26:黒の聖女
錯乱回。
神に愛された娘。しかし、魔に深く憎まれた娘。世界のどこかに、その子の目を奪った者が居る。彼女が生まれる、その前に。
「の、呪いじゃ! 嗚呼……彼奴はまだ、滅んでなどおらぬのじゃ!!」
「奴め! あろうことか、姫様を呪うなどっ…………姫、か。これが? こんな人に仕えるなんて、気味が悪い」
「ああ。どっちが魔族だよ。こんなの、化け物だ」
「こんな症状、見たこともない……なんと」
“なんと、恐ろしい”。その赤子を目にした者は皆、口々に言い放った。《魔違病》に酷似しているが、あるべきものがそこにない。瞳を魔違われて生まれた姫は、本来あるべき瞳を奪われたまま……魔物の目を得ることなく生まれてしまった。生まれながら、彼女の両目は欠けていたのだ。四つの目を持つ魔物が何処かにいるのだろう。
「ごめんね……ごめんね……マリーっ!」
(引き離された時、あの人は泣いていた)
王家の姫が、魔物に体の一部を奪われるという、前代未聞の病。彼女の存在は、王家にとって恥だった。王がそれを我が子と認めず、世間からひた隠しにしたのも当然のこと。
(《空瞳病》――……)
そうやって捨て置かれた娘に、やがて訪れた転機。何の思惑か。王は何処の誰の物かも解らない瞳を、ある時娘に植え付けた。僅かに赤みを帯びた青色の瞳。水晶病の瞳を用い、すでに何かを封じた目。
手術後に、お忍びで私に会いに来てくれた母。彼女は私に再び同じ言葉で謝って……また、城へと帰っていった。目を得ても、私を連れ帰ってはくれない。化け物は、化け物のまま。
瞳のあるなしに関わらず、彼女は――……私は厄介者だった。それでも、私を化け物と噂する……人々の表情が見えるようになったのが、恐ろしかった。
通常、《水晶病》では一度しか封印を行えない。そのはずだ。しかし私は二度目をやった。修道院を、村を襲う魔物を私はその目で退けた。魔法も知らない私が。
“祈るだけで、魔を祓う娘”。それからと言うもの、近郊からの依頼が教会に引っ切りなしにやって来た。窮地に陥り祈るほど、私の瞳の色は変わっていく。闇の魔術師達のよう赤目になるのではなく、青が紫に近付くように。
「何が聖女様よ。あんなの、おかしいでしょう」
「ええ、気味が悪いわ」
初めの内は聖女と持て囃す者もあったが、次第に私は……再び“化け物”扱い。人は自らが理解できない存在を極端に恐れるから。
父から、城から使者が遣わされたのは私の噂が外に漏れ出した頃。
「父君はお喜びでありますぞ、“姫”っ! 貴女には贖罪の機会が与えられました!」
嗚呼、吐き気がする。今更私をそう呼ぶの? 贖罪って何ですか? まともな体で生まれなかったことが、私の罪だったとでも? これまで一度も会いに来もしなかった男が。
“その目を縫い付けておけば隠し場所にはなろうと思うたが、……気が変わった。白狼より術を学び、再び王都へ戻り勇者になるのだ”
なんて一方的な《召喚手紙》。映し出された人影は、私に背を向けたまま語り終えると姿を消した。そんな陛下のお言葉を、使者は誇らしげに語る。
「その目で、兄君が散らした魔を集めるのです。貴女の瞳は素晴らしい。何度でも《封印》が行える!!」
それは元々、この目の持ち主に出来たことでは? どうして私が譲り受けた? 奪ってしまった? 私が罪を償うならば、貴方にではなくその人に。そんな言葉を吐き捨てたなら。或いは話を断れば。王は私を殺すか村ごと焼くか。私を捨てたような男だ。どんな手を使っても、私を脅し思い通りに動かすだろう。
「頷くのです姫。母君のためにも……さぁ!」
化け物を生んだ彼女は城でどんな扱いを受けていることか。私が勇者として名を上げなければ、彼女の一生は不幸なまま。……周りの人々が餌にならないと知れば、父は母の生を持ち出すだろう。
「……謹んでお受け致します。ですが……その代わりに。陛下、お答え下さい! 貴方は先ほど、隠し場所と仰った。そしてその必要がなくなったとも」
姿の消えた魔方陣。《召喚手紙》に私は食い下がり、答えを求める。
「状況が変わった。つまり、この目の持ち主には出来なかったことを……私がやってしまった。そうなのでしょう?」
この目が私に馴染んだ結果、別の力を得たのでは? 私の問いかけに、父は明確な言葉を返さなかった。手紙から低く響いた声は、笑っているようでもあった。
“王に意見するとは、お前は生粋の道化だ。お前に見える物と、他が見るそれは異なる。試しにそれに聞いてみろ。お前の目の色をな”
「どういうこと、ですか?」
「姫……それは、特殊な水晶眼なのです。元より青に染まった水晶眼! それが不変!! 何度も封印が行えるなど前代未聞です! 貴女の青は世界の暗雲を晴らす救いとなりましょう!」
使者は言う。私の瞳は青であると。いくら魔を封じても、元々の色から変わらないのだと。人々が私を恐れたのは、私に見える紫ではなく……変わらずの青を見て。
*
『お解りになりますか、姫。人間とは違い、我々【武具】に忘却の概念はありません』
故にこれは真実なのです。高らかに“それ”は言う。【青の王】は、私の誕生の場に存在していた? 城の誰かが元々所持していた物であるのか。
夢とは人の記憶とは。都合よく書き換えられるものだと短剣が言う。主観や逃避が入り込み、人が記憶する過去とは必ずしも真実ではないのだと。
楽しい思い出で塗り替えようと、今思えばもっとましな過去だったと。記憶を改竄させてくれない。否定の言葉を作らずとも頷かない私のため、もう一押しと【武具】は私の傷を暴き立てることにしたらしい。悪趣味なことで。
「あなた方【武具】は。……七瞳が欲しいんですか?」
『逆でしょう。不幸にも七瞳となる者にのみ、我々が扱える。我らが主とよく似たあなた方だけが』
彼はこの目を知っている。私もこれが誰の物か知りはしないのに。知りたくないかと彼は囁く。お前は誰の犠牲の上に生きているのか告げるよう……。
『実に素晴らしい目です。美しい…………ですが姫。貴女のその双眸は、ご自身の物ではない。貴女の瞳には、懐かしくも大いなる魔が宿っている。私は貴女を求めずにはいられない』
「…………」
『貴女の白魔法が強力なのは、貴女を前に我が同胞が大幅に弱体化しているからに過ぎません。我が君の源は、貴女が見つめることで貴女の瞳へ入り込む。貴女は実に頭が良い。周りに強力な勇者がいたために、良い隠れ蓑となっていました』
それなら普通の《水晶病》と変わらない。魔力をため込んでも赤目化で失明しない……【武具】が私に近付く理由はそれだけではない。
『貴女の目は、我らの命を吸い取れる。貴女の素晴らしき回復魔法の腕は、吸った命を他者に分け与えているのです』
……私が集めて封じた魔力は、私が死ななくとも出し入れ可能。それどころか自分の魔力に還元し、扱うことが出来ると彼は言う。私の存在は魔族にとって目障りだ。魔王が復活しても、私が消費した分弱体化する。だから私を魔王の器にしたなら、便利で厄介な存在を封じられるとそういう話。
『利用し合いましょう、姫。私の力を得れば貴女は、求めるもの全てが手に入る。我々が勝つか、貴女がたが勝つか』
「私は、勝負も争いも好きではありません。貴方の気が済むまでお話しましょう? 【青の王】さん、私はここで永遠に。貴方とお喋りしていても良いんですよ? 私一人で貴方を封じ込めるなら、私は使命を果たしたことになります」
『貴女は城に帰りたくないのですか!? 貴女の母君は!!』
大丈夫。何を言われても、見せられても私の答えは変わらない。笑う私に短剣は声を荒げた。
「そうですね。私が途中で使命を投げ出したなら、殺されるでしょうね」
『そうでしょうとも! 異界で散れば、貴女が正義を貫こうと! 誰に伝わることもない!! 貴女は使命から逃げ出した臆病者と誹られる!!』
旅立つ前の私なら。もう一度母に会いたいと願っただろう。しかし時は流れた。私は仲間と共に戦い、勇者となった。回復職として……ずっと、みんなの背中を見てきたの。一番後ろで……守られながら。私は教えられたんだ。勇者とはどういう者なのか!
(世界のために、何より大事な兄様を……手に掛けたコントさん。復讐を終えても私たちの側から離れなかったレー君……私をいつも守ってくれる、ロットちゃんのように!)
勇者とは傷付ける者じゃない。勇者とは守る者なんだ。
「私と母様の命で。たった二人の命のために、世界を危険に晒せはしません。それが……私の、勇者としての矜持です。【青の王】……貴方を私が封じます!」
大事な人たちに二度と会えなくなっても構わない。どんなに寂しくても、彼らがくれた誇りが私の中に輝く限り、私は負けない。そんな私の決意を嘲笑うよう、【青の王】は闇に溶け……私の前から姿を消した。たった一言、言い残し。
『生憎ですが姫、“【武具】は夢を見ない”。……私は何方でも良かったのですよ。私の目的は、達成されました』
*
「ロットちゃん……」
「マリー……なの、よね?」
答えはない。唯彼女は私の名だけを繰り返す。……彼女の腕に引き込まれた場所。色があるのはマリーの髪と肌、瞳。彼女の纏う漆黒のドレスが、そのまま空間の闇に繋がる。影を、闇を纏った少女は私も黒へ呑み込んで、覆い隠すよう抱き締める。【武具】に支配されたのか? それなら私は……。じっと彼女を見つめ、彼女の魔を吸収しようと試みる。
(私が持っているのは魔王の魔力。【武具】違いであれ魔王であることには変わりないのだから、マリーの魔を祓えるはず)
すると不思議なことに、私を呼ぶことを彼女は止めてしまった。代わりに暗い両眼から、ボロボロと大粒の涙を流し始める。
「ずっと、探していたんです。やっと、……やっと会えました」
「えっと、……マリー?」
「あの頃と変わらない……ロットちゃんだ」
夢に囚われていた体感時間はどうなっていたのか。マリーの気が狂れるくらいの長い長い悪夢を【青の王】は見せたのか?
「マリー、あんた……その目」
マリーの瞳は青藍色だと思ったが、彼女の両眼は鮮やかな紫色に染まっていた。夢だから? それともやはり彼女も【七瞳】なのか。
「……私の赤は、吸えませんよロットちゃん」
「…………何でも良いわ。帰りましょう。コントとレインが危ないの」
「ロットちゃんは、……いつから私以外の騎士になったんですか?」
「マリー……?」
これは本当にマリーなのか? 疑いたくなる彼女の言動。それでも私の肌が言う。この温かな魔力。ずっと私の隣にあった少女なのだと。
「コントは兎も角、あんたがレインのことを軽んじるなんてあり得ない。あの【武具】に何かされたのね!? しっかりしなさい!」
「……誰ですか、それ。ロットちゃんは、私の騎士なのに……私だけの騎士なのに! どーして違うひとのことなんかいうんですか!?」
ぎゅうと抱きつく彼女は可愛いので、発言が聞こえていても絆されそうになる。しっかりしろと自分を鼓舞し、状況の整理に努める。マリーは記憶が混濁している? コント達と出会う以前の記憶しかないのか? マリーに抱きつかれたまま考え込んでいるが、あまりのくすぐったさに私は堪えられなくなった。
「ちょ、ちょちょちょちょちょっとマリーたんま!! くすぐったいくすぐったいっ!! 私を嗅ぐな吸うな触るな揉むな!!」
「ロッとちゃん、ろっトちゃんろっとちゃーん! ろとーちゃー」
「こら! 手を舐めるな、犬猫じゃないんだからあんた……って、私の髪の毛食うなぁあああ!! おいしくないから、ぺっしなさい! 味なんかしないから!!」
慌てて彼女の体を引き剥がす。先程以上にマリーの様子がおかしい。まるで幼児退行したかのようではないか。
「うぇえええええん!」
「マリー、しっかりしてよ。どうしたの? 大丈夫よ、大丈夫だから」
どうしたら泣き止むの!? 私は子供が得意ではない。何か木を反らせるような物はないか……咄嗟に取り出した杖に魔法具を縛り付け、がらがら振るとキャッキャと喜ぶ。
(子供は嫌いだけど、マリーだからか可愛いわー。マリーは元々可愛いから当たり前なんだけどね。って違うでしょ!!)
自分の思考にツッコミを入れ我に返る。何この状況。ミザリーに見られたら一生脅される。まずい、絶対こっち入って来るな。私のこと見つけないで。
(待て待て私! こんなの駄目よ!! 明らかにタイトル詐欺になる!! 需要と供給が著しく見誤っている、詐欺ってレビュー叩かれるわよまずいわ!! 需要あってもあのタイトルでこの性癖の人来る訳ないでしょうが!!)
いや、何言っていた私。私まで錯乱してどうする。冷や汗をかきながら、私は泣き出したマリーをあやし始める。
「ふぇえええええん!!」
「ま、マリー? マリーちゃーん? おねーさんのこと解るかなぁ? えっと……今回のお話のこと、どこまで覚えてるぅー?」
「ぶぅ、ばぶー」
「くっそぉおおおおお!! つい甘やかして退行させすぎた!! 私の名前すら呼べなくなってやがるわちくしょう!! っていうかマリー!? あんたさっきより小さくなって……いや、胸のことじゃなくて」
早乙女の仕業か! 【青の王】か!? 連中の企みにより、マリーは巻き戻されていた。記憶の欠落もそう! マリーの知能指数が下がっているのは、身体も退行しているから。ここが夢の世界とは言え、退行し続けて消えてしまったらどうなるの? ここは唯の夢ではない。マリーの精神が完全に消滅することだって起こり得る。【青の王】の目的はそれか!?
「ばぶばぶ」
「だ、駄目よマリー! い、いくら私とあんたでもそれは流石に」
そんな、腹減った飯寄越せみたいな顔で胸を見られても困るんですが。だからタイトル違うでしょうが! カレー屋でラーメン出すのは違くないかしら!? 出ない! 出ないからっ!!
「わ、解った! せめて百歩譲るとして、私とあんたがこの男体化薬飲んだらワンチャンありかも。後学のために……」
「よし! これでようやく俺は帰って来られたのだな…………レイン! 今俺が助けに……っ」
取り乱し、よからぬ事を口走っていた私の耳に、軽快で脳天気な音が飛び込む。部屋の扉をガラッと勢いよく開けるのは! 痴女鎧を纏ったその勇者……私もよく知る彼だ。夢の深層世界から上って来たのか、はたまた深層まで落ちて来たのか解らない。一つ解っていることは、私が魔王になる場合の理由が一つ増えたと言うことか。
「いや…………その、すまない」
「…………死ねぇえええええええええええええ!! こ、殺すっ!! 今見た記憶全部吹飛ばすか死ぬかを選びなさいコント!!」
この空間に扉なんていつからあった? マリーの状態により、周りの景色はぐるぐる変わる。揺り籠から玩具から……おしめから哺乳瓶まで置いてある。今や完全なる子供部屋。
「いや待て! それはおかしい!! 勢いで流されそうになったが俺に謝るべきは貴様だろうが!! よくも俺をこんな体にしたな!! 貴様のせいで、俺はっ……俺はぁあああああ!!」
「ああもううっさい!! 一応あんたの命の恩人なのよこっちは! 私のおかげであれから暗殺回避してんじゃないのよ乳騎士悲劇っ!!」
「誰が悲劇だ! それを言うなら乳騎士喜劇だろうが!! いや、今のはなしだ!」
「やーいやーい乳騎士喜劇ー!!」
「くっ……何故俺は、こんな奴を…………」
揺り籠で殴りかかった私を押さえ、アニュエスもといコントはいつもの調子で押し返す。
「ええいっ! 何故貴様はこんなところで赤子と遊び呆けている!! しかもなんだその子は!! やけにマリーによく似た……その薬は、まさか…………お前、一国の姫に産ませたのか!? よもや男体化薬を使って王女殿下にご無体を!?」
「馬鹿言ってんじゃないわよ!! そんなに早く生まれる訳がないでしょうがっ!! この子は正真正銘マリーよ!! 【武具】に填められて何でか心身共に幼児退行してんのよ!!」
「ぶぇえええええええええええええええええん!!」
「あー! ごめんねごめんねマリーちゃん! ダイヤおねーさんは、あんな鎧ちじょよりマリーちゃんが一番ですからねー!! ほーらよしよし」
コントに構っていたらマリーが再び泣き出した。慌てて私は彼女をあやす。なんだこの図は。こうしている内にもどんどんマリーの体重は軽くなる。このままではまずい。
「くそぉおお! あんた何しに来たのよ!」
「俺は【防具】の試練を越えてきたのだ!!」
「越えられてないからこんな所来てるんでしょ! 私、中途半端な奴って一番嫌い!!」
私は八つ当たりでコントを怒鳴りつけるも、彼も余裕がないのかいつも以上に噛みついてくる。
「中途半端なものか! 俺は【防具】の納得する答えを示した!! 俺の愛は、“守ること”だと!!」
「……は?」
「…………あ。そうか、そういうことか」
突然何を言い出したのかと思ったら、今度は自己完結で彼は答えを見つけたらしい。私に食って掛かる前にそこまでたどり着きなさいよ。
「あんたに構ってる暇はないわ! ミザリー!! 早く来てっ! 早く帰り道をっ!! 無理矢理でもマリーを起こさなきゃっ!! マリー? 嫌ぁあああああああああああああああ!!」
腕の中のマリーがどんどん縮み小さくなって行く。マリーが小さくなると同時に、辺りの空間も黒に塗り潰されて狭く狭くなって行き……私とコントは真っ黒な狭い箱状の空間に取り残される。
「くそっ、【防具】の力を使っても……ここまでしか、守れないのか」
「マリー!? 返事をして!? マリー!!」
「キャロット!!」
錯乱する私の肩を掴んで、私に顔を上げさせる。
「今すぐ俺の【防具】を名付けろ。白の女王と聞いて浮かんだ言葉なら何でもいい! お前なら出来る! それでマリーを助けられる!」
何の根拠もないくせに、大丈夫だなんて口にして。
私の涙を拭う手は、どうしてかしら。見えているそれよりしっかりしている。本物の彼の手が私に触れているみたい。
「俺を信じてくれ“ダイヤ”!!」
コントの悲痛な声を受け、それで私は我に返った。目に見えている物が全てではない。そんなこと、魔法の基本じゃないか。ろくに魔法も使えない、こんな男に教えられるだなんて。
(マリーは見えなくなっただけ。敵はさっきのマリーのように……私を錯乱させたかったんだわ)
このダイヤ様が敵の術中に陥るなんて。私はコントの手を振り払い、自分の腕で涙を拭い去る!
「……解ったわ」
他人に名付けられない限り、【防具】の力は不完全ってことなんでしょう? 私が付けて効果があるか解らないけど、コントが言うならそれを信じる。白というよりあんたは……雪だ。そうやっていつも熱くなって、誰かのことばかり。溶けて消えてしまいそう。鎧が溶けて壊れる時は、あんたも身を磨り減らし……きっといなくなるのでしょうね。馬鹿みたい。だからあんたは、汚れて塗り潰されるだけの色ではない。溶けて消えてしまっても、水となり誰かを潤すことを考えるでしょう? あんたは意味のないことをしない。あんたのすることには必ず意味が着いて来る。
呪われて、馬鹿みたいな騒動に巻き込まれても……姿形は変わっても、あんたの本質は変わらない。迷っても、土壇場で正解を選べる人。私とは違うのよ。私はマリーという個人を選ぶけど、あんたはマリスを斬って世界を選んだ人。
(私はあんたを選べないけど……あんたも私を選ばない。だから良いんだ。それで良いんだ。私とあんたは……だから、一緒にいられるの)
私とあんたが組んだなら、きっと全てを“守れる”でしょう?
「……【白の女王】!」
【防具】に私が命名すると、黒の箱がヒビ割れて弾けるっ!
どうしてこんなことに。タイトル通りの話になるはずが、何処の層向けなんだこれ。こんなことしてもあれだぞ、ネット賞用にぶちこんでるの1作目の方だから。釣れないから!! 2作目で違う層にサービス(なのか?)しても意味ないから!!
意味のないことをしました。手が勝手に打っていたのです。これ以外の展開が思いつかなかったのです。そうですとも! 私がサービスなんかするわけありませんね。でも定期的にギャグ入れないと死ぬ病発症しているシリーズ。
白の女王はスノードロップ(元ネタ)とレイナ(女王)を混ぜました。




