ)「食われましたか…」

牙禅の最期を見届けた事で勝利の確信を得た…その時だった。

ゼノ「んぐっ…!?!?」

目を大きく見開き、突如として苦しみ悶えた。捕食者本体から青い光が発し、徐々に広がっていく。

ゼノ (ブロブ)「こ、これは…!!?」

次の刹那、捕食者本体はゼノをも巻き込んで爆散した。肉体を構築していた黒い液体も蒸発して、跡形もなく消えた。

そこに立つは牙禅一人であり、濡れていた身体もすぐに乾いていた。

牙禅「…内側から破壊させてもらった」

静かに呟いた直後、迷わずグリンの元へと走り出した。


その頃、ライトはコピーと交戦していた。

駆け抜けながら光の拳銃を構え、コピーに向けて連射する。

コピー (ブロブ)「ちょこまかと動くねぇ!!♪」

腕と同化した巨剣に施された機関銃が火を噴き、鉛玉を飛ばし続けていた。

ライト「…っ!」

弾数は圧倒的にコピーの方が多く、苦戦を強いられざるを得なかった。

コピー (ブロブ)「でも!まだまだだよ!♪」

もう片方の腕を横に伸ばし、前腕部に新たな兵器が生成され、武装された。それはパイルバンカーであり、手を握り締めたと同時に金属製の槍が飛んできた。

ライト「させない!」

高速で迫るそれに照準を合わせ、引き金を引く。三発もの光弾が鉄板を鳴らした直後、なんと槍が爆ぜた。

ライト (槍じゃなかった!ミサイル…!でも、確かに形は…!)

目前の出来事に目を見開き、困惑させる。数多の疑問が脳を支配し、整理しようと思考を張り巡らせた。

爆煙の中から、ライトの横にコピーが現れる。

コピー (ブロブ)「考えちゃってるねぇぇ!♪」

隙ありと好機と捉えてかニヤケ面を浮かべており、巨剣を構えた。

ライト「しまった…!!」

我に返ってかコピーの存在に遅れて気付いた。

コピー (ブロブ)「じゃあぁねぇぇぇぇぇ!!!♪」

容赦なく巨大な刃が振り上げられ、首に目掛けて迫る。

だが、ライトは後ろに反って躱した。

コピー (ブロブ)「えっ!?」

想定外の事態に愕然とし、呆然とする。

ライト「なんてね」

目は落ち着いており、コピーを見据えていた。向ける銃口から光弾が放たれる。眩しさに目を瞑り、怯む。そして、弾丸は脳天に当たった。

すかさずライトが後退して距離を取ると、銃口を突き付けるようにして光の拳銃を構えた。

ライト(…まだ、倒せはしないか)

急所を狙ったとはいえ、敵は常識の通じない怪物…倒したと思わない方がいいと判断した。

コピー (ブロブ)「痛いなぁっ…」

苛立つ声を発した後、当たったであろう頭に触れ、抑える。

コピー (ブロブ)「何すんだよぉぉぉ!!」

手を離した先には、その顔は口より上は無くなっていた。声を荒らげながら間合いを詰めて、巨剣を振り上げる。

だが、ライトはすかさず躱し、隙をついて光弾を連射する。百発百中コピーの肉体に埋め込まれる。

コピー (ブロブ)「やめろよぉぉぉぉぉぉ!!いたぁいいじゃあないかああああああ!!!」

光に弱い暗黒世界故か、まがい物だとしても肉体を構成していた黒い液体が溶け始めた。

ライト「けど、光に弱いなら!」

好機と捉え、隙をついて何発も撃ち続ける。光弾は黒い液体に沈み、溶け込んでいく。

コピー (ブロブ)「あああああああああああ!!いやだあああああああ!!!やだあああああああああ!!!」

振り上げていた、空に掲げていた手…そこに武装していた巨剣も維持できずに自壊する。

撃たれる度にコピーに化けたブロブは溶けていくと同時に塵を吹き出しながら空に昇っていく。

コピー (ブロブ)「しねええええええええええ!!!」

最後の悪あがきとしてライトに突っ走り、手を象っていたそれを伸ばす。

ライト「悪いけど…」

近付いてくると読んでか拳銃だった光を直剣に変形させた。次の刹那、光の刃は振り上げられ、黒い液体を斬り裂いた。

ライト「まだ、死ねない!!」

完全な一撃、それがトドメとなったのかコピーは一言も発しないまま消滅していった。


紅蓮獣に成ったゲイツが目にも止まらぬ速さでシャドーの周りを駆け回っていた。

シャドー (ブロブ)「こ、こいつ…!!」

息を切らしていた。全身を維持していた黒い液体は溶け出していた。他二人が長引いていた中、ゲイツだけは違った。

シャドー (ブロブ)「消えろ!!」

先を見越して刃を振るうが、見事に躱されて鋭利な爪で胴体を切り裂かれた。

ゲイツ「遅せぇよ」

迷いなくもう片方の手を突き出し、液体に沈む。次の刹那、シャドーの全身に赤い電流が迸った。

シャドー (ブロブ)「ば、馬鹿な…!!」

悲鳴をあげる間も無くして電撃が止み、黒い液体が爆ぜた。その一部はゲイツの頬に付着するが、害は無かった。

元の姿に戻ったゲイツが親指で拭った事で跡が残った。

ゲイツ「…汚(きった)ねぇな」

溜息混じりに呟いた。


場面はライトに変わる。振り返って、コピーがいたところを見つめた。

ライト「黒い液体で、なんでもあり…これって……」

ここまでの激闘を思い返し、既視感が過ぎった。


グリン「ホムンクルス…!」

砂の上を走り続ける中、ブロブを見て気付いた。

出た言葉、それは創造世界では禁忌とされる化学兵器の名であった。

黒い液体の見た目で、国一つを滅ぼしたとして開発や実験は禁止された。

グリン「だとしたらマズい…!早くレオの元に…!!」

焦燥感が募り、レオの無事を祈った…その時だった。

グリンの青い瞳がレオの後ろ姿を映していた。

グリン「レオ!!」

無事だったと安堵してかレオに駆け寄る。

レオ「お?そっちも終わったのか?」

その声に反応してか振り返った。顔には笑みを浮かべており、無事である証拠を裏付けた。

だが、グリンは心のどこかで違和感を覚えた。

グリン「牙禅さんの指示で来たからわからない」

近くに来た事で足を止め、微笑み返した。

レオと一緒にいるが故の安心感…そんな温かい気持ちが胸の中を覆い尽くす。

きっと気のせいだと頭で考え、その違和感をかき消した。

レオ「そっか」

突っ立ったままさりげなく返す。かき消していた違和感が再び掘り起こされた。

グリン「ん?レオ?」

疑問を口にするが、レオがグリンに近付き、肩を組んだ。

レオ「俺、ガザール倒すのに苦戦してよ…」

淡々と喋る。いつもの明るく活発な声色ではなく、音声合成のように…それが更に違和感を増大させていった。

グリン「珍しいね?疲れてるの?」

訝しみながら訊ねた。

レオ「そ…そうか?あんまり変わんねぇ気がするけど…」

指摘を受けてか、首を傾げながら小難しい顔で頭を掻いた。

瞬間、牙禅が音もなく姿を現した。僅かに砂が舞い、微風(そよかぜ)が吹いた。

牙禅「随分と遠くへと飛ばされたみたいだな」

レオとグリン、二人を視認してか近付いてきた。彼もレオの心配をしていた。暴走気味だった自分を止めてくれた恩もあったから

グリン「どうやらそうみたい…」

かたじけないと思いながら振り返ろうとした。

次の刹那、素早い何かがグリンの横を通り過ぎた。

目の前にはレオがおり、牙禅に向けて炎を纏わぬ拳を突き出していた。間合いに入られた当の本人はその攻撃片手で防いでいた。

グリン「…え?」

突然の事に呆然とする。理解が追いつかなかった。

心では気付き始めているものの、事実を認めたくなかった。

牙禅「…貴様、レオではないな?」

来る前から察知してかやけに落ち着いており、赤い瞳がレオを睨んだ。

すると、レオの口角が不気味な程に吊り上がる。

レオ?「正解♪よくぞ私がレオでは無いと見抜きましたねェ…」

聞き慣れた声だが、喋り方や雰囲気などが本人から乖離しており、不気味に聞こえた。レオであってレオではない…まさにそんな感覚だった。

牙禅「当然だ、共にした戦士を忘れる訳が無い。そして、貴様のような奴がレオであるものか!」

怒りが湧き上がり、レオの拳を握り締めていた手に力が込められた。同時に波動が青い炎のように発現した。

レオの手が砂のように崩れた。視認して命の危険を感じたのか二人から距離をとった。

グリン「まさか、レオは…!」

牙禅の隣に並んで訊ねた。考えうる可能性…その中でも確実なもの、出来れば外れて欲しいと心から願った。

牙禅「…既に、死んでいる」

だが、告げられたのは無慈悲で残酷な事実であった。

それを聞いたグリンが目を見開き、息を呑んだ。

最悪な想定、それはレオが死んでいる事であった。

レオ?「これまた大・正・解!」

両腕を広げ、空を見上げた。レオの亡骸から黒い塵が噴き出て、一つに集っていく。そうして偽っていた人物が姿を現した。そう、マスターダークであった。

レオから笑顔は消え、代わりにマスターダークが浮かべていた。不気味に吊り上がった赤い口が二人に恐怖を与えた。

マスターダーク「流石は青獣族!そこまで見抜けるとは!!」

歓喜したまま牙禅に拍手をしていた。シルクハットの鍔で目が隠れ、口が大きく強調される。

牙禅「…誰だ?貴様は」

只者では無い雰囲気に殺気が本能的に警戒する。そのままマスターダークに訊ねた。

マスターダーク「アタシデスカ?私(アタシ)はマスターダーク…暗黒の創造主デス」

落ち着いた様子で名乗りながら牙禅達にエンターテイナーのようなお辞儀をした。

手は胸の前に、逆の手は腰に置かれていた。

彼を前にグリンと牙禅は戦慄する気持ちを何とか押し殺し、睨みながら気を引き締めていた。

紅蓮獣

→ゲイツが持つ能力であり、赤く染まり目は反転する。

一切の理性を失わせる代わりに驚異的な身体能力を得る。また全身に赤い電流が迸る。


次回 第参拾参話 「獅鬼創々(シキソウソウ)」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。