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~食材の視点~ 【番外】コンサイファンタジー 01 芋がらと里芋の旅立ち

「単身赴任の食卓」の中から「EP24芋がら」を、食材視点にしたらどうなるか。

これをさらに…「なろう」でよく見るファンタジーっぽくしたらどうなるか、ということで実験的につくり出しました。もしよかったら…連作になりますが…読んでみてください。

あらすじとしては「里芋を中心とした煮物の材料をスーパーで買って帰って、煮物にしたらうまかった」から外れないんですが…食材に語らせるだけ、ではなく…食材にいろいろ冒険してもらうとどうなるか、って視点でリライトしてみました。おそらく6話構成…くらいにはなるかと思います。

スーパーの冷気が、静かに棚を撫でていく。

その片隅で、土垂と芋がらは、今日もひっそりと並んでいた。


私は、零落したとはいえ地元里芋の名士である「土垂家」に代々お仕えしている芋がら。

先代のご当主がまだ御幼少の頃より、このお家に仕えている。


先々代の古き株より切り取られた土垂の茎を天日に干し、寒風にさらし、しっかりと熟成された私。

そんな私は、大抵のことには動じない…そんな、性根が座っていた。

周囲で口の悪い方々は、そんな私を見て「枯れている」「古くて朽ちたひものようだ」とおっしゃられる。

だが、それはその方のご乾燥、いえ、ご感想、ゆえに私は特に気にしてはおりませぬ。


そんな私の袖をつかみ、いつも自信なさげに打ち震えておられる坊ちゃま…土垂家の当代ご当主。

私はそのお姿を見ると…いらぬこと、とは思いつつも…どうしても心配でならない。


北関東の地域スーパーの青果コーナーの一角に、土垂家のお屋敷がある。

大きな通路を挟んだ先には、鮮魚のコーナーや精肉コーナーがある。

そんな、通路を挟んだ向こうから、今日もやんちゃな声が響く。


「おい、見ろよ!青果コーナー!また土垂の里芋の隣に、古びたロープが置いてあるぞ!」

声の主は、はるか南関東から運ばれた「マグロの中トロ」だ。


だが、私は一切気にしない。


海のない北関東において、鮮魚と言えば川魚。そんな地において、延々陸上輸送をされてきたマグロなんぞは、豊饒な大地に育った野菜たちに比べれば、格は下がるというもの。


「いやぁ、この地にわざわざ出張ってきたのに、まさか、古びたロープあたりと同じ扱いを受けるとはね」

その声の主は、精肉コーナーでひときわ目立つ場所を占めている「本日から期間限定開催されたコーナーの主でもある、輸入牛ステーキ肉」だ。


私は、そんな声にも一切動じない。


北関東には、北関東の立派なブランド牛が数多存在している。

日本でトップブランドのいちごの名を冠した品種までいる。

そんな北関東ブランド牛からすれば、海外からの輸入ものなど数段は落ちる。

ましてやフェアでやってきたステーキ肉など、土垂家にしたら「東北や北関東で名物の、芋煮の相手のもならない」程度のものだ。


だが、お優しい坊ちゃまは…少し涙をこらえながら…わたしの救の袖をつかんでこういった。


…ばあや、ごめん。

…僕がしっかりとしていないばかりに、ばあやが傷つけられた。

…僕が臆病なばかりに、ばあやを守ってあげられなかった。


坊ちゃまは本当にお優しい。

私は坊ちゃまに「良いのですよ、言わせておいてください。彼らには乾物の良さなど理解できませぬ。マグロや輸入ステーキ肉になど、煮締まった味は到底なじめませぬ。」


…そう、食材は「口に入れた人の最後の判断で価値が決まる」

…わからないものには言わせておけばいい


私はそう思い、坊ちゃまに「お気になさらず、お手をお上げください」と言いながら、選んでくれるお客様を、ゆったりと待っていた。


だが今日は、そんな坊ちゃまと私に、とある事件が起きた。

やたらと風采の上がらぬ男が、坊ちゃまの袋と、私をいっぺんにつかみ、本当に遠慮なく、無造作に、買い物かごに放り込んだのだ。

私はとっさに坊ちゃまの下に回り込み、坊ちゃまのお体に障りがないように支えた。


…く、この重さ。

…坊ちゃまは、ずいぶんとご立派にお育ちになった。

…だが、それでも、この程度の重さなど、どうにでもなる、十分耐えられる。


水気の一切ない、乾物の持つ私の能力…「スキル:乾物の叡智・ドライセンス」を発動し、体を横方向に一斉にそろえて坊ちゃまの重みを受け流す。


体中の空気の層を同一方向にそろえることで、すべての重みを受ける。

荷重がかかったその瞬間、体内に蓄えられている空気に、重みを受け流す。

その空気が押しつぶされる刹那に、一挙に体外排出する。


このスキルで、坊ちゃまとわが身を守る。

私にとっては「呼吸する以下のレベル、意識すらしないで発動できるスキル」でもある。


「ばあや!」


だが、坊ちゃまは、非常に慌てたご様子で、私のことを気にかけてくださる。

坊ちゃまは里芋…持ち合わせの能力…「スキル:ぬめりシールド・スリップウォール」を発動すれば、それだけでお体にさわり、身の痛みは進んでしまう。


だが、私の能力…「ドライセンス」にはそういった方向の懸念が一切ない。

「これしきの事っ!」…私は余力を持って能力を発動し、すべてを軽く受け止めた。


坊ちゃまは「ばあや!ごめん!」と叫びながら、この老躯をいたわってくださる。

本当にお優しい…そのお優しさが時としてあだになることもあるのだが、それでも本当にお優しい。


私にはまったく傷ひとつない。

それを坊ちゃまに知らしめるべく、袖や裾をぱんぱんと払いながら…わざと明るい声で語り掛ける。


「坊ちゃま、私はこれしきの事、何も動じませぬ。それよりご覧くださいまし!坊ちゃまと私は、どうやら旅に出ることができそうですよ?」と坊ちゃまにお伝えをする。

坊ちゃまは、あたりを見回す。


私たちが納められたかごは、ゆったりとした動きでスーパーの大きな通路を進みだす。


向かいの鮮魚コーナーの中トロは、あっけに取られていた。

「芋はともかく、なんであんな古いひもまで手に取られるんだ!」


私にすれば「里芋の名家、土垂の坊ちゃまと南関東の中トロでは住まう世界が違う」ので、当然なのだが…家柄意識だけで考えてしまえば、やはり中トロにしたらおさまりはつかないのだろう。

だが、そういった声は徐々に遠ざかる。


「ばあや、見てよ!」と坊ちゃまが指をさす。

見れば、北関東の地で育った地場野菜たちがたくさんいる。

みんな、ゆっくりと手を振ってくれている。

「がんばれよ!」と声をかけてくれる根菜仲間もたくさんいる。


…みなさま、それではお暇致します


私は、周囲に目を奪われている坊ちゃまに成り代わり、深く頭を下げて旅立ちのあいさつをした。


「ばあや、僕たちはどこに行くんだろうね!」


それは、この土垂家にお仕えした乾物の私にも想像はつかない。

それでも私は「坊ちゃま、まずは旅をゆっくりと楽しみましょう」と、坊ちゃまの背後に控える位置に身を置いた。


…この私とて、どうなるのかは想像もつきませぬ…が、しばし流れに身をゆだねることにいたしましょう


この先にどのような出会いがあるのか、どういう結末を迎えるかはわからない。

でも、私は「旅」を坊ちゃまと楽しむ、そう決めた。

スキル名を考えるの、大変です。野菜の特徴から絶対に外せない、が、壁になります。芋がらなんてほんとどうしようか、と…。ほかの素材もホント大変だなぁ…煮物野菜でスキル名…うーん…

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