第39話 禁じ手
警告は、
止まらなかった。
《不可逆点まで
残り――》
数字が、
初めて表示される。
72:00:00
七十二時間。
世界は、
それだけの猶予を
自分に与えた。
「……短いな」
俺は、
笑った。
「短すぎます!」
リーネが、
叫ぶ。
「このままじゃ、
切り捨てが
加速します!」
「分かっている」
勇者が、
俺を見る。
「じゃあ、
どうする」
俺は、
一つだけ
答えた。
「――禁じ手だ」
全モニターが、
黒に沈む。
文字列が、
浮かび上がる。
《管理者最上位権限》
《通常時:封印》
《解除条件:
世界存続の危機》
「そんな……」
リーネの声が、
震える。
「これ、
神話級……」
「違う」
俺は、
否定する。
「神話の外だ」
悪魔の声が、
割り込む。
『本気か?』
『それを使えば、
君は――』
「知ってる」
俺は、
即答した。
「元には戻れない」
『管理者ではなくなる』
「それでもいい」
俺は、
指を伸ばす。
《警告》
《当該操作は
管理者個体の
世界依存性を
切断します》
《以後、
世界は
あなたを
“異物”として
扱います》
勇者が、
叫ぶ。
「やめろ!」
「世界を
守るんだろ!」
俺は、
振り返る。
「守る」
静かに、
だがはっきり。
「だから、
世界の一部を
やめる」
《承認》
その一文字で、
世界が悲鳴を上げた。
空が、
割れた。
地脈が、
逆流する。
魔法体系が、
再コンパイルされる。
「……なに、
これ……」
リーネが、
呆然とする。
「世界構造、
再定義中……」
「選別ロジック、
無効化」
俺は、
淡々と告げる。
「救う/捨てる
という概念を
一旦、消す」
各地で、
奇跡が起きる。
守られていた都市は、
過剰な魔力を失い。
見捨てられていた村に、
最低限の安定が行き渡る。
平等ではない。
だが、
公平に近づいた。
『……狂っている』
悪魔が、
初めて
本気で言う。
『それは、
世界の成長を
止める』
「違う」
俺は、
世界を睨む。
「延命だ」
「成長するかは、
その後に
決めればいい」
だが、
代償は
即座に来た。
胸に、
激痛。
視界が、
ノイズに侵される。
「管理者の
存在安定度、
急落!」
リーネが、
叫ぶ。
「あなたが、
世界に
拒絶されてる!」
「予定通りだ」
俺は、
息を吐く。
《管理者ステータス》
《世界適合率:
0%》
表示された瞬間、
世界から音が消えた。
俺は、
もう――
この世界の住人ではない。
勇者が、
剣を握る。
「……なら」
「俺が、
この世界に
お前を
繋ぎ止める」
俺は、
笑った。
「頼もしいな」
世界安定度は、
一旦、回復する。
だが。
悪魔が、
静かに告げた。
『残り時間は
変わらない』
『次は、
“世界自身”が
君を排除しに来る』
俺は、
頷く。
「来い」
「最終保守だ」




