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検証中 削除予定  作者: その辺の双剣使い
五章 魔王討伐の旅

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第60話 戦いの後



 光のプレートを足場にしながら、俺はアル達の気配がする方へと向かっていく。

 流石は身体能力の高い獣人族といったところか。ある程度の距離と段差があるにも拘わらず、追随する二人もなんとか俺についてこれているようだ。


 アル達の姿が見え始めたところで、今度は下りのプレートを地面まで一気に出現させる。

 俺の姿に気づいたようで、アルはこちらに向かって両手を大きく振っていた。


 激しい戦闘の痕跡だけは残されていたものの、急襲部隊の死体は全く見受けられない。どうやらアルも、俺と同じ無の力を持っているようだ。


 着地したあと、現場の状況に困惑する様子の獣人親子。

 そんな彼女たちの姿を見て、タマとチロは大袈裟なくらいに二人の無事を喜んでみせた。


「お母さん! トラ! 無事だったんだね!」

「二人とも無事で良かったにゃ! 様子見だけの作戦だったはずにゃけど、そのまま助けてもらえたのにゃね?」


 廃城での一件を知らないが故に、そう喜んだフリをしているのは明白だ。

 母だと言っている以上、彼女たちにとっても俺は親の敵という事になる。

 しかし、これ以上娘たちに道化を演じさせるのも馬鹿らしいと思ったのだろう。猫の獣人母は、呆れ顔で二人に対し事情を説明し始めた。


「二人とも、もうそんな演技をする必要なんて無いんだよ。私たちがディールさんの命を狙っていた事は、もうバレてしまっているからね。廃城の部隊は巨人二体を含めて、彼が全て倒してしまったわ! ソフィアの奴だけは逃してしまったけどね……」


 母の説明を聞いて驚愕する二人。

 タマの方はすぐに理解したようだが、弟? の方はそうではなかったようだ。


「お母ちゃん達をここに連れてきた目的は、俺たちをまとめて殺すためにゃか?」


 俺に向かって、チロは突然そんなフザけた事を言い出す。

 いくら親の敵とはいえ、どんだけ俺を悪人に仕立て上げたいというのか。


「わざわざそんな事する意味がわからんけどな……俺がそんなに趣味の悪い人間に見えるのか? 戦意を失った相手まで殺す必要もないし、どうせお前たちが合流するだろうと思ったからここに連れてきたまでだ」


 そこまで聞いても、依然として警戒を解こうとしないチロ。そんな彼女を兄のタマは窘める。


「チロ。気持ちはわかるけどさ。今さら敵意を向けたところで、あの化物軍団を一人で蹂躙できるような相手に、私たちがどうにかできるとも思えない。お母さんも黙って付いてきてるくらいだし、もうなるようにしかならないんじゃないのか?」


 タマの言葉を聞いても尚、収まらない様子のチロ。

 歯ぎしりして悔しがる娘に向かって、今度は母が言葉をかけた。


「もうやめだよ、チロ! ディールさんにも言われたけど、元々お父さんの事は逆恨みみたいなものだったしね。あのソフィアという女に焚き付けられて、ついその気になってしまったけど。私たちはあの女に騙されていたんだよ」

「騙されていたって、どういう事にゃ?」

「あの女、最初から私たちの敵討ちを手伝う気なんて無かったのさ! 奴らの目的は、ヴィルヘルムという人物の命だけ。でも、ディールさんの仲間たちまで不死身の軍団を倒せるなんて、連中にとっても想定外だっただろうけどね」


 自身の名が出たからなのか、親子の話を聞いたヴィルは彼女たちの会話に口を挟む。


「そのヴィルヘルムというのは私の事だ……無関係の君たちを巻き込んでしまって、本当に申し訳なく思っている」


 元王国の発言に、驚いた様子の獣人親子。殺害に協力していた対象からの謝罪。彼女たちが困惑するのも当然だろう。


「ちっとも王様らしくないにゃね?」


 思わず出てしまったのか、突然そんなことを言い出すチロ。ヴィルは、彼女の言葉に苦笑いするばかりだ。

 そんななか俺はすぐに気づいた。あのソフィアという女から、彼女たちがある程度の話を聞かされていることを。


「そこまで知らされていたのなら、奴らお前たちの事を最初から生かしておくつもりなんて無かったんじゃないのか? 国王が実は生存していた、なんて事が世間に知られでもしたら、奴らとしても相当困る事になるだろうしな」


 俺がそう指摘すると、タマは急に何かを悟ったような表情になる。

 チロも同じことを思ったのか、兄と顔を見合わせる。

 しばらくして、急に怒りをぶちまけ出した。


「ソフィアの奴、俺達の事を利用するだけ利用して、最終的には殺すつもりだったのにゃね!」

「別動隊の襲撃ついでに、俺たち二人をここで一緒に始末するプランに変更したって事なんだろうな……」


 二人の息子? に続いて、獣人兄弟の母も自身の見解を述べる。


「私たち二人に関しては、ディールさんが殺さずに生かしておくとは思っていなかったんだろうね。それにしても、彼の無茶苦茶な強さに圧倒されていて本当に良かったわ。出ていくタイミングを計りかねていたお陰で、死なずに済んだんだもの。もしあのとき先走っていたら、今ここに居ることはできなかったでしょうね」


 母と兄二人が其々の見解を述べるなか、一番下の弟だけは一人おどおどしている。兄たちとは違い、かなり消極的な性格のようだ。


「少し落ち着いてきたみたいだな。もし、話を聞かせてもらえるなら、君たちに少し訊ねたい事があるんだが。私の質問に答えてはもらえないだろうか」


 ヴィルヘルムの問いかけに対し、母親の獣人女が応対する。


「まぁ私たちは一応、捕虜みたいなもんだしね。訊かれて困る事もこれといって有るわけじゃないし、話をするのは別に構わないわよ。あっ、まだ名前も名乗ってなかったわね。私の名前はラグドラ。こっちは一番下の息子でトラって言うの。それで、私たちに訊きたい事ってどんなことかしら?」


 ラグドラと名乗った獣人女の変わり身の早さに、俺は呆気に取られる。他の者たちもきっと同じ思いだろう。

 しかし、王国の現状が気になるのか、ヴィルヘルムは構わず話を続けた。


「君たちは、アメリア王国から来たようだね。私が知りたいのは王国が現在置かれている状況についてだ。それについて君たちが知っている事を、できる限りで良いので教えて欲しい」


 ヴィルヘルムの質問に応じて、ラグドラは王国の現状について話し始める。

 彼女は、王女ヴァイセリーナが新たな国王として即位したこと。宰相として、アスモデロという人物が国の政治を取り仕切っていることなどを語った。


 ラグドラの話を聞き、一先ず安心した様子を見せるヴィルヘルム。

 彼は、更に詳しい話を訊き出そうとするも、ラグドラ達はそれ以上の事は何も知らないようだった。

 また、ソフィアが何者なのかについても知らされてはいなかったようだ。



☆☆☆



 命を狙った件に関して特に咎める事もなく。魔王討伐隊の一行は、獣人族の冒険者パーティーとその場で別れることにした。

 彼らは、サマルキア王国とアメリア王国の国境付近にある町へと向かうため再び馬車を走らせ始める。

 そんな彼らの様子を遠巻きに眺めながら、独り言ちる女がいた。


「まさかこんな回りくどい事までして失敗するなんてね……勇者以外にもホムンクルスを倒せる奴らがいたなんて……本当に想定外だったわ」


 魔族の女はそう言ちたあと、再び黒い霧に包まれその姿を闇に消した。

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