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1980年松本スケッチ ~元・信大生の追懐録~  作者: こまくさ
第1章 1980年松本スケッチ
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バイク(5) ~憧れのLTD~

久々に伊那のことを思い出した。

 1980年当時、個人が持てるコンピューターは「マイクロコンピューター」=「マイコン」と呼ばれ、数年前にZ-80プロセッサーのキットが2万円ほどで販売されていた。その後、NECの“PC6001”や富士通の“FM-7”などの「マイコン」が登場したが、コンピューターで何ができるのか、さっぱりわからない時代だった。

 

 

 インターネットのwebサイトなど影も形もない時代に、パイクの情報はバイク屋でパンフレットをもらってくるか、コンビニでバイク雑誌を眺めるか、紙媒体に頼るしかなかった。それ以外はユーザーの口コミを広く集めて情報収集するのが身近な手段だ。

 

 サークルの先輩が乗っているいろいろなバイクを間近に見る中で、農学部の先輩が乗っていたKawasaki Z400LTDに惹かれた。

 イージーライダーのようなチョッパーが好きだったわけではない。純粋にZ400LTDの完成されたシンプルなフォルムが気に入っていた。前輪に比べて小さい後輪が車高を低く見せ、安定感をもたらす。プルバックハンドルとティアドロップ型のタンクから二段シートに至るラインがなだらかで美しく、その柔らかさをショートカットマフラーが引き締めてくれる。オリジナルでも十分完成度は高いのだが、ロングサスとか、シーシーバーとかも似合いそうだ。

 ただ、ベースはZ400なのだが、タンクやシートをシェイプしたためか、車格は小さく見える。農学部の先輩は女性で小柄だったので、Z400LTDの車格にもフィットしていたし、乗りこなしていた感がカッコよかった。


 因みに、農学部の周りには下宿やアパートは少なく、河岸段丘の急坂を下った伊那の市街地か、農学部からさらに上った西箕輪や羽広に住んでる人もいた。そんな状況から、信州大学の中でも農学部は特に「エンジン付きの乗り物」の所有率が高かった。



 8月末に自動車学校の卒業検定には無事に合格していたが、免停中だったので、免許の発行も停止されていた。9月中頃に免停期間が明け、待ちに待った中型自動二輪免許が交付された。

 バイク購入貯金も20万円を超え、23万円ほどになった。ヘルメットもある。あとは本体だけだ。適当な中古車なら買えるかなというところまできていた。



 気に入っていたZ400LTDだが、先輩と同じ車種に乗るのは憚られたし、自分の体格では車格が小さいと感じていた。

 そこで、有力候補に挙げたのが、HONDA CM400T。CB400T(HAWKⅡ)ベースのアメリカンタイプだ。一度アメリカンタイプに傾いた心は、おいそれとは違うタイプには向かわない。同じ「CM」を関するCM125は「ベンリ―」の愛称を与えられた楽々バイクのイメージだったが、CM400はれっきとしたアメリカンモデルだ。

 ホイールベースがやや長めで、エンジンもZ400LTDのコンパクトなエンジンに比べると鈍重に感じる見た目ではあるが、「安定のホンダ」とでもいうか、乗りやすそうなバイクだと感じていた。


 新車で買うとなると資金がまだまだ不足。発売されてまだ1年ほどだったから、中古車が出回っているとも思えない。バイトに励み、倹約に努めてしっかり貯金を増やそうと思っていた。



 ところが、10月に入ると、事態が動き始めた。


つづく

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