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苦戦する

MKTのバンは事前に言われた通り、こちらの指定したカリスマ以外のものだった。それにこたえるかのように、今女は彼らの得意とされるカリスマ以外をバンした。

これを見てMKTはやや動揺(どうよう)した。


Tama:《ほう?どういう意図かな?》

Vhan:《アレ?俺ら、ひょっとして、()められてたりして?》

Matu:《いや、そうじゃない。あの子達も経験したい、ということだろう》

Theodore:《我らの本気を見たいのだ…コーチ、どうする?》

Zerosu:《…ああ、僕か!まだその呼ばれ方に慣れないなぁ》

Vhan:《しっかりしてくださいよぉ?新コーチぃ》

Zerosu:《スマンスマン。悪いがこっちも練習だからな、プラン通りいくぞ》


MKTとしては、恐らくこちらの得意カリスマをバンしてくるだろうと予想していた。そのあては外れたものの、世界戦では相手のやりたいことを(つぶ)すのが定石(じょうせき)だ。ならば、二番目、三番目の作戦を用意しておかなければならない。今回のスクリムではそういった練習をする予定だったのだ。

今女も全力で来て欲しいというアピールだったのかもしれないが、それでは圧勝(あっしょう)してしまうことは目に見えていたし、練習にならない。それほどに彼我(ひが)の差があるというZerosuの判断だった。


KAKO:《あんまり見ないピックですね…》

Ikky:《全力出すまでもないってことッスかねぇ?》

KANKO:《そりゃまぁそうだろ》

ROLU:《新しい作戦を試すってことだな》


その楼瑠の予想が確信(かくしん)へ変わったのは笑空のピックが先ごろ実装(じっそう)されたばかりの新カリスマだったからだ。


UsagiPaisen:《笑空先輩、『ギアナ』だぴょん!》

KAKO:《新カリスマかぁ。笑空先輩なら使いこなしそうですね》

KANKO:《飲み込み早いからなぁ》


(新しいカリスマの使い方を教えてくれようとしてるのかなぁ?)

センターの笑空が新カリスマの有用性(ゆうようせい)をチェックするのが目的というところだろうか。しかし、それは今女にとっても参考になることだった。ともすれば次の大会で使えるかもしれない。


試合は静かに始まった。

MKTのスカウトであるMatu(まつ)はセンターとダウナーには頻繁(ひんぱん)に顔を見せるが、アッパーにはまったく行く気配がない。アッパーはVhan(バーン)一人で十分(じゅうぶん)という判断なのだろう。

Vhanはその軽いノリからは想像だにできないが、アジアで最も強いと言われるアッパーであり、それだけチームからの信用も厚いのである。事実、対面する楼瑠は一人では手も足もでなかった。たまらず兎咲に手助けを求めるが、不利な局面(きょくめん)になると彼はスルリと退却していく。その読みと判断の早さは見事としか言いようがなかった。


ROLU:《クッ!こっちはそろそろ持たない!》

UsagiPaisen:《わかってるぴょん!でもそっちは行けないぴょん!》


アッパーが不利なら他で押せばいいのだが、もちろん、そう簡単にはいかない。ダウナーの華湖と栞子も苦戦を強いられていた。Tama(たま)は誰とでも組めると言われるほど柔軟(じゅうなん)なサポートで、これまで実力はありながらその独特のプレイで孤立(こりつ)しがちであったTheodore(シアドア)と見事なコンビネーションを見せていた。Theodoreが他のチームから『強すぎて歯が立たない』とまで言われるようになったのは実はTamaの加入後の話だった。


KAKO:《だめです!ファーストフォートレス壊されます!》


華湖たちもキルされたわけではないが、攻め手を欠き、ジリジリと戦線を下げさせられていた。

兎咲はその状況から、中立モンスターを単独で狩りに行くという判断をした。助けるにしても、まず自分を強化しなければならなかったからだ。


UsagiPaisen:《ダメ!挟まれたぴょん!》


しかし、それを完全に読まれていた。孤立した兎咲に笑空とMatuが襲いかかった。それも、モンスターをあと一撃で倒せるという絶妙(ぜつみょう)なタイミングで。

兎咲は一瞬でキルとモンスターを奪われるはめになった。さらに二人はそのままの流れでダウナーに襲撃をかける。兎咲がセンター樹が慌てて応援に向かうが、それでも3対4。しかもレベルも装備も上回る日本一のチームが相手では、まるでその首を(ささ)げにいったようなものだった。


この序盤の攻防で今女のキルは0。対してMKTは5。彼女たちは完全に流れを持っていかれてしまった。


今女も反撃の機会を(うかが)う。だがそのたびに立ちはだかるのは笑空とMatuだった。どこからともなくやってきてはチャンスを潰していく。


UsagiPaisen:《スカウト来てるぴょん!》

Ikky:《またかよぉ!なんでわかるんだよ!?》


樹と兎咲は少ないチャンスを狙うのだが、まったく同じタイミングで相手のスカウトも助けに来る。二人は上から頭を押さえつけられるような気持ちになっていた。

少しずつつけられていたゴールド差は、もはや逆転が不可能なレベルに達していた。キルもどんどん差をつけられていく。


ROLU:《まだ負けてないぞ!(ねば)れ!》


そんな楼瑠の鼓舞(こぶ)(むな)しく、今女は為す(すべ)もなく3つのルートのすべてのフォートレスを破壊されてしまったのだった。


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