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検証中 削除予定  作者: その辺の双剣使い
三章 召喚者たちの目的

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第31話 彩香の作戦



 最近ではフレイアとして、めっきり出動する機会が減っていた。

 ある日そんな俺の元に、新たに難民として流入してきたばかりの者達が、とある件について嘆願しにやってきた。


「ディール様、この度は我々の事を受け入れて下さり誠にありがとうございます」


 代表者の男が、そう丁寧に挨拶から入る。


「ああ。人口は多い方が、領地を発展させるためには良い事だからな。今いる者達とトラブルさえ起こさなければ、仕事はいくらでも有るし、ずっと定住してくれても構わない」

「サマルキアの英雄であるディール様の領地に定住できるのは、とても光栄な事ではありますが。実は、元住んでいた場所に帰りたいと言う者も半数くらいは居るのです……」

「まぁ、それならそれで一向に構わないが。そもそもお前達は、どういう経緯でこの地に逃れてきたんだ?」


 俺がそう質問すると、代表者の男は申し訳なさそうに話を切り出す。


「実はその事で、ディール様にお願いがあるのですが……」

「何だ? その感じだと、魔物の討伐でもして欲しい的な話みたいだな?」

「ええ、実はおっしゃるとおりなのです。今のディール様は、領地の経営にお忙しいという話は伺っておりますが……ディール様は、あの仮面の英雄とお知り合いだという話も……」

「要は俺に、フレイアに対して魔物の討伐を頼んで欲しいって話だな?」

「は、はい! 端的に言えば、我々の願いとはその事なのです」


 ようやく最近落ち着いてきたばかりなので、その頼みを俺は少し億劫だと感じる。しかし、フレイアに頼んだフリをして断られたと嘘をつくのも、それはそれで面倒だ。

 世間に対する隠し事は一つで十分。そう考え、俺は快く依頼を受けるフリをする事にした。


「で、その魔物ってのはどんな感じなんだ?」

「それが、かなり大型の魔物ではあるのですが。どうやら何者かに操られているようで、一息に襲ってくるような事はないのです。しかし、少しずつではありますが被害者は増えるばかり。恐ろしくなった我々は町を逃げ出す事を決意したのです」

「まだ、町に人は残っているのか?」

「ええ、勿論、まだ大勢の人々が町には残っております」

「わかった。じゃあ、早速フレイアに連絡を取って、お前達が住んでいた町に向かってもらう事にしよう」


 俺の答えに、歓喜する難民達。

 そんな彼らを見送った後で、俺はすぐに当該する町へと向かうためアルの元に急いだ。



☆☆☆



「どうして、こんなまどろっこしいやり方をするんだ? もっと派手にやっちまえば良いだろ?」


 ここは町から少し離れた場所にある森の中。聖也が、彩香に対してそう文句を言っている。


「あまり派手にやっちゃうと、招かざる客まで招いちゃうでしょ?」

「あん? どういう事だ?」


 理解力の低い聖也に対して、彩香は溜め息をつきながらその理由を答える。


「他の連中に、美味しいとこだけ持っていかれちゃうって事が言いたいの!」


 そこまで聞いて、聖也はようやく彼女の言いたいことを理解したようだ。


「あー、確かに。他の連中は闇雲に、あちこち探して回ってるだけみたいだしな。フレイアが来そうな気配を感じ取ったら、奴らもここに集まってきちまうって話か?」

「そう言うことよ!」

「でも、こんなんで本当に奴は来るのかよ」

「最近、すっかり魔物の数は減ってきてるみたいだからね。この間逃げてった連中が噂を広めてさえしてくれれば、それを聞き付けたフレイアは、きっとここにやってくると思う」

「なるほどな。しかし、あんな大型の魔獣を使役できるなんて、改めて思うけどお前ってすげーよな!」


 聖也に褒められて、どや顔をする彩香。

 彼女の天職は、魔獣使い(ビーストテイマー)だった。

 彩香が使役する魔獣は、所謂キマイラというやつだ。ライオンの頭に山羊の胴体、蛇の尻尾を持つ伝説級の魔物。

 フレイアが噂どおりの強さなら、恐らくこの魔獣であっても彼を殺せる見込みは無い。

 それ故この魔獣を補助する目的で、彩花は脳筋ではあるが戦闘能力の高い、聖也をはじめとするメンバー達を選んだわけだ。

 噂を広め魔獣の存在を示す。そのために、一部の住民達はわざと逃がされていた。


「しらみ潰しに探したって、くじを引くようなもんでしょ? でも、こうやって罠を張っておけば、確実にフレイアを誘き出せると思わない?」

「まぁ、確かにそうだよな。まどろっこし過ぎて、ちょっとイライラはするけどよ」


 鬱憤が溜まった様子の聖也に対し、彩香は傍らに控えるキマイラに目を向けながら言う。


「兎に角いざフレイアが誘き出されてきた時に、この子だけじゃたぶん勝てないからさ。その時はあなた達よろしく頼むわね! 期待してるわよ!」

「ああ、任せとけ!」


 聖夜は、自信ありげにそう言って了承する。しかし、捌け口も必要だと感じた彩花は一つ提案をした。


「まぁでも、ただ待っているだけっていうのも確かに飽きてきたよね? 私はここで待っているから、あなた達は町に行って少し遊んできたらどうかしら?」

「何だ? お前は行かないのかよ?」

「私は、そんな趣味の悪い事しないわよ! あんた達、異世界の人間だからって、よくそんな事を平気でできるわよね?」

「魔獣を使って人殺しするのも一緒だと思うけどな。まぁ、いいけど。じゃあ、お言葉に甘えてちょっくら行ってくるわ!」


 下卑た笑みを浮かべながらそう言うと、聖也は他の仲間たちと共に町へと向かっていった。



☆☆☆



 アルに口裏合わせを頼んだ俺は、そこそこ大きな町であるリリーザという所にやってきていた。

 仮面を着けているせいか姿を目撃される度、町の人々がひそひそ話するのを感じた。


「まさか、仮面の英雄フレイアじゃ?」

「フレイアがこの町に? ついにあの魔獣を退治しにきてくれたって事なのかしら?」


 元々、冒険者界隈では名が知れていたが。一般にまで噂されるようになったのは、最近の活動があってからだ。

 正体を隠すためのマスクが、今では逆に仇となった。


 取り敢えずフードを被り直した俺は、魔獣の情報を得るため町の酒場にでも行ってみようと考える。

 酒場を探すため歩き始めると、先ほど通ってきた正面ゲート付近で騒ぎが起こり始めた。


「ほらほら、早く逃げないと、いっぱい酷い事されて痛い事もされちゃうぞ~」


 大勢の人間が血を流しながら、地面に倒れ伏している。

 三人の若い男達が、剣と槍、戦槌を使って逃げ惑う人々を次々と襲っていた。

 その様子を、一人の若い女が薄ら笑いを浮かべながら眺めている。

 ようやく到着した町の警備隊が弓を構えると、男達の一人が大声で叫んだ。


「俺達は、神の代行者である異世界の召喚者だ! 神のご意志により、大規模な反逆者狩りをしているところである! 邪魔をするならお前達も神に対する反逆者と見なすが。兵士の諸君は大事な駒となるので、なるべくなら殺さないよう奏多から指示を受けている!」


 奏多と聞いて、たじろぐ兵士たち。

 地方の兵士であっても、召喚者たちのリーダー的存在である奏多の名は知れ渡っていたようだ。

 攻撃の構えを解いた兵士たちの様子を確認すると、再び殺しを楽しみ始める召喚者たち。

 俺は被ったフードを外し、そんな奴らの前に立ちはだかった。


「何だお前? こんな暑い日にフード付きの外套なんて着やがってよ~! 自ら殺されに来るなんて、随分と殊勝な事じゃないか」


 そう言った瞬間ガタイの良い少年は、俺に向かっていきなり刺突を繰り出した。

 しかし、その刹那。左のガントレットで槍をいなした俺は、カウンターの右ストレートを顔面にお見舞いする。

 少年は、数十メートル先まで吹き飛び城門の壁に激突。壁は大きく破壊され、そのまま瓦礫に埋もれてしまった。

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