第30話 召喚者達の目的
奏多たち召喚者は、探索中に新たな樹海文書を発見していた。それに書かれていたのが、王宮地下に存在する秘密の宝物庫の存在。更にはその場所に、次の目的地について記されたものがある、とまで言及されていた。
しかし何故、天の声が聞こえるはずの奏多達は、各所に存在する樹海文書を必要としていたのか。
「大体、今さらだけどよー。どうして天の声は、方向性を示すだけで、直接全てを教えてくれねーんだ? こんな面倒な事をする意味が全然わかんねーよな」
宝物庫前にて、いかにも不良そうな少年が奏多に対しそう話していた。
「悠哉、これはゲームみたいなもんだろ?」
「ゲームねー。ゲームにしたって、もう飽きたけどなー。つまんねーから、異世界人狩りでもしてこようかな」
「別に何したって構わないけどな。本来の目的だけは忘れないでくれよ」
彼らに聞こえる天の声は、それほど多くは語らない。
時折頭の中に響いてきて、簡単な方向性を示すだけだ。
それには理由があったのだが。この時の彼らには知る由もない事だった。
王宮地下の宝物庫内には、神級とも呼べる程の様々な魔道具が数多く置かれていた。その中には彼らが求める文書も。
宝物庫の中で新たに発見した文書には、ようやく具体的な目的について書かれていた。その目的とは、【武神体】という物を探すことだ。
「魔人体とはまた、別の物なんだよね? 同じ発音だけど」
クラスで一番の美人である亜里奈が、そう奏多に向かって語りかける。
「そんな事、俺達には全くわからんけどな。兎に角、今回は大きな前進だ! この世界の何処かに存在するそいつを探しだして、一気にゲームクリアといこうか」
亜里奈の言葉に、そう反応する奏多だったが。言葉のとおり彼は、この世界での出来事を全てゲームと捉えて行動している節があった。
因みに同じ読み方をする魔人体。それはある日突然、彼らの目の前に現れた、魔王の部下を名乗る者から提供された物だ。
どんなに傷付けようとも、超高熱で燃やしたり冷却して凍らせたりしようとも、絶対に滅びる事の無い肉の塊。それが魔王から提供された、魔人体という物なのである。
その物自体に高い知能はない。人や知性を持った魔物を取り込ませる事で、ようやく思考力を持たせる事ができるのだという。
強い魔力を持つ者などであれば、制御する事も可能なようであり。逆にその一部を体内に取り込む事で、不死身の肉体を得るという方法もあるようだ。
ヴァーニァ侯爵領を出た際にディールを襲ったオズボーンも、魔人体の一部を体内に取り込んだ事で不死身となっていたわけである。
二人のやり取りを、恨めしそうな顔で見つめるティナ。宝物庫の脇でただユラユラと触手に揺られる姿は、不気味としか言いようがなかった。
そんな彼女を余所に、奏多は亜里奈に向かって冗談ともつかない事を言い出す。
「なぁ、亜里奈。お前もこの化物の肉片を体内に取り込んで、不死身の体になってみたら良いんじゃないか?」
「はぁ? 嫌よそんなの! 人にそーゆー事言う前に、まず自分が率先してやりなさいよね! 私、こんな化物みたいになるなんて、まっぴら御免よ!」
亜里奈から化物だと言われ、嗚咽し始めるティナ。
「るせーな、化物が!」
奏多は、そう言って聖剣を化物の体に突き刺す。
「あ゛ーーっ! い゛だいーーっ!」
例え、不死身の肉体であっても痛みは感じるらしい。
聖剣で体を突かれたティナは、痛みに耐えられず激しく泣き叫けんだ。
「面白れー! 完全に神経が繋がってるんだなー!」
面白がって、化物となったティナの体を何度も突き刺す奏多。
ティナは、その度に悲痛の叫び声を上げ続ける。
そんな趣味の悪い奏多の行いを、完全に引いた様子の亜里奈はただ無言で眺めていた。
「扉を閉めろ!」
奏多の命令に従い、声を震わせながら「扉よ閉じろ」と小さく呟くティナ。
巨大な鉄の扉はその声に反応して、大きな音をたてながら少しずつ両側から閉じていった。
完全に扉が閉まった後で、悠哉は奏多に対して話しかける。
「しかし、武神体を手に入れるってのはわかったけどよ~。問題は、そいつが何処に有るのかなんだよな~。具体的な場所まで示してくれないなんて、本当に不親切だぜ」
そんな彼の発言に対し、奏多は不敵な笑みを浮かべながら言葉を返す。
「ゲームだからな。簡単にわかっちまったら、面白くないだろ? もっと沢山の文書を集めていけば、そのうち次の行動についてもわかってくるさ」
「文書ねー。ゲームだとしても、正直な話し本当にそれだけってのもいい加減飽きてくるよな。何かもっと、面白そうな事ないもんかね」
悠哉の意見も尤もだ。そう感じた奏多は、ふとある遊びを思いつく。
彼はすぐに、その場に集まっていた他のクラスメイト達に向かってそれを提案した。
「他の皆も少し飽きてきてるのか? それじゃ、一つ俺から余興を提案しようと思う。今、噂になっているフレイアって奴に、懸賞金をかける! そいつを殺す事ができた奴には、大金貨5,000枚、500万Gを進呈するってのはどうだ? 正義のヒーローを気取ったムカつく奴をぶっ殺して、俺達が真の選ばれし存在だって事を広く世間に示してやるんだ!」
同じ召喚者とはいえ、彼らの間にも当然の事ながらヒエラルキーは存在していた。
最初からレベルが68も有った、勇者の天恵を受けた奏多。彼は、完全に別格であり。権力だけでなく、国庫の資金も全て彼が牛耳っていた。
そのため一部のカースト上位の者以外は、必要最低限の保証しか与えられず。同じクラスメイトでありながら、生活レベルには明らかな格差があった。
多くの者が一攫千金のチャンスに歓喜するなか、悠哉は一つ問題点について述べる。
「でもなー。フレイアって神出鬼没な奴なんだろ? 一体どうやってるのかは知らないけど。国中あちこちに、短い間隔で出没するらしいじゃないか。そんな奴をどうやって探しだして、殺すってんだよ」
「それも含めて、ゲームって話になるんだろ? 奴を捕まえる方法については、其々が知恵を絞って導き出せばいいだけだ」
奏多の言葉に対して、彩花という女子が質問する。
「天司くん、質問良いかな?」
「何だ?」
「このゲームって、個人でなきゃ駄目なの? 例えば、五人一組とかでパーティーを組んで、目標を達成できたチームが報酬をメンバーで分けるとかじゃ駄目なのかな?」
「ああ、それでも勿論構わないさ。総取りしたい奴は個人でやれば良いし。その自信がない奴らは、パーティーでも何でも組んでやったら良い」
主催者の了承を得た彩香は、早速パーティーメンバーとして役に立ちそうな者達の物色を始める。
彼女には自身の天職を生かした、フレイアを誘き出すための有効なスキルと策があった。
しかし、それを活かすためには、個人の能力だけでは足りない事を自覚していた。




