第59話 いざ!勝利への道へ!
第59話を公開しました。
大会に出る事となった与人は……。
「せい!!」
与人は振り上げた剣を掛け声と共に勢いよく振り下ろす。
「……」
だが対峙しているアイナは与人の攻撃に一歩も動く事無く易々とそれを一振りで弾く。
「痛っ!!」
それによって大きくよろけた与人の目の前にはいつの間にか接近していたアイナの剣が突きつけられていた。
「……やっぱり無理が無いか?俺が試合に出るのは」
手を挙げて降参の意思を示すと与人は思わずそう漏らした。
「どうですかアイナ様」
「アイナさん、ご主人様は優勝出来そう?」
ユフィとサーシャの質問に手にしていた聖剣を消すと腕組みをして考え込む。
「先に言っておくと主様の実力は確実に上がっています、そこは間違いありません。ですが試合に確実に勝てるとは言えません」
「……そっか」
与人第一なところがあるアイナが勝利を断言しない。
それは勝ち進む可能性がほとんど無い事を示しているのを与人は理解していた。
(分かってはいたけど、改めて実感すると心にくるものがあるな)
自身の無力さを突きつけられ内心へこむ与人を余所に話は進んで行く。
「そうですか……。そうなると主殿を参加させる事自体も取りやめるしか無いでしょう」
「け、けどそうなると鎧は……」
「確かに戦力にはなるでしょうが、不安定要素が多すぎます。そのような状況で主殿参加するのは非常に危険と思われます」
「……」
ユフィが意見を言う中でアイナは顎に手を当てて考え込んでいる。
「アイナ? 何かいい案でも浮かんだのか?」
「い、いえ! な、何でもありませんよ主様!」
「「「……」」」
そう分かりやすい反応したアイナに対して与人はため息を吐きながら口を開く。
「アイナ」
「は、はい」
「アイナがどんな案を思いついたのかは知らない。けどアイナが無茶な作戦を立てる事は無いって信じてる。だから言ってみてくれ」
「あ、主様……!」
信用された事が嬉しいのか目を輝かせるアイナであったが、その耳にワザとらしい咳払いが聞こえて来た。
「んん! アイナ様。思いついた案とは?」
ユフィが何とも言えない表情をしている横でサーシャは羨ましそうにアイナを見ていた。
多少不満を残しつつもアイナは思いついた事を話始める。
「先ほども言いましたが、主様の技量は上がっています。ならばこれからある一点に集中して特訓すれば勝率は上がります」
「大会まで残り一週間もありません。出来るのですか?」
「……不可能ではありません。ただ、どうしても厳しい特訓にはなります」
アイナが与人の顔色を窺いながらそう言うのに対して、与人は頷き返す。
「やる前に諦めるのも嫌だしな。やり切って見せるよ」
「ご、ご主人様頑張って」
サーシャに応援されながら、やる気を見せる与人に安心するアイナにユフィから質問が飛ぶ。
「ではアイナ様、その一点とは一体何でしょう?」
「タイミングの取り方は難しいですが、決まれば勝利を決める一手になりえる技。カウンターです」
「カウンター」
「はい。……ユフィ、お願いしたい事があります」
「なんでしょう」
「明日から私と主様は特訓で忙しくなります。そこでサーシャと一緒にあるものを準備して貰いますか?」
「分かりました。その用意する物とは?」
ユフィが聞くとアイナは僅かであるが複雑な表情をしながら答える。
「もちろん。主様専用の剣と防具です」
それから数日間、与人はアイナとひたすら特訓の日々を送った。
攻撃してくるアイナの剣を受け止め、カウンターのタイミングを体に覚え込ませる。
それをひたすら朝から晩まで繰り返した与人は毎日ヘトヘトであった。
そして大会当日を迎えた当日、与人は緊張の面持ちで宿屋にいた。
「主様、どうやら予選会場は第三会場のようです。少し遠いので急ぎましょう」
「あ、ああ」
既に動きがぎこちない与人の様子に、アイナは何を思ったのかその手を優しく握る。
「アイナ?」
「大丈夫です主様。あなたに剣を教えてきたのは剣聖たちの技術の粋をその身に沁み込ませている元聖剣。……いつものように私を、私が教えた技術を信じてください」
「……」
「それに…私が言うのもおかしいかも知れませんが。負けても問題はないです。むしろ怪我なんてしないでください」
「はい?」
アイナの発言に目を丸くする与人に彼女は優しく続きを言う。
「勘違いしないでください。もちろん優勝して鎧を持ち帰って欲しいです。ただそれ以上に主様が傷つく所を……見たくないんです」
「アイナ」
「ですので。負けそうになったら素直に降参してください。手を尽くしたのであれば、それは恥ではありません」
「……ありがとうアイナ。少しは気が楽になったよ」
「それは良かったです。ではそろそろ……ん?」
アイナが部屋の扉の方に振り向くと同時に扉がノックされた。
「ユフィです。主殿、アイナ様。入ってもよろしいですか?」
「ん。入っても大丈夫だよ」
そう与人が答えるとユフィとサーシャが部屋に入って来る。
そのユフィの背中には何かの荷物が背負われていた。
「ご主人様、大丈夫?」
「ああ。せめて予選ぐらいは突破して箔を付けたいしな」
「緊張はなされていないようですね。いい事です」
そう言うとユフィは荷物を降ろして中身を与人に見せる。
「これは?」
「アイナ殿が大会に出るならそれなりの装備が必要と言われましたのでサーシャ様と一緒に最適な物を探して参りました」
「それはいいけどサイズとか合ってるの?」
「アイナさんが教えてくれたよ?」
「主様の事で私に知らない事はありませんので!」
そう胸を張るアイナではあったが、与人のアイナに対する好感度は若干下がったのであった。
「何はともあれ主殿。一度装着してみて下さい。万が一合わないようでしたら急ぐ必要があるので」
「う、うん」
微妙な気持ちで防具を着けていく与人。
分からない部分は手助けしてもらいながら付け終わると与人は照れくさそうにしていた。
「や、やっぱり似合わないよな」
「そのような事は無いかと」
「うん。ご主人様、カッコいいよ。ねぇアイナさん」
「ハァハァ」
鼻血を出しながら荒い息を吐くアイナに、与人の彼女に対する好感度が更に下がっていく。
そんな事は知らないと言わんばかりにユフィは同じく勝手きた武器を渡す。
「どうぞ。軽く、それでいて頑丈なものを選びました」
「ありがとう。お! 確かに軽い」
「む、胸当ても出来るだけ軽くて丈夫なものを選んだんだよ。……問題ない?」
「大丈夫だよサーシャ、ありがとうな。もちろんユフィと一応アイナも」
「過分なお言葉です」
「フガ!」
「何を言ってるか分からないよアイナさん」
鼻血を止めようとしているアイナに笑いが漏れつつ与人は改めて気合を入れる。
「よしっ! 予選、行くか!」
こうして勇んで向かった予選会場で、与人は無事に本戦へと進む事が出来たのであった。
今回はここまでとなります。
次回はついに大会の真実が!




