ヴェルズ
ウェルズ
「ミディ様。勇者、義明の動向についてご報告が」
左膝と右手を床について言った。
「申せ」
と、かすれた声で司教様が言った。
「ハッ、勇者のレベルが12になったと報告を受けました」
「それで?」
「監視を続けております暗部の者が、『恐らく今後はレベルを積極的に上げ、スキルも取得していくのではないか?』そう報告がありました」
司教様は黙ってしまった。
床についた手に石の冷たさが徐々に伝わってくる。
義明の動向は暗部の者に探らせていたが、今まではわりと静なものだった。これが最近、武器を揃え、魔物と積極的に戦っているらしい。
「現在のスキルやHP、MPといったものは相変わらず分からんのか?」
「はい、ロックを掛けたという、マロンという女はまだ見つかっておりません」
ギルドの受付嬢だったマロンという女が義明のギルドカードの情報にロックを掛けたまま行方不明になっていた。
ロックを解除できるのはマロンという女だけだというのが、冒険者ギルドの解答だ。
ロックが掛かっていなければ、ギルドでアイテムを換金する度に義明のステータスは全て入手出来たはずだった。
「まぁよい。我等の使命は心得ているな?」
「ハッ!人神様の使徒としてこの生を全うする事であります!」
「よろしい!行け!人神様の為に行動し!人神様の望む通りにせよ!神徒戦団長ヴェルズ!」
「ハッ!」
俺はそう言って立ち上がって出口へと行く。
大きな扉の前に来ると、全身鎧に身を包み、槍を持った二人の兵士が扉を開けた。
振り返ること無く扉を通り過ぎると扉はゆっくりと閉まった。
「はぁ。」
扉が閉まったのを確認してから大きくなってため息をついた。
めんどくせぇ!
あのおっさん、言うことが抽象的なんだよ!
もっとはっきりと、何をどうするのか言わねえと!
あいつの出した指示は結局、『人神様の使徒として頑張れ!』これだけだぜ?!
まぁ、所詮お飾りってか、頭もお飾りってか、中身は空っぽってか。
でもそのくせ、召喚者を洗脳しろ!
とか、強行手段をいきなり取る。
付き合いきれねぇよ。
教会派に付くの辞めようか?
でも、神殿派が一番金払いが良い。
国王派だと、真っ当、健全。ただし金払いが悪い。
王子派は金払いがそこそこ良くって、多少悪いことをしても誰にも怒られないというのが強みか。
この国のパワーバランスはこの3つの勢力の三つ巴になっている。
古くから続く貴族に支持されている国王派。
商人や、新しい貴族に支持されている王子派。
信仰深い貴族に支持されている俺ら教会派。
強さと金とは限りなくイコールに近い。
金のある貴族からどれだけ支持されているか。
これが勝負の分かれ道だった。
つまり、貴族に相手にされなければ勝負にならない。
それを、王子は商人達から支持を集め、一つの勢力になったのだ。
これに教会派と国王派は慌てた。
教会派と国王派は、長く時間を掛けて蜜月関係を築くに至った。
しかし王子派の影響でそれは崩れた。
教会派と国王派で協力して王子派を叩けば良かったのだが、王子はそれを言葉巧みにお互いの疑心暗鬼を引き出しそれをさせなかったのだ。
王子はデブでハゲの冴えない見た目だが人の心の弱さや、欲を付くのに長けた人物だった。
そして、俺にも王子派にならないかと話を持ってきていた。
条件はかなり良い。
でも、そんなに簡単に教会派は辞められねぇんだよ。
まぁ、アイツもその辺は分かって言ってんだろうけどよ。




