05
さて、長らく回想に浸っていたがここからが本題。
とうとう馬車が街に着いたのである。
回想から季節をふたつほど跨いだ今日の目的は大きく分けて2つ。
あの後毒草の栽培に成功し、定期的に一定量の葉の採集が可能だと判断した俺はこの毒草を街におろす事を提案した。
母は持ち込む時、自身の育てた野菜の品質に障りがあると困ると難色を示したが、これに父が専用の三重に密閉出来る箱を用意し、その中に入る量だけなら良いのではと俺の肩を持ってくれ、早速箱の製作に取りかかってくれた。
父の威厳と好感度が爆上がり案件だった。美人でたわわにみのる2つの山が魅力的な母と結婚できるわけである。
マトリョーシカ人形を思い浮かべながら完成品を見やると実際に毒草を入れられる1番内側の箱はティッシュボックス程のサイズであったが、葉を入れるだけなら大満足のサイズだ。
これには母も納得し、今回の街への同行許可も同時に出される。何故ならこの毒草を育てたのも売れると信じているのも俺だけなので。
少し悔しいが子供の道楽だと思ってる両親の驚く顔を今から楽しみにしている。
これが目的のうちのひとつめだ。
もし万が一売れたとしたら、売ったお金で好きなものを買っていいと言われている。
その為にこの国の通貨をみっちり勉強したのだ。
ゲームだと全てG表記だったのでとても驚いた。だが複雑な日本円を理解していた俺に死角は無かった。
リリーン国だけではなく、このオルパーツ全土では共通の通貨が使われており、金貨・銀貨・銅貨の3種類である。
金貨1枚は銀貨100枚と同価値、銀貨1枚は銅貨50枚と同価値だという。
日本円でわかりやすく例えると銅貨が100円玉、銀貨は五千円札、金貨は50万円の札束だ。
金貨だけどうしてしまったのかってほどの金額。俺がお目にかかれる日が来るのだろうか…
金貨まではいかなくとも、それなりの額を今日手に入れられると取らぬ狸の皮算用の手本の如く踏んでいる俺は欲しいものをリストアップしていく。
「魔術系統のミッションをこなすのが自宅周辺だけだと難しいからなぁ。魔法書…いや贅沢は言わない。教本でも教科書でもいい。このあたりをなんとしてでも手に入れなくては」
街はかなり賑わっており、この街で生活をする人々、買い物をしに他の地から来た人、行商人、俺らのような個人の売り物を店に持ち込む卸売業の人など多種多様な人でごった返している。
母は荷物を台車に乗せておしていて石畳を車輪がガタゴト鳴らしてはいるが、はぐれないようにピッタリはりついて歩いていた俺のバカデカい独り言が耳に入ったようだ。
「あら?お父さんからもらった木刀で毎日嬉しそうに遊んでいたからてっきり騎士になりたいのかと思っていたけれど。魔術師にも興味があるの?残念だけど、どちらかにしかなれないのよ?」
母は子供の夢を壊してしまうと思ったのか、遠慮がちに伝えてくる。
その辺で拾った木の棒を振り回しミッション達成・レベルアップに勤しんでいた俺を見た父がある木刀を作ってくれたのだ。子供にも持てる重さと身体が逆に振り回されない長さ、手に傷ができないよう滑らかにやすられ塗料でツヤツヤとした父の職人魂と愛が籠った逸品である。
手渡された日はあまりの嬉しさに泣いて喜びそれからきのみ集めにも毒草摘みにもいつも腰紐に通し持ち歩いている。
なんか泣き虫になってないか?前から感動モノの映画は泣いちゃうから家で1人で見る派だったが子供になってから顕著だぞ。大人になる前に矯正しなければ…すぐに泣き出すみっともない男になってしまう…
因みに泣いて喜ぶ俺を両親はおやおやあらあらはははうふふと俺以上に喜んで見ていたのでこれは親孝行のひとつだという事でひとつよろしくお願いします。
「どっちになりたいかまだわかんないけど、どっちも楽しいからしばらくは両方ともやりたい!」
先ほどの母の質問に元気よく答える俺。
子供の意見を尊重してくれるタイプの親だと確信しているので母には魔術の勉強や魔術関連の道具の購入は無駄遣いではないと認めてもらえるようにアピールする。
「どっちも?楽しい?いつ魔術を?」
母がなにやら首を捻っている。
おや?もしや母は俺が毒草を育てているのも、毒草に魔力を注ぎつつ煎じて回復液を作っているのも魔術とは関係のないものと思っている可能性が出て来た。
確かに魔術師は滅多に見ないし、いたとしても王都で仕事をしているから会うことはない。
はーいはいはい。理解した。
「俺が作った低ランク回復液は肌荒れ、ニキビ、日焼けに効くが美白化粧水じゃないんだよおかあさん!」




