表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/25

~食材の視点~ 鶏肉とカシューナッツ炒め~プレミアム版~

この話は「単身赴任の食卓~学食編~ 鶏肉とカシューナッツ炒め~プレミアム版~」から発想を得ました

このシリーズのもとは、自分で作れる「単身赴任の食卓」から得ることが多いのですが…今日、偶然に中華料理屋でカシューナッツ炒め(プレミアム版ではない、普通のもの)を食べまして、視点変更可能かな、と思い、エイヤと書いてみました。

俺は、今日も銀色のバットの中で、静かに出番を待っていた。

朝から厨房は灼熱で、火の上をくぐり抜けた俺は、照り返しの強い夏のアスファルトみたいに熱を帯びている。


鶏肉たちは、まだまだ若い。

プリプリしていて、油を吸ってもなお弾力がある。

皮の部分なんか、パリッとしていて見た目だけでも非常に香ばしいのがよくわかる。


ピーマンは色鮮やかで、見た目担当としての自覚が強い。

それだけではなく…この調理法なら、普段は嫌がられる苦みですら、もてはやされる。


そして俺…カシューナッツは、今日も香ばしさ担当だ。


「今日は当たりだな」

「ごはんにのせて丼にしようかな」


配膳台の向こうから、若い男性たちの声が聞こえる。

ああ、やっぱり鶏肉は人気者…ピーマンはその主役を添える名わき役。

俺は…モブに近いほどの脇役。


でも、モブにはモブの誇りがある。

噛んだ瞬間の「カリッ」が、どれだけ料理全体を引き締めているか…わかる人にはわかるのだ。

そう思っていた。


俺は、仲間たちと一緒に皿へと滑り落ちた…はずだった。

気づけば、周りはほとんど俺の同族。


カシューナッツ、カシューナッツ、カシューナッツ、ピーマン、糸くず程度の鶏肉、カシューナッツ…


本当にピーマンが申し訳程度に顔を出すが、鶏肉の姿…糸くず程度、皮のかけら程度しか見えない。


…これは、もしかして事故か?

…それとも、運命のいたずらか?


皿の向こう側、若い男性とは大きく世代の違う、初老男性が俺を見下ろしている。

どこか体調でもよくないのか…じっと身じろぎもせず…顔に立て線を見えるほど刻みながら、じっと皿を見つめている。

その視線は鋭いというより、困惑と諦めが入り混じったような…そんな温度だった。


「…カシューナッツばっかり」


初老男性の心の声が聞こえた気がした。

いや、実際に漏れていたのかもしれない。

きっと初老男性は「鶏肉が入っていない、鶏肉とカシューナッツ炒めなんて、大佐専用の赤いモビルスーツのツノがないのと同じだろう!」と、訳のわからないことを考えているに違いない。


「先生、ナッツ好きなんじゃないですか?」と、向かいの若い男性が、ぽつりと言う。

「センセ、ナッツ好きそうな顔してますよ」という言葉には、カシューナッツである身を忘れて、俺が吹き出しそうになった。


…どんな顔だ、それは。


でも、初老男性は、苦笑しながら俺を見つめている。

別の若い男性が「先生、それ当たりですよ。鶏肉よりナッツのほうが高いっすから」と、言う。


…そうだ。俺たちは、地味に高級食材だ。鶏肉よりも、原価はよほど高い。


つまり初老男性の皿は「原価的には、ツノこそないが大佐専用」ということになる。

初老男性は「騙されんぞ!」と言いながらも、口元は緩み、どこか楽しげだ。


結局初老男性は。俺をひとつ残らず食べてくれた。

「ツノなしカシューナッツ炒め」を、黙々と、でもどこか楽しげに完食してくれた。


皿が空になったとき、俺は思った。


…脇役でも、主役でも、誰かの一日の物語に混ざれたなら、それで十分だ。


初老男性は食堂を出て、強い日差しの中へ歩いていく。


「いつものスーパーで、唐揚げでも買って帰るか」


初老男性のつぶやきに、俺はどこか安心した。

鶏肉は鶏肉で、ちゃんと愛されている。

それなら、今日の俺たちの役目も、きっと悪くなかった。

鶏肉のカシューナッツ炒め…これ、ちょっとあまっ辛くて、おつまみぽくもあり、ご飯に乗せてどんどん食べちゃう、もできるので結構好きです。

ただ、さすがに自分で作れるかなぁ、という懸念はあり、未だに挑戦したことはありません

今住んでいるところは、カスの圧力が強い(そんなことなるのか?)のかどうかは不明ですが、ものすごい火力をコンロがたたき出してくれるので…作ってみたい一品、ではあります。

単身赴任の食卓、でも出せるよう、ちょっと頑張ってみようかな…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ