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ここで少しだけ魔術に関して触れておく。

俺の視界はゲームの表記の通りなのでMPであるがこの世界の通常の呼び名は魔力である。また、魔術のあれやこれやに対する呼び方、誰がつけたんだか知らないが若干紛らわしい。


魔術師=魔法を使う者

魔術=魔法を使い何かを行う事

魔法=魔力が原因で起こる不思議現象


この3つを両親から噛み砕いてなんとか理解したがこの時点でだいぶ頭が痛い。もう呼び名さえ間違えず会話できるならフィーリングでいいと思わされた。


魔力量が多い=MPの最大値が多い

魔術の種類が多い=使える魔法が多い


このあたりになってやっとゲーム脳の俺が理解できる話だ。

ここまで学んだ事で例文を作りなさいというテストがあったとしたら

「魔法を沢山使って魔力が少ない。回復液で魔力を回復しないと」

「あの人石化も凍結も使えるなんてよほど魔術の種類と魔力が多い魔術師なんだな」

って感じだ。

これをゲーム内では

「技打ちすぎたわ回復する」

「このキャラMP高くて石化も凍結も覚えて超便利だわ」

とかになるんだろうな。実際言ったことありそうな字面に世界に謝りたくなってくる。


そう。そんな魔術だが子供の俺でも行使可能である。そもそもがレベルアップで魔法を覚えるゲームであるので俺にも適応されていたのだ。

ただし効果・威力は慣れていないのかまちまちである。

あと家の中や庭で試してみる気にならない魔法とかが普通に存在するので、脳内コントローラーで唱えないように必死だ。寝ぼけて出してしまったら目も当てられない。

これらの練習をする為の場所が目下の悩みではある。


…―

―――

――――


閑話休題。

回復液は必須の道具であるからして、量産できるに越したことはない。ゲームではボタンをポチッと押すだけでMPが消費され毒草の量とMP消費量に見合ったグレードの回復液がストレージに保管されるお手軽便利仕様である。同時にきのみやミントなどを入れると追加効果のついたものも出来上がる親切仕様。大変お世話になりました。

しかし現実ではそうはいかない。今世もお世話になりたかった人生だった。

鍋に火をかけ毒草を入れ魔法を唱えながら煮ると何故か葉が溶けていき毒々しい色が薄れていき時期に透明になる。これで回復液の完成だ。空き瓶に入れ封をして沢山作り両親に渡して居るがいまだに少しの傷は治る程度のものしか作れていない。

その回復液、母がたいそう喜んだのだ。日に焼けた肌が白くなっていき、肌荒れもすぐ治る。手荒れや割れた爪も元通りになり乾燥しがちな髪は潤って滑らかになった。

一児の子持ちと思えない美女になった母に父は大喜びし自分の分も母に渡していた。

仲良し夫婦で何よりだが、毒草がもっと育てば沢山作れるからそれは父が持っていてくれ…


今思うと美しくなった母という功績から父は俺に余計に甘くなったのかもしれない。毒草入れのマトリョーシカ箱を見下ろして若干遠い目になった俺に母から声がかかる。


「ここがいつもお母さんの野菜を買い取ってくれるお料理屋さんよ。どうやって買い取ってもらうかのお手本もするからよく見ていること。そして、周りの迷惑にならないようにおとなしく、働いている人の邪魔をしないこと。

この約束事が守れないならすぐに街を出ます。いいわね?」


大通りよりすこし外れた、坂になっている道の途中にある店だった。看板に食べ物の絵がありいい匂いも漂っている。時間をピーク時からわざとずらしたのか準備中の看板が扉にかかっている。

小さい子供には難しいかもしれないが、俺には当然出来ることなので首肯する。しつけが出来る良い母である。

頷いた俺を見て大丈夫そうだと判断した母は店の扉を叩く。


「こんにちは、アルネです。本日納品可能な品をお待ちしました」


街の喧騒に負けないようなボリュームで母が名乗る。母の大きな声や、仕事モードの声音が珍しく驚いて顔をガン見してしまった。

注視モードが働き、パーティメンバーのままな母の状態が目の前に出る。


緊張、疲労が少しあるな…これが終わったら回復液を飲もう。俺も馬車で尻が大変痛い目にあった事だし。


そんな事を考えているうちに店の人が迎えてくれ2人で扉を潜った。彼に倣って母が俺が付き添う許可を経てテーブルに腰を下ろす。どうやら彼が店主であり商談相手らしい。母の隣に座ろうとしたら気づいた店員がお子様用の椅子を持って来てくれた。なんとも気が利く店である。

準備中じゃなかったら注文して売り上げに貢献したかった。


「先週の納品した分の売り上げはどうでした?」

「スープは具沢山なのが喜ばれるからね。買い取った野菜は使い切って今は大好評につき売り切れメニューさ」

「あら嬉しい。」


会話を聞きつつ周りを注視していく。

この店の名前は『プレングリーン』豊富な野菜とジューシーな肉料理がウリの大衆料理店のようだ。

売り切れの表示が出ているのが田舎風野菜の日替わりスープという商品のみでおそらく母の野菜を使っているのはこのメニューだろう。


「今はこの野菜の季節か」

「そうですね。今週分はこれだけです」


会話しながら店主が品質を確認し量を測っていく。

なるほど。父の木細工は木のおもちゃから家具まで様々な大きさの商品が工房に並んでおり、旅の行商人やら他国向けの商売をしているお金持ちやらが買い付けに来るが、値付けの瞬間を見たことがなかったので感心した。

この後俺にも商談が待っていると思うと気がひきしまる。舐められないようにしなければ。

キラキラした目をしたと思えばいきなりキリッとした顔をして忙しい俺を置き去りに商談は終わる。


挨拶をし、店を辞す。今度食べに来るという社交辞令抜きの俺の言葉に破顔した店主が営業時間を教えてくれた。

ふむふむ、休憩と仕込みが終わってピーク時間にまた開店か。理にかなった運営だな。


絶対に田舎風野菜の日替わりスープを頼もうと決意し母に俺の商談相手となりそうな店に案内してもらう。

ところで田舎風ってギリギリ悪口じゃない?王都的には褒め言葉なの?田舎に住んでいる俺からしても判断できなくて微妙な心境になった。

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