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魔法の木エニシダの香り  作者: 文乃木 れい
慧の目にうつる世界
30/50

おかみには逆らえない

 「あーうまかった。」とお茶漬けの茶碗を置いて洋は言った。               

「結局無駄やったんか、町田女史の熱弁も。まあそんなもんやろな。」

出張から帰ってきた夫に昨日の委員会の報告をしたときだ。

「変よ、武田議員と町田議員が意見言って、それに対しての意見も反論もなんにもないのよ。照沼じいさんが 『他にご意見は、あ、ないようですので この案件の採決に入ります。』って、ふざけんなって、もう体が震えたよ。」

 洋が別に意外でもなんでもないというのんきな様子にも腹がたった。

「だって しゃあないやろ、多勢に無勢。」

「議員てなんのためにいるの? それぞれが村民のために勉強してそれを議会でぶつけあうためにいるんじゃないの?」

「おっしゃる通りとは思うけどなあ、不採択になって もう統廃合は決まりか?」

「ううん、統廃合をしないでくださいっていうのは通らなかったけど、統廃合をしますという議案が可決されたわけではないんだって。」

「そうか。次の議会やな。」

梨の皿を洋の前に置き、私も椅子に座った。

 「ねえ、今日ね、大騒ぎだったの。」

「え?」というふうに洋がフォークを持って顔をあげた。

「あさたちをお昼ねさせてたらね、島先生が走ってきたのよ。」

「けいくんのおかあさん!たじまさん!」って庭から呼んでるの。それで

「けい君いませんか?」って言うのよ。ものすごくびっくりした。

私の顔を見て、いないのがわかったんでしょ、すぐにとってかえして走りながら、振り返って 「すぐにお電話します!って。」

「すぐに私がひなぎくに電話したわよ。そしたら白石先生が出て、庭で遊んでたのにいつのまにかいなくなっちゃったって。もう足の力が抜けた。そのうち その電話の最中に、あ、みつかりました!押入れにいたそうです。って」

「押入れ?」

「うん、陣取りゲームやってて負けてくやしくて 押入れにはいっちゃったらしいんだって。」

「その後、ひなぎくに着いた島先生からも電話がかかってきて、先生泣いてらしたわ。何度も謝られて。ひなぎくからの距離、すっとんで走ってきてくれたのよ。また走って帰って。島先生は誠実はだよね。」

「保育園のこどもをちゃんと監督してなかったんだから、そりゃあ手落ちだろうよ。何かあったらどうしてくれるんや。」

「そりゃあそうだけど、みんなが大好きな陣取りゲームやってて、ひとりがどっかに行っちゃうなんて予想しないよ。」

「まだ保育園児だぜ。すべての可能性を考慮して保育にあたってもらわんとな。まあ、あいつは難しいやつやから、先生も大変だとは思うけどな。」

「押入れも真っ先に探したらしいんだけどね、布団の奥にいて見逃したらしい。ちっちゃいんだね、まだ。」

「先生も焦って探すからな。結局だれがみつけたんや?」

「佐野先生が。きっと長いこと隠れてて、ちょうど奥のほうから出てきてたんじゃないかしらね。」

「慧は元気なんか?」

「だいじょうぶ。すねて隠れるなんてだめだよ、島先生心配して泣いてたんだよ。って言ったら素直にうん。うん。ってうなずいてた。」

「あいつもいろいろ思うところあるんやろなあ。」そう言って洋は梨をかじった。

「保母さんて ほんとに大変。そうそう保母さんね、昨日、傍聴に行った保母さんが二、三人いたんだけど、福祉課からお咎めを受けたんだって。ちゃんと休暇とって行ってたのにねえ。

 出井さんもだって、ほら、公民館の女性館長さん。巣鴨神社のとこの。

出井さんは保育園を簡単につぶすのは疑問だという発言をしてくれてたんだって。

K新聞の後藤さんがこないだの審議会の様子を教えてくれたんだけどね。

それで、福祉課からやっぱり怒られたんだって。公民館て村のもんだもんね。

 だけど、ひどいもんだね。村の政治ってこんな旧態依然かと呆れるね。」

「お上には逆らえんのよ。そんなもんや。」




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