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驚かせる

《では最初の配信試合なんですが、これ、私が選んじゃって良いんですよね?それじゃさっき言った女の子だけのチーム、Secret(シークレット) Garden(ガーデン)の試合で良いですかね?見たいでしょ?みんな?ねぇ?オッケイ!てなわけで、初戦はSecret Garden対Pitbull(ピットブル)の対戦を配信しまーす!》


なんだか軽いノリの司会者が初戦の対戦カードを発表した。いきなり我らが今女チームの試合だ。選ばれた理由はともかくとして、見たい試合が見られるとあって、華湖たちは喜んだ。


KANKO:《おっ!いきなり配信たぁ、こいつぁ幸先(さいさき)いいぜぇ》

ROLU:《さて、奴らがどれくらい成長したのか、見せてもらおうか》

Ikky:《いやいや、怖いッスよーブチョー!…あれ?華湖?どうした?お腹押さえて》

KAKO:《いや、なんか緊張で、お腹いたくなってきました》


樹はそれを聞いてゲラゲラ笑いだした。


Ikky:《キンチョーって!華湖は出ないんだから、緊張する必要ないじゃん》

ROLU:《いやいや、ウチは分かるよ》

KANKO:《アタイもわかるぜぇ。仲間の試合って自分のこと以上に緊張したりするよなぁ。樹にはそういう繊細(せんさい)さがなくていけねぇや》

Ikky:《ハァー!?樹がガサツみたいな言い方やめて欲しいッスねぇ!》

ROLU:《ホラホラ、試合始まんぞ!》


まずはピック&バンのフェーズ。これは、お互い相手の情報がないのか、単にメタを参考にしたと思われるバンだった。少なくとも、Secret Gardenの方は全員が得意カリスマをピックできていた。


ROLU:《愛の得意カリスマはイキ・チャウだっけ?》

KAKO:《はい。里美はカレンで玲流はフロッギーなんですけど、これもバンされませんね》

Ikky:《おお?ラッキーじゃん?》

KAKO:《ですね!》

KANKO:《つまり、これで負けたら言い訳できねぇってこった》

Ikky:《だから、コワいですって~》


試合序盤(じょばん)はややおだやかな展開(てんかい)と言えた。お互いのカリスマを成長させつつ、チャンスと見れば攻撃をしかける。ファーストキルこそSecret Gardenがとったが、その後はどちらかがキルをすればやり返すという互角の展開が続く。


ROLU:《ほぼ互角、か》

KANKO:《相手チーム、知ってるプレイヤーはいないけど、登録情報では全員グラチャンだね》

Ikky:《こっちは?》

KAKO:《愛と里美はグラチャンですけど、あとはチャンピオンなんで、やや負けてます》

ROLU:《なるほど、そうなるとあとはチーム力だな》


ランクはプレイヤーの腕前を示す指標(しひょう)にはなるが、あくまでBoCとはチームゲームなのである。どれだけチームが協力できるかが勝利のカギであり、多少のランク差がひっくり返されることなど枚挙(まいきょ)にいとまがない。


だが、中盤(ちゅうばん)。Pitbullが竜狩りを成功させると、その後に発生した集団戦にも勝利し、差をつけた。彼女たちもなんとか食らい付くが、その差は徐々(じょじょ)にひらいていった。


ROLU:《んーこりゃマズイな。ここで愛がキルされたのは痛い》

Ikky:《ヤッベー!だけど、まだまだイケる!ガンバれ!!》


華湖はますます緊張でお腹が痛くなっていた。敗戦濃厚(はいせんのうこう)、友達が攻撃されキルを奪われるということが怖くて画面を直視(ちょくし)できない。


試合終盤。だれがみてもSecret Gardenの劣勢(れっせい)という展開。

Pitbullは試合を決めるべく、センタールートに全員が集結していた。総攻撃の構えである。彼女たちもそれを察知(さっち)し、防衛ラインを整える。だが、ここで意外なことがおこった。


KANKO:《あれ?里美、どこいってる?》

ROLU:《おっ?一人でアッパーを上がってるな》


楼瑠がミニマップを指して言う。ここに両チーム全体の動きが表示されるのだ。


KANKO:《へへっ、こりゃアイツ、やる気だぜぇ?》


いよいよ試合を決めるべく、両者がぶつかり合う。その時だった。一人、身を潜めていた里美が、単独(たんどく)で敵陣に攻め入ったのだ。


《おっとこれはおもしろい!Secret Gardenがバックドアをしかけているぅ!》


バックドア。直訳(ちょくやく)すれば裏口という意味。相手が攻め込むことに気を取られている虚をついて、敵陣に攻撃をしかけたのだ。むろん、Pitbullもすぐに異変(いへん)に気がつく。戻って防衛しようと思うが、そこを残りのSecret Gardenメンバーが邪魔(じゃま)をする。足止め、行動不能、スピードダウンというスキルを駆使(くし)し、攻撃を当てる。Pitbullはそれでも引くか、この4人を倒してから戻るかの選択を迫られる。だが、ここでそれぞれがバラバラの選択をしてしまった。


ROLU:《あ、それはダメだろPitbull…》

KANKO:《引く人と攻める人で別れちゃってるね、こういうのが一番ダメなんだよ。華湖、よく見ておきな》

KAKO:《ハイッ!》


数的優位(すうてきゆうい)を作っているのだから、まずは5対4での戦いを制してから戻る。あるいはこの攻めを捨てて全員で一度戻る、その二つどちらでもかまわなかったのだ。ただ、全員が同じ動きをするべきだった。

残った選手は逆に数的優位を作られキルされてしまい、他方、戻った選手もすでに時遅しであった。


《バックドア成功!Pitbullのキャッスルが崩壊(ほうかい)だぁ!》


結局、里美の単独攻撃が成功し、Secret Gardenの勝利となった。


KAKO:《やったぁ!》

KANKO:《勝つには勝ったけど、危ない試合だったな》

Ikky:《ま、勝てばオッケーっしょ!》

ROLU:《いや、これはあとで反省会だなぁ》

Ikky:《キビシイィ!》


しかし楼瑠も表情では勝利を喜んでいることが見て取れた。華湖もやっと緊張から開放されたのだった。

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