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検証中 削除予定  作者: その辺の双剣使い
三章 召喚者たちの目的

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第38話 王都奪還



 魔物の大規模な襲撃も殆んど収束し、各地で召喚者たちに対する反抗の火の手があがった。

 それらの勢力は、魔王殺しの勇者を得たヴァーニア侯爵家の軍勢に集約されていく。まるで何かに引き寄せられるかのようにだ。

 その頃には、王都を守る軍勢は完全に瓦解。十五万にも膨れ上がった召喚者討伐軍は、これと言った抵抗を受ける事もなくついに目的の都へと到達した。


 討伐軍の総大将は、建前上ヴァーニア侯爵家の長男レイチェルという事になっていた。しかし、多くの反抗軍がそこに加わった理由は、他ならぬディールの存在が大きかったと言える。


 目前に迫る王都は、閑散とした雰囲気を漂わせていた。召喚者たちが、軍を率いて打って出てくる様子もまるでない。

 そんな異様な雰囲気のなか、総攻撃を前にして最後の作戦会議が開かれていた。



☆☆☆



「王都の様子は如何にも不気味だ! まるで、住民も兵士も、誰一人として存在していないかのようだ」

「まさか本当に、人っ子一人居ないのではなかろうな?」

「それは流石に、あり得ないだろう。しかし、僅かな軍しか残っていないのは間違いなさそうだ! このうえは、数に任せて一気に陥落させるべきではないか?」

「わざとそう見せかけて、罠を張っている可能性もある。ここはもう少し、様子を見るべきであろう」


 各将軍たちが様々な意見を交わすなか、俺だけは全てを分かっていた。この想像以上に大規模となった討伐作戦が、肩透かしを食う事になるのを。

 俺は気配感知の能力を使い、既に王都に誰一人として存在しない事を確認していた。ただ一つだけ、人ならざる気配が存在している事を除いて。

 その正体に心当たりがある俺は、白熱する議論を終わらせようと発言する。


「まず、俺が一人で様子を見に行っても良いか?」


 俺の発言に、スネイクはいつもの嫌な兄っぶりを発揮する。将軍達の前で辱しめようと、俺を卑下し始めた。


「召喚者に一撃で倒された奴が、一人で様子を見にいくだ? そんな奴が行ったって、むざむざ殺されに行くようなもんだろ? 名誉を挽回したい気持ちはわかるがな。そんなお前だって、今となっては大事な戦力の一人だ! 兄として、そんな無謀な事を許可するわけにはいかんな!」


 如何にも、自分の立場が上であると強調したげなスネイク。

 そんな彼の言い様に、殆んどの将軍達は冷ややかな目を向けていた。


 スネイクの意図するところは明白だ。ここでハッキリと上下関係を示しておくことで、討伐に成功した後の立場をより強いものにしたい。そんなところだろう。

 しかし、恐らく将軍たちは俺の本当の実力を知っている。スネイクが、ただ虚勢を張っているだけだという事を理解しているようだ。

 そんななか、北部方面軍の司令官マイティスが、堪りかねて挙手もせずに発言する。


「ディール様が、異世界人に倒されたという話ですが。何か特別な事情でもあったのではないでしょうか? 私には、彼が噂のとおり一撃で負けてしまったとはとても思えないのです」


 多くの将軍達が、マイティスの意見に同調しているようだ。誰もがその話に大きく頷いていた。


「確かに理由はあったが、その時負けてしまったというのは事実だ。だが、今回は何も遠慮する必要などない状況だからな。万が一、再び戦う事態になったとしても、もう奴らに負ける事なんてないさ」


 俺がそう言うと、マイティスは怪訝そうな顔で問う。


「万が一とは?」

「俺の予想では、既に王都も王宮も、完全にもぬけの殻だ。だから、万が一罠である事も想定して、俺が一人でまず様子を見に行こうって話だな」


 自信ありげな俺の発言に、総大将であるレイチェルはついに折れたようだ。兄は、俺に対し条件付きで許可を下す。


「そこまで言うのなら良いだろう! どのみち斥候を送るつもりではいたからな! 万が一何か様子のおかしな事があった時には、すぐに戻ってくると約束しろ」


 長兄の許可を得た俺は、軍馬に跨がりすぐに本陣を出立する。

 開かれたままの城門をくぐると、周囲の状況など気にせずただ真っ直ぐに王宮へと向かった。


 途中俺は、召喚者達が行ったであろう凄惨な光景を目の当たりにする。

 無差別に殺害されたと思われる市民達の亡骸が、辺り一面に横たわっていた。

 久しぶりに入った王宮の中も同様である。宮殿に向かう途中には、虐殺された者達の死骸が無数に転がっていた。


 気配感知を頼りに、俺は王宮内部へと進んでいく。

 途中見つけた秘密の通路を進んでいくと、ついに王族達ですら知らなかった地下空間に到着した。


 巨大な鋼鉄の扉を前にして、俺は絶句する。

 その扉の脇には、変わり果てた姿となった王女が醜い肉の塊となって置かれていた。

 怪物となったティナは、俺の存在に気づいて啜り泣く。

 こんな姿になっても、感情があるようで驚きだ。


「ティナか……連中から話は聞いていたけど。まさか本当にこんな目に遭っているなんてな……」


 俺は、どう声をかけて良いのかも分からず、それしか言うことができなかった。

 触手に揺られながら、彼女は元婚約者の俺に対して悲しげな表情のまま呟いた。


「ディール様……このような姿になってしまった私を、きっと心の中で笑っておられるのでしょうね……」


 昔の高慢な態度からは考えられない程、全てを諦めてしまった様子のティナ。

 そんな姿を見て俺は、完全にかける言葉を失ってしまった。

 続けてティナは、俺に向かって弱々しく懇願する。


「ディール様……もし可能な事であれば、この私を殺してはいただけませんでしょうか? これから先も、このような姿のまま生き続けなければならないなど。私には、とても堪えられそうにございません……」


 ティナの発言を受け、俺はあることを決意する。

 可能性はないわけじゃない。しかし、失敗すれば彼女の魂は未来永劫消滅する。だが、俺だって彼女がこのままの姿で、永遠に存在し続ければ良いなんて思わない。


「わかった……できる限りの事はやってみよう……」


 これをやるには、大量の神気を使うだろう。こちらも相当な覚悟が必要だ。だが、助けると決めた以上はやる。

 俺は、ティナに対しそう言うと僅かに瞑目する。精神を集中し、一気に神気を解放した。


 俺の神気に当てられ、鋼鉄の檻は一瞬で消え去る。ティナの胴体となっていた醜悪な肉塊は、塵となって分解していった。

 青白い光に包まれながら、最後の叫び声をあげるティナ。


「嗚呼! ディール様──」


 叫び声と共に、ティナは完全に消滅してしまったかのように思われた。

 しかし、奇跡は起こった。

 俺が神気を完全に収めると同時に、人の形を取り戻したティナは一糸纏わぬ姿でその場所に横たわっていた。

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