友達をルームに呼ぼう
RERU:《う……うわぁー……》
(うわぁ……って言ってるぅぅ)
華湖は、玲流が完全に引いているのを感じた。なんせ華湖のルームは、真っ白だったからだ。色だけの話ではない。家具や飾りなどの『オブジェクト』が一切ないのだ。初期状態のまま。興味がないわけではない。ただ、お金がなかったのだ。中古とはいえVRゴーグルは高価なものだった。少ない小遣いをため、ようやく手に入れたのだ。PCに関しては伯父が買ってくれたので、少し余裕ができた。だが、ルームの飾りなどにかけるお金は無かった。すべて、BoCのために使うと決めていたからだ。
BoCには多数のカリスマ、見た目を変えるスキンなどのアイテムがあるが、最初からどれも使えるわけではない。時間をかければゲーム内通貨で買うこともできるが、手っ取り早いのは課金することだった。華湖は、サリーの見た目を変えるスキンを少しと、サリーが使えなかった時のためにいくつかのカリスマを買っていた。
KAKO:《やっぱり、変、かな?》
RERU:《う……ううん!そんなことないよー! こういうことにお金かけない人もいるよねー!》
KAKO:《うん。BoC以外には使いたくないんだ……》
RERU:《なるほどー》
KAKO:《ここに人を呼ぶこともないかな、って思ってたし》
RERU:《えー? なんでー?》
そりゃ友達がいないから、と言いかけて華湖はハッとした。そんなこと言われても玲流も困るだろうし、友達が1人もいない奴、なんて思われたらまた引かれてしまうかもしれない。ここは誤魔化したほうがいいと判断した。
KAKO:《ん、ん~……やっぱり、ゲームって男の人が多いから、バーチャルの世界とは言っても、ちょっと怖いっていうか…》
RERU:《あー怖い目にあったって話も聞くよねー》
KAKO:《う、うん》
なんとかやり過ごしたとホッとしたが、(男の人が怖いっていうのは本当だから、嘘じゃない、よね?)と、自分自身に言い訳をしてしまう。
RERU:《ところでー、聞きたいんだけどさぁー》
KAKO:《なになに?》
玲流は矢継ぎ早にゲームに関する質問をしてくる。彼女はBoCこそ初心者だったが、他のゲームではそれなりの腕前らしい。質問の内容がツボを突いていることからも、彼女のカンの良さが伝わってきた。
KAKO:《ま、BoCは半年はチュートリアルって言われているし、気長にがんばろうよ》
RERU:《えー! 半年ぃー!? そんなに難しいのー?》
KAKO:《あはは!でも玲流は初心者にしては上手いから、もっと早いと思うよ》
RERU:《だと良いけどー……》
KAKO:《うん、ホント、センスいいよ》
RERU:《えー。ホントかなぁー?ところで華湖ちゃん》
KAKO:《なぁに?》
RERU:《久保さんと何かあったのー?》
KAKO:《え?》
久保里美。BoCの腕はなかなかではあったが、ときに激しすぎる指示が、華湖には苦手だった。
KAKO:《何もないよ?》
RERU:《ならいいんだけどー、なんか、仲が悪そうっていうかー……》
KAKO:《そんなことないよ、まだ知り合ったばっかりだし、仲が良いも悪いもないよ》
RERU:《そっかー、だよねぇー》
KAKO:《でも、正直言うと、ちょっと苦手かなぁ……》
RERU:《やっぱりー? 正直私もー……》
KAKO:《玲流ちゃんも?》
RERU:《うん、なんか怖いっていうかー》
KAKO:《うんうん》
RERU:《リーダーシップとってくれるのはー、ありがたいんだけどねー》
KAKO:《うん、私も経験者だけど、そういうのは苦手だから……》
RERU:《あははー! 確かにー! 最初、全然教えてくれないんだもん!》
KAKO:《う~ごめん……》
RERU:《冗談だってぇー! あははー!》
KAKO:《う、うん。あまり声だすの、得意じゃないの》
RERU:《うん、それは見ててわかったよー》
KAKO:《え?》
華湖は、こんなに肉親以外の人と話すのは初めてだった。何か物静かでおっとりした性格の玲流とは、落ち着いて喋れるようだ。
KAKO:《玲瑠はGATEのアカウントはあったみたいだけど、元々なんのゲームやってたの?》
RERU:《『ぽろぽろ』だよー》
KAKO:《えっ、玲瑠、『ぽろらー』だったんだ!?スゴイ!》
RERU:《別に、すごくないよー》
KAKO:《私、ああいう頭使うの無理だもん》
ぽろぽろとはいわゆる『落ちもの』と言われるパズルゲームだ。上から落ちてくるぽろぽろというキャラクタを、同じ色で4つ揃えると消える、というゲームである。ぽろぽろと落ちてくるのでそういうタイトルになったらしい。正確な操作と素早い判断が必要とされるため。eスポーツタイトルとしても有名なゲームである。
KAKO:《でもあれって、GATEじゃないよね?》
RERU:《うん、GATEより前からあるゲームだからー》
KAKO:《結構、歴史があるよね》
RERU:《そうそうー。だからーファンは結構いるんだけどねー。メーカーが権利を放棄しなかったからー、GATEタイトルにはなれなくてー、大きな大会がなくなっちゃったんだー》
KAKO:《なるほどねぇ》
RERU:《でー、GATEにも『落ちもの』があってさー》
KAKO:《『ロジカルスライム』だっけ?》
RERU:《うん、あれをやるためにーGATEもはじめたんだけどー、やっぱりぽろぽろのが面白いんだー》
KAKO:《ん~、私にはわかんないけど、そうなんだ?》
RERU:《でー、高校でー思い切ってー、MOBAにチャレンジしようと思ったんだー》
KAKO:《そっか~。玲瑠はすごいなぁ》
RERU:《えー、なんでー?》
KAKO:《やっぱ、新しいことにチャレンジするって、大変じゃん》
RERU:《うーん。確かにー、みんなについて行けるかどうかー不安はあるよー》
KAKO:《大丈夫!私がサポートするから!》
RERU:《ホントー!? やったぁー!》
チャットし、練習し、またチャット。彼女たちは結局、深夜まで二人で過ごした。




