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第58話 話せば分かると言って受け入れられた事は無い

第58話を公開しました。

一同は大会が行われるフォルテクスに到着した。

「へぇ~。ここが『フォルテクス』の王都、クシャか」

「はい主様。そしてここからでも見える大きな建物が闘技場。その奥に城があるようですね」


 フォルテクス闘技場で行われる大会の噂を聞きつけてからすでに八日が経過していた。

 慣れない馬を併用しながらも与人たちは無事に『フォルテクス』へと到着した。

 与人以外のメンバーは旅の途中で与人と多く会話出来て内心ご満悦なアイナと無口であったユフィ。

 そしてもう一人。


「ご、ご主人様? 本当にサーシャで良かったの?もっと相応しい人が……」


 と人の多さにビビりながら与人に話しかけるサーシャの三人であった。


「うん。悪いけどサーシャ、護衛よろしくね」

「が、頑張る」


 サーシャの勇気を奮い立ててる様子を見ながら与人はストラから受けたお願い事を思い返していた。


「与人様、良い機会です。サーシャ殿を一緒に連れていってください。クシャは祭り状態ですから距離を縮めるには丁度いいかと。本人にはあくまで護衛という事で通しておけば人込みにも行くでしょう」

(まあ実際、本人も積極的だからいいけど。騙してるみたいで気が引けるな)


 与人がそう思案している間にもどんどんと増えていく人にサーシャは怯え始めてる。


「手を握りますか?」

「あ、ありがとうございますユフィさん」

「……はぐれられると時間が掛かりますので」


 ユフィが手を差し出すとサーシャは嬉しそうにその手を握る。

 その様子を見ながら与人は一安心する。


(サーシャもそうだけどあまり人と関わらないユフィと仲がいいのは良い傾向だよな)

「それにしても武器屋や防具屋が多いですね。軽く歩いただけでも三店舗ありましたし」


 与人の思案に気付いていないのかアイナが空気を読まずに話しかけると事前に調べてあったであろうユフィが説明しだす。


「『フォルテクス』には質のいい金属がよく採掘されます。当然それを加工するための技術も必要されました」

「で、でも武器である必要あるのかな」


 サーシャが質問するとユフィは頷きつつ答える。


「確かに。それだけならば武器や防具がここまで発展した理由にはなりません。『フォルテクス』は六つある大国の内で最も領土が狭く、規模は小さくとも小国との戦闘が後が絶えません」

「ああ。それで武具が発展していった訳か」

「そういう事です。ほとんどストラ様が事前に教えてくださった事ですが」

「け、けど分かりやすかった。ありがとうユフィさん」

「……そうですか」


 そのような事を話しつつ、サーシャが人に当たりそうになるのを避けユフィは闘技場へ与人とアイナを案内するのであった。



「ここがフォルテクス闘技場」

「お、大きいね」


 人込みを避けつつ与人たちは無事に闘技場前まで到着した。

 与人やサーシャがその大きさに圧倒されていると、アイナが周りを見渡しながら話す。


 「やはりと言うべきか、屈強な戦士が多いですね。まあ負けませんが」


 これから行われるであろう戦いに向けて気力十分といった様子のアイナを見つつ与人はユフィを心配する。


「それにしても大丈夫かなユフィの方は。外でこれなら中も相当混んでそうだけど」


 既に発表された大会規定含め、情報収集のため先行して闘技場に入っていったユフィを待って十分が経過していた。

 この人の多さでは身動きすら取れないのではと考える与人とその手を握りつつ同じく心配するサーシャであったが、アイナの方は心配した様子も無い。


「大丈夫でしょう。彼女ほどの使い手がこの程度の人込みで困るとは思えませんし、何かあればまずこちらに知らせるでしょう」

「だといいけど……ん? 戻ってきた?」


 会話をしているとユフィが当たり前のようにギチギチの人込みを縫うようにして戻って来た。


「主殿、お待たせして申し訳ありません」

「いやいや、あの短時間であの人込みを突っ切っただけでも凄いから」

「情報を話すなら落ち着いた所がいいですね。主様、向こうにカフェがありましたよ」

「じゃあそこで報告会ね。サーシャもユフィもそれでいい?」

「無論」

「い、いいよ」


 二人の了解を得て与人たちはカフェに向かう。

 闘技場から近いが、穴場なのか入れない事も無く四人は一番端の席に座る。


「サーシャは何か飲みたい?」

「じ、ジュースがあればそれを」

「ユフィは?」

「ホットコーヒーを、ブラックで」


 以外にもこの『ルーンベル』にもコーヒーは有るらしく、それも味もほとんど一緒である。

 二人のキャラに似合っている選択に笑いつつ与人はアイナにも聞く。


「アイナは何」

「主様と同じものを」

「……了解」


 アイナらしい返答に内心で苦笑しつつ与人は注文を済ませる。

 頼んだ飲み物が来るまでは軽い談笑をしつつ仲を深めていたが、飲み物が来ると四人の空気は真面目なものになる。


「で、どうだったユフィ」

「結論からお知らせいたします。アイナ殿は大会に出る事は出来ません」

「な、何故!」

「あ、アイナさん落ち着いて」


 思わず立ち上がるアイナであったが、サーシャに腕を引かれると大人しく座り直す。


「先に言っておきますが、これは努力でも工夫でもどうにもなりません」

「どんなルールだったの?」


 サーシャがそう質問するとユフィはコーヒーを一口飲んでから答える。


「命を奪う行為は禁ずる、などの主な規定は予想どうりでした。ですが最後に性別の指定がありました」

「それは……つまり」

「はい。この大会は男性しか参加できません」


 自分の参加が本当に絶望的だと分かりテーブルにうなだれるアイナを余所に話は続いて行く。


「一応聞くけど男装して参加するのは?」

「無理でしょう。選手入り口に高度なサーチ魔法が掛かっていました。魔法で変装や偽装してもバレるでしょう」

「そうか……」

「アイナさん、可哀そう」


 そう言ってアイナの背中を擦るサーシャを見つつユフィは言いずらそうに口を開く。


「どうしても鎧を手にしたいのであれば、可能性は低いですが一つだけ案があります」

「そ、それは一体!?」


 思わず前のめりになってユフィに質問するアイナ。

 だがユフィはそのアイナを見ないで与人の方を見ている。


「簡単な事です。男性しか参加できないのならば、この場で唯一の男性が参加するしか無いでしょう」

「え? ちょっと待って?」

「そ、そうだよね! ユフィさん頭いいね!」

「いやホントに待って?」

「……命を奪う行為が禁止されてるのであれば」

「三人とも聞こえてる? それってつまり」


 背中で大汗を掻きつつ与人が問いかけると、ユフィはいつもと同じように答える。



「主殿。大会に出る覚悟はおありですか?」

今回はここまでとなります。

次回は大会に向けての特訓が始まります。

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