13話 花火〜私はだぁれ?〜
「ベルバラさん、城に帰らないの?」
「今は少し歩きたい気分でして。もう暗くなってしまいますし、レナード様は先にお帰りください。」
「でも、下の街は治安が悪いから暗くなる前に帰った方がいいよ?」
「……。」
ーーー第一王子ギルベルトの演説を聞いてから、私は自分でも分かるくらいにおかしくなっていた。
あの第三王子の姿を見て、醜悪、悪魔、下劣、といった容姿だけで暴言を口にしていた人々の言葉が頭の中で何度も再生される。自分でもどうしてか分からないけど、エリスに向けられる酷い言葉を聞くと、胸が張り裂けそうに痛い。
「ベルバラさん...。」
スッと、私の手をレナードが握った。
「レナード様?」
「こうやって肌が触れ合っていると、悪いこと、全部忘れちゃうんだ。」
悪魔の呪い関係無しに、誰かこの人に普通のことを教える人はいなかったのだろうか。
「……帰りましょうか。」
日が落ちて、火によって照らされた道を私とレナードは手を繋いで歩く。
レナードは第二王子で、女たらし...には理由があって、だからレナードの呪いが解けたらお相手候補に入ってもいいのかなって思ったけど、ーーーレナードの手によって開かれた城門。城門が閉まる音を背中で聞き、私はその手を払った。
「レナード様と一緒に街を回れて楽しかったです。今日はありがとうございました。」
「ううん、またどこか行こうね。」
「...はい。」
胸の奥底で警報が鳴っていた。どんな言葉で表現できるのか分からない...ただ、どうしようもなく泣きたくて、頭に血がのぼるのだ。
ヒューッーーードンッ!!
ベルバラは頭をあげて、空を見上げる。
この世界にも、……花火があるんだ。
一体なんの花火なんだろう。即位式に向けて?今日がなにかの記念日なのか、余所者の私には分からないけど、その花火を見たら先ほどの感情はどこかに行ってしまい、私は胸辺りの服を強く掴んだ。
「おかしいと思わない?」
ベルバラの目線が正面に向けられる。はじめて会った日のように彼女の姿があった。
燃えるような赤い髪の女性...ローザが正面からこちらへ向かって歩き、どこかイライラとした様子でーーー
「なにが、おかしいのでしょうか?」
「その黒い服でどうしてシスターなんて分かるのかしら?」
「えっ?」
「もう一回同じこと聞くけど、その趣味の悪い黒装束を着てるあなたを見て、どうしてみんな口を揃えてシスターって言うのかしら?ここにシスターを呼んだとしても、そのクソみたいな服着たあなたを見てシスターなんて言葉出るわけないでしょう?」
「ローザさん、一体なんの話をしているんでしょうか?」
どういうこと!?た、たしかに、こんな見た目の女をシスターって思うわけない...ローザって一体?
「役者のつもり?キモいんだけど...前世っていうの?っはは、前世と同じようにその綺麗なお顔にタ・バ・コの痕つけてあげようか?」
「ぜ、前世って...それに、タバコ...どうして」
「っはは、その驚いてる顔さいっこうに気持ち悪いわ。」
「どうして私のことーーーゔっ!?」
ローザはベルバラの胸ぐらを両手で掴んだ。
「佐藤麗奈!!」
「ひぃっ!?」
「またここでも私の居場所を奪うっていうの!?だ~いすきな家族とバラバラになって?その上で吸血鬼に殺されるっていう素敵な未来をお持ちのベルバラにしてあげたっていうのに!!どうして死んでないの!?それどころか!なにレナード様を奪おうとしてんのよ!!」
ガンッ!!両胸を押され、ベルバラは床に尻餅をつく。
なにが、なにが起きて、今ローザはなんて言ったの?
花火がまた打ち上がる。
「あー...あのときも花火だったわ。」
「は、なび?」
「えぇ、そうよ。...屋上に行ってみたら花火が見えるんじゃないってお前が提案したの。」
「私が言った?」
「2人とも髪がボサボサだったけれど、お前は特に酷かった。お前は灰皿で、ゴミ箱だったからね。あー、あとサンドバッグ。」
「……。」
「一軒家の屋上から花火なんて見えない。せっかくここまできたのに見えないなんてって、どうして嘘ついたのよ...って、覚えてる?」
「お、ぼえてる。」
「それじゃあ~!その次の瞬間!なにが起きた?」
「屋上から、お、落とされ、た。」
「正解~。」
「ローザは...私のっ」
「ローザの前世は佐藤麗奈の妹、佐藤麗花ちゃんでしたぁ~!」
心にぽっかりと穴があいた...って、多分このことを言うんだろうと思った。
ーーー私は、佐藤麗奈は屋上から落ちて死んだ。それは足を滑らせてとか、そういう事故じゃない。実の妹に落とさ
前世での妹とご対面です!!そしてローザの正論...なんで、そんな服を着てるベルバラのことをみんなシスターだって思うんでしょうか?
次回はベルバラこと、佐藤麗奈が妹麗花に突き落とされる回です。




