円陣を組む
もうすぐ決勝が始まる。Destinationメンバーは休息を済ませ、またそれぞれの席につこうとしていた。その時だった。
「ちょっとみんな、集まって」
楼瑠が集合をかける。
「ん?どした?」
不思議そうな顔で栞子がよってきた。楼瑠はその肩に右手を回す。
「はいはい、時間ないから、早く!」
「え?え?」
反対から来た華湖の肩にも手を回し、グッと引き寄せる。
「そっちも!円陣だよ」
その言葉を聞いて理解した樹と兎咲が円陣に加わる。
「よし、それじゃ。今日ラストの試合。気合入れてくぞ!」
「お、おう」栞子はこれでいいのかと迷いつつ返す。
「え?ハ、ハイ!」それは華湖も同様だった。
「いくぜぇ!」樹が気合を入れ直す。
「おいおい、なにやってんだ。バラバラじゃんか。全員で声揃えなきゃ」
ため息混じりに楼瑠が言うが、みな不満げだった。
「いやいや、いきなり言われても分からないぴょん」
「そッスよ!なんか決めてくださいよ」
「うーん、じゃあ『今女ファイト!』って言ったらみんな『オー!』って言ってな」
「うわー。ベタベタぴょん」
「うっさい!こういうのはベタで良いんだよ!じゃあ行くぞー!」
楼瑠は大きく息を吸い込み、大きな声で言った。
「今女ファイト!!!!」
「「オー!!」」
楼瑠は満足げで両手を大きく上にあげ、円陣を解いた。
「よーし!早く席につけー!」
(な、なんだったんだろう…)
急に楼瑠がこんなことをやりだした理由が分からず混乱した華湖だったが、おかげで少し緊張がとけた。他のメンバーも笑顔が見える。
(こういうの、なんか良いな)
体育会系のノリは未経験だった彼女だが、気持ちが昂ぶるのを感じていた。こういった行為にチームの結束を強める効果があるということを初めて知った。
メンバーは席に付きゴーグルを装着。ロビーに入る。
Ikky:《うぉっしゃー!》
ROLU:《いくぜー!》
KAKO:《いきましょー!》
いつも通りのノリの楼瑠と樹に華湖も加わる。思わず大きな声を出してしまった自分に驚いた。
KANKO:《華湖も気合入ってんなー!》
UsagiPaisen:《良いことだぴょん》
各地域のオフライン予選は決勝もBO1となる。つまり次が最後の試合だ。当然、配信試合である。
配信では今、両チームのメンバー紹介などをしているようだ。
KANKO:《さて、決勝はやっぱプランAで行くのかい?》
ここまで彼女たちは実戦を使った練習とも言うべきプランBで勝ちきってきた。しかし、決勝では普段もっとも練習し、自信のある作戦、すなわち全力のプランAを実行するものと誰もが思っていた。
ROLU:《うん、そう思ってたんだがな。ここは今まで通りプランBで行こうと思う》
Ikky:《えー!マジッスか?》
KANKO:《良いのかい?なめてたら食われるぜぇ?》
ROLU:《別になめてるとかじゃないよ。ただ、もう決勝進出は決まっているし、手の内を見せる必要はないかなって》
UsagiPaisen:《わっちは賛成ぴょん。ここまで良い流れできてるぴょん》
KAKO:《なるほど…それはあるかもしれないですね》
「勝っているときは変えるな」これはあらゆる勝負事における格言である。彼女たちはそれの言葉を聞いたから、というわけでなく、ここまで数々の試合を重ね、肌で実感してきた。それゆえの判断だった。
《それでは両チームのピックから見ていきましょう》
試合はいつものようにPICK&BANから始まる。
使用するカリスマをピックし、使われたくないカリスマをバンする。
Ikky:《へー。サリーをバンか》
ROLU:《華湖が使ってくると思ったんだろうな》
KANKO:《やっぱウチらのこと、研究してきてるみたいだね》
KAKO:《元々使う気なかったんですけどねー》
松原情報高専は確実に今女を調べ上げていた。メンバー達の最も得意とするカリスマをバンしている。プランAのつもりでいたら、大幅な作戦変更を余儀なくされただろう。そのためにいくつかのプランを用意しているわけだが、急遽変えるのと最初からそのつもりだったというのでは精神的な余裕が違ってくる。
《さぁいよいよ決勝戦が始まります。すでに両チームとも決勝進出を決めておりますが、お互い負けるつもりはないでしょう》
試合開始。
まずは各自のポジションに走る。お互い奇をてらったことをせず、静かな立ち上がり。
試合が動いたのは開始4分過ぎ。アッパーの楼瑠に松原情報高専のアッパーとスカウトが二人がかり襲いかかった。この動きを全く察知していなかった兎咲は助けに入ることができず、ファーストキルを奪われてしまう。だが、楼瑠も相手スカウトを瀕死まで追い込んでいたため、フォートレスからの攻撃をくらったスカウトは倒れてしまう。
結果は痛み分けではあるが、ファーストキルを奪われた分、差をつけられた形だ。
ROLU:《スマン!やられた!》
UsagiPaisen:《わっちが読み間違ったぴょん。もうしわけないぴょん》
KANKO:《いや、全然まだまだ大丈夫だ。気にするな!》
キル数1対1。ここから少し膠着状態が続くことになる。




