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検証中 削除予定  作者: その辺の双剣使い
一章 謎多き世界最強の勇者

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第8話 嫁にするとまでは言っていないぞ?



「ディール様~! 村を出ちゃいましたけど……私、伯父さんと伯母さんの所に帰らないとです」

「はぁ? お前、伯父さんと伯母さんの家で世話になってたのか?」

「はい! 亡くなってしまった、私の父のお兄さん夫婦なんです」


 そう聞いて、短絡的に引っ張ってきてしまった事を俺は少し後悔する。

 自分でも何だかよくわからないが、このままアルを与えられた領地まで連れていく気になっていた。彼女の気持ちを確認しようとも思わずにだ。


 今さらだが、念のため俺は彼女に対し確認してみる事にした。


「その伯父さん夫婦には、普段ちゃんと優しく接してもらっているのかよ」


 俺の質問に対し、キョトンとした表情でアルは問い返す。


「どうして急にそんな事を訊くんですか? よく意味がわかりません……」

「いやだから、とにかく質問に答えろ。俺は、優しくされているのかって訊いてるんだ」

「優しくされているかどうかはわかりませんが。ちゃんとお仕事もくれて、ご飯を食べさせてもらっていますよ」


 アルのガリガリに痩せた状態を見る限り、彼女が普段から真面な栄養状態に無い事くらい理解できた。

 それに加え、彼女の裸体を見た時に、最近ついた物ではない傷や痣が複数ある事にも気づいていた。


 ひょっとしたら本人が少食なだけかも知れない。

 その可能性も考えたが、念のため彼女に食堂での事も訊ねてみることにした。


「お前、別に少食ってわけじゃないだろ? 俺が食堂で飯を奢った時、かなりガッツリ食べてたもんな?」

「いくら意地汚い食べ方していたからって、その事をいつまでも引きずっているなんて。酷いですディール様」

「いや、そう言う事じゃなくてな……普段、満足いくだけ食べさせてもらえてるのかって事を訊きたいんだ」


 そう付け加えたことで、俺の意図をやっと理解したようだ。

 俺の問いに対して、ようやくアルは自身の気持ちを淡々と語りだす。


「私は両親も失って、村の皆からも厄介者扱いされているんです……そんな私を養ってくれているだけでも、伯父さんと伯母さんには感謝しないといけないと思っています……」


 話を聞いた俺は、どうしてもアルの本心を明らかにしたいと思う。そんな気持ちになってしまった以上、いちいち回りくどい言い回しをするのも面倒だ。

 多少の躊躇いこそあったが。覚悟を決めた俺は一息置いた後、ド直球な質問を彼女に対し投げ掛ける。


「俺に拾われるか、伯父さんの所に帰るか、お前はどっちが良いんだ? 今すぐ答えを出せ! そしたら、お前の好きにさせてやる!」

「えっ! そっ、それって本気ですか? そんなこと急に言われても……私、困っちゃいますぅ~」


 どういうわけか頬を真っ赤に染め、恥ずかしそうに反応するアル。

 何か勘違いをしているようにも見えるが。そんな様子の彼女にまた、天から声が聞こえてきたようだ。


「あっ、また声が聞こえてきました……えっ!? 本当に? うっ、嬉しいです!」


 何やら勝手に話を進めているアルに対し、堪らず俺はその内容について問う。


「嬉しいって何がだ? もの凄く嫌な予感しかしないんだけどな……」

「えっと……ディール様、私の事を気に入ってくださったんですよね? だから、お嫁さんにしてくれると……えっ? それ言っちゃダメだったんですか? だったらもっと早く言って欲しかったですぅ~!」


 突然そんな思ってもない事を言われ俺は呆れかえる。


 天の声とは一体どんな存在なんだろうか? その正体が何なのかどうしても知りたい。そう思った俺は、アル越しにその声と会話してみようと考えた。


「アル! 俺が直接その声に質問するから、お前は間に立って通訳してくれるか?」


 俺にそう言われたアルは、困惑しつつも黙って頷く。


「おい! 天の声! お前は一体何者なんだ?」


 そんな俺の歯に衣を着せぬ言い様に、どうやら天の声はヘソを曲げたようである。


「そんな乱暴な聞き方に、答えるつもりは無いって言っていますね……」


 全くもってめんどくさい。しかし、確かに俺の話は通じているようだ。


「ちっ、天の声さん。あなたは一体、どういった存在なんでしょうか? 村の人達が言うように、悪魔か何かなんですかね?」

「舌打ちしたのが気に食わないから、答えないそうです……」

「おい! アル! お前、ちゃんとやってるのか? お前が俺の代わりに、心の中で丁寧に訊けば良いだけだろ」


 流石に理不尽すぎる言い様だっただろうか。アルは目に涙を浮かべながら反論してくる。


「酷いですディール様! 通訳するって言っても、天の声は直接ディール様の言葉を聞いて答えてるだけですからね。私はただ、その返事をディール様に伝えてるだけなんです。ディール様が最初からちゃんと丁寧な訊き方をすれば、私が一々訊き直す必要なんてないじゃないですか~」


 意外にも、言いたい事はちゃんと言う娘みたいだ。

 彼女の言葉に少し気圧されてしまった俺は、渋々ながら天の声に対して謝罪をする。


「申し訳ありませんでした、天の声さん! あなたが、どんな存在なのかを俺に教えていただけませんでしょうか?」


 俺の謝罪と丁寧な問いかけにやっと答える気になったのか、しばらくの間沈黙が流れる。程なくしてアルは、その内容について話し始めた。


「『私の正体を今はまだ教える気はないけど、悪魔とかの類いではないから安心して欲しい』と天の声は言っていますね」


 何とも期待はずれな答えだ。最初の質問にしか答えてはいない。

 しかし、教える気はない、とハッキリ言われてしまってはもうどうする事もできない。


 これくらいの質問なら、答えてくれるだろうか。

 そう思った俺はガッカリしながらも、最後にもう一つだけ疑問を投げ掛けてみることにした。


「はぁ……何だよそれ……じゃあ、もう一つだけ質問したいんですけど、あなたは未来や人の考えが読めたりするんでしょうか?」


 どうやらこの質問に関しては、問題なかったようだ。アルは、再び天の声とやり取りをしている様子。

 しかし、しばらくして彼女が伝えた天の声の答えに、俺は再度ガッカリさせられる。


「未来が見えると言うよりも、大局を見て物事を言っているそうです『他人の心なんて一切よめませ~ん』とも言っていますね」

「はぁ? じゃあ、何で俺がアルテミスの事を気に入ったから、嫁にするつもりだなんて事を言ったんだよ」


 俺の言葉を聞いて、再び頬を真っ赤に染めながら躊躇う様子のアル。


「『だってアルちゃん可愛いし、あなたの好みでしょ? たくさん食べさせてあげれば、もっとあなた好みの魅力的な体型になっていくわよ』と天の声は言っています。あの……私、ディール様好みの体型になったら、その……やっぱりそういう事をされちゃう感じなのでしょうか?」


 別に俺は、女嫌いというわけじゃない。ただ扱い方がよくわからないだけだ。とはいえ、流石にただでさえ幼く見える十代半ばの少女と、そんな関係になるつもりなど全くない。


 面倒なプロセスを踏んでまでして最終的に嫌われるよりも、今ここでハッキリさせてしまおう。嫌だと言うのなら、この場で村に帰してしまえば良いのだ。


 そう思った俺は、彼女の本気度を確かめようと考える。当然、本音ではないが。一緒に連れていく為の条件を彼女に対し提案してみる事にした。


「まぁ、本当に食わせてやって、魅力的な体型になったってんなら、養ってやる代わりに夜伽くらいはしてもらうかな? それでも良ければ、俺についてくれば良いさ! 少なくとも、俺ならお前に対して乱暴な事だけはしないと思うがな」

「ヨトギ? 何ですそれは?」

「夜の相手をしろって事だ」


 曖昧な言い方だったが、天然な彼女もさすがに理解したようだ。その答えに、アルは更に頬を真っ赤に染め上げる。

 しかし、恥じらう様子の彼女は次の瞬間、俺が全く予想もしていなかった答えを返してきた。


「ディール様のお嫁さんになるんですから、当然それについては構いません! 私、ディール様に一生ついていきます!」


 すっかり嫁になる気満々のアル。そんな彼女に、俺はただ苦笑いするしかなかった。


 もはや、いちいち突き放しているのも面倒だ。そう感じた俺は「そうか、わかった」とだけ言って、そこで天の声との会話を終了した。



 それから俺はアルを伴い、引っ切り無しに現れるモンスター共を蹂躙しながら一緒に旅を進めていく。

 三日程の道のりを経て、俺たちはついにグリーラッドに唯一あるとされる古城にたどり着いた。

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