認め合う
勢いに乗った今女はそのまま2回戦、3回戦をプランBのままあっさり勝利し、オフライン決勝進出を決めた。
ROLU:《よし!gg!》
KAKO:《ggですー》
KANKO:《おつー》
Ikky:《ggッス!》
UsagiPaisen:《おつかれさまぴょん》
メンバーたちは声を掛け合うが、さほど興奮した様子もない。いたっていつも通りという感じだ。
ROLU:《決勝は20分後だ。ウチはちょっとトイレ行ってくる》
KAKO:《はーい》
Ikky:《樹もー》
すこし間が空いたので、みなゴーグルを外し、トイレに行ったり飲み物を飲んだりしはじめた。
華湖もゴーグルを外し、フーッと一息ついた。
予定通り、危なげなく、という感じでここまできたが、一応、彼女は今大会初出場であったため、多少の緊張があったのだ。次はいよいよ決勝で、やはり相手は松原情報高等専修学校と決まったが、もうプレッシャーもなく、リラックスして戦えそうだ。
「おつかれー」
「あ、愛。おつかれさまー」
「いやー余裕だったね。私が出てもよかったくらいだね」
「うん、危なげなかったね」
「ホント、華湖とはどんどん差をつけられちゃうな」
「え?そんなことはないよー」
華湖はお世辞でもなんでもなく、そう思っていた。自分も成長はしているつもりだ。だが他の生徒も、とくに仲のいい里美、玲流、そして愛の成長は目覚ましい。
「華湖はさ、前からうまかったけど、なんていうか自分勝手なプレイって感じだったんだけど」
「う…あはは。ずっとソロだったからね」
「今はそれも無くなって、チームプレイができてる。栞子先輩との連携がスゴいよ」
「ん?呼んだか?」すぐ隣にいた栞子に会話が聞こえたらしい。
「いえ、栞子先輩すごいって華湖と喋ってたんです」愛が言う。
「お?そうかぁ?照れるねぇ」栞子は歯を見せてニヤリという笑みを浮かべた。
「ねぇねぇ樹は?」樹も華湖と愛との間に顔を突っ込んできた。
「樹は…どうなんだ?兎咲?」
栞子は急に正面にいた兎咲へ振る。
聞かれた兎咲はジトっとした目で樹を見た。
「樹は…正直、やりにくかったぴょん」
「な…!」樹は瞬間的にムカッとした表情になった。
「でも今は変わった。やりやすいぴょん」
「う?お、そうか?うさぎちゃんもだいぶ分かってきたじゃん?」だが続く言葉が意外なものだったので、キョトンとした顔になってしまった。
「前は味方を待たないでガンガン行っちゃってたけど、そういうのがなくなってるぴょん」
「お、おう。そうか」
「ちゃんと連携できてるし、やりやすいぴょん」
「な、なによ。やたら褒めるじゃん?」
あまりに褒めるので樹は顔が赤くなっていた。兎咲は言葉では褒めていたが、表情は苦虫を噛み潰したようで、本当はこんなこと言いたくないとでもいうふうだった。
「実際、2年代表でやってたときと全然違いますよね」愛がさらに続けて言う。
「あー…そうかもな」
樹は長い髪のカールした毛先を指でクルクルと回しだした。
「今まではさ、正直、2年では一番上手いと思ってたんだ。けど、Destinationに入ってから、やっぱみんなの凄さがわかったって言うか、とくに兎咲の凄さがよくわかったよ」
「わっちがぴょん?」
「うん。来て欲しいってときにはもう来てくれてるし、ホント、よく見てるよね」
「そ、そうかぴょん」
言われた兎咲も言った樹も顔が真っ赤になっている。
(この2人、仲悪かったから心配してたけど…なんか良い感じじゃない)
華湖はその光景をちょっと安心した気持ちで見ていた。来年はこの2人が上級生としてチームを引っ張っていってもらわないと困るのだ。なので今までの関係性は不安材料だったのだが、これならなんとかなりそうだと思った。
「おう、どうした?なんの話だ?」楼瑠がハンカチで手を拭きながら会話に入ってきた。
「パイセン、樹と一緒に行ったのに、ずいぶん遅かったッスねー。ひょっとして…」
スパーン!
栞子の巨大ハリセンが炸裂した。
「ぃぃいいいいっってぇええ!ちょ、ちょっと栞子パイセン!それどこにしまってんスか!?」樹は頭の頂点を両手で押さえた。
「そりゃオメェ、四次元ポケットよ」
栞子は右手に持ったハリセンを左手のひらにパンパン叩きつけながら言った。
「兎咲、アタイが卒業したらコイツを譲るから、樹が暴走したらつかうんだぜ」
「わかったぴょん」
「いや、わかったじゃねーし!」
卒業。
不意に栞子の口から出たその言葉が、華湖の胸に刺さった。
(そうか…先輩たちはこれがラストの大会なんだ…)
もちろん知っていたことだったが、それを再認識した。こうこのメンバーでプレイできる時間は限られている。
(次の試合もゼッタイ負けられない…無敗で優勝する!)
少しリラックスしていた彼女だったが、今一度、気を引き締め直した。去っていく先輩たちと共に優勝という思い出を作りたい。それに、こんなところで負けているようでは笑空の待っているところに胸を張っていけない。
そんな気持ちが心の中に生まれてきていたのだった。




