カップを掲げよう
ROLU:《よしよしよしよしよし!!》
KANKO:《いけいけいけいけ!!》
KAKO:《突っ込みます!!》
UsagiPaisen:《勝ったぴょん!》
Azam:《…あとすこし…》
キャッスルを守るように2つのフォートレスが存在するが、全員一丸となった攻撃には数秒しかもたなかった。あとは守るものがなくなったキャッスルを叩くのみだ。
すでに勝利を確信し、絶叫に近い声を張り上げるメンバーたち。もはや何を言っているのか聞き取れずVCの意味をなしていない。だが、すでにその必要はなかった。
キャッスルが光を放ち、崩れていく。そして画面中央に現れる『VICTORY』の文字。
《高校生限定大会『Phase ZERO』、決勝は下今女学院が2連勝!全国の高校の頂点に立ったぁあ!!》
勝利が確定した。その瞬間、メンバー達は一斉にゴーグルを外し、抱き合い、何度も飛び上がって喜びをあらわにする。
楼瑠が主導し全員が肩を組み輪になる。
「よっしゃー!よくやった!」
楼瑠の勝どきを機に、みな一斉に飛び跳ね、騒ぐ。会場の歓声もあり、誰が何を言っているのかはまったくわからなかった。
笑空は何も言わなかったが、珍しく微笑みを浮かべていた。
そこへマイクをもった司会者が現れる。
《おめでとうございます!素晴らしい決勝戦でした!今のお気持ちを!》そう言いつつ、部長である楼瑠にマイクを差し出す。
《みなさんの応援のおかげで優勝できました!ありがとうございました!》楼瑠らしく、元気よく答える。
《応援が力になったということですね!今のお気持ちを!》
《やったぴょーん!》ぴょんぴょんと飛び跳ねつつ答える兎咲。
《ぴょーんということです!KANKO選手!一言お願いします!》栞子にマイクが向けられる。
《見たか!こんちくしょうめ!!》音が割れるほどの大声を出す栞子。
《おお!威勢が良いですね!お願いします!》続いて笑空。
《…》
《お願いします!》
《…》
《あ、あの…》一切動じない笑空に、司会者に焦りが見える。
《…ありがと…》いつも通りの笑空だったが、この歓声では声がかき消されよく聞こえない。
《あ、ありがとう?ありがとうですね!わかりました!そして。アレ?》
最後に華湖、だったはずなのだが、すでに舞台上にその姿はなかった。キョロキョロと見回すが、見つからない。またも司会者は焦ることになった。
《えーと、KAKO選手もいたはずなのですが…》
見かねて楼瑠が何やら司会者に耳打ちする。トイレに行ったとでも言ったのだろうか、司会者は探すのを諦めたようだ。
《それではこれから表彰式があります。準備がありますので、選手のみなさんは一度、ご退場いただいて、待機をお願いします》
一度袖に引いたメンバーたちだったが、まだ興奮が醒めない。
ステージでは表彰式の準備をしているらしい。その間も司会者が喋る声が聞こえ、時々観客からの歓声がわき起こる。
それを耳にして、華湖はだんだんと顔が青ざめてくる。
「おーい!大丈夫か?」すでに裏にいて、震えていた華湖に楼瑠が話かけてくる。
「あの、どうしても、行かなきゃ駄目ですか?」
「あったりまえだろー?表彰式だぞ?」
「そうそう、記念にもあるぴょん?」兎咲も見かねて声をかけてきた。
「で、でも…」
「お前ら、よくやったぞー!…ん…?なんだ?倉井どうした?」
「あら、犬飼先生、どこ行ってたんですか?」
「そりゃ土田、応援してくださってるみなさんとだなぁ…」
「まぁそれはいいです。それより華湖なんですけど」
やっと姿を現した犬飼に、楼瑠は華湖の今までのことを説明する。
「なるほどなぁ。そんじゃ、裏で休んでおけ。運営には体調不良とでも言っておくから」
「い、いいんですか!?」華湖の顔がぱぁっと晴れる。
「ああ、そういうことなら無理するな」
「先生!ありがとうございます!」
「いや、礼を言われるようなことじゃないけどな。けど、次の機会までに人に慣れないとな」
「ハ、ハイ…」
「さすがに、表彰式に布をかぶってってわけにはいかないからなぁ」
「う…」
準優勝の表彰が終わり、いよいよ今女の出番となる。
《では、優勝した下今女学院のみなさん舞台のほうへお越しください!》
司会者が壇上で呼び込む。
「んじゃ、行くぞ!」
舞台に出たとたん、ワッと沸き起こる歓声。
音の塊がメンバー達の体を打った。
華湖はその様子を袖から見ていた。
舞台中央には台があり、その上に優勝カップが置かれている。
代表者である楼瑠がそれを高々と掲げる。同時に紙吹雪が舞う。
何度も明滅するフラッシュ。歓声は更に大きくなる。
(次は…私もあそこに…?)
華湖は自分が舞台に立っているところを想像してみた。
優勝カップを掲げる自分。抱きついてくるチームメイト。素晴らしい、その甘美なる光景に思わずニマニマしてしまう。
今からでも行こうか?そんな考えが頭をよぎった。だが袖から客席の方をチラッと見てみると、そこは人の海だ。数えきれない人、人、人。それが一斉に蠢く。
途端に膝が震えだした。
「これ、いつか治るのかな…」
華湖は壁に背を預け、一人つぶやいた。




