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1980年松本スケッチ ~元・信大生の追懐録~  作者: こまくさ
第1章 1980年松本スケッチ
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美鈴湖(夏) ~松電バス~

 大阪市と比べると松本市をはじめとする県内の市町村では自然を感じることができる。

 街のどこからでも山を仰ぎ見ることができ、川面を吹く風も心地いい。交通量も少なく、空気もきれいだ。ネオンが少ないので、夜空には格段に多くの星を見ることができる。

 しかしながら、「さわやか信州」の代名詞のような、高原、湖、渓流などに身を置こうとすると市街地から離れなければならない。



 松本市内から美ヶ原へ向かう経路は、美ヶ原をはさみこむように南北の2経路がある。北回りは美鈴湖を経由して王ヶ頭に向かう経路で、松本市側からすれば表面(おもて)。南回りは扉峠を経由して美ヶ原高原美術館に向かう経路で裏面(うら)だ。


 信大在学中に美ヶ原の上まで行ったことはないが、霧ヶ峰方面に行くときには扉峠を越えたし、美鈴湖にも遊びに行った。

 美鈴湖の位置は浅間温泉の裏山。かつては湖畔に「浅間温泉国際スケートセンター」があった。美鈴湖は松本市街から最も近い「さわやか信州」だ。



 松本市内から美鈴湖に行くには、浅間温泉から山道を登るルートと、三才山トンネルに向かう途中から登るルートの2つのルートがある。

 三才山ルートは大きく迂回するため市内からは距離が長くなるため、駅前のバスターミナルから美鈴湖に向かう松電バスは、浅間温泉ルートを通っていた。

 

 5月も末に入り、そろそろ夏を感じるようになったころ、学科の親睦会のようなピクニックが企画され、美鈴湖に行くことになった。先輩も何人かやって来て総勢30名近くが参加することになった。車やバイクがある人は自力で登り、乗り物のアテがない人は松電バスで登ることになった。まだ免許も持っていなかったので当然バス利用だ。

 美鈴湖に行くバスは1日に数本しかなく、路線も詳しく知らなかったので、発車時刻が判っているバスターミナルに集合することになった。ほぼ浅間温泉の下宿から、バスに乗って駅前に行き、またきっと近くを通って美鈴湖に登ることになるんだろうと、損した気分で駅に向かった。



 浅間温泉から美鈴湖に至る道は、狭く険しかった。温泉街を抜けると、まもなく道幅が狭くなり、普通自動車ですら行き違いができないほどの狭い道を、道幅いっぱい使ってバスが進んでいく。

 山道に入ると急坂にエンジンがうなりを上げる。登坂の転換点のヘアピンカーブはさらにギヤを落として踏ん張るように登る。狭いカーブは、大型車の内輪差を計算しなければ曲がり切れないほどだ。一瞬の操作ミスで崖をこするか、路肩を踏み外すか、丁々発止の鬩ぎ合いが繰り返される。路上にはみ出した木の枝をバキバキと折りながらバスが旋回していく。ダブルクラッチを踏む足さばきと、長いシフトレバー、大径のハンドルを全身で回す迫力。松電バスの運転手さんは、もしかしたら日本で一番バスの運転がうまいのではないかと思ってしまった。

 いやいや間違いなく日本一だ。国道、市街地、狭い生活道路、山道、雪道、凍結路。すばらしい技術と言わざるを得ない。



 美鈴湖ではそんなにすることがない。魚釣りをしている人がちらほら見られるほかは、湖畔を散策するか、ボート遊びに興じるか。

 ボートはすべて手漕ぎで、白鳥の形の足漕ぎボートはなかった。それでも男どもは腕の見せ所とばかりに、ボート組は最初のくじ引きから盛り上がっていた。

 我らは散策組で、湖畔の遊歩道を歩く。中学生のときに家族で来た時も、湖畔を歩いたはずなのだが、さすがに覚えていなかった。 

 

当時の松電バスは、赤と紺の色遣いでした。

今はアルピコになってかわいい色合いのバスです。


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― 新着の感想 ―
[一言] 細い山道をスムーズに運転するバスの運転手さん、すごい技術ですよね。 アルピコのHighland Express、あの5色の斜め帯が入ったバスは時々、他地域でも見かけます。 デザイン的にシン…
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