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1980年松本スケッチ ~元・信大生の追懐録~  作者: こまくさ
第1章 1980年松本スケッチ
22/96

バイク(6) ~出逢い~

つづきです

 

 事態が動き出すのはいつも唐突だ。



 10月に入ってすぐ、どこかの食堂でのこと。注文した食事が運ばれてくるまでの時間つぶしに、マンガでも読もうとしたが、すでに読んだことのある号しか残っていなかった。仕方なく雑誌の脇においてあった松本市の広報誌を眺めていたところ、「売ります・買います」のコーナーで「ホンダ」の文字列が目に留まった。

『ホンダGL400カスタム 美品 価格は応相談』。 

 とりあえず連絡先(松本市が仲介していたので、市役所の担当部署)をメモしたが、GL400カスタムについてはほとんどノーチェックだった。


 HONDA GL400カスタム。

 ――エンジンは水冷4サイクルOHV・縦置きV型2気筒、シャフトドライブ――

   (バイクで水冷エンジンって?)

   (Vツインってハーレーか?(縦置きだけど))

   (シャフト駆動って四輪車か?)

   (OHC、DOHCが主流の時代にOHVって…)

   (キックスターターがなくてセルだけで大丈夫か?)

   (どう考えても400ccでこの車重は重すぎるだろ…)

 バイク屋(=ハマ)で、詳細を語らずにもらってきたカタログを見ながら、心の中で突っ込みまくりだった。正面に大きなラジエターを備え、左右に突き出すシリンダーヘッド。シャフト駆動のギアボックスを内蔵した厳ついエンジン。750cc(ナナハン)かと見まがう重量感だ。「感」じゃなくて、乾燥重量200kgは相当に重いはずだ。


 いろいろとツッコミどころはあるが、他のバイクにはない数々のメカが気に入った。免許を手にして、早く自分のバイクが欲しかったという気持ちの焦りも大きかった。中古車なら手が届く価格かもしれない。などと前のめりになっていたのは否定できない。

 


 松本市の担当者から売主に連絡してもらい、現物の確認と価格の相談をすることになった。売主は市内の女性。女性が乗っていたのか?と、訝しみながら行ってみたら、同世代くらいの男性とそのお母さんが迎えてくれた。未成年の息子に購入したものの、一身上の都合で売ることにしたとのことで、売主はバイクの名義人であるお母さんだった。最初はどこかの業者に中古車として売ろうとしたら、下取りじゃないことで足元を見られたそうだ。それで個人売買に切り替えられたのだが、それこそパソコンのない時代、個人の情報発信は市の広報誌に頼らざるを得なかったようだ。


 売主さんの希望価格は35万円。新車の標準価格は48万円だったので、破格は破格だ。

 購入からほぼ1年で走行距離は10000km。外観は、決して広告通りの美品ではなかった。タンクの上部に丸い凹みがあった。野球のボールが当たったらしい。位置的に事故ってついたものではなさそうだ。エンジンガードにもすり傷があった。何度か転倒している。売主さんは、傷や凹みのマイナスも見越して価格設定したらしい。業者に叩かれた値段はもっと低かったのだろう。


 初めて実車をみた感想は、カタログ通りの大きな車体。大柄な自分でも窮屈さはない。アメリカンとはいえZ400LTDとはコンセプトは大きく異なるが、悪くはなかった。

 価格の折り合いがつけば即決でもよかったが、10万円の差はいかんともしがたく、その日は現物確認ということで売主さんの家を後にした。

 

 

そうやすやすとはまいりませんでした。

まだつづきます。

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