第53話 お願い天の声さん!【ちょいエロ回】
『何の力も持たないお前が、一緒に行きたいって言ってもなぁ。お守りが増えるだけだから正直迷惑だ』
アルがパーティー入りを懇願した際に、俺が放った言葉だ。
ここのところずっと留守番ばかりで寂しいのは分かる。ましてや、エマも同行するのだ。彼女としても、今回ばかりは許容する事ができなかったのだろう。
しかし、足手まといというのは正直なところ。彼女を危険に曝したくはないし、今回はお荷物が多いので守りきる自信もない。
何も言い返せなかったようで、アルはわりと素直にその場は引き下がっていた。
因みに、同じくパーティー入りを懇願したティナは、回復魔法が使えるという事もあって連れていくことにした。
彼女の同行を許可した理由は他にもある。政治的な意図だ。
目的達成の後、元王女として何か外交的な面で役に立つかもしれない。そんな希望的観測に基づくものだった。
☆☆☆
すごく悔しかった。まさかティナさんにまで負けるなんてね。
この悔しい気持ちを誰かに聞いてもらいたくて。私は、自室に戻るなりダメ元で問いかけてみる。
「ねぇ、天の声さん聞いてる? ……って、聞いてたらそっちから話しかけてくるよね?」
『聞いてるよ! アルちゃん』
どうせ反応なんて無い。そう思っていたのに。
思いもよらない天の声さんの返事に、私は嬉しいと同時に不思議な気持ちになった。
「えっ!? 初めてだね? こっちから声をかけて返事をしてくれたの!」
『アルちゃんの反応、最近すごく強くなってるからね。探すのが前よりもずっと楽になってるのよ』
「反応? 探す? それって、どういう事なの?」
『まぁ、それを詳しく話したところで今は理解できないでしょうね』
そんな歯切れの悪い答えを返されても、納得はできないけど。あえて濁すってことは、しつこく聞いても無駄だよね。
今までも肝心なところははぐらかされていたし、今回も詳しく訊ねたところできっと答えてはくれない。
私が反応せずにいると、天の声さんは言葉を続ける。
『だから今、ちょうどあなたにアクセスし始めたところだったの。それで、私と何か話したい事でもあるのかしら?』
たまに声をかけてきてくれる天の声さんとは、今までも他愛のない会話をするだけの事が多かった。単なる話し相手といった感じ。
辛い事があった時には、よく愚痴を聞いてもらったりはしていたけど。そんな感じでただ相手をしてもらっているだけの関係。
実は、村が襲われると教えてくれた件に関しても、それこそ初めてのケースだった。
「私って、どうしてこんなに弱いのかな? 力さえ有ればディール様の役に立てるから、一緒に行動する事もできるのに……」
『今回は、何があったの?』
「ディール様が、魔王を退治しに行く事になったんだけどね……私は、足手まといになるからって、今回も置いてけぼりだよ……」
『なるほどね。それでアルちゃんは、本当に力が欲しいと思ってるわけ?』
「うん! 私も力を手に入れてディール様の役に立ちたい!」
私がそう自身の願望を述べると、天の声さんは急に黙り込んでしまう。
天の声さんが何か超常的な存在なのだとしたら、私に力を与えるなんて事できたりするのかしら? そんなこと訊いてくるくらいだもん。黙ってるってことは、きっとそうに違いないわ。
しばらくして、再び語りだす天の声さん。
『本当にそう思っているなら、あなたの力はもうとっくに解放されているはずよ? 管理No.4アルテミス……あなたはディール様を支えるために、そちらの世界に送り込まれた存在なの。彼と会うことが、力のスイッチを入れる条件だったわけ。本来あなたは、彼と同格の力を持っているのよ』
そんなこと急に言われてもとても信じられない。
でもその話が本当なら、最初からカレの隣に立つ資格が有ったってこと? そう考えるとすごく嬉しいし、自分の存在にも自信が持てる。
「管理No.4って、どういう意味なの? それに、私にはディール様と同格の力があるって……そんな感覚まるでないよ」
『まーね。そんな力を最初から持っているなんて、普通思わないものね。きっかけでも無ければ、使えるわけないのは当然のことだよ』
「私にもディール様みたいに、恐ろしい魔物と戦える力があるの?」
『そうよアルちゃん! ディール様に匹敵するくらいの力って言ったけど。あなたには、彼とはまた違った別の役割が有るのよ』
「ディール様とは違った役割?」
『そう。だからアルちゃん! これからは彼に何と言われようとも、彼から絶対に離れちゃダメ!』
天の声さんとの会話を終えた私は、その後どうしても寝付けず自然とカレの部屋に足を向けていた。
何だか不思議と力が湧いてくる。
部屋の前に立つと、意を決してカレの名を呼びながらドアをノックした。
☆☆☆
「アルか? 何か用なのか?」
「入っても良いですか? ディール様」
「少しくらいなら構わないが……」
こんな時間にアルが訪ねてくるなんて、珍しいことだ。
いつもなら忙しい俺に気を遣って、用があっても朝食の時に話すことが多い。
それにしても異様な気配だ。
アルのものである事は間違いないが、途轍もなく強い力を感じる。
俺は書類の整理を一旦やめ、ソファーに腰かけ直す。その後、彼女に部屋へ入るよう声をかけた。
入室してきた彼女は、どういうわけか全身から銀色の光を放っていた。
アルの姿に驚きつつも、俺は平静を装いながら彼女に声をかける。
「昼間の件か? その話しなら、もう確定したはずだよな? 今回はずいぶんと諦めが悪いみたいだが、一体どうしたっていうんだ?」
俺の問いに全く答えようとはせず、アルは微笑みを浮かべながらゆっくりと迫ってくる。
そんな彼女のただならぬ雰囲気に、堪らず俺は叫んでしまった。
「おい、アル? 何のつもりだ!?」
俺の叫び声に思い直したのか、アルは方向を変えベッドの端に腰を下ろす。
「ディール様。私の隣に座ってくれませんか?」
迫られるのは怖いが、自分の方から行くぶんにはそれ程でもない。彼女の状態にも興味はある。
俺は、意を決してソファーから立ち上がりアルに近づいていく。
目の前に立つと、アルはいきなり袖を掴み俺の腕を引っ張る。か細い腕とは思えない程の力だ。
そのまま俺はベッドに引き込まれ、押し倒されてしまった。
ゆっくりと近づいてくるアルの顔。ものすごい力で押さえつけられ、抗うことができない。
唇と唇が重なり、舌まで入れられる。なかなか上手だが、初めてではないのか?
濃厚な口づけを終えた後、アルは強い力で俺を押さえつけながら不敵な笑みを浮かべて言う。
「私の力には抗えないでしょ?」
アルにそう問われ、俺は顔を背けながら答える。
「あ、ああ……どういうわけか、そうみたいだな……」
「フフフッ! 素直でよろしい! これで私にも、力が有るって事が十分わかったでしょ? だから私の事も当然連れて行ってくれるよね?」
実際に、彼女の力に対して抗えないのは事実だ。
全く理解不能だが、こうまでも現実を突き付けられてしまっては否定のしようもない。
初めて感じる恐怖にも似た感情に戸惑いつつも、アルの問いに対して無言で頷く。
そんな俺の反応を見て、アルは満足そうな表情だ。
そして俺たちはこの夜、初めて一つに結ばれるのだった。




