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ボイスチャットをしよう

「あーー!もう!なんでサリー使っちゃいけないのよ!」


 華湖は、昼間の鬱憤を晴らすかのように得意のサリーで暴れまわっていた。


 メタに合わない。

 そう言われたことが引っかかっていた。


 メタとは現在の主流の戦法、とでもいう意味である。カリスマの使用率を調べてみると、サリーのそれは下から数えた方が早いくらいだ。はっきり言って、人気がない。

 理由は使いにくいから。

 特にバランスが悪いキャラで知られていた。終盤における攻撃力はトップレベルなのだが、反面、防御力が低く体力も少ない。序盤では気をぬくとすぐにキルされてしまう。


(この子が一番強いのに……)

 サリーは小さな妖精(フェアリー)、というカリスマで、可愛さから見た目だけなら人気上位だった。そのため、始めたばかりの女性が使いたがるカリスマなのである。もともと華湖が最初にサリーを選んだ理由もそれだった。

 だが、使いにくいカリスマを初心者が使えば酷い結果になることは目に見えている。今ではサリーを選んだだけで『こいつ、初心者の女かよ』と味方から容赦のない文句を言われるほどである。


 だが、サリーには時間が経つほどに攻撃力が上がっていくという特徴があった。キルされることで初期値に戻ってしまうのだが、生き残り続けた終盤のサリーは手がつけられなくなるのだ。だが、それがわかっている敵からは集中的に狙われることになる。なので、上級者でも終盤までキルされないでいる、ということは至難だった。


 華湖はそんなサリーを使いこなしている数少ないプレイヤーだった。あまりに強いサリー使いということで、彼女は上位プレイヤーの間で知られるようになっていった。だが、持ち前のコミュ障で、チャットなどを一切しないため、ついたあだ名は『サイレント・サリー』。プレイヤーネームより、こっちの方が有名になってしまった。


「ふぅ~」


 思う存分、暴れまわって勝利したところで、VRゴーグルを外し、背もたれを思いっきり倒して一息つく。


「明日はプレイヤー戦だって言ってたよね。たぶん、そこで実力を見られて、1年の代表チームを選ぶのかもなぁ。サリーさえ使えれば、3年生にも負けないと思うんだけど……」


 今女のeスポーツ部はどこも強かった。特にMOBA部、シューター部、カードゲーム部の活躍は目ざましい。高校生限定の大会であれば優勝候補の一角であるし、一般男性のトップチームと対戦してもいい勝負ができる、というレベルだ。だが、そこに入ってもBoCであれば活躍できる自信が華湖にはあった。

 ただし、通用するのはサリーが使えた場合のみ、であるが。


 ピン


 パソコンから音がした。

(あ、玲流ちゃんからメッセージだ)

 華湖はメッセンジャーツールを確認した。玲流とは、部活の時、隣りに座っていた初心者の部員だ。あの後、GATEでのフレンドになっていたのだ。フレンドとして登録しておけば、メッセージを送ったり、一緒にチームを組んでゲームをしたりできるようにある。玲流は、華湖にとって初のフレンドだ。


RERU:今時間あるー?

KAKO:玲流ちゃん、どうしたの?


(な……なんか友達みたい!)

 華湖は初フレンドとのやり取りに興奮し足をジタバタさせた。一般的に言えばどう見ても友達なのだが、彼女にはまだその実感がわかない。


RERU:ソルジャー倒すときなんだけどー、トドメを刺したほうがいいって聞いたんだけど、どうしてー?

KAKO:ああ、最後に攻撃した人にゴールドが入るの。だからだよ

RERU:そうなんだー! ん~でも、なんか上手くいかなくてー

KAKO:使ってるカリスマによって攻撃速度が違うからかも? なに使ってる?

RERU:ねぇねぇー、チャットだと面倒だしー、VC(ボイスチャット)しないー?

KAKO:え?? VC?


 テキストチャットですら、まだ慣れていない華湖にとって、VCはちょっと心理的な障害があった。


RERU:だめー? ひょっとして、声出せないー?

KAKO:ううん! 大丈夫!


(変わるって決めたのに、これくらいで躊躇してどうするの! 私!!)

 華湖は内心で喝を入れた。


RERU:じゃあー、チャットルーム作るからー。本人アバターで来てよー

KAKO:えーー! 本人アバター使うの!?

RERU:うんw だってせっかく作ったんだからー、使いたいじゃんー?

KAKO:それは、確かに……


 VCは言わばインターネットを介した電話のようなもの。普通は音声のみで会話するものである。だが、玲流が求めて来たのはアバターを使ったバーチャル空間でのチャット。バーチャルチャットだ。

(どうしよう、あの本人アバターって目を出しちゃってるんだよなぁ。でも、現実じゃないから大丈夫かも……。むしろ、現実での会話の練習になるんじゃ?)

 心配はあったが、華湖は意を決した。


KAKO:わかった、じゃあルーム名とパスワード教えて

RERU:ちょっとまっててー。今作るからー


 バーチャル・チャット・ツールを立ち上げる。これもGATEの機能の1つだ。玲流から教えてもらったルームに接続する。ルームは玲流の専用の部屋である。もちろん、現実ではなくGATE上に存在する架空のものだ。アカウント1つにつき1つ、割り当てられる。

 玲流のルームは、ピンク一色。キャラクターのぬいぐるみを模した3Dオブジェクトが所狭しと飾られている。こういったアイテムも購入することができる。玲流のアバターは部屋の中央に据えられたこたつに入っていた。


KAKO:《な、なんかファンシーだねぇ》

RERU:《あははー。変かなー?》

KAKO:《ううん、玲流はカワイイし、似合ってるよ》

RERU:《そ、そんなことないよー》


 女の目線からみても、素直に玲流は可愛い顔立ちをしていた。大きな瞳、小さめの鼻、綺麗な歯並び、青っぽく艶のあるロングヘアで、常に穏やかな笑顔を絶やさない。共学に行ったら、モテるだろうなぁと華湖は思った。


KAKO:《やっぱ、女の子の部屋だなー》

RERU:《華湖ちゃんだって女の子でしょー》

KAKO:《そうだけど、私のルームは殺風景なの。なんにもなくて》

RERU:《今度、華湖ちゃんのルームも行っていいー?》

KAKO:《え、ええ!? 私のルームなんてつまんないよ!》

RERU:《そんなのいいよー! そうだ、今から行こうかー?》

KAKO:《え、えぇええぇえええええぇぇぇ!?》

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