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検証中 削除予定  作者: その辺の双剣使い
三章 召喚者たちの目的

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第28話 勃発する女のバトル



 たまたま巡回中のエマを見かけたアル。普段エマから避けられていたが。きちんと話がしたいと思っていた彼女は、ちょうど声をかけようとしていたところだった。

 そのタイミングでエマの独り言を聞いてしまい、思わず反応してしまったのだ。


 振り向き様にエマは、すぐに顔を歪ませる。

 敵意を剥き出しにした彼女は、かけられた言葉に対してすぐさま言い返した。


「何よあんた! 私の言っている事の何処が間違っているって言うのよ!」


 ものすごい剣幕でそう言われたアルは、一瞬たじろいだ。しかし、すぐに謝罪して本当に言いたかった事を話し始める。


「いきなり後ろから声をかけてしまって、ごめんなさい。知っているとは思いますけど。私は、アルテミスです。もう一ヶ月以上も経つのに、まだお互い自己紹介もしていなかったですよね?」


 アルは、何度もエマに声をかけるタイミングを見計らっていた。ところがどういう訳か、彼女から避けられてしまっていた。

 そのため、今の今までこうして挨拶すらできていなかったのだ。


「ふんっ! 知っているわよ! あなたポンコツ勇者のディールに、いつも小判鮫みたいに張り付いているわよね? アイツもアイツでこんな小娘なんかとデレデレしてないで、噂の救世主フレイアの爪の垢でも煎じて飲めば良いんだわ!」


 フレイアの名前が出てきて、うっかり真相を話したくなるアル。

 しかし世界でただ一人、秘密の共有者というポジションを嬉しく感じていた彼女は、とりあえずその事に関して苦笑いしてやり過ごす。


 アルは、エマの気持ちについて何となく察していた。旦那にとっての幼馴染み。強力なライバルだ。そんな女戦士の気持ちをハッキリ確かめたい。そう思ったアルは、この際だからといくつかの質問をしてみる事にした。


「どうしてエマさんは、ディール様に対してそんなに敵意を向けるんですか?」

「別に敵意なんて向けてないわよ! あなたの方こそ、あいつの一体何なのよ?」


 突然そう切り返され、いつもの天然ぶりを発揮してしまうアル。

 彼女は、相手の気持ちを気遣いもせずストレートに言ってしまった。


「妻ですよ」

「は? な、なっ、何ですって!?」

「私とディール様は、夫婦です!」

「ふ、ふっ、夫婦だとーーっ! あんのっ、ロリコン野郎ーーっ!」


 少しマウントを取りたくなったアルは、エマの叫びに対して更にズレた否定の仕方をする。


「ディール様は、ロリコンなんかじゃありません! 私、こう見えても16歳ですからね! 胸だってほらっ! ペタ胸のあなたに比べたら、かなり大きいほうでしょ?」

「はぁ? 年齢も確かにそうだけど、見た目の事を言ってるに決まってんでしょ! あんたどー見てもロリ顔じゃない!」

「そうですかー? 身長は確かにちょっと低めかもしれませんけど。顔がロリ顔だなんて、自分では全く思った事ありませんけどね」


 バチバチと火花を散らす女二人。どうやら彼女たちは、どうしても相容れない性格のようだ。


 エマはエマで、目の前の少女が恩着せがましい女だと思っていた。

 自分の事をここに置いてくれるよう提案した事を、恩に着せようとしてると勝手に思い込んでいたのだ。


「あなた勘違いしているようだけど、私は別に国王の所に帰ったって良かったんだからね! 部下達がどうしてもって言うし、状況からして私の助けが必要だと思ったから仕方なくここに残ったのよ!」


 エマの虚勢を張った発言に対し、不敵な笑みを浮かべるアル。彼女は更に挑発を続け、ついに女戦士の逆鱗に触れてしまう事になる。


「エマさん、そんなんだからディール様に嫌われるんじゃないですかね? どうしてもっと、素直になれないのかなー? 今どきツンデレなんて、全然流行んないですよ~」


 ディールから嫌われている。その言葉が最後の引き金となった。

 完全に頭に血がのぼったエマは、冷徹な表情を浮かべながらゆっくりと抜刀する。


「えっ!? 本気ですか?」

『彼女は本気よ! 逃げてアルちゃん!』


 天の声に本気だと教えられるも、エマが発する強烈な殺気により完全に腰が抜けてしまうアル。後退りする事すらできずに、彼女は恐怖でその場にへたり込んでしまった。


「覚悟は良い? 小娘!」


 抜刀した剣を上段に構えながら、冷たい表情でそう宣うエマ。

 しかし、いよいよ彼女が剣を振り下ろそうとしたタイミングで、背後から止めに入る者が現れる。


「何をやってるんですかーっ、エマ教官!」


 彼女の腰にしがみつき止めにかかったのは、妹をベッドに寝かし終え訓練に戻る途中のマギであった。


「離せガキが! この小娘のロリ顔を斬り刻んでやらないと私の気が済まないんだよ!」


 そう言って彼を振り払い、一歩前へと踏み出そうとするエマ。

 しかし、霊気を扱えるようになっていたマギの力は強かった。


 一歩も動けなくなったエマは、少し冷静さを取り戻す。彼女は、ふぅっと溜め息をつくと剣を鞘に収める。そんな彼女の頬には、一筋の涙が伝っていた。


「私がこうなったのは、全部あいつのせいなのよ! 本当は私、近衛騎士になりたいなんて全く思っていなかったのに……」


 涙ながらにそう訴えるエマ。そんな彼女の様子を見て、アルの心に少しだけ同情する気持ちが湧いてくる。

 俺様キャラに対してツンデレ。最悪の組み合わせだ。

 どんなにエマが彼を好こうとも、逃げられてしまうのは当然の結果と言える。


 完全に殺気がなくなったと見て取ったマギも、ようやく彼女から離れる。


「アイツは小さい時から何でもできたわ……私はそんな彼に憧れていたのよ」

「それで、近衛騎士を目指そうと思ったんですね?」

「だから、違うわよ! 私は普通に貴族の娘として育って、できれば好きな男と結婚できたら幸せだなって本当は思っていたの!」

「じゃあ、どうして近衛騎士なんかに?」

「あいつの側に、ずっと居たかったからに決まってるでしょ!」


 その一言が全てを物語っていた。


 ずっと側に寄り添うエマの気持ちに全く気づかず、彼女の事をイラつかせていた鈍感な男。それはまさしくディールであった。


「あいつが王女との婚約が決まったって聞いた時は、本当に悔しかったわ……でも、それは仕方のない事だから諦めてたんだけど。今度は王宮を追い出される事になったって聞いて、いろいろ戻ってこれる方法を私なりに考えていたのよ……」

「それで、王様がまたディール様の事を必要とされたために、エマさんはチャンスだと思ったわけですね?」

「うん、その事で王女との婚約も復活しちゃうかも、とも思ったけど。またアイツの側に居られるなら、それでも良いかなって思ってさ……」


 すくっと立ち上がったアルは、ホコリを叩きながら言う。


「エマさん、これから一緒にお茶でもしませんか? もっとあなたと、お話がしてみたいです!」


 正直、恋敵なんかとこれ以上の話しはしたくない。そう思うエマだったが。それは恐らく相手も同じ思いだ。何よりもアルの屈託のない笑顔に、彼女はどういうわけか惹き付けられた。


 結局エマは、巡回をマギに押し付けるとアルの誘いを了承する。


「代わりに巡回しとけって言われてもなぁ……」


 取り残されたマギはそう呟きながら、一人その場に立ち尽くしていた。

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