逃亡者
逃亡者
真二君の後ろをつけていた。
真二君は、人の後ろをつけて歩くのは得意なようだが、自分がつけられるのは経験が無いのか、私の存在に気付かなかった。
まぁ、もし私の存在に気付いても今の私は、私のスキル
『某装少女』
でネズミの姿をしているから、気付かれた所で何も無いと思うけど。
それでも見つかって声でも出されたら困っちゃう。
隠れてる間に、真二君を見失いたくはない。
真二君の後ろを頑張ってついていく、人間が歩くスピードをネズミの体で常に出すのは正直キツい、でも早く義明君に開いていた気持ちが私の歩みを早くさせた。
私のスキル『某装少女』は見たことのある人や動物、それに魔物に変身出来るというものだった。
ちなみにドラゴンにだって変身出来る。
ドラゴンを見さえすればだけど。
じゃあ、ドラゴンを見て変身すれば強いのかと言うとそうでもない。
強さは私のままにドラゴンになるからだ、しかも体は今の私の体積を上回って大きくなることが出来ない。
私がドラゴンになると、体重48㎏、レベル1の子供ドラゴンになる。
では、今ネズミになって、ネズミらしからぬ強があるかというとそえでもない、所詮ネズミの強さしかない。
攻撃力、防御力ゼロのただのネズミだ。
このスキルはどうやらどんな生き物にもなれるが、私の強さに従った強さしかない。私の魔力が15ならドラゴンになったときも15になる。
そして、私は今ネズミになってるが、魔力はゼロだ。
能力の限界値は変身先の生き物に従う。というのが、この国の研究者の回答だった。
ようは私のレベルを上げないとどんな生き物に変身しても弱いままというとこ。
さて、どうやら建物の出口まで来たようだ。アーチ型の通路の向こうが明るくなっている。
真二君は何かカードの様なものを出して兵士さんに見せた。
多分あれが許可証なんだろうな。
私はもちろんそんなもの持っていない。
強行突破だ!!
体を縮めて力を溜めると全力で走り出す!
兵士さんに気付かれるが走り抜ける!
その時、兵士さんの足が動いて!
私の体を蹴った!
『いって!!』
と言ったつもりが口からは、
「チュ」としか喋れない。
もちろん言葉をネズミが喋ったら別の意とで捕まえられちゃうだろうけど。
そして、兵士さんは建物の外へと私を蹴った様で、蹴られた先、そこは芝生の上だった。
ヨタヨタと歩いて建物の影へと移動して、次は犬に変身した。
そして臭いを嗅ぎながら真二君の跡を追った。




