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KAKO:《どうし…て?》
カリスマは何でも好きなものを使えば良い。笑空のように多数のカリスマを使えるプレイヤーなら選択の幅も広がる。作戦によって変えることもできるし、相手に合わせて変えることもある。とは言え、ポジションに合うかどうか、という問題がある。笑空もセンターに適応できるカリスマ以外は使えないはずだし、使ったところを誰も見たことがなかった。
しかも、よりによってサリーである。その特殊性から不人気なカリスマ。あえてここで無理して使うものではない。
《MKTの様子を見ても…予定通り、といった印象ですねぇ。何か作戦があるのでしょうか?》
実況者や解説者も理解ができないという話をしている。『調子にのってんじゃね?』『新入りのくせに奇抜なことすんな』などという感じで大会を配信しているチャンネルでのコメントも荒れ気味である。
Ikky:《これマジで何なんッスかね?》
ROLU:《わからん…まぁ笑空なら使えないことはないんだろうが…》
Ikky:《サリーっつったら華湖のカリスマじゃないッスか?ねぇ華湖》
KANKO:《いや別に誰のってこたぁないだろ》
KAKO:《そうです…よ…ね》
華湖もサリーが自分専用、などと思ったことはない。だが、サリーを使うものなど今まで自分以外に見たことがなかったため、いつのまにか内心では所有者であるかのような気持ちが芽生えていたのかもしれない。笑空がサリーを選んだことで驚きの感情があったが、その中にほんの少し嫉妬のような気持ちがあることを自覚していた。
UsagiPaisen:《ひょっとしてポジションも変えるのかもしれないぴょん》
ROLU:《んー、なくはない…か》
KANKO:《ま、始まりゃハッキリするっしょ!》
試合が始まり、勢いよく自分のポジションに散っていくMKTメンバーたち。その動きをみると、やはり笑空はセンターのようだ。
Ikky:《パイセン、やっぱセンターッスね?》
ROLU:《うん。どうするつもりなのか楽しみだね》
華湖はそんなやりとりを聞いてハッとした。確かに、笑空がどうプレイするのかは興味がある。
普通は上級者の動画や配信、そして大会などを参考にして練習するものなのだが、華湖はそれができなかった。もちろん、そうでなくても参考にすべきポイントはたくさんあったので、それらを見るのは欠かさなかったのだが、ことサリーに関しては自分でプレイを研究してきたという自負がある。初めて見る上級者によるサリーのプレイはいったいどんなものなのか。気持ちを切り替えて試合に集中することにした。
序盤。
お互いに慎重な出だし。だが、徐々に笑空のいるセンターで異変が起きていることが分かってくる。
《さあ、Azam選手これは少し攻めすぎたか。トドメのスキルが決ま…いや!かわした!紙一重でかわしました!これはナイスプレイ!!》
UsagiPaisen:《いまの…》
KANKO:《う、うん》
ROLU:《華湖がよくやるやつだ》
相手のスキル攻撃の範囲を見切り、ギリギリでかわすという技術。これまで何度も華湖が見せてきたものだ。もちろん、笑空でなくてもこのレベルのプレイヤーであれば難なくできることではある。だが、プレイヤーごとにちょっとしたクセのようなものがあるもなのだが、それすら華湖とそっくりだった。一緒にプレイしている彼女たちには分かる、華湖の特有の動き。
《おっとMKT、センターで動きがあります。Azam選手、追い詰めています。あと一撃というところですが、これは届かないか?いや!これは攻撃をかいくぐり、近寄って…キルです!Azam選手早くもファーストキルを取った!!》
相手のプレイヤーは逃げるためにスキルを放った。それは放射状に広がっていく弾を発射するというスキルだったのだが、笑空はその僅かな隙間を縫って近寄り、攻撃を当てたのだ。
KANKO:《あ!コレ!見たことあるぞ!!》
UsagiPaisen:《華湖も前の大会でやってたぴょん》
Ikky:《そうなんだ?華湖?》
KAKO:《はい…自分で言うのもなんですが、私にそっくりです》
華湖はその言葉を口にしなかったが、一同の頭によぎったのはプレイのコピー。悪く言えば『盗んだ』とも思えるような行為だった。
《Azam選手!!すでに恐ろしい攻撃力になっている!!これは止められない!!》
MKTは笑空の活躍で圧勝した。しかし、何か彼女たちの間に気まずい空気が流れた。
もちろん、プレイに著作権があるわけでもない。誰もが上級者の真似から入るものだ。しかし、相手が格下の華湖とは、あまりに節操が無いのではないか。非難するほどではないにしろ、あまり褒められた行為ではない。
誰も何も言葉を発することのないまま、配信では勝利者のインタビューが流れる。
《Azam選手、初出場にして初勝利!おめでとうございます!》
《ありがとう…ございます…》
《今日の勝利を誰に伝えたいですか?》
《高校の…後輩に…》
《それは同じ部活の?》
《そうです…早く…こっちへ…》
《こっち?こっちとは?》
《………》
《Azam選手?》
一同は一斉に華湖を見た。
名指しはしていない。しかし、使ったカリスマがサリーであること。部活の後輩という言葉。そこからつながるのは華湖しかいない。明らかに彼女へ向けてのメッセージだった。
(そうか…そういうことだったのか…)
笑空のメッセージを受け取った華湖は、画面に映る笑空の姿をじっと見つめていた。




