~食材の視点~ 【番外】コンサイファンタジー 03 旅は道連れ世は情け
「単身赴任の食卓」の中から「EP24芋がら」を、食材視点にしたらどうなるか。
これをさらに…「なろう」でよく見るファンタジーっぽくしたらどうなるか、ということで実験的につくり出しました。もしよかったら…連作になりますが…読んでみてください。
あらすじとしては「里芋を中心とした煮物の材料をスーパーで買って帰って、煮物にしたらうまかった」から外れないんですが…食材に語らせるだけ、ではなく…食材にいろいろ冒険してもらうとどうなるか、って視点でリライトしてみました。おそらく6話構成…くらいにはなるかと思います。
旅路にモモさまが加わったことで、かごの中は一挙に華やいだ感がある。
土垂は、地域の名家とはいえしょせんは里芋、それに付き従う芋がらなどはもっと地味。
…とはいえ、坊ちゃまときたら。
芋がらの私が言うのもなんだが、モモさまは王家の血筋というだけあってとても気品があり、お美しい。
パックの変形や、それによるラップの歪み、ドリップによる中敷きの些細な変色など…それこそ、目を皿のようにしてみないとわからない。
そんなモモさまのほうを、まともに見ることすらできぬ坊ちゃまを見ると、歯がゆさもあれば、らしさも感じる。
…まぁまぁ、時間が解決するでしょう。
そんな空気を察してか、モモさまは明るく振る舞われ、坊ちゃまにもとびっきりの笑顔で接してくださる。
モモさまは「スキル:全属性適合(オール・フレーバー・シンクロ・オブ・トリモモ)」についても、包み隠さずお話をされた。
「わたくしのスキルである、全属性適合…これは、どのような味付け、香りづけ、料理の形態にもフィットする…柔軟性を発揮するためのものです。」と、語る。
言われてみればそうだ。
特に鶏肉の中でも胸肉とモモ肉はその双璧をなす、と言っても過言ではない。
ステーキのように焼いて塩をするだけでも十分だし、煮込みは…日本、英国、印度のカレーなど…いや、カレーだけではなくシチューなどでも十分対応が可能。
和風の煮込みなどは、他の食材を寄せ付けない、圧倒的な力量の差を見せつける。
白米と一緒に炊き込む、といった芸当は、まさに鶏肉の真骨頂と言えるし、ピザの上にだって、いとも簡単に乗って、存在感を発揮する。
もちろん、揚げた料理などは全年齢に幅広い支持を受けているし…冷凍加工にも簡単にその身をなじませてしまうことができる。
そのうえで、その身も非常に柔らかい…ゆえに年齢すら選ばないし、骨、といったものもないがため、周辺をその身で傷つけるということもない。
本当に…全世界の料理に対応できる…季節、時期、場所、イベント内容、食事の時間すらも選ばない…真のオールラウンダー。
「わたくしはすべてを受け止めるっ!」…モモさまのお言葉…これは本当に伊達ではない。
坊ちゃまは、そんなモモさまに気後れするのか…なかなか積極的にお話をなさらない。
「では、私の…スキル:乾物の叡智・ドライセンスについて、少しお話をさせていただきますね」と、坊ちゃまに強い視線を送りながら、言葉をつづけた。
芋がらは乾物、水分が完全に抜けている。
その分、食料品とは思えないほどの保存期間を持ち、かつ、その身は非常に軽い。
抜けた水分と同量の空気を内包しているため、衝撃吸収性も非常に高い。
長期間寒風と天日にさらされたおかげで、抜けた水分牢と比例した経験値が、しっかりと詰まっている。
吸水性が高いため、煮物といった料理カテゴリーでは無類の強さを発揮するが、焼いた料理などには本当に合わせることができない。
私は「いうなれば、私などは偏った食材、と言えましょう」と言葉を引き取った。
モモさまは「いえ、ばあや…それは違いますよ。」と、真顔で言う。
「その吸水性の高さゆえに、わたくしが放つ能力をも吸い込み、体内に蓄え…そして食する人に、ばあやの食感とともにお伝えができる…わたくしはそう思います」と、微笑んだ。
…やはり、王家の血筋。
…賜ったお言葉、不覚にも涙が出そうなほど、うれしい。
照れ隠し、というわけではないのだが、私は坊ちゃまのほうに向きなおり「ほれ、坊ちゃま!坊ちゃまも何かお話をなさってくださいまし!」と、けしかける。
私は「え、僕なんて…」と、口ごもる坊ちゃまを叱咤し、背中をグイッと押した。
「僕の持つスキル…本当に地味なんです。」と小さく声を絞り出す。
「スキル:ぬめりシールド(スリップ・ウォール)…外から強い力がかかった時、それは発動されます。」と、ゆっくりと語りだす。
「僕の持つぬめりは、その力を吸収し滑らせることで被害を小さくする…防御特化なんです」と、うつむきつつ
「能力が発動された場所は黒ずんでしまい、やがて食材の痛みとして蓄積され、それが過剰に進行すると、廃棄されることもあるくらいです」と、口ごもった。
…ホントもう、どうして坊ちゃまは自己評価がこんなに低いのか
私はここで「坊ちゃまの持つ、真の能力」を語りだそうとしたが、モモさまはにっこりと微笑んで私を制止し、言葉をつなぐ。
「ぬめりは、お料理の際にお出汁に広がります。わたくしの能力と同化し、ばあやの吸収力をも活用し、食する人に深みとしてお伝えすることができます。」と、語った。
そのうえで「いわば、寄り添う能力…寄り添うことで他の食材が持つすべての味を包んでしまう…包容力が高い能力…とも言えます。」と、坊ちゃまを見据えて語り掛ける。
「そのうえで、一度吸収した味を逃がすことは決してない。それは…ばあや同様の、里芋の血筋、ともいえる…わたくしは、そのようにお見受けいたします。」と、屈託のない笑顔を見せる。
…圧巻の分析力
だが、坊ちゃまは真っ赤になって下を向いてしまわれた。
しばしの無言…かごの中は静寂に包まれる。
モモさまは、こっそりと小声で私に語り掛けてきた。
「土垂さま…本当にお優しいのですね…あの方は、周りを盛り上げ味を吸い込み…食する人には、炭水化物として体力回復までやってのける。」と、まっすぐな視線を私に向けた。
「それを誇ろうともしない、語ろうともしない…寄り添う能力…他の食材たちとの調和の能力…」と、坊ちゃまに視線を向ける。
「わたくしと接触した際にできたであろう、小さな黒ずみ…あれは、とっさにわたくしを守ってくださったときの傷…それすらも表に出されない…」と、坊ちゃまにできた小さなキズを凝視する。
「ね、ばあや!」…モモさまは急に年齢相応とも思える口調で…「わたくし、このかごに入って一緒に最後の旅ができること、本当にうれしくなりました!」と、目を輝かせた。
私は不意を突かれ…老いた身には似つかわしくない涙がこぼれそうになり…慌てて面を伏せた。
「モモさま、私たちも、かように思っております。本当によろしくお願いします。」
かごはなおもゆっくりと揺れながら、スーパーの中を移動し続ける。
この先、どのような出会いがあるかは…この老躯にもわからない。
でも「モモさま、坊ちゃま」をお支えする旅は、悪くない。
私はかごの中で、モモさまと坊ちゃまと見比べながら「次の出会い」に思いをはせる。
かごの揺れに身を任せながら、私は静かに思う。
…この旅路は、まだまだ温かくなりそうだ。
能力に名前を付ける、も、(自分にとっては)非常に大変ですが…対象となる食材の性質なんかから絶対に外さない、と決めちゃったわけで…ホント、もう…「なろう」でファンタジーを書いていらっしゃる方…脱帽尊敬、でしかありません。
鶏モモ肉なんか、どんな調理方法でも、どこの国の料理でも「それなりになる…海外で困ったら鶏を頼む」というくらい安定してる…味付け和洋中なんでもこいこい…ああ、全天候性爆撃機みたいだなぁ、などと馬鹿なことを考えて…オールレンジ…いやいや、食べ物だから…フレーバーか…「合う」だしシンクロか...あとは王家っぽく名前つけちゃえ…これで1時間とかかかる…
ホント、ファンタジーで面白く楽しい作品を作る方、尊敬…




