第68話 勝利の後、増える仲間
第68話を公開させてもらいました。
フレイヤに勝利した与人は城へと呼び出されていた。
「……どうしてこうなったんだろう」
「主殿が勝つからでは?」
現在与人たち四人は『フォルテクス』の城、それも玉座の間の前にて待たされていた。
表彰式もそこそこにすぐさまアイナたちと合流して闘技場を去ろうとした与人であったが、すぐさま兵たちに発見されて城に招待されたのである。
「それにしても……どうしてご主人様は勝てたんでしょう?」
「ああ。『スキルノーティス』が直前に聞こえたんだけど、どんな内容かまでかは……」
サーシャの問いかけに考え込む与人であったが、それに対してアイナが手を上げる。
「それに関しては私に仮説があります」
「アイナ殿、何か思い当たる事でも?」
ユフィの質問に対してアイナは頷きながら説明をしだす。
「あの瞬間。私の中の何かが主様に流れるのを感じました。能力の名前が憑依と言うならば、考えられるのは私の力の一部が主様に移ったからではと思われます」
「……納得できる仮説ですね。最後の一撃はアイナ様を彷彿させる動きでした」
「じゃ、じゃあ私たちの力も託せたりするのかな?」
「恐らく。ですが条件が分からない以上は慎重になるべきかと」
「まあ、そうなるよな」
少しだけではあるが、戦力になれるかと思っていた与人は残念そうにしていた。
すると、玉座の間から兵士たちが現れる。
「スローン様とお連れの方々。どうぞお入りください」
一人の兵士に促されると、与人たちは玉座の間に入っていく。
そこには数多くの武官がならんでおり、その奥には威厳がありそうな王が玉座に座っており、その傍にはドレスに着こんだフレイヤがいた。
「……お主がスローンか?」
「は、はい。ブラッド・アライアンス所属のスローンという者です」
「うむ。……してお主は」
「お父様。前座はよろしいのではなくて?」
王が話しているのを中断させフレイヤが口を挟むと、王は動揺しながらもフレイヤに反論する。
「し、しかしフレイヤ。物事には順序というものが」
「お父様」
だがその反論もフレイヤが低い声を出した瞬間に閉ざされてしまう。
フレイヤは笑顔を浮かべつつ、実の父親である王にただ一言だけ言う。
「少し、黙っててもらえますか?」
「はい」
項垂れた様子の王を余所にフレイヤは与人を見つめながら優しく口調で話しかける。
「まずは称賛させてもらいますわ。不利な状況にも諦めずよく勝利を掴みました。敗れたとはいえ、相手として良き勝負ができた事を誇りに思いますわ」
「い、いえ。まぐれで勝てたようなものですので」
与人がそう言うとフレイヤはクスクスと笑いだす。
「こういう時、異世界では《運も実力の内》と言うのでしょう? 運を味方に付ける事も立派な実力ですわ。ましてそれが戦場であるならば……ね」
「い、異世界に関しては分かりませんが。お褒め頂きありがとうございます」
「あら、この期に及んでまだ誤魔化せるとお思いで? 随分と可愛らしい事をなさるのね」
「……」
フレイヤのその一言に与人は何も言い返せないでいた。
アイナたち三人も、玉座という事もあり黙り込む他ない。
何も言えないでいる与人にフレイヤは歩み始める。
「本当の名は知りませんが、スローン。アナタとワタクシは素晴らしき戦いをしました。その相手の事を知りたいと思うのは不思議な事ではないでしょう?」
そう言ってフレイヤは与人の手を取り、至近距離で話しかける。
「どうかアナタの本当の名を、これまで歩んで来た軌跡を教えて貰えないかしら?」
与人はフレイヤのその真っ直ぐな目を受けて考え込む。
脳内で必死に考えて出した答えは。
「……分かりました」
その目を信じる事であった。
「ふむ。……やはり異世界からの勇者であったか」
与人は話せるだけの事を話終えると『フォルテクス』の王がそう頷く。
一方でフレイヤは何度も与人の名前を呟いている。
「しかし、物やモンスターを人に変える『スキル』とは……」
「全てを信じて貰えるとは思っていません。ですが、自分は全てを語りました」
「確かに俄かには信じられん話ではある。しかしブラッド・アライアンスのウォーロックは信用がおける男。それに加えて『マキナス』の王も信用しているならば、お主の言葉を信じるに足る理由になる」
王がそう言うと、現実に戻って来たフレイヤが呆れたように口を開く。
「お父様。疑うのであればその『スキル』を実際に見せて貰えばいいのでなくて? 与人様たちもそのつもりで大会に来たのでしょうし」
フレイヤが合図を送ると、何人かの兵士が勇者の鎧を持ってきた。
それに対して王は難色を示す。
「し、しかしフレイヤ。あれは代々王家に保管されていたもの。それをまるで実験台のように扱うのは」
「お父様」
フレイヤの厳しい口調に王は分かりやすく体を硬直させる。
そんな事は知った事では無いとばかりに、フレイヤは自身の父親を嗜めるように言葉を重ねる。
「あの鎧は元々、大会の副賞。ならば既に所有権は与人様に移っています。ならば自分のモノをどう扱おうと与人様の自由。ですわよね」
「あ、ああ。そ、そうであるな。よ、余が間違っていた」
声を震わせながらそう訂正する王。
周りの武人たちもフレイヤを止めようとする者はおらず、むしろ怯えるように肩を震わせる者もいる始末。
「と、言う訳ですわ与人様。どうかご存分にその『スキル』をお使いになってくださいませ」
フレイヤはそう言うが、与人はそうすぐには動けなかった。
そう簡単に人前で『スキル』を使ってもいいものか、悩んだからである。
その心を察したようにフレイヤは口を開く。
「心配なさらないでください。ここにいる者たちは我が『フォルテクス』に忠誠を誓った者ばかり。厳命を布けばそれを破る者など一人もおりません」
それを聞いて与人はしばらく考えた後に立ち上がり、鎧に向けて足を進める。
ここはフレイヤの言う通りにした方がいいと思ったのだ。
どうやらアイナたち三人も同じ考えのようで、止めるような事はしなかった。
与人は鎧の前に立つと深く深呼吸をする。
それなりの数『スキル』を使用する与人であるが、この瞬間は何度やっても緊張するのであった。
「すぅ~~。……よし」
気持ちを整え、鎧に手を当てると鎧が反応して光が包む。
周りが騒めく中で光は段々と人の形を取っていく。
そして光が収まると、そこには鎧を着こんでいる一人の少女が立っていた。
「初めまして! あなたがウチの使い手ですか!」
人懐っこい笑みを浮かべつつ少女は与人にそう問いかけるのであった。
今回はここまでとなります。
果たして新たな仲間はどのような人なのか?
そしてフレイヤとの今後は?
次回をお楽しみに!




