第56話 Let`sパーティー!!
第56話を公開しました!
与人たちは手に入れた屋敷でパーティーを行う。
『マキナス』の王都近郊にある小高い丘。
そこにかつて名をはせた豪商が住んでいた大きな屋敷があった。
長らくの間使われていなかった屋敷ではあったが、その日の夜は明かりが灯されていた。
中にいるのは与人。
そして13人の『ぎじんか』の『スキル』により人間となった擬人化美女や美少女たち。
『グリムガル』から旅を続け、正式に自分たちの拠点を得た彼らがこれから行う事、それは。
「ではこれより、正式に『マキナス』からの援助を受けれた事に対する宴会を執り行いと思います」
「ストラ先輩固~い! 折角のパーティーなんだからもっと砕けた感じで行こうよ!」
「これは性分ですラン殿」
そう屋敷を得て彼らは荷物の整理や屋敷の手入れもそこそこにパーティーの準備も始めたのであった。
最初は渋っていた頭脳担当のストラであったが、前々の課題であった仲間内のコミュニケーションを取る一環として受け入れた。
「それではまず我らが主である与人様から乾杯の挨拶をお願いします」
「え?」
予定として聞かされていない事を言われ動揺する与人であったが、場は盛り上がる。
「主様! お願いします!」
「与人の旦那! ビシッと頼むぜ!」
アイナやトロンが盛り上げる中で皆の前に立つ与人であったが突然の事だった為に言葉が出てこない。
「あー。えーっと」
「ご主人、頑張って」
「が、頑張ってご主人様」
与人に対してリルとサーシャから応援の言葉が出て来る。
ちなみにサーシャのご主人様は仲のいいリルの呼び方を真似たものである。
二人に応援され与人も何とか脳内で言葉をまとめる。
「皆。ここまで着いて来てくれてありがとう! 旅を始めた当初からの仲間も最近になって仲間になったのもいるけれど。出来ればこれからも俺を支えてくれると嬉しい!」
「当然。これからもあなたの矛となります」
「だね。主くんとの旅は楽しいからね」
セラとティアが与人に肯定すると各々からも声が挙がるがどれも二人に賛同するものであった。
思わず涙ぐみそうになる与人であったが、気力で耐え大きな声を張り上げる。
「それじゃあ料理も冷めない内に皆で楽しもう! 乾杯!」
「「「「「「「「「「「「「乾杯!!」」」」」」」」」」」」」
乾杯の音頭と共に皆が一斉に話し出して飲み物や皆で分担して作った料理に手をつける。
ちなみに飲み物は余計なトラブルを避けるためにお酒は厳禁である。
「あ! おいレーナ! アタイの肉取ったろ!」
「そっちだって魚を取ったろ! ていうかその一人称被るからヤメろ!」
「船に牛。くだらん事で争うな」
「「ほとんど全部持っていくんじゃねぇ!!」」
トロンとレーナがリントに目の前の料理を丸ごと取られそうになってたり。
「……」
「あ、あの。ゆ、ユフィさん」
「何?」
「こ、これ! お料理! 取って来ました!」
「……?」
「うぅ……」
「ユフィさん、受け取って上げて下さい。サーシャさんは人見知りですけどあなたと仲良くなりたいんですよ」
「……」
「だ、ダメですか?」
「……頂く」
「あ、ありがとうございます!!」
一人でいたユフィに積極的に声を掛けたサーシャをユニがフォローしたりとそれぞれ様々な会話をしていたが、皆が笑顔で溢れていた。
「ではカナデ殿。一曲お願いします」
「皆さま、お耳汚しかも知れませんがどうかお聞きください」
カナデがパーティーらしい曲を弾き始めた事で場も先ほどより盛り上がってきた。
そんな様子を与人はアイナに絡まれつつも笑顔で見ていた。
「ふぅ」
パーティーも佳境に入りそれぞれが楽しんでいる中で、与人はバルコニーにて外の様子を見つつ体を冷ましていた。
「いいのか主? 宴会の主役がこんな所にいて」
「リント」
リントはそう言うと返事も聞かず黙って与人の隣に立つ。
そんなリントの行動に苦笑しつつ与人は空を見上げつつ答える。
「盛り上がってるし少しぐらい抜けても大丈夫だって」
「だといいがな」
「それに今日の主役は俺だけじゃなくて皆もだよ。もちろんリントもな」
与人がそう言うとリントはやれやれと言わんばかりに肩をすくめる。
「まあそれはいい。……で、主。何を考えてた?」
「ん?」
「とぼけるな。心を読む力なんて無いが、それでも主が何かを考えてる事ぐらい分かる。……それなりの付き合いだろ?」
「……そうだな。初めて出会ってからリントには世話になってばっかりだ」
与人はリントを見ながらそう答えるとここでは無いどこかに思いを馳せる。
「リントと出会ってから何か月も掛かった旅。思い返せば死ぬ直前のような目にもあったけど、楽しかったなって」
「これでもう終わりみたいな言い方だな」
「まさか。まだまだこれからなのは理解してるつもりだよ」
笑いながらそう答えると与人は星に向かって手を伸ばす。
「けど皆は本当のところはどう思ってるのか。どうしても考えてしまうんだ。元々無理やり付き合わせるものだしな」
「……まあ確かにそうだな」
「だよな」
「だがな主。私は人間になって良かった、そう思えるぞ」
「……なんで?」
リントの言葉に本当に不思議そうにするのが面白く、リントは笑みを浮かべながら答える。
「主と出会わなければあの森でただ本能に任せて生きていただけだった。今のように自分の意思も無く、な」
「……」
「他の奴らも似た事を考えてるのではないか? 聖剣なんかがいい例だ。主と合わなければただの聖剣として資格も無いような奴に使われるだけだったろうな」
「だろうな」
「だからな主」
リントは改めて与人と向き合う。
その表情は透き通るような笑みが浮かんでいた。
「私の、いや私たちに生の意味を与えたのは主だ。責任を取れ、とは言わないが。それでも迷う前に進むぐらいの気概は見せて欲しいものだな」
「……だな。迷うぐらいなら目標に進んだ方がいいよな」
「ああ、だが一つだけ言っておくぞ。もし前に進めないほど困ったなら躊躇せず私たちの手を取れ。誰かを頼る事、それは決して弱さでは無い」
「……弱さじゃない、か」
「ああ」
与人はリントの言った言葉を頭の中で繰り返す。
そして与人も改めてリントと向き合う。
「リント」
「なんだ?」
「ありがとう」
「気にするな」
そう言ってリントは与人から離れて戻ろうとするが、ふと足を止める。
「ああそう言えば。ダンジョンを改めて確かめたのだが」
「ん?」
「主、鏡越しに私に口づけをしただろ」
「ブッ!! な、なんでそれを!!」
「残った魔力を確かめるぐらいは私にも出来る。まあ誰にしたかは勘だったがな。」
「お、怒ってるか?」
「……取り敢えず主、目をつぶれ。話はそれからだ」
おそるおそる言われた通りに目をつぶる与人に対しリントは近づくと、その唇にキスをしたのであった。
「は?」
「鏡越しだと満足出来なかっただろ?」
いたずらに成功したような笑みを浮かべるリントに対し与人ただ唇の感触を確かめていた。
「なんだ初めてだったか?」
「う、うん」
「フフ、そうか。まあ慣れておくことだな」
「いや中々慣れる機会なんて……」
「そうでも無いぞ。後ろを見てみろ」
「え、後ろ?」
「主様」
その自身を呼ぶ声でリントが何を言いたいかを察した与人が後ろを振り向くと、そこにはやはりアイナを始めとした面々が揃っていた。
中でもアイナはまるで幽鬼のような顔をしており、何が言いたいかは想像できた。
「ではな、主。まあ精々頑張れ」
そう言ってリントは今度こそ与人から離れていった。
その後ろからはまるで与人が誰かに襲われているような声を出していたが、リントは振り返らず戻っていった。
こうして彼らは宴会を終え、また新たな明日へと向かうのであった。
今回はここまでとなります。
次回からはまた新たな旅路へと向かいます。
ご期待ください。




