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03


俺が転生特典としてゲーム画面を与えられたと気づいてから使いこなせるように特訓する日々を送っていた。

やがてハイハイからつかまり立ちへ。そして走り回るようになるのにそう時間はかからなかった。

メインミッションを達成していくと、どんどんと体力、運動神経、思考力などが上がっていくのが実感できて楽しかったのもある。

体力をつけるミッションだと床を全力ハイハイしてまわり、ご飯をもりもり食べるなど、関連しそうな物や事をこなしているうちに自然と達成出来るのである。

両親は神が才能を与えてくれたととても喜んでいた。

成長速度が異常なのに、初めての子供だからか?呑気な事である。まあその呑気さに救われているので何も言えないが。


ある日スラスラと話せるようになった記念に母さんにそれとなく

「このへんにみどりのばー?が…」と言ってみたが不思議そうな顔をされるだけだったので確実に俺にしか見えていない。

その為、操作方法など全てを自ら見つけ出さなければならなかったのだ。

誰にも教えて貰えないゲームの操作にレトロゲーム感を味わっている。ゲーム内のチュートリアルやインターネット上の攻略サイトは素晴らしい文化だった。今ならコメントでたまに現れる指示厨の指示コメントも笑ってお礼が言える。

だがしかし、どうにもならないのが現実である。

実際のゲームで出来た操作を出来るようにならなければ魔法使いにも剣士にもなれない可能性が高い。

両親の身なりや家具の様子、寝室の大きさなどをとっても庶民である事は分かり切っている。


庶民が悪いように言ってしまったが、これは誤解である。

それを語るにはゲームでは明かされてないこの世界の話をしなくてはならない。

このオルパーツという世界には様々な人種が暮らしている。そして人種ごとに国を作り統治している。

俺が住む人間の国、リリーンは世界大陸の中央に位置し各国の橋渡しなどをしているのである。

さてゲームでは首都などの主要都市しか出てこないが実際のリリーンは当たり前に様々な町や村が存在する。

そこに住まう人々は大体が親の職業の後を継ぐか、適性がない場合や、多産の家庭の職場・業務に対して人員が余る場合に親戚や知り合いの職に就くのが一般的かつ普遍的である。

だが王都の騎士、魔術師、魔法が業務内容に入る職業、国防など屈強な者たちが就く仕事は4年に一度の適正試験で能力を認められないと就けない花形の仕事である。

この適正試験の為にお金持ちの子供たちは私塾のような学舎に通うか、実際に働いている人を家庭教師に雇い家に呼ぶなどで合格に足る能力を手に入れる努力をしている。

田舎のその日暮らしにちょっと足しがあるくらいのご家庭の俺はスタートラインが違いすぎて金持ちボンボンの背中も見えない位置に立っている。

せち辛え。


話が逸れたがそういった理由でゲームのように俺が魔術師か剣士になるには今から真剣にやっても間に合うかわからないくらいなのである。

親の後を継ぐのであればスローライフ楽しい!母さんの育てた畑の野菜美味しい!父さんの作る木の細工面白い!最高!と庭を駆け回っていたところだ。

親不孝者でごめん父さんよ。俺はあなたの後は継げません。


そこでふと気付く。

ゲームはコントローラーのスティックを倒さないと歩けない。ましてやスティック押し込みで倒さないと走れない。

俺は今何も意識せずとも歩けるし、文字打ち込みをしないとチャットで会話できないはずなのに言葉を発している。確か脳から身体に送っている信号で人は身体が動いたはずだ。

もしや脳はコントローラーなのでは!?

なんとも馬鹿らしいが、かなり信憑性のある仮説を閃いてしまったのでこりゃあもう実験するしかないでしょうよ!


ところ変わって家の外。門の役割をしている柵の扉前で初めて親の目の届かない所に冒険しようとしている悪い子供である俺。

頭の中でムンムンと念じるのは

「このマップ上のひらけたところにピンを刺せー!」である。

家から数分歩いた所に木の加工を生業とする父の作業場があると聞いている。このマップ上の古屋のマークは父の作業場だろうと勝手に決めつけてピンを刺そうとしているのである。


ゲームに馴染みのない方々にはわからないだろうが、目的地に"某有名検索ツール提供のマップアプリ"のように、目的地を設定して目印となるマークが置けるシステムが魔剣の野望には実装されている。

その目的地にマークを置く行為をゲーマーはピン刺しと呼んでいるのである。

紙の地図に画鋲を刺してた日本人の習慣から言われ出したとかなんとか。ソースは不明。すまん。


数分力んだ姿勢で唸っていたが、

「何故できないー。この分からず屋のピンめー!」

と怨嗟の声を上げた途端ピンッという軽快な音と共に目的地設定が完了した。


「んえ?マジか?おおー!出来てる!

条件はなんだ?何がきっかけだ?

ひとつずつ検証するしかねえな」


力んだポーズで数分出来なかったから除外し、まあ普通はそうだろうというピンという単語を心の中で唱えてみる。

すると目論見通りにピンが目の前に立った。数歩歩いてピンの場所に行くとピンが消えた。

その瞬間ファンファーレとともにログに3文流れてくる。


『メインミッション"初めての冒険"をクリアしました』

『レベルアップ』

『メインミッション"おつかい"が解放されました』


はーいはいはい。ひとつミッションをクリアしてレベルが上がったようだ。

なんとメインミッションが合計いくつあり、どのような内容なのか俺は知らないので、解放されたというログを見て達成するか、たまたま達成するしかない。

この部分はこの世界はゲームでなく現実の人生だからこそだろうと思っている。

しかし俺だけミッション解放ログが見えている時点でだいぶチートなんだよなぁ。


したり顔でその後父の職場まで歩いて行ったらしこたま怒られた。まだ1人で外を歩くの両親の心情的に早かったようだ。

説教の時間はピンの取り消しの方法を練習したので何も問題はない。

どうやらピンと心の中で唱えたらマップ上にピンが刺せて、ピンの事を考えながら取り消したいと考えると消せるようだ。


なんとも実に有意義な1日だった。




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