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検証中 削除予定  作者: その辺の双剣使い
四章 アメリア王国との戦争

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第42話 完全勝利



「なっ、なんなのよアイツ!」


 魔道士と共に居た、黒髪の少女がそう叫ぶ。彼女は更に、パニックを起こし始めた様子だ。


「私の可愛いヒュドラちゃん、一体何処に行っちゃったっていうのよ~」


 少女だけは、この状況を把握しきれていない感じだ。ここからでも分かるくらい、慌てふためく姿をみせている。

 不死身とされる伝説級の魔物が、突如として姿を消してしまったのだ。倒されてしまったという事実が信じられないのも、当然の話だろう。

 しかし、とりあえず今の状況がまずいのだけは理解したようだ。少女はジリジリと後退を始め、他の魔道士たちを置き去りにして一人で逃走してしまった。


 突然の事に、呆気に取られる魔道士たち。

 当然だが連中は、上司であるこの老騎士を置いて逃げるわけにもいかないのだろう。どうしたら良いか分からない。といった感じで、その場に立ち尽くすばかりだった。


 逃走する彼女の後を追おうと、走りだすマギ。そんな少年隊長に向かって、俺はすぐに止まるよう叫んだ。


「マギ! 別に追う必要なんてないぞ! 他の魔道士たちも放っておけ!」


 俺はそう言うなり、老騎士に向かって顎でしゃくり前を進むよう促す。敵将の背中に銃口を突き付けながら、ガルド達の元に向かって歩きだした。

 茫然と立ち尽くしていた魔道士達は、自分達に害が及ばないと悟ったのだろう。この様子を見て、我先にと逃げだしてしまった。


 俺は、ガルド達の前に着くなり、マギに対して老騎士を縛り上げるよう指示を出す。

 状況が一旦落ち着いたところで、ガルドがまず口を開いた。


「申し訳ありませんディール様……我らが不甲斐ないばかりに、お手間をかけさせてしまいました」


 そう詫びを入れるガルドとは対照的に、エマは目に涙を浮かべながら俺に対して憎まれ口を叩く。


「ディール! あんたが遅いせいで危うく私、死ぬところだったんだからね!」

「ああ、悪かったよエマ。幼馴染みのお前を死なせたりしたら、さすがに寝覚めが悪いよな……それと、ガルドも別に詫びる必要なんてないさ! むしろ、二人には礼を言わなきゃだ! よく短気を起こさずに、ここまで辛抱強く守り抜いてくれた! お前達には感謝の言葉しかない!」


 俺がそう言葉をかけると、エマは感極まった様子になる。彼女は突然「わーっ」と声を上げながら、俺の胸に勢いよく飛び込んできた。


 エマは、俺のことが嫌いじゃなかったのか? 幼馴染みの彼女に、嫌われているとしか思っていなかった俺は、その行動に理解が追い付かなかった。

 しかし、突き放すわけにもいかず。優しく彼女を抱き締めながら言葉をかける。


「エマ! 怖い思いをさせて悪かったな」

「ディール! あんたの事が好き!」

「はっ、はぁ?! いきなり何言い出すんだよエマ! 死ぬような目に遭ったせいで、気でも狂ったのか?」

「そうよ! 死んじゃったらもうこの気持ちを、あんたに伝えられなくなっちゃうじゃない!」


 いきなり目の前で始まったラブコメ展開。

 あまり耐性が無いのだろう。マギは、気まずい様子で視線を逸らしていた。

 ガルドはそんな俺たちの様子を、生暖かい目で見守っている。

 一番驚いたのは当然、俺だったが。エマの行動が一時の気の迷いだろうと思い直す。俺は、彼女が気の済むまでそうさせてやることにした。


 ようやく落ち着きを取り戻したエマの肩を、自身の胸からそっと離す。

 俺は、もう一つ残った問題について三人に言った。


「さて、こんな所で傍観している場合じゃないよな! 次は敵の本体をどうにかしなきゃだ! まぁ、お前達はここで待っていれば良いさ! 俺が一人で片付けてくる!」


 そう言うと、俺は空中に次々と光のプレートを出現させる。それを足場にしながら、瞬く間に敵陣の上空まで駆け上がっていった。

 敵の兵は、突然上空に現れた青白く光る物体に騒然となっている。

 俺に向かって一斉に矢を射かけてくるも、全くここまで到達する事はなく。推進力を無くしたそれは、連中の頭上に雨となって降り注いだ。

 その様子を見るなり、俺は機械的に古代魔法の呪文を唱え始める。


~レ ラティック ロイネトゥーナ イーウリーエス ナイランアイマーカ ティアーノットイライオンネス クナーオットウィッティアッド~


 古代語の詠唱と共に、上空には暗雲が立ち込め雷鳴が轟く。


~暗天より来たれり雷の精霊よ千の槍となりて大地を貫け~


雷槍天擊(ロンヒブロンテ)!」


 最後の詠唱を終えた直後、無数の雷が敵陣の頭上に降り注ぐ。一瞬のうちに眼下では、五千のアメリア兵達が大混乱に陥る光景が広がった。

 雷の直撃を受けた者は即死。そうでない者も衝撃により転倒し、雪崩を打って逃げ出す者達に次々と踏みつけられていく。

 まさに地獄絵図としか言い様のない光景。そんなカオスな状態が敵陣を襲っていた。


 どうやら、敵軍の司令官も雷の直撃を受け戦死したようだ。敵陣から聞こえてくる怒声により、そういった様子も伝わってくる。

 指令系統を失ったアメリア軍は完全に瓦解し、散々になって逃げはじめてしまう。

 その様子を見た橋上の残存兵達も、味方の完全敗北を悟ったのだろう。武器を次々と川に投げ込んで、降伏の意を示した。


 俺が放った一発の古代魔法が、戦の勝敗を完全に決した。グリーラッド軍の完全勝利だ。


 上空にとどまったまま、武器を捨てた敵兵に向かって俺は叫ぶ。


「何百人も捕虜が居たところで、扱いに困るだけだからな! お前達も逃げるなら、わざわざ追撃はしない。それとも捕虜になる事を望むのか?」


 その言葉を聞いた橋上の敵兵達も、雪崩を打って逃げ始める。

 完全に敵兵が撤退を終えたのを確認した俺は、ようやく砦へと降り立った。

 そんな俺を、守備兵達が大歓声で迎え入れる。


 捕虜となった敵将を連行し、砦へと帰還していたガルド達。三人もすぐに俺の元にやってきて、まず最初にガルドが言葉をかけてきた。


「ディール様は、魔法も得意だったのですね! いや、そんな言葉ではとても言い表せません。どんな大魔道士であっても、あのような超魔法を扱える者など何処にもおらぬでしょう!」

「褒めすぎだガルド! まぁ一応、勇者だったわけだしな。その名に恥じぬように、魔法についても研究は怠らなかっただけさ」


 そうは言ったものの、自分でも謙遜でしかないと分かっていた。

 どんなに研究しようとも、俺以外の人間で古代魔法を扱える者などこの世に存在しない。五千もの大軍を屠るような魔法なら尚更だ。

 もし、存在するとしても、魔王軍の連中くらいではなかろうか。


 ガルドとは対照的に、エマはいつもの感じで尊大な雰囲気を出している。やはりさっきの行動は、気の迷いでしかなかったのだろうか。

 ただ何故か彼女は、まるで自身の事であるかのように誇らしげな様子でもあった。

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