12話 第二王子もまた、悪魔に呪われていた。
ずっと城で引きこもり生活を続けていたけれど、今、私は崖の下におり、第二王子のレナードと街を歩いていた。
レナードはフードつきの服を着て顔を隠し、出店を見て回っていた。
大樹の下、ベンチに座っていた私の元にレナードがニコニコと笑顔で駆け寄り、隣に座った。レナードはお皿を持っており、お皿の上には薔薇の形をしたケーキが乗っていた。
先日のパーティーもそうだったけれど、どうやらレナードは甘党のようで、ケーキが好きなのかな?
「ベルバラさんにも1つあげます。」
「ありがとうございます。」
転生して、多分1週間ほど経っている。ほとんど何も食べていないけれど、空腹感が起きない。聖水によって傷を受ける体...。
ケーキを一口。味覚はある。
隣に座るレナードは両足をバタバタと動かし落ち着きがないように見え、その目線の先は通りがかる女性たちを追っているようにも見えた。
「レナード様はギルベルト様やロレーヌ様と違い、どこか子どもっぽさがあって、とても居心地が良いです。」
「え?」
「だからこそ、どうして複数の女性たちと遊ぶのか気になったんです。」
眉毛を隠すほどの長さの前髪は綺麗に揃えられ、後ろ髪も胸辺りまで伸びているせいで、レナードは声を出すまで女性にしか見えない。それにくわえて言動もまるで子どものようで、レナードはギルベルトやロレーヌと違って近寄りやすさがあった。
多分、そういうのを直接言っても怒らない、気にならない性格をしてるように見え、私はケーキを食べながら聞いてみた。
背景で、ガヤガヤとはしゃいでいる子どもの姿、出店に並んでいるお客さんの姿、その中でレナードは口を開いた。
「悪魔に呪いをーーー」
ここでもまた悪魔なの?
「ギルとお医者さんが言ってたのを聞いて...僕は小さな頃に呪いをかけられて、その、人より性的興奮を覚え、年齢とあってないって、年相応の発達ができないって。」
それは単純になにかの発達障害なんじゃないの?それが本当に悪魔の呪い?
「だからっ、シスターのあなたなら僕の呪いを解くこと、で、できますか?」
「それはーーー」
多分できたとしても、やらないのが正解だと思う。
王子様は1人じゃない。このローズ国の王子様も第一王子ギルベルト、第二王子レナード、第三王子エリスと3人の王子様がいる。王子様のいる物語だと大抵王位継承権争いが起きたりするけど、それらが起こることなく、何事もなく第一王子ギルベルトの即位式が行われようとしてるのは、第二王子レナードと第三王子エリスに問題があるからだ。
私はレナードの手に自分の手を重ねる。
「レナード様、私はお堅いギルベルト様やロレーヌ様とは違うあなたが好きです。ですから無理に変わることはお勧めしません。」
レナードのこれは性格という問題ではない。なにかの発達障害なのかもしれないし、本当に悪魔が呪いをかけたのかもしれない。ただ、...私はその呪いが解けないでほしいと心の中で思っていた。
ーーー第一王子ギルベルトの計画は確実に進んでいた。突然お願いされたのにも関わらず、ローズ国に住む貴族が集うパーティーを開いたロレーヌ。
そして今日、私へのお願いのためにそれが実行された。
突然、街の至るところに大型ビジョンが現れ、第一王子ギルベルトの姿が映し出された。それと同時にーーー地下牢でうずくまる第三王子エリスの姿までもが映し出された。
「私は第一王子ギルベルト・ローズです。そしてこちらに映っている彼は私の弟であり、第三王子エリス・ローズーーー」
「何事だ?」「これ一体なんなの?」「王家に第三王子様がいたの?」そして、第三王子エリスの姿を見て「これが...」「なんて醜悪な姿なの」と口々に声を漏らした。
ベルバラは唇を噛み、強く拳を握りしめる。頭に血がのぼり、堪えようのない苛立ちがベルバラを襲う。
こんなことがあっていいの!?自分の弟にどうしてこんな扱いを、...
「ベルバラさん?」
演説でギルベルトが語ったことはーーーずっと隠してきた弟は悪魔に憑かれており、その悪魔を祓えるシスターを見つけたと。
そして現国王が数日前に倒れており、これを機に自分が国王に代わり、即位式を近日中に行うという。
そして、このクソみたいなショーのチェックメイトは私が打つことになっている。




