~食材の視点~ 【番外】コンサイファンタジー 04 地に根差す者たち
「単身赴任の食卓」の中から「EP24芋がら」を、食材視点にしたらどうなるか。
これをさらに…「なろう」でよく見るファンタジーっぽくしたらどうなるか、ということで実験的につくり出しました。もしよかったら…連作になりますが…読んでみてください。
あらすじとしては「里芋を中心とした煮物の材料をスーパーで買って帰って、煮物にしたらうまかった」から外れないんですが…食材に語らせるだけ、ではなく…食材にいろいろ冒険してもらうとどうなるか、って視点でリライトしてみました。おそらく6話構成…くらいにはなるかと思います。
「おーい、れんこーん、おーい」
ニンジンの小娘は、年長者への礼儀など全く介さず、手をブンブンと振り、声をかけてくる。
俺は、根菜水煮に袋の中に納まっているレンコン…日本の正月には「先が見通せる」ということから、縁起物として大活躍をしている。
俺が収まっている袋には…ニンジンの小娘、タケノコの青年、ゴボウの初老が一緒に収まっている。
「おーい、れんこーん、無視しないでよぉ! 何か、先が見通せたぁ?」
俺は黙って外界を眺める。
いつもの通り、水煮関連が収まっている棚…ここはどうも農業が盛んな地域らしく、野菜をつかむ客はいても「野菜水煮の袋を積極的に取る」という連中はあまりいない。
「ああ、別に今のところは…何も見えないなぁ」
レンコンである俺は、根菜水煮の中で一切の戦闘能力を持たない、異質の存在。
だが、このパーティーに加われている理由は「先を見通す能力…スキル:因果の透視孔」があるおかげだ。
戦いでは全く役に立たないが、道に迷った際に正しい方向を指し示したり、ドロップされたアイテムの真贋を見極めたり、立ち寄った街のカジノあたりでの荒稼ぎ、そんなことで、パーティーの経済面を支えきっている。
ほかの連中は「俺がいるから旅が成立する」と言ってくれるが、この小娘だけは…はねっかえり気質丸出しだ。
…あんた、本当に手間かかるよね!
…妙に硬いしさ、味のしみも遅いしさ!
…あたしあたりがとろけかかるほど煮込まれても、あんた全然なじまないじゃん!
などと、言いたい放題だ。
だが、この小娘の実力…俺の能力である「ロータス・アイ」で見通した時に、愕然とした。
「スキル:根深き者」…これは本当に強烈だった。
地面に刺さるや否や、周囲の地形を読み取り、敵の足元をすくう。
ちょこちょこと揺れる「緑色の葉」は、かわいげを見せる。
だが緑の葉は、相手を翻弄するように揺れ、愛らしさすら感じさせるため、敵の油断をいとも簡単に誘い出す。。
見た目同様の甘さを出すためなら、凍土の中で数か月、雪の下でも数か月…そんな過酷な環境すら意に介さず耐えてしまう。
そのうえで、料理素材としては世界的に名が知れており…おそらくこの小娘の存在を知らぬ国などないだろう、と断言できる。
俺は「小娘だが…圧倒的な実力…この先どんな料理にも立ち向かえるに違いない」と、俺はひそかに舌を巻いていた。
そんな俺に、初老のごぼうが声をかけてきた。
「ほぉ、お前さんでも、見通せぬことがあるとは…珍しいな」
俺は「まぁ、ロータス・アイっつてもだな、これだけ刻まれて袋に収まると、少し視界も狭くなるんだよ」と、言い訳をする。
水煮のごぼうは、取り立てて目立つ部分は持たない。
だが、俺に言わせれば「それそこが味」と、いつも思う。
ごぼうが持つ「スキル:究極の脇役」は、まさにそれだ。
どんな料理にも馴染み、味を引き立てる特性を極限まで高めた能力を持つ。
この存在が、いかに料理の質を高めるか…「噛めば噛むほど味が出る」「ほかの味をこっそりと吸い込んで、ほんの少しまき散らし、かく乱する」…バフを付与するシーフ、というべき存在。
普段はこそこそと目立たぬようにはしているが、結局はごぼうのおかげでうまくいく、ということも非常に多い。
それでいて、ごぼうチップスのようなこともやってのける。
俺とは、和食界隈でしょっちゅう一緒になるが、こいつだけは侮れない。
小娘は「あ、ごぼうのおっちゃーん!」と、その腕にかじりつき、ニコニコしている。
「あたしの良さを一緒に受け止めて、こっそり持ち出して…シーフの特性なんだろけどさ…でも、いい腕してるよねぇ!」と、目を輝かせる。
「ああ、小娘ちゃん…今日も元気だね…おっちゃんはさ、小娘ちゃんの持つ甘々、ホントうらやましいよ」と、目を細める。
そこへ…タケノコの青年が「まるで孫と父親と老人…仲の良い家族、ですね」と、にこやかに声をかけてくる。
小娘は「じゃ、タケノコちゃんは、にーちゃんだな!」とまぜっかえす。
…そうか、俺はレンコンのくせに、タケノコとニンジンを子に持ち、先祖はごぼうってことになるのか
…そら、全然違うわ…共通項は、地中に根を張る、しかない。
…しかも、俺は沼地の泥の中、だわ!
でも、悪い気は全くしない。
タケノコの青年は、とてもおとなしく、無口ではある。
だが、彼の持つ「スキル:天穿つ尖角」は、一歩間違うと、国土を揺るがすほどの威力を誇る。
土を割り、岩を砕き、ただひたすらに、高みだけを目指す。
すさまじい勢いで根を張り、他を圧倒する勢いで増殖を繰り返し、天を穿つ槍を造作もなく振るう。
その槍が伸びる勢い…雨が降るだけでも倍加するほどだ。
そして、いかなる強固な結界や城壁をも容易く貫通し、時には地中からも穿ちぬく。
また、本体が持つしなやかさで敵の攻撃を弾き飛ばしたり、ざらついた葉の先で敵を悩ませる。攻守バランスに非常に優れた槍の使い手でもある。
このパーティー…攻守バランスはなかなかだが、根菜水煮の共通する悩み、としては「核となるメンバーが存在しないこと」「取りまとめるメンバーが存在しないこと」だと俺は思っている。
はねっかえりの小娘は「甘味こそ出せる」が、深さは持たない。
ごぼうの初老は「味わいそのものは深い」が、中央部のわずかな隙間に盗品を詰めて拡散させる都合上、他者への依存は高くなる。
タケノコの青年は「シャクっとした口当たりが持ち味」だが、ごぼう同様に自身の持つ味わい、という点では他者依存せざるを得ない。
俺に至っては…本当に悔しいが…はねっかえり小娘の言う通り「火の通りが遅い、味のしみも遅い、なじみもあまりよくない」がある。
きんぴらあたりで見ても「はねっかえり小娘とごぼうの初老」は相互補完がうまくできるようで、成果は非常に高くなる。
だが、俺は「単体できんぴら」ということが本当に多い。
…俺は、戦闘能力を持たない。
そう割り切って、この根菜水煮の袋を支えていくんだ、と決めていた。
きっと、俺にも活躍できる場は必ず来る…そう、信じてスーパーの中を見通し続けた。
そんな俺に、はねっかえりの小娘が「レンコンさ、ちょっと疲れてないか?」と声をかけてくる。
俺はいつものこと、気にするなよ、と頭にポンと手を置く。
「レンコンがさ、いろいろ教えてくれるから、あたしはどっかんどっかん出来るんだ!」
…こいつ、たまにこういうこと言うから、嫌いになれないんだよな
俺は小娘に「ああ、何かあったらすぐに言う。お前は早く休んじまいな。暴れてほしいとき、すぐに呼ぶからさ」と伝えると、小娘はブンブン手を振りながら、袋の奥にもぐりこんだ。
なおも先を見通す作業を継続するが、特に大きく変わったことはない。
しいて言えば、鮮魚コーナーでマグロの中トロが騒いだり、精肉コーナーで輸入牛ステーキ肉がなにごとかを叫んだりしていたくらい。
…特に異常はないな
俺はそう思って、視線を外そうとした。
その時…かごをもった男が、ぬっとあらわれ、視界に入った。
…里芋と、あのひもみたいなのは芋がら、それと白いパックは、鶏肉っぽいな
俺はロータス・アイを発動し、先行きを見通してみた。
あれなら筑前煮、正月の煮しめ、と思った俺は…はねっかえり小娘をそっと起こし「動くかもしれん、警戒を厳に…」と伝えた。
小娘は目をギラッと光らせ、そっと配置につきながら「あいつ、手に取ってくれるかな」とつぶやいた。
いつの間にか、タケノコの青年もごぼうの初老も姿勢を正し、あたりを確認していた。
「ここが正念場じゃの?」とごぼうの初老はつぶやいた。
この先どうなるのか…それは、ロータス・アイをもってしても、見抜けなかった。
主役級は、大きなかごで旅をする…そこに、ほかの食材が待ち受ける…みたいな感じ…ちょっとRPGゲームぽくもあり…考えていて楽しいのですが…とにかくもう「スキル名」…
繰り返し、ではありますが…なろうでファンタジー的なことを書いていらっしゃる皆さん…ひたすら、尊敬です。
ごぼうに「泥棒っぽい」を付加したあたりで…頭から湯気が出そうでした
ニンジンの小娘については…スッと出てくれたんで…油断したなぁ、と…」




