サイドストーリー セームベル編
この物語は、私セームベル・アレクトルが、後に世界最強の武闘家『マスターオブファイター』と呼ばれる事になったきっかけの序章です。
そのきっかけの第一歩は、この世界で生きてる人達の頂点に立ちこの世界を去ってしまった”彼”との出会いだ。
彼と出会ったのは、村の近辺に突然現れた黒龍に倒されてしまった私の相棒、ルナドラゴンを夢叶の花で生き返らせようと、リングルム深林行った帰り道。
連れていたシャイニングタイガーのシャイン、この子が発する光に集まった無数のダークネスファングに囲まれた時に彼が現れた。
彼は当時ウィンダさんと一緒に行動しており、クエストの帰り道で私を追いかけるダークネスファングの群れを見て追い掛けてくれたらしい。
彼らのおかげで森を脱出したあと、私を心配してくれた彼が村まで送ってくれると言うので承諾したが、家の事情でウィンダさんと別れてしまい、クリスさんとシャインと一緒に村へ帰った。
でも村に帰る途中で通った砂漠地帯で、進化したクイーンサンドワームに襲われシャインまでも失った。
悲しみにくれていた所を彼に助けられ、励まされ今の私が居る。
後にクイーンサンドワームを1人で倒すことが出来たのは彼と修行させてくれたお母さんのおかげだ。
2人にはいくらお礼を言っても足りないくらい感謝してる。
彼が去ったこの世界で、彼が大切にしてきたものを守るのは私だ。
そう思い今日も皆と一緒に戦いに行く。
ここからは私が今に至るまでのお話をしていくね。
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クレアルの村を出た後、約1週間ほど掛けて王都”アトランタル”に着いた。
ここはこの世界を取り纏めいている6ヶ国の1つで、お母さんの生まれ育ったベルランタルはここから更に1日程歩いたところにある。
私の修行も兼ねている為、ここに着くまでの間は元冒険者のお母さんに教わりながらとにかくモンスターと戦っていた。
「長旅お疲れ様、セームベル」
お母さんはそう言って私の頭を撫でる。
「えへへ」
「ベルランタルに帰ってきて早々だけど、来週はあなたの誕生日だから。いい加減姿年齢変えようか」
「え、いいの?!」
「えぇ、村に居た頃は近くに変えられる施設が無くて、1度変えただけだったけど、アトランタルで変えられるからね。セームベルのなりたい年齢になればいいわ」
「やった!!」
私は両手をあげて喜んだ。
「でも、クリスさんっていくつぐらいだったんだろう?」
一度もクリスさんに聞いたことがなかった。
何度もお話したのに、姿年齢や生歴の話は1度もしたことがなかったのだ。
それだけ私はクリスさんと一緒に居ることが嬉しかったんだと思う。
「そうねぇ、私の見立てだと20歳ぐらいじゃないかしら」
「じゃあお母さんの見立てを信じて18歳にする! ちょうど私の生歴も18年になるし」
「わかったわ」
お母さんは私の提案を快く受け入れてくれた。
ベルランタルでの1週間は、ステータスの上がり幅の関係でレベルが上がるような相手は止めて。近くの草原や森、川などを走り抜ける、体幹をメインとした修行重ね、武闘家に欲しい速さやスタミナを優先的に伸ばした。
そして待ちかねた1週間後、ベルランタルから歩いて1日掛かる距離も、伸ばした足の速さを活かして半日も掛からず辿り着けるほど速くなった。
さすがに走り続けると疲れてくるが、これも修行の一貫でもある。
息を整えてからアトランタルの正門を抜けて、中に入っていく。
アトランタルの街中は活気に満ち溢れているのが、一目でわかる程だった。
「うわぁ、すごい人がいっぱいだ!」
1週間前は通り過ぎただけで街の中には入っていなかったし、村やリングルムの街に比べると、遥かに栄えている。
露店などを初め数多くの店が並ぶメインストリートには、一般人から冒険者まで、今まで見た事ないほどの人で溢れかえっていた。
はぐれないようにお母さんの手を握り、街の奥へと進んでいく。
私達が目指しているのは、各国の王都にあり唯一姿年齢を変えられる場所”オールドフューチャー”という施設だ。
その施設では毎年自身の誕生日に訪れると、自分の生歴から+5歳までで、好きな姿年齢に変えるとこができる。
姿を変えるのに使われている魔法はかなり複雑にできており、施設で働いてる魔法使いさん以外誰も知らないし。
「ようこそいらっしゃいました、本日は姿年齢の変更でよろしいでしょうか?」
施設に入ると、受付のお姉さんが声を掛けてきた。
この場所はオールドフューチャーの他にギルド管理局やクエスト屋、武器屋防具屋など国が運営している複合施設になっている。
お母さんが受付のお姉さんに「はい、そうです」と返すと、受付のお姉さんはカウンターの扉を開けて、中に入ってくるように促す。
すると、お姉さんが座っていたカウンターの後ろに立っている支柱が開いた。
「お母さん、これは何?」
「セームベルがこれに乗るのは3度目なんだけど、さすがに15年も前じゃ覚えてないか」
どうやら私が12歳の姿になった時に乗っているらしいが、お母さんの言う通り15年も前じゃ覚えていない。
受付の後ろにある支柱の中にあるのは”エレベーター”と言うモノらしく、これに乗ってオールドフューチャーに向かうようだ。
エレベーターに入ると受付のお姉さんが扉の外から”OF”と書かれたボタンを押した。
「それでは、行ってらっしゃいませ」
お姉さんがそう言ったのと同時にエレベーターの扉がしまった。
空を飛ぶような感覚がして咄嗟にお母さんの袖を掴んだが、ほんの数秒で治まり、扉が開く。
エレベーターを降りた先には数人の魔法使いと、私と同じで姿年齢を変えに来た人が居た。
エレベーターの前で待っていると、1人の魔法使いがこちらに近づいてくる。
「こんにちは、今日はこちらのお嬢さんの姿を変えにいらしたんでしょうか」
「はい、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。あちらで必要事項をお聞きしますのでどうぞ」
案内されたカウンターで、お母さんが必要事項を話してくれたためすんなりと受付が終わった。
「ではセームベルさんは私に着いてきてもらい、お母さまはこちらでお待ちください」
「わかりました、行ってらっしゃいセームベル」
「うん、行ってきます!」
私は大きく手を振って、魔法使いさんの後をついて行く。
案内された部屋は真っ暗で何も見えない。
魔法使いさんの周りを小さな光の粒が飛んでいるが、辺りを見渡すにはあまりにも弱かった。
「セームベルさん、少し恥ずかしいかもしれませんが、姿年齢を12歳から18歳へと変えるため、着ている服を脱いでください。
着たまま成長すると破れてしまうので。あ、下着はこちらのゴム製に履き替えてください、上はどれ程成長するか分からないのでそのままで」
「わかりました」
私は言われた通り着ている服とズボンを脱ぎ、下着をゴム製のパンツに履き替える。
「ひゃっ、冷たーい」
ゴム製のパンツは思った以上に冷たく、思わず声が出てしまった。
「着替え終わりましたね。それでは私は外に1度出ます、扉が閉まると足元の魔法陣が光り始めますので、動かず待っていてください。またかなり眩しいかもしれませんので目だけは瞑っておいてください」
魔法使いさんが外に出て扉が閉まると、足元に描かれた円形の魔法陣が輝き始める。
「うわぁ」
最初のうちは見ていてもそこまで眩しくなかったが、徐々に光が強くなりさすがに目を瞑った。
身体が暑くなり、頭や身体が段々と重さを感じ始める。
やがて光が収まり、恐る恐る目を開けるが部屋の中が真っ暗で何も見えない。
するとガチャっと扉が開き、先程の魔法使いさんが入ってくる。
「身体に以上はありませんか?」
「は、はい大丈夫で……す? あれ?なんか声が」
「12歳から18歳ですからね、声変わりして可愛らしい声から大人びた声に変わったのでしょう」
以前の声より明らかに低くなった声に違和感はあったが、特に気にならなかった。
それから一通り身体のサイズ等のチェックを行い、魔法使いさんから持ってきた服や下着に着替えて外へ出る。
「うわ、高ーい!」
今まで小さかった身長が一気に伸びたため、視界がかなり高くなっていた。
「セームベルさんの今の身長は166cmですので、そこそこ高身長と言えますね」
「……クリスさんの身長聞いておけばよかったなー」
魔法使いさんに連れられお母さんの元へ帰ると、お母さんは私の姿を見て涙目になりながら抱きついてきた。
「美人になったね、セームベル」
「そりゃあお母さんの子だもん、でも武闘家だしこの髪と胸は要らなかったなぁ」
「それは私のせいじゃないわよ、髪は切ればいいけどその胸はどうにもならないわよ」
「えー」
「計測結果セームベルさんのバストサイズは”H”ですね」
「ふふふ、これだけ魅力的に育ったらクリスくんも堕とせるかもね」
「お母さんがそう言うなら頑張ってみようかな」
その後私はアトランタルとベルランタルを行き来しながら修行を重ね、クイーンサンドワームに挑むのだけど、それはまた次回のお楽しみ。




