表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/166

カップを掲げよう

ROLU:《よしよしよしよしよし!!》

KANKO:《いけいけいけいけ!!》

KAKO:《突っ込みます!!》

UsagiPaisen:《勝ったぴょん!》

Azam:《…あとすこし…》


キャッスルを守るように2つのフォートレスが存在するが、全員一丸となった攻撃には数秒しかもたなかった。あとは守るものがなくなったキャッスルを叩くのみだ。

すでに勝利を確信し、絶叫に近い声を張り上げるメンバーたち。もはや何を言っているのか聞き取れずVCの意味をなしていない。だが、すでにその必要はなかった。


キャッスルが光を放ち、崩れていく。そして画面中央に現れる『VICTORY』の文字。


《高校生限定大会『Phase ZERO』、決勝は下今女学院が2連勝!全国の高校の頂点に立ったぁあ!!》


勝利が確定した。その瞬間、メンバー達は一斉にゴーグルを外し、抱き合い、何度も飛び上がって喜びをあらわにする。

楼瑠が主導し全員が肩を組み輪になる。


「よっしゃー!よくやった!」


楼瑠の勝どきを機に、みな一斉に飛び跳ね、騒ぐ。会場の歓声もあり、誰が何を言っているのかはまったくわからなかった。

笑空は何も言わなかったが、珍しく微笑みを浮かべていた。


そこへマイクをもった司会者が現れる。


《おめでとうございます!素晴らしい決勝戦でした!今のお気持ちを!》そう言いつつ、部長である楼瑠にマイクを差し出す。

《みなさんの応援のおかげで優勝できました!ありがとうございました!》楼瑠らしく、元気よく答える。

《応援が力になったということですね!今のお気持ちを!》

《やったぴょーん!》ぴょんぴょんと飛び跳ねつつ答える兎咲。

《ぴょーんということです!KANKO選手!一言お願いします!》栞子にマイクが向けられる。

《見たか!こんちくしょうめ!!》音が割れるほどの大声を出す栞子。

《おお!威勢が良いですね!お願いします!》続いて笑空。

《…》

《お願いします!》

《…》

《あ、あの…》一切動じない笑空に、司会者に焦りが見える。

《…ありがと…》いつも通りの笑空だったが、この歓声では声がかき消されよく聞こえない。

《あ、ありがとう?ありがとうですね!わかりました!そして。アレ?》


最後に華湖、だったはずなのだが、すでに舞台上にその姿はなかった。キョロキョロと見回すが、見つからない。またも司会者は焦ることになった。

《えーと、KAKO選手もいたはずなのですが…》

見かねて楼瑠が何やら司会者に耳打ちする。トイレに行ったとでも言ったのだろうか、司会者は探すのを諦めたようだ。


《それではこれから表彰式があります。準備がありますので、選手のみなさんは一度、ご退場いただいて、待機をお願いします》


一度袖に引いたメンバーたちだったが、まだ興奮が醒めない。

ステージでは表彰式の準備をしているらしい。その間も司会者が喋る声が聞こえ、時々観客からの歓声がわき起こる。

それを耳にして、華湖はだんだんと顔が青ざめてくる。


「おーい!大丈夫か?」すでに裏にいて、震えていた華湖に楼瑠が話かけてくる。

「あの、どうしても、行かなきゃ駄目ですか?」

「あったりまえだろー?表彰式だぞ?」

「そうそう、記念にもあるぴょん?」兎咲も見かねて声をかけてきた。

「で、でも…」

「お前ら、よくやったぞー!…ん…?なんだ?倉井どうした?」

「あら、犬飼先生、どこ行ってたんですか?」

「そりゃ土田、応援してくださってるみなさんとだなぁ…」

「まぁそれはいいです。それより華湖なんですけど」


やっと姿を現した犬飼に、楼瑠は華湖の今までのことを説明する。


「なるほどなぁ。そんじゃ、裏で休んでおけ。運営には体調不良とでも言っておくから」

「い、いいんですか!?」華湖の顔がぱぁっと晴れる。

「ああ、そういうことなら無理するな」

「先生!ありがとうございます!」

「いや、礼を言われるようなことじゃないけどな。けど、次の機会までに人に慣れないとな」

「ハ、ハイ…」

「さすがに、表彰式に布をかぶってってわけにはいかないからなぁ」

「う…」


準優勝の表彰が終わり、いよいよ今女の出番となる。

《では、優勝した下今女学院のみなさん舞台のほうへお越しください!》


司会者が壇上で呼び込む。


「んじゃ、行くぞ!」


舞台に出たとたん、ワッと沸き起こる歓声。

音の塊がメンバー達の体を打った。


華湖はその様子を袖から見ていた。

舞台中央には台があり、その上に優勝カップが置かれている。

代表者である楼瑠がそれを高々と掲げる。同時に紙吹雪が舞う。

何度も明滅するフラッシュ。歓声は更に大きくなる。

(次は…私もあそこに…?)

華湖は自分が舞台に立っているところを想像してみた。

優勝カップを掲げる自分。抱きついてくるチームメイト。素晴らしい、その甘美なる光景に思わずニマニマしてしまう。

今からでも行こうか?そんな考えが頭をよぎった。だが袖から客席の方をチラッと見てみると、そこは人の海だ。数えきれない人、人、人。それが一斉に蠢く。

途端に膝が震えだした。


「これ、いつか治るのかな…」


華湖は壁に背を預け、一人つぶやいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ