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検証中 削除予定  作者: その辺の双剣使い
三章 召喚者たちの目的

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第35話 助けるのは一度きり



 物凄い勢いで自軍の本陣へと向かってくる、荘厳な鎧を纏った単騎の武者。そんな敵将に対し、反抗軍の魔力砲が一斉に火を吹く。

 しかし、目に見えない壁でも有るのか。魔力砲の弾丸が、彼を捉える事はなかった。

 その様子を見て、父であるスコットの言っていた事を思い返すレイチェル。

 最悪の事態を想定した彼は、鎧と剣に嵌め込まれた魔玉の色に目をやる。

 彼が十分な魔力残量を確認したところで、本陣の周辺は騒然となった。

 魔力砲を扱う射手の首を次々と跳ねながら、無双状態の敵将がついに反抗軍の本陣に突入してきたのだ。


「神をも恐れぬ不届き者達のリーダーはお前か?」

「異世界召喚者だな!? 単騎で突入してくるとは良い度胸だが、飛んで火に入る夏の虫とはお前の事だ!」


 本陣に乱入してきた敵に対しそう言うと、レイチェルは弟のスネイクに視線を送り合図をする。

 兄の意図を理解したスネイクは、背中の鞘から幅広の剣を引き抜き臨戦態勢を取った。


「二人がかりでくる気か? まぁ良い! 二人とも一瞬で片付けてやる!」


 奏多がそう言うと同時にレイチェルは猛然と突進し、一気に間合いを詰め横薙の一閃を繰り出す。

 しかし、その攻撃は軽く受けられ、彼はまるで枯れ葉のように軽く数メートル後方に弾き返されてしまった。


 敵の大将を吹き飛ばすと同時に、攻撃に転じる奏多。

 強烈な重たい一撃を、何とか受け続けるレイチェルだったが、十合ともたず。魔玉が嵌め込まれた魔剣は、ついに中腹部辺りから折損してしまった。


 なかなか攻撃に加わるタイミングを測りかねていたスネイクだったが。彼は、兄のピンチを見て取ると即座に気勢を上げながら、とどめを刺そうと剣を振りかぶる奏多に対し猛然と向かって行く。

 しかし、それを見た奏多は片手で光弾を作り出し、迫る敵の副将に向けてそれを放った。

 もろに光弾の直撃を受け、鎧を粉々に砕かれながら数メートル後方にまで吹き飛ばされるスネイク。

 その隙に距離を取っていたレイチェルは言った。


「くっ! ここまでの化物だとは! 剣も鎧も魔法強化されているはずなんだがな……」

「お前達のようなただの人間が、神の代行者である俺に敵うわけがないだろ? 強化による補正値の桁が違いすぎるんだよ! お前らの力など、今の俺の1/100も無いはずだ」


 奏多の言っている事は、けして大袈裟な話ではなかった。

 彼のレベルは今や90以上となっており、各能力値に補正を与える光力の値は既に5,000を超えていた。

 それに対して魔玉を嵌め込んだ魔道装具によって得られる補正値など、せいぜい20~50といったところである。

 普通の人間と彼らとの間には、能力値にそこまでの開きが有ったのだ。


 敵将の首を取ろうと、レイチェルの方に向かってにじり寄る奏多。


(取られる)


 レイチェルが自身の死を確信したその時だった。

 何者かが、青白い光を放ちながら流星の如き速さで急接近する。その何かは、剣を振りかぶる奏多の横っ腹に激しい体当たりをかました。

 あまりにも強烈なその威力に、奏多は何度も地面を削りながらバウンドを繰り返し、数百メートル先まで吹き飛ばされていく。

 ようやく勢いの止まった彼は、抉られた地面に埋まった状態で体を何度かピクピクと痙攣させていたが。その後すぐに動かなくなってしまった。



☆☆☆



 別に復習なんてつもりもなかったが、図らずもそういう形になってしまった。

 兄を救うためとはいえ、かつてこの俺に大怪我を負わせた張本人をぶっ飛ばした。

 王宮を追い出される前に、奴の装備は見て知っていたから間違いない。


「召喚者たちに戦いを挑もうなんて、無鉄砲にも程があるな」


 仮面の英雄フレイアに扮した俺は、愚かな兄二人に対してそう話しかける。


「仮面の英雄、フレイアか!」


 フレイアの噂はヴァーニア領にも届いていたのか、レイチェルはすぐに理解したようだ。


「ああ、最近では世間からそう呼ばれているらしいな」

「何故その英雄がここに?」

「あんたらの弟から依頼を受けたもんでね」

「弟? ディールの事か? しかし、何故アイツが……」

「彼の親父さんから、伝聞鳥によって連絡を受けたらしいな。彼自身は領地の経営に忙しく動けないため、俺に依頼がかかったというわけだ」


 俺の話を聞き、歓喜して急に暴走し始めるレイチェル。


「なるほど、そういう事でしたか。ご助力感謝いたします! 貴殿の力さえあれば、例え化物染みた召喚者たちとはいえ、必ず全員を討ち果たすこともできましょう!」


 しかし当然、俺にそんな気などない。それに、この仮面をつけている以上、本来それができる立場ではない。


「何か勘違いしてはいないか? 俺は冒険者だ! 故に、直接勢力間の戦争に関わる事なんてできない。今回助けたのは俺が懇意にしている、あんたの弟からの個人的な頼みだったからだ。それと俺が本当に受けた依頼は、軍を引き上げるようあんたらを説得する事だしな」


 理由を聞いたレイチェルは、当然の事ながら納得できない様子。

 なかなか諦めが悪いようだ。ここまでハッキリ言っても尚、説得を試みてきた。


「何故だ? 貴殿だって、召喚者たちが横暴の限りを尽くしているという話は聞いているはずだ! それだけの力を持っていながら、奴らの行いを黙認するというのか?」

「言ったろ? 俺は冒険者なんだ。済まないが俗な戦いには手を貸さない、というのがギルドの方針でもあるし。冒険者としての矜持なもんでな。それに、あんただって結局は困る事になるんじゃないのか?」

「困る? どういう事だ?」

「俺ばかりが目だってしまったら、あんたらの功績は完全に霞んでしまう。それじゃ、本末転倒だよな?」


 本当に民の事だけを思っての挙兵だったら、目的のために何を利用したって構わないはずだ。しかし、当然の事ながら俺は兄の野心を理解していた。

 痛いところを突かれ、しばらく悩む様子のレイチェル。俺は、そんな兄に対し最後に釘を刺した。


「俺はこれにて失礼するが。どうしても召喚者たちを倒したいのであれば、一旦兵を引き仕切り直すことだ! 必勝するための、しっかりとした計画ができあがるまでの間、しばらくは無茶をしないことだな!」


 そう言うなり、フレイアに扮した俺は二人の兄達に軽く礼をする。空中に次々と光の足場を作り出し、引き留められる前に大空へと一気に駆け上がっていった。

 ふと戦場の様子が気になり振り返ると、その凄惨な光景を黙って眺める。

 上空には、魔力砲の一斉掃射する音が断続的に響いていた。

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