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クロノワールド -再創-(Re:Creation)  作者: ゼロザム=ルーゴ
第肆章 暗黒の創造主篇
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第弐拾伍話 「黒ノ魔女と真ノ闇」

この物語はフィクションです。

実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

時は遡ってムラサメ達がエドワード魔法学校に赴く前の事、彼らは薄暗い森の中へといた。

数多の木々が影を作り、枝に止まる烏が三人を見つめていた。

フレッド「薄暗い…枝も当たって、地味に痛い…」

無表情で子供のようにぐちぐちといじけながらも進む身体は堂々としていた。

フレッド含めムラサメとワームは暗い森の中を歩いていた。

ムラサメ「もうそろだ、そいつより上出来な闇と出会えるのは…」

フレッドの戯言を気にする事なく、何処かワームを見下すような発言をしていた。

訝しみながら首を傾げるフレッドだが、抱く疑問はすぐに消えた。

森の中に黒い瘴気が漂ってきた。それは触手のように伸びてきて、霧のように辺りに充満していた。

瘴気を感知してか烏達が異常な程に鳴き始めた。まるで身の危険を知らせるかのように

フレッド「これは…?」

ワーム「キシィィィィィィ…!!!」

微かに恐れるフレッドは瘴気に気付き、ワームは警戒心を強めて唸り出す。

逆にムラサメは平然としたまま、ただ真っ直ぐに見据えていた。

ムラサメ「お出ましか、会いたかったぞ…」

待っていたと言わんばかり静かに口を開く。

黒に覆われた赤い瞳が映した者、それは魔女と恐れられた者 レヴィムであった。


そうして現在、レヴィムの前には楓弥がおり、あまりの威圧感に身構えていた。

楓弥「なんで、お前がここに…!?」

彼女から放たれる瘴気に戦慄し、恐れのあまり身体が震えそうになった。これがレヴィムの力、まだ本気どころか力の一つも出していなかった。

レヴィム「………」

楓弥の問いに返ってきたのは沈黙であり、虚ろな目はただ先を眺めるだけであった。

楓弥「相変わらず気味悪いな、お前」

そんなレヴィムに対して嫌悪感を抱いていた。だが、楓弥の言葉に反応する事も無く、手にした何かを静かに見せてきた。

楓弥「なんだ、それ?…黒い玉?」

当然ながら訝しみながら暗黒玉を凝視し、更に警戒心を強めた。

ジョレッド「今回の件、貴様の仕業だったか…レヴィム」

するとそこにジョレッドが現れた。穏やかな目には敵意が込められており、レヴィムを見据えていた。

彼女は勿論ながら楓弥も彼の存在に気が付いていた。

楓弥「そっか、ジョレッド校長先生なら…」

レヴィムからは一言も発していないのに何故わかるのか?それは魔法で相手の思考を読み取っていたからだ。

ジョレッドはこの世界において最強で偉大な魔法使いであり、彼の持つ膨大な知識は全能に等しかった。当然、その中にはレヴィムに精通する禁忌の魔法についても記憶してあるのだ。

ジョレッド「何何…『私では無い?外から来た者と手を組み、その手伝いをしているだけ』か…」

銀色の瞳に魔法陣が現れ、レヴィムの心を読み取る。

楓弥「それって、あのゴリラみたいのか?」

彼女の言葉が示すものが脳裏に過ぎったので訊ねた。それを聞いたレヴィムは目線をジョレッドに移す。

ジョレッド「そうみたいだな…何を目論んでいる?」

レヴィムの動きで察し、心を読むと続けて問いを投げた。

すると、レヴィムの口角が不気味に上がった。彼女の意図を読み取ってか、ジョレッドの目が睨み始めた。

ジョレッド「成程、ならばすぐにでも止めなければな…!」

断言すると怒気の籠った声を張り上げた。直後に握り締めた長杖で力強く地面を叩いた。

すると、ジョレッドの足元に魔法陣が現れ、激しく光りを放つ。

あまりの眩さに楓弥は両腕で光を遮るようにして目を守る。一方でただ辺りを彷徨うダークアイは塵となって消滅した。

だが、レヴィムとジョレッドは違った。防ぎたくなる程の眩しさに動じず、逆に落ち着いていた。

ジョレッド「そうじゃ、レヴィム…お前が”破壊と自由”を望むのならば、私が全力で阻止しよう!」

長杖を振り回し、レヴィムに宝玉を向けるとそこから黄色い光が瞬いた。

ジョレッド「ボルゼス!」

次の刹那、宝玉から稲妻が放たれた。空間を走りながらレヴィムに襲いかかる。鋭い光が彼女を貫き、強烈な電撃が彼女を痺れさせようとした。

思惑通り雷は瘴気を通り抜けてレヴィムを射抜き、あまりの衝撃にレヴィムが後退る。

確かに倒した…かに思えた。だが、絶命する事など叶わず、彼女は平然としていた。

ジョレッド「瘴気で魔力を弱めたか…」

殺せなかった理由とその絡繰は既にわかっており、厄介だと改めて痛感した。

彼女の魔法は全てを飲み込む無限の闇であり、触れたものを無に還すというもの。

ジョレッド「厄介極まりないものを会得したな、レヴィム…!」

ならば次の手を打とうと、足元の魔法陣に長杖を叩いた。力強く且つ美しい音色が鳴り響いた直後、レヴィムの足元に亀裂が走った。

次の刹那、彼女の足場が隆起しながら尖った岩が突き出た。

ジョレッド「グランガイア!」

あまりの衝撃にレヴィムは吹っ飛ぶも、叫び声一つも出さないところか動じる様子も無かった。

レヴィムがジョレッドに向けて指をさすと、周囲に漂っていた瘴気が意志に応じて彼に襲いかかる。

ジョレッド「無意味だ!エルサイクロン!!」

声を張り上げると、周囲に発生した白い風が瘴気を切り払った。それはただの風ではなく、光を掛け合わせたもの…闇を払うのは光、安直ながらも歴としたものである。

楓弥「ジョレッド校長先生!俺、アズルを探しに…」

あまりにも凄まじい戦況に呆然としていたが、我に返ると、レヴィムについてはジョレッドに任せて先を急ごうとした。あるものを目にするまでは…

楓弥「お、お前…!」

何かを捉えた楓弥の目が大きく見開く、それは息を呑むものであった。

瞳に映るのはレヴィムであり、彼女は意識を失っていたアズルを片手で持ち上げていた。

楓弥「アズル!!」

現状を理解すると、呼びかけるように声を上げた。

ジョレッドもその事に気付いており、怪我をさせる訳にはいかない為に手も足も出せなかった。

そんな二人を他所にレヴィムは暗黒玉をアズルに近付け始めた。

楓弥「やめろ!!」

させまいと突風で接近を図る。

ジョレッドも魔法陣から光の鎖を放ち、阻止しようとした。

だが、間に合わなかった。暗黒玉がアズルの体内に入ると、闇が爆発するが如く周囲に放たれた。

あまりの衝撃に楓弥とジョレッドは吹き飛ばされ、レヴィム達からの距離が出来てしまった。

楓弥が床に身体を打ち付けられそうになったが、瞬時に駆けつけたジョレッドが受け止めた事で阻止された。

楓弥「アズルウウウ!!!」

だが、他の何よりも、特に自身よりもアズルを気にかけており、彼女の身を案じて名を叫んだ。

闇はアズルを包み込み、かなりの変貌を遂げた。

その姿はキノコと人を掛け合わせており、数多の赤い目を持つ真っ黒な体であった。

暗黒の茸 マタンゴの意識が目覚めると、レヴィムに身体を向けた。

レヴィムの手がマタンゴの頬に添えられると、口が開いた。声は発していないが、明らかにマタンゴに対して語りかけていた。

それを終え、与えられた命令を理解したマタンゴは思いっきり深呼吸をし始めた。

楓弥「アイツ!アズルで何しようって…!」

ジョレッド「まさか!!」

目の前にいるマタンゴの行動を理解出来ていなかった楓弥。だが、ジョレッドは心から理解すると、すぐさま危機感を抱いた。

ジョレッド「シンミラーズ!」

瞬時に魔法陣を展開させて、楓弥と共に光魔法で形成したドーム状のバリアを張った。

楓弥「ジョレッド校長先生!?」

ジョレッド「許してくれ!フーヤ!!」

突然の行動に楓弥は困惑し、当の本人は何処か悔やんでいた。

次の刹那、マタンゴが叫び始めた。

耳障りな金切り声が鳴り響き、辺りを震撼させんとする衝撃波を放った。それは廊下を通って校内の窓ガラスを割った。

楓弥「な、なんだよ…!」

あまりの衝撃に愕然とする。だが、直後に彼は目にした。音速で宙を駆け抜ける赤紫の粒子のようなものを


その頃、中庭にいる剣達は衝撃波に、ガラスの割れる音に気が付いた。

メビウス「な、なんだ?」

ムラサメ「…やってくれたか、あの魔女」

困惑する剣とメビウス、そしてフレッドの三人。だが、ムラサメは計画通りと言わんばかりに笑みを浮かべていた。


およそ数十秒が経過すると、衝撃波も叫び声も収まった。

楓弥「速くアズルを!」

ジョレッド「待つんじゃ…!」

出ようとするが、ジョレッドに力強く掴まれた事で阻止された事で咄嗟に振り返る。

ジョレッドは深刻な表情を浮かべていた。しかし、何処か落ち着いており、頭の中で打開策を練っていた。


場面は変わり、フォースは伸びて襲ってくるワームの舌を躱し続けながら走り回っていた。

フォース「ホント!嫌になるね!!」

執拗に迫り来る舌にフォースは余裕な笑みとは裏腹に嫌悪感を抱いていた。

ワーム「キシャァァァァァァァ!!」

何度も舌をレイピアの如く突き刺してきたが、フォースは避けた直後に高く跳んで背後に回った。

それによりワームは勢いよく振り返った。獲物を逃さないと言わんばかりに

続けてフォースに襲いかかるは太く長大な尻尾だった。

フォース「黄金の(ゴルド)!!」

瞬時に対策を立てようと突き出した手に黄金を纏わせた。創られるは扇状の刃を持ったガントレット、その刃がワームの尾を切断した。

フォース「伐砕(アクスト)!!」

分離した尾が宙高く舞う。

だが、ワームの猛攻はこれで終わらなかった。

なんと切断面から幾つものの黒い手が現れ、捕らえようと伸びてきたではないか

フォース「黄金の爆撃(ゴルドデトナツィオン)!!」

扇状の刃は砲身へと変形し、その口から金色の砲弾が放たれた。

黒い手が砲弾に触れた瞬間、金色に瞬く爆発を起こした。尋常ではない爆風によりフォースとワームは吹き飛ばされた。

フォース「うおっと!」

ワーム「キシィィィィィィ!!」

だが、フォースはなんとか着地し、ワームは巨体で頑丈な図体のおかげで耐えれた。

ワーム「キ、キシィィィ…!」

しかし、ワームの表面から黒い塵が浮上していた。

フォース「それ、ダメージ入ってる合図だろ」

ワームの弱点とその攻略の糸口が読めた。瞬時にフォースは掌にに黄金を生成、日本刀に変形したそれを握り締めた。

フォース「黄金の月牙(ゴルドモナート)!!」

金色の太刀を手にしたまま、刃先を翳した。

すると、不意にフォースは歯を見せるように笑う。

フォース「さーて!」

手にする黄金の刃を一振り、切先を地面に向ける。

それとは逆にもう片方の手でワームに手招きし、こちらに来るよう促すようにして煽った。

フォース「Shall we dance?」

意を決して、勇気や自信に満ちた笑みを浮かべていた。それは敵意より余裕故に遊ぶ気満々であった。

ワーム「キシャァァァァァァ!!」

見事な程に挑発に乗ると大地を蹴り上げて、フォースに急接近した。

フォース「そいやっと!」

だがなんと、巨体を前にしても避けずに、刃を勢いよく振り上げた。雷の如く繰り出されたそれはワームの胴体に深い傷を負わせた。

ワーム「キシィィィィィィ!!?」

フォース「まだまだ!」

その事実を前にワームは愕然と困惑を顕にする。だが、フォースは間髪入れずに振るい続けた。

何度も何度も刃が傷を刻み、確実に痛みを与えていた。

本能的に危機を感じ取ったワームが大地を蹴り上げて後退しながら距離をとる。

直後にフォースを突き刺そうと舌を伸ばす。

だが、彼はそれを微かに反らすだけで躱した。瞬時にフォースは黄金の刃をワームの舌に突き刺す。

ワーム「キシャァッ!?」

痛みではなく、彼の咄嗟の行動に驚く。

フォース「うおおらああああ!!」

次の刹那、前進して舌を斬り裂いていく。そうして間合いに入った時、落雷の如く太刀が振り下ろされた。

フォース「あらよっと!」

ワーム「キシィィィィィィ!!」

それはワームの肉体を真っ二つにする程のものであった。黄金の粉末が辺りに舞っていた。

ワーム「キシィィィィィィ…」

だが、二つに分かれた身体は蠢くインクのように形を変え、巨大な顔となる。顎は両側から閉じる門のように喰らおうとする。

フォース「大人しく餌にはならねぇよ!」

だが、大地を蹴って後ろに跳んだ。

牙は空を切った。だが、閉ざされた顎は一体化してまた変化すると、元のワームへと姿が戻った。

ワーム「キシャァァァァァァァ…!」

不気味に笑う。胴体は勿論、尻尾も元通りであった。

だが、フォースも微笑む。それを視認したワームが首を傾げる。何故こいつも笑っているのかと

フォース「もうデートは…」

待っていましたと言わんばかりに、突然指パッチンをした。

その時、理解出来なかったワームの内側から黄金の棘が突き抜けた。

ワーム「ギシャアッ!?」

フォース「おしまいだ」

そう、先程の太刀による攻撃は金の粉末をワームの中に仕込む為のもの。斬撃を除いた外からの攻撃では効かないのならば、内部から攻めていけば良いとフォースは考えていたのだ。

ワームの身体から黒い塵が浮上する。先程よりも多く

フォース「あれが風前の灯火…命尽きる合図ってところか」

それを見てワームが死ぬのだと察知した。

フォース「さて、みんなは…」

どちらにしても消滅すると考えると、目の前にいるワームから背いた。だが、瞳に映る状況に彼は目を大きく見開いた。

その先には生徒達に拘束された教師達がいた。また数人の生徒は杖の先端をフォースに向けたり、本を開いたりと、明らかに魔法を放つ準備をしていた。

フォース「おいおい、なんのジョークさ?」(虚ろな目、明らかに様子がおかしい…洗脳でも受けているのか?)

困惑しながらも、すぐさま異変を見抜いていた。戦闘の中で嫌な程の衝撃が襲ってきたが、目の前のワームを倒す為に後回しにしていた。だが、今になって衝撃の原因がわかった。

次の刹那、数人の生徒達から数多の魔法が放たれた。

それは火の玉であれば、一直線に噴く水でもある。閃光の如く駆け抜ける雷でもあれば、全てを切り裂く風にして、押し潰すであろう岩と多種多様な攻撃が襲ってきた。

フォース「うおおおっと!?」

これは命の危機を感じてか、机を盾にしてすぐさま物陰へと身を潜めた。

フォース「おいおい、随分とハッチャケてるねぇー…」

冗談交じりに出た言葉とは裏腹に、見据えながら思考を張り巡らせていた。

「キシィィィィィィ……」

聞き覚えのある声を耳にしたフォースは静かに驚き、すぐに振り返った。なんと、ワームはまだ生きていたのだ。

フォース「おいおいおい、不死身過ぎない?」

微かに焦りを見せながら金色の太刀を手に、また倒そうと前へと踏み出ようとした。

だが、飛んできた岩が身を潜めていた机を削った。

フォース「って、そう上手くはやらせてくれないよね」

愕然とするも、直ぐに平静を保った。止まない魔法の弾幕により無闇に動く事が出来なかった。

その隙にゲル化したワームは弾幕を掻い潜りながら地面を這いずり回って、この場を離れた。

フォース「マズったな、けど…!」

逃げられたという事実に悔やむ。

フォース「おかげで彼らを止めれる事が出来るね!」

だが、これは逆にチャンスと解釈し、目の前の生徒達に集中した。

決断したフォースがすぐさま両手を合わせて、片方の掌を地面に触れた。

フォース「黄金の網(ゴルドシュピネ)!」

高らかに唱えた次の刹那、生徒達の周辺に金色のワイヤーが張り巡らされた。

身動きを封じられた生徒達は操られたが故に無表情であったが、確かに動揺していた。

フォース「順調!」

そう確信したが、急に身体から力が抜けた。

フォース「な、なんだ?」

身に起こった現象に困惑するが、何かを察知してか胸元を開いた事で原因を知った。

そこには魔法陣のような刻印があった。いつの間にか施されていたのだ

フォース「…成程ね、俗に言う能力封じってやつ?」

これから先は苦戦を強いられるものになると理解すると、目の前にいる生徒達に再び目を向けた。

視線の先には拘束から逃れた数人の生徒がおり、こちらに向けて魔法を繰り出そうとしていた。

フォース「あんまり、乱暴はしたくないなぁ…おじさんは」

苦痛を隠す為に余裕そうな笑みを無理にでも浮かべた。


場面は変わって中庭、剣はムラサメは斬り合いにへと発展していた。

ムラサメ「どうした!それが邪光の末裔とはなんとも貧弱なものだな!!」

剣「くっ…!」(こいつ、どれだけの怨みを…!)

戦力差、場数に経験と明らかにムラサメの方が勝っていた。更に彼の怨念が剣を飲み込もうと、圧迫されそうになる。それは刃から出る黒炎が示していた。掲げた刀身から黒炎が激しく燃える。

ムラサメ「炎裟(エンサ)!!」

次の刹那、その刃を勢いよく振り下ろした。

剣「焔月(エンゲツ)!!」

なんとか防ごうと焔放つ刃を振り上げた。さながらそれは傍から見て紅蓮の月のようであった。

互いの太刀がぶつかり合うと、金属音を鳴り炎が散った。その衝撃は凄まじく、足元の叢(クサムラ)が燃える程の熱風が周囲に巻き起こった。

剣「焔技 火斬翔!!」

鍔迫り合いから切り抜けようと黒炎の刃を押し退けると、燕返しを繰り出した。刃の軌道から焔の斬撃が飛び、目にも止まらぬ速さでムラサメに襲いかかる。

ムラサメ「ほぅ!そうか!!」

巧みな技量に驚くが、太刀一つで防ぐと明後日の方へと弾き返した。斬撃は校舎の壁に直撃し、深い傷跡を残した。

ムラサメ「…来るか」

ふと何かを見据えてか、開いた口から微かに零れた。

剣「何がだ?」

聞き逃すことなく、訝しみながら太刀を構えた。

フレッド「ムラサメ、今のは…?」

ワーム「キ、キシィィィィ…」

次の刹那、ムラサメの元にフレッドとワームが駆け寄った。

メビウス「剣!アイツら、かなりやるよ」

剣「わかっている」(三対二、厄介だな…)

剣の方もメビウスが駆けつけ、互いに目前の敵を見据えていた。

ムラサメ「よく来てくれたな、フレッド、ワーム…」

事が上手く運んでくれてか不気味に微笑む、何かを目論んでいるようであった。

すると、懐から暗黒玉を取り出した。

フレッド「ムラサメ、それは…?」

自身の知らない暗黒玉を見て、子供のように首を傾げた。片手に収まる黒い球である事に変わりは無いが、浮かぶ赤い単眼が正面を見つめていた。

ムラサメ「きっと、創造主も大喜びだ…」

次の瞬間、手にする異様な暗黒玉をフレッドに埋め込んだ。

フレッド「ぐぅっ!?な、なんでぇ…!?」

ムラサメの突然の凶行に困惑と愕然が襲いかかる。

剣「なっ!?アイツ何をして!?」

それは二人の戦士も同様であり、疑うように目を見開いた。だが、ムラサメに聞く耳を持たず、逃げようとしたワームを掴んでフレッドに向けて投げ飛ばした。

ワームはフレッドに当たると、塵となって彼の身に纏うようにして宿っていった。

メビウス「なんだよ、何が起きて…!?」

フレッド「うぐっ、ぅぅ…!く、苦しい…!な、なんだこれぇっ…!!」

両手で胸を掴みながら跪くと、流れるように蹲る。

身に纏う、浮上するようにして放たれる塵は更に黒くなり、より激しくなる。

ムラサメ「さぁ…とくとご覧あれ!恐怖と残酷が織り成す新化にして、進化!」

苦しむフレッドを他所に、誰かに語りかけながらエンターテイナーのように振る舞った。

フレッド「うわああああああ!!!」

丁度いいタイミングで巨人のような叫び声が空間に鳴り響く。それに呼応してか黒い塵が天高く昇り、暗雲にまで届いた。

闇に覆われたフレッドは変形し、異形の化け物へとより近付いていく。巨躯だった肉体はより肥大化し、厳つく鋭い鱗や棘が生え、ワームと酷似した巨大な尻尾が生えた。

メビウス「おいおい、マジかよ…」

段々と大きくなっていくフレッドを見上げて、開いた口が塞がらなかった。

黒い闇は少しずつ解けていき、その全貌が顕となる。

フレッド「グルルル…」

フレッドとワームが融合した声が唸りを上げる。

竜のような頭部にある数多の目は睨むように細め、敵である剣とメビウスを捉えた。

ムラサメ「これが新たなる力、暗黒融合体!字名はグランガトス!!」

グランガトス「グルギャオオオオオン!!!」

高らかに語るムラサメに応じて、グランガトスが怪獣のような雄叫びを上げた。

メビウス「これ、かなりヤバいんじゃない?」

圧倒的な闇に飲まれそうに、圧倒されそうになる。その状況にメビウスは苦笑いを浮かべていた。

剣「敵がどうであろうと、斬るだけだ…!」

だが、剣は恐れずに全身から焔を発現させながら、切先をグランガトスに翳した。

メビウス「まぁ、そうだよね…!」

迷いのない、真っ直ぐな剣の意志に鼓舞された事で自身も覚悟を決めた。それが顕となったと言わんばかりに青くなった両手足を構えた。

グランガトス「ギャアオオオオオン!!」

千手を打ったのはグランガトス、口から砂鉄の混ざった渦巻く突風が放たれた。

剣「避けろ!」

メビウス「おう!」

迫り来る竜巻を目の当たりにすると、二手に分かれながら避けた。竜巻が通り過ぎたと同時に剣とメビウスはグランガトスに接近しようと走り出した。

その中でメビウスは加速し、グランガトスの間合いに入る。

メビウス「次はこっちのターンだ!」

大地を蹴り上げて高く跳ぶと、反転して蹴りを繰り出した。流星の如く降下していくそれはグランガトスの頭に直撃する。

メビウス「硬ぇっ…!」

だが、鱗は尋常ではない硬さで、ビクともしなかった。

グランガトス「ギャオオオオン!!」

怪獣のような咆哮をあげながら頭突きを繰り出す。

メビウス「うおっ…!」

隕石のような重い一撃に驚きながら勢いよく吹き飛ばされた。そのまま入れ替わりながら、今度は剣がグランガトスの間合いに入った。

剣「焔技!」

後ろに持っていった両手が握り締める柄、繋がる刃に焔が迸った。

剣「大火斬翔!!」

勢いよく振り下ろした刹那、人より大きな焔の斬撃が飛んできた。

斬撃はグランガトスの鱗に深い傷を負わせたが、瞬時に再生された事で無かった事にされた。

剣「やはり効かないか、ならば!」

焔では倒せないと確信した剣は瞳を閉じて、深く念じた。

すると、その身を包んでいた燃え盛る焔は水色の光へと…激龍に変化した。

剣「激龍!」

腰を落としながら脇構えに入ると、全身に電流を模した激龍が走った。一歩前に踏み出した次の刹那、剣の姿がくらました。

剣「迅雷一閃・乱舞(ジンライイッセン・ランブ)!!」

空間に声が木霊すと、グランガトスの全身に雷の如く煌き瞬く斬撃が走った。

グランガトス「ギャオオオオン!!」

その身に刻まれていく傷、雷に痺れ、焼かれて消えるような感覚に襲われる。

再び姿を現した時、剣は上空にいた。

剣「激龍 空流(ソラノナガレ)!」

切っ先を突き出すと、水を模した激龍が宙に舞う身体に纏いながら流星の如く降下してきた。あまりの速さにより威力は増していく。

だが、グランガトスは迫るそれを視認し、尻尾の先端を向けた。

それは竜の頭へと変化し、開いた口から黒く濁りながらも紫に輝く粒子が無から生成され、集っていく。

次の刹那、その口から光線が放たれた。瞬きする間もなく光は剣と衝突し、押し返そうとする。否、消滅させようと画策する。

剣「こいつ、激龍を受けても緩まないのか…!」

その威力に驚きを隠せなかった。これが暗黒融合体の力なのかと

アスト『それは私に原因があるだろう…』

剣「どういう事だ?」

だが、それは違うとアストが答えた。突如として頭に鳴り響いた声に剣は訊ねた。

アスト『今の私は未完全…故に、暗黒世界を即座に倒せる程の力が無いのだ…』

淡々と語ってはいるものの、何処か悔やみきれない、不甲斐ない様子でいた。

剣「成程な…!」

それを聞き取った剣は手にする刃の向きを変えた。

なんと彼は太刀を振るって、その光線を薙ぎ払ったのだ。

突然の事にグランガトスは静かに驚くも、未だに目は剣を捉えていた。

アスト『剣?』

まさかの行動にアストは疑問に思っていた。そして、剣の口が開いた。

剣「”即座には”倒せない。ならば、難しい事は無い…」

安心させようと声をかけながら刃はグランガトスに向けられ、赤い瞳もヤツを捉えた。

剣「何度でも、斬るまでだ!」

静かにされど力強く声を出し、静かに手にする太刀を構えた。

剣の言葉を耳にしたグランガトスは雄叫びをあげた。すると、先程の竜の口から再び光線を放った。

当然、それは瞬く間に剣との距離を縮めた。

剣「激龍!」

天へと掲げる太刀、その柄を両手で握り締めた。

すると、刀身に激龍が焔の如く纏い、燃え盛る。

剣「烽煌斬(ホウオウザン)!」

瞬時に振り下ろされた刃から焔を模した激龍が斬撃として放たれた。だが、それはいつもより、明白な程に巨大なものであった。

空間を飛翔する斬撃は光線を両断し、掻き分けながら突き進む。

命の危機を感じたグランガトスは重い図体であるにも関わらず、軽々しくバックステップした。見事に躱すと、地面に当たった激龍が火花の如く散った。

メビウス「誰か、忘れてないかな?!」

グランガトスの背後にメビウスが青い輪郭が光を帯びる黒い影 ビヨンドソニックとなって現れた。

彼の存在に気付いたグランガトスが迅速に振り返るが、時すでに遅く、神速の飛び蹴りは鋭く鱗に覆われた顔面に命中した。

グランガトス「ギャオオン!」

靴底による一撃をもろに受けて吹き飛ぶも、長い尻尾が伸びてきた。

メビウス「うおっと!」

迫り来る竜の頭に驚く。メビウスがそれに食われた…かのように見えた。

閉じた顎は空を切り、黒い闇に覆われた肉体は頭上に立っていた。

メビウス「なんてな!」

次の刹那、目にも止まらぬ速さでグランガトスの尾の上を走り出した。

メビウス「随分とデカい図体だけどさ!」

駆け抜ける中、辿り着いたのはグランガトスの背中だった。尾が上がり、竜の頭は追い詰めたと言わんばかりにメビウスを睨んだ。

メビウス「大きな的にもなっているよな!」

高らかに発言する中で竜の頭が口を開けて、食らおうとメビウスに襲いかかる。

メビウス「ほーら!奴さんが来ました!」

想定済みと思いながら、すぐさまバックステップして、この場から離れた。

微笑みを浮かべているが、表情は影に覆われていたのでよく見えなかった。

メビウス「剣!」

名を呼ぶ掛け声にメビウスが顔を向ける。するとそこには剣がおり、空から降りてきた。

剣「激龍!」

一度鞘に納めた太刀を再び抜刀した次の刹那、閃光のような斬撃が繰り出された。

剣「光焔刃進(コウエンジンシン)!」

それは神速のような居合いであり、目先の空間を、目前のグランガトスを両断しようとした。

捉えたのはグランガトスの尾、瞬時に斬られたそれは胴体と分離して、地に落ちた。

グランガトス「ギャオオオオオン!!」

反撃しようと口から火の玉を放とうとした。

メビウス「さっせるかよォォォ!!」

だが、それは下から突き上げてきた拳により阻止された。メビウスはアッパーのように繰り出し、グランガトスの顎に衝撃が起こった。

更に続けて衝撃波が現れ、下顎にもう一撃与えた。

メビウス「1000発だ!」

直後、幾つものの衝撃波が現れ、何度もグランガトスの顎に打ち付けた。それを受ける度に巨大な胴体が空高く舞う。

衝撃波の正体はメビウスの拳による打撃であり、数秒もせずに、音もなくして打ち込んでいたのだ。

剣「激龍 驟晴連刺(シュウセイレンサ)!」

宙に舞うグランガトスに接近し、五月雨の如く刺突を繰り出した。激龍の光が幾つものの線となって、グランガトスの肉体を貫く。

グランガトス「ギャオオオオオン!!」

見事に攻撃を食らってか身体から黒い塵が浮上し、消えかかっていた。

剣「トドメだ…!」

確実に仕留めようと太刀を天に掲げて、勢いよく振り下ろそうとした。

だが、横から来る殺気を感じ取ってか、瞬時に刃の軌道を変えて、迫る攻撃を確実に防御した。

ムラサメ「俺を忘れていたな?邪光 剣!!」

それは黒炎が燃え盛る刃であり、太刀を握るのはムラサメであった。

剣「生憎だが、今はお前の相手をしている場合では無い!」

ムラサメ「戯言だな!俺も御主も敵だ!!」

二人は斬り合いに入り、何度も刃を振るい始めた。

メビウス「おいおい!マジかよ!!」

急がなければと焦りながらも神速で飛行して、トドメを刺そうとグランガトスに拳を突き出そうとした。徐々にグランガトスの負っていた傷が徐々に再生されていくのを目にした。

剣「マズイ…!」

このままでは全てが水の泡となってしまうと微かに焦る。刃を交えながらも、急いでグランガトスを倒さなければとそこに目を遣る。

ムラサメ「随分と余裕があるな?更に腸が煮えくり返りそうだ!!」

だが、張り巡らしていた思考は迫り来る黒炎を帯びた六つ斬撃により遮られた。

剣は激龍を纏った太刀を振るって、迫る攻撃全てを無に還した。

剣「激龍 飛月燕(ヒゲツエン)!」

瞬時に風を模した激龍を斬撃をグランガトスに向けて飛ばした。

ムラサメ「おのれ!弾泪(ヒルイ)!!」

流石に焦ったのか刃を降るって、黒炎を飛ばした。

巨大な雨粒として放たれた火の玉は今尚、飛行する激龍の斬撃に接近していた。

ムラサメの意識が飛月燕に向いた。その隙をついて剣が刃で空間をなぞり、激龍の光で線を描いた。

それを終えると、すぐさま手にしていた太刀を天に掲げた。

剣「激龍…!」

刹那、勢いよく刃を振り下ろすと、激龍の斬撃を飛ばした。

剣「十字星(ジュウジセイ)!」

斬撃波は線に当たると、十字となってグランガトスに襲いかかる。

先程放った黒炎 弾泪は迫る飛月燕に直撃した事で爆ぜた。だが、直後に十字星が目にも止まらぬ速さで宙を翔る。

ムラサメ「こいつは…!」

視認した事で二度目の攻撃に気付いたが、太刀を振るおうと構える剣に反応できなかった。

剣「ハァッ!」

ムラサメの間合いに入り、激龍を纏わせた刃を迅速に且つ力強く振り下ろした。

ムラサメ「なっ!?」

遅れて気付き、何とか已の所で躱した。だが、顔に傷を負ってしまった。

剣との距離をとって、ムラサメは立ち止まる。

それと同時に十字の斬撃波はグランガトスの肉体を貫き、斬り裂いた。

グランガトス「グギャアオオオオオン!!」

あまりの衝撃にグランガトスは即座に消滅、周囲に突風が巻き起こった。

近くにいたメビウスも巻き込まれ、後ろに吹き飛ばされた。

メビウス「うおっ!?」

ビヨンドソニックは解かれて、地面に身体を打ち付けられた。だが、それによる負傷は一切無かった。

メビウス「なんとか…倒せた、みたいだな……」

だが、グランガトスとの交戦で消耗が激しかったのか、荒い呼吸を整えてはいるものの立ち上がる事は出来なかった。

彼の様子を剣は空から見届けており、表には出さずとも申し訳なく思っていた。

ムラサメ「おのれ…!これで二度目か…!!」

怒りを宿した恨みを声にしてあげた。

それに剣が反応し、すぐに目を遣る。

顔から血の代わりに黒い塵が浮上し、そこをムラサメは片手で抑えていた。

ムラサメ「邪光家…!やはり忌々しいッ…!!」

開く指の間から剣を睨みつけた。その目には怨念そのものであり、黒く渦巻いていた。

だが、向けられる殺意とは裏腹に彼の背後から黒いゲートが現れた。

ムラサメ「とはいえ…此処の生徒は皆、死ぬだろう…!」

計画通りと嗤いながら後ろへと下がりながらゲートの中へと消えていった。

剣「まさか!」

去り際に放たれた言葉に赤い瞳を持った目を見開いた。剣はすぐさま降下して、メビウスの元へと駆け寄った。

剣「大丈夫か?」

しゃがみながらメビウスの身を案じながら語りかけた。

メビウス「無理、言うな…これ、キツイんだわ…」

軽く冗談交じりに言うが、その実は厳しかった。未だに身体は伏せたまま、何一つ動かせれなかった。

剣「…すまない」

返ってきた言葉を聞いて心の底から申し訳なく思った。急いでいたとはいえ、もう少し動いていればメビウスも助けれたと思えたからだ。

メビウス「気にすんなよ…それより、速く行きな……」

そんな剣の心情を察してか、生徒達を助けに行くよう指示を促した。

静寂が包まれる微かな時間が経つと、真っ直ぐな瞳を向けながら口を開いた。

剣「了解した」

立ち上がって、すぐに校舎に向かって走り出した。

そんな彼の背をメビウスは澄んだ瞳で見届けていた。

メビウス「…なんつーか、背負い込んでるなぁ……」

呆れ笑いを浮かべたまま暗雲に閉ざされた空を見上げた。

次回 第弐拾陸話 第弐拾陸話 「勇気、前に進め」

お楽しみに

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